勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
そして、明くる日から、まずはカリナの精密検査と治療が始まった。それが終わってから、カリナをこの世界の暮らしに適応させるためのトレーニングが始まる。
世界情勢に対する教育はまだ時期尚早として、まずは日常生活から始められることとなった。食事には問題がなかったから、まずは健康と服装だ。
対応してくれるルーカスが言う。
「君の衣装だがそのままでは目立ちすぎるな。こちらの世界の服装に変えよう」
「よろしいのですか?」
「あぁ、使わないものはこちらで保管しよう」
「わかりました。是非お願いいたします」
そこで、最初の身体検査で得られたデータを元にカリナに合ったサイズの服装が用意される。
下着、肌着、丸首の半袖シャツ、レギンスズボン、アウタージャケットにソックスにデッキシューズと言った所で、この他に私物をしまうウエストベルトポーチやバッグも支給となる。彼女愛用の剣は専用ケースが作成される事となった。
彼女の行動はルーカスの監視下に置かれていたが、流石に着替えと服装の指導は彼では無理だ。
この施設で彼女の治療を担当する責任者である女医に、身の回りの物に関する判断も任せることとなった。
「おまたせ、着替え一式用意しましたよ」
着替えを持参して現れたのは最初にカリナの体の身体検査をした女性担当官だった。彼女はこの医療施設の女医だったのだ。
「担当医療官のヒルトです。身の回りのお世話をさせていただきます」
「よろしくお願いします」
にこやかに挨拶から始まる。
「服装を着替えて、病気がないか体の検査をします」
「はい」
ヒルトに教わりながら着替えが始まる。サーコートとベストを脱ぎ下着のシュミーズになる。カリナの世界の文化では女性の下着はそこまでだ。流石にカリナも恥ずかしかったが相手が同じ女性なのでまだ気が楽だ。渡された衣類を手にしてみたが最初から躓いた。
「これ、なんですか?」
彼女が戸惑ったのはブラとショーツだ。そもそも付け方がわからない。
「あ、そうか。あなたの世界では肌着までなのね」
「はい、股下の下着は男性が着る物なので」
男性は支えないとブラブラする、なので女性はその心配がないから股下を覆う必要がない。そもそもが歴史的にも女性が下半身用の下着を持つ服装文化は想像以上に少ないのだ。
「こっちはブラジャーと言って乳房を支えるものよ。これはショーツ。股間を保護するもの。こちらの世界ではこれが基本になるから今のうちから慣れてね」
さっそくヒルトの説明とアドバイスを受けながら早速つける。
「つけ心地は?」
「悪くありません」
「そう、それじゃ次ね」
さらに次の衣類が渡される。
「こっちがレギンスズボン、腰から下に履くの。そしてこっちが腰から上に着る半袖シャツ」
「はい」
これは難なくクリアする。だが、カリナはもどかしそうだ。
「どうしたの?」
「いえ、体の線がはっきり出るんで」
「恥ずかしい?」
「あの――、公の場所に出るときは体の線は出さなかったので」
カリナがそれまで着ていたのはゆったりした作りのガウンドレスやサーコートでボディラインは出てこない。夜会パーティーでも無い限り女性がそのボディラインを出す事はないのだ。これも文化の違いで致し方なかった。
「そうか、若い女性と言う事で選んだんだけど失敗したわね。取り替える?」
「いえ、これがこちらの服装なら慣れておかないといけませんから」
「そう? それならこちらの世界の服装、色々と試してみる?」
「いいんですか?」
「えぇ、あなたがこちらの世界のことを身につけるためにも、色々な物に触れたほうが良いわ。そのためにももっとたくさん知っておかないとね」
「ではお願いします」
「えぇ」
ヒルトは、柔軟な考え方のできる女医だった。カリナの考え方を尊重しつつ色々な提案をしてくれるのだ。
そして、靴下にシューズも無事に身につけられた。アウタージャケットやベルトポーチは外出時と教えられた。
「着替え終わったら今日は一日かけて体の検査をするわ。それから必要箇所の治療しましょう。長丁場だけど頑張ってね」
「はい!」
そして、そこからは一日がかりで病院めぐり&検査コースとなったのだ。