勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う―   作:美風慶伍

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適応訓練始まる ―ハイテクの街は罠だらけでした―

 そして、カリナの体の治療が、ほぼ終わりを告げた頃、意外な人物がカリナのところに訪れていた。

 

「よぉ!」

 

 カリナはレギンスにシャツにアウタージャケットと言う出で立ちで、セミナールームにて待機していた。そこにルーカスとともに現れたのは――

 

「ジェイさん!」

 

 親しみやすい懐っこい人柄のジェイだった。実に約3週間ぶりの再開である。

 

「久しぶり、元気そうだな」

「はい! なんとかこなせそうです」

「それは良かった! カリナに〝教える役〟が必要だってレオンが隊長が言うんで、俺が駆けつけたんだ」

 

 馴染みのあるジェイが着てくれたのはカリナにもありがたかった。  

 

「ここから先は日常生活における基礎知識がレクチャーされる。それを教えるのが俺らだ。一つ一つ教えていくから」

「よろしくお願いします!」

 

 時、同じくして2週間の集中治療がほぼ終わりを告げようとしていた。それを持って、日常生活の適応訓練が始まろうとしていた。

 情報社会に存在する必要器具、都市設備、交通機関、社会ルール、そして、お金の取り扱い。一つ一つを学校での授業のようにカリナは教わる。指導役はジェイとルーカスが担当することとなった。

 

 病院の中の使われていない一室を用いて様々な説明とレクチャーが始まる。

 指導役としてのジェイとルーカスが、改めてカリナの前で名乗った。

 

「体に対する治療がほぼ終わった。ここから日常生活における社会的を訓練に入る。基本的な指導はジェイが、総合的な管理監督は私ルーカスが行う」

 

 ルーカスの言葉にジェイが言葉を添えた。

 

「もっとも、難しく考えることはない。分からないと思ったことは何でも聞いてくれ。その都度教えていく」

 

 生真面目なルーカスに、柔軟なジェイという組み合わせは、カリナにとってもメリハリが効いて受け入れやすかった。それぞれに性格的な特徴があるからだ。

 

「よろしくお願いします!」

 

 カリナは明朗に力強く答えた。

 

 だが――

 

 その〝日常生活適応訓練〟は、全てが驚きとトラブの連続だった。

 外出テストでは、エスカレーターやエレベーターで戸惑い、交差点では信号が理解できず往来を止めてしまう始末。

 

 駅のステーションに向かいチケットを購入する。ただそれだけのことなのにいきなりつまずいた。

 

「電子マネーカードだ。これで列車に乗るためのチケットを買う」

 

 渡された電子マネーカード――それをカリナは不思議そうにしげしげと眺めた。

 

「これ何ですか? 身分証明のIDにそっくりだけど?」

「はっきり言うとそれがこの世界における〝お金〟だ」

「え?!」

 

 周囲の人間が視線を受けるほどカリナは驚いた。

 

「ちょっと待ってください。この中でどうやってお金が入ってんですか?」

「おいまて、その中に金貨が入ってるわけじゃないぞ? その中に入ってるのはお金の情報だ」

 

 この世界にきて一番のボケをかましてしまい、周囲の視線をことさらに集めていた。顔を思わず赤くせずにはいられなかった。

 

「情報? ――と言うとメールみたいな?」

「そうだ。手紙の内容が情報化されているのがメール、お金の価値が情報化されているのが――」

「電子マネー」

「飲み込みが早いな。そういうことだ。やってみろ」

 

 言われるままにカリナは券売機を操作する。電子マネーをスロットに差し込み、中に吸い込まれる様に驚き、路線図の料金の数字を目線で追って目的地を選択する。

 

「あ、出てきた」

 

 操作が終わってチケットと電子マネーが帰ってくる。券売機には電子マネーの残額が表示されていた。

 

「あ、数字が減った。これがお金の価値が減ったってことなんですね?」

「そういうこと。今日はいくつかの路線に乗ってお金の使い方について学んでもらうからな」

「はい」

 

 とは言え――、剣と魔法と徒歩移動が前提の世界から、電子と情報と機械文明の世界に、突然来たのだ。街を移動するだけでも一苦労である。

 例えば信号と横断歩道――、

 

「今だ、渡るぞ」

「は、はい」

 

 交差点の横断歩道、信号機の表示を見て渡るタイミングを図るのだが、行き交う自動車などの動きも注意する必要がある。3回に1回は渡りきれずに立ち往生した。

 あらっぽいドライバーから声が飛ぶ。

 

「何やってるんだ! さっさといけ!」

「すいません!」

 

 のっけから前途多難である。

 次に自動ドア――、センサーが感知してドアが開く。

 

「魔法みたい」

 

 おっかなびっくり通過するとタイミングが合わずに挟まれかけたこともある。

 食事では券売機や電子メニューで戸惑い、電子マネーの残高切れに気づかず窮したことも。

 

「お客様、残高が足りませんが?」

「あ、す、す――すいません」

「チャージしてなかったのか?」

「忘れてました――」

「ここは俺がだすよ」

「すいません……」

 

 慌ててジェイに助けてもらうこともあった。

 極めつけはトイレである。ウォシュレット付きのトイレでスイッチを間違えて操作した。で――

 

「きゃぁっ!」

 

 ジェイはトイレ内に他の女性がいないことを確かめて入っていく。そして、思わず手で顔を覆った。

 

「うわぁ……やっちまったか――」

「ふぇぇぇん……」

 

 ウォシュレットで頭からびしょ濡れになったカリナに苦笑したのだった。

 

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