勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う―   作:美風慶伍

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夢の記憶1:見知らぬ戦場で見る夢は
―夢― 仲間はどこへ消えたのか?


 それは――

 カリナが家族のように慕っていた仲間たちと語らい合っていた時の記憶のかけらだった。

 

 そこは見渡す限りの草原だった。

 カリナのふるさと〝ソルスター世界〟

 カリナが今、佇む草原は、その端境にある激戦地――

 プトラード広原と呼ばれ、何度も歴史的な激戦が繰り広げられた、カリナにとっても思い出深い場所だった。

 

「これが最後の戦いへと続く道――」

 

 そこは光と闇の2つの領域のまさに狭間で、世界が2つに引き裂かれていた時の戦いの舞台だった。

 見渡す限りの青い大地の上で、夢の中でカリナは1人佇んでいた。

 彼女は敵を見据えていた――

 

「あれは魔族――」

 

 彼女の敵だった。否、彼女が住む世界を脅かす絶対的な敵だった。

 闇の大地から、魔族たちは軍団を組織して攻めてくる。

 

「魔王ヴァルガリアスの手先――」

 

 魔族を率いるのは魔王――、その(ことわ)りは1500年前から何も変わっていなかった。

 カリナに常に寄り添い、共に歩んできた精霊エリュシオが、聖剣レギオンブレイドの中から語りかけてきた。

 

『行きましょうカリナ、今こそ魔王を討つために』

「ええ、行きましょう! 世界に平和をもたらすのは勇者たるものの勤め」

 

 彼女は左腰にレギオンブレイドを下げ、1人大地を踏みしめて歩き始める。

 なぜ1人なのか? 1人では戦いにならない。

 だから〝仲間〟が居る。

 

 最初にカリナの傍らに鎧甲冑姿で現れたのは屈強なる1人の戦士だ。

 

「カリナ、戦場でお前の背中は俺が守る」

 

 精鋭なる重装歩兵部隊を引き連れて現れたのは戦士長のエルリックだ。

 

「戦闘の最前線を形作るのはあなた、信じています」

「任せろ! 俺はいつでもお前と一緒だ」

 

 エルリックは、カリナが本当の勇者として歩み出した幼い頃から傍ら居た。

 だからこそエルリックが傍らに見ることを疑ったことすら無かった。

 そしてもう一つ、女性の声がする。

 

「魔族は魔法を使う。その魔法に立ち向かうのが魔導士たるものの役目!」

「ソフィア!」

 

 振り向けばそこにいたのは優雅にして伝統的な魔導士の衣装の一つであるブリオードレス姿のソフィアだった。彼女は、魔導師としての重要道具である魔法の杖を携えてカリナとともに歩き出していた。

 

「軍団の魔導師の討伐はあなたにお任せします」

「分かってるわ。いつも通りね」

 

 カリナが思っていることをいつでも数歩先を読んで抜かりなく仕掛けてくれるのが彼女だった。

 剣と戦いしか知らなかったカリナに、礼儀も装いも社交マナーも、丹念に教えてくれた姉のような存在だった。

 

 そしてもう1人、カリナの傍らでともに歩む女性がもう1人いた。

 

「ここから先の戦い、戦場における様々な情報をいち早く手に入れることこそ軍勢の運命を決めるわよ?」

「ミリア! あなたも一緒に!」

「もちろんよ!」

 

 そこに佇んでいたのは、ズボンにブーツと言う出で立ちで、マントを羽織った弓師のような風貌の若い女性だった。髪の毛は短く男勝りな印象すら与える。

 

「これで4人揃ったわね」

 

 カリナがそう呟けば、頼りになる兄のようにも父のようにも思ったエルリックが言った。

 

「あぁ、この決戦もここから始まる」

 

 カリナにとって様々な知恵を授けてくれた憧れの存在であったソフィアも言った。

 

「このプトラードの広原の戦いに勝利して、今度こそセプタリアから魔族の彼らを追い払うのよ!」

 

 さらにカリナに知恵と情報を導き出してくれる友と言うべきミリアが言った。

 

「カリナ! 不安に思うことはもう何もないわ! いつでも私たちが共にいるのだから!」

 

 ミリアのその言葉に、ソフィアも、エルリックも、力強く頷いていたのだ。

 エルリックは言った。

 

「軍団も、みんなも、すでに集結している」

 

 その背後を振り返れば、カリナの直属の軍団〝アルカナヴァンガード〟数千人が控えていた。

 さらにその背後には〝8つの国〟と〝10の種族〟が連なっていた。

 彼らは勇者カリナを信じ、ともに歩んできた勇者の軍勢。

 彼らが今こそ戦いが始まる時を待っていた。

 

 カリナは前方へと再び振り向き、プトラード広原の戦いの場を見据えていた。

 その時のカリナの表情はもう怯える少女ではない。

 

 目の前には魔王の勅命を受けた、魔王軍の精鋭が数万人規模で控えていた。

 カリナはそれを見据えながら、左腰に下げた聖剣レギオンブレイドを抜剣して天高く掲げた。

 

「傾注!」

 

 風が吹きすさぶプトラード広原を、カリナの裂帛の気合いがどこまでも広がる。

 

「我らはいよいよ、魔王軍をこの光の大地から駆逐するための最後の戦いを始める!」

 

 ざわめきは起こらず全ての意思が勇者カリナという1人の少女に向けられていた。

 

「興亡の一戦! まさにここにあり! 全員戦闘準備!」

 

 次の瞬間、全ての兵士が、戦士が、魔導士が、この戦いに臨む全ての者たちがそれぞれに許された武器を手にして構えた。

 

 カリナは今まさに頭上に掲げた剣を――、聖剣レギオンブレイドを――、勢いよく敵目掛けて振り下ろした。

 

「魔法剣士騎士団アルカナヴァンガード! ソルスター自由連合軍! 前進せよ!」

 

 今、カリナを先頭に、魔王軍との決戦を目指して大軍勢が大地を踏みしめながら進む。

 カリナはその先頭を切る――はずだった。

 人々がカリナを追い越していく――

 誰もが熱狂に浮かされたかのように戦場へと向かう。

 

「ミリア?」

 

 傍らに佇んでいたはずの彼女はいない。

 

「ソフィア?」

 

 カリナのために魔導を行使してくれた頼れる彼女は魔導師たちを引き連れて去ってしまった。

 ならば残るは1人しかない。

 

「エルリック?!」

 

 不安にかられて周囲を見回した。気づけば、周りには誰もいなかった。

 夕闇に不気味に広がる無人の荒野がカリナを取り囲んでいた。

 

「ここは――、どこ?」

 

 その疑問に答える声はなかった。

 

「ここはどこなの?!」

 

 夢の中、カリナは思わず叫んでいた。無人の荒野の孤独――その寒さにカリナは思わず目を覚ましたのである。

 

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