勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う―   作:美風慶伍

5 / 33
光の土地セプタリアに勇者たちはたどり着く ―故郷に望んで、英霊は天へと還る―

――そして、一月半に渡るソルスター自由連合軍の帰路の旅路は終わりを迎えた。

 闇の領域ノクティルから、光の領域セプタリアへとたどり着いたのである。

 魔族の支配域から、人の住む地と、彼らは帰ってきた。その光あふれる大地を前にしてカリナは感動に打ち震えながら言葉を吐いた。

 

「やっと帰ってきた――」

 

 エルリックも思わずカリナの肩を叩く。

 

「あぁ、ようやくだ」

「はい!」

 

 ミリアは冷静さを失わず報告する。

 

「カリナ、帰路途中に負傷者は出たけど、死亡者はほぼほぼ皆無よ」

「えっ? 本当?」

 

 カリナは損失を嫌う。無事に生還できたという事実にカリナはその顔をほころばせた。

 

「よかった! せっかく魔王を倒したのに帰り道で倒れた人が居たら流石に嫌だから」

「あなたならそう言うと思ったわ」

「コレもすべて、力を貸してくれた歴代英霊の皆様のおかげだわ」

「そうね」

 

 喜ぶカリナだったが、幸せだけではない。残酷な現実が待っていたのだ。その残酷な現実をソフィアが語る。

 

「その英霊の皆さんだけど、そろそろ限界のようよ?」

「え?」

 

 ふるさとであるセプタリアの光の大地――、そこを前にして歴代勇者の英霊たちは、セプタリアを見渡す高台の際の崖の上に並んで佇んでいた。そこにソフィアに事実を告げられたカリナが慌てて駆けてくる。

 

「みなさん!」

 

 カリナの声に、黒い剣士のブレイズが振り向いた。

 

『来たな? カリナ』

 

 風魔導師のエアリスも振り向いた。

 

『カリナ、無事に帰還できたようで何よりだ』

「はい! 損失無く、全軍帰還できました」

 

 それは喜びの言葉だった。だが、もう一つの事実をカリナは気づいていた。

 

「天界にお還りになられるのですね」

『あぁ、頃合いだ』

 

 それには理由が有る。エアリスは語る。

 

『歴代竜皇の霊力が効力を発揮するのは、旧ドラゴン族の領地だったノクティルの領土内のみ。セプタリアには影響を及ぼせない』

 

 そしてレギオンブレイドの中のエリュシオが告げた。

 

『現世滞在のためのマナ(理力)が限界を迎えます。英霊諸衆の皆様方、ご帰還のご準備を』

 

 そう――、大ドラゴンの巨大な霊の恩恵が終わることで、英霊たちも帰還することになるのだ。だからこそだ――

 巨大なバトルアックスを抱えた髭面の老齢の勇者が語る。

 

『せめて、ふるさとが見晴らせる場所を思ってな。ここに集まった』

 

 まだ少年といって差し支えないあどけない容姿の若い勇者が語る。

 

『朝日がさすときに、ここにたどり着けたのはかえって幸運だよ』

 

 腰にバスタードソードを帯びた、いかにも剣士風の麗女が語った。

 

『帰りの道中、諸国の方々との語らい合い、生前を思い出しました』

 

 全身総鎧の騎士勇者が語る。

 

『故郷の空に戦火の炎がない――、それが見れただけでも満足だ!』

 

 そして、風魔導師のエアリスはカリナに告げた。

 

『僕たちは天界へと還る。魔王との戦いがなくなれば、英霊召喚も行われなくなるだろう』

 

 さらにブレイズも告げる。

 

『それでいいのさ、死者は眠りにつくのが筋ってもんさ』

 

 その言葉に英霊たちはだれもが頷いた。悲しくもそれは世界の理なのだ。

 最後に、いにしえの魔導士風の姿の麗しき老女の勇者がカリナに語りかけた。

 

『勇者カリナよ――、これからの平和の訪れを見守るのは貴方の役目』

「はい――」

『あとは、頼みましたよ』

「おまかせを」

 

 そして、エリュシオは告げた。

 

『英霊諸衆の皆様方、天界へとご帰還となられます』

 

 ならばそれを送り出すのはカリナの役目だ。

 

『お名残惜しいとは存じますが、天界へとご帰還になられる時がやってまいりました。旅立ちのご準備をお願いいたします』

 

 エリュシオがそう告げると、カリナは聖剣を天空へと掲げた。そして、レギオンブレイドから光の柱が伸びて、その光の柱は広がり、巨大な門を生み出す。

 天界と地上をつなぐ、〝光の命の門〟である。

 570年前の老傭兵が告げる。

 

『それじゃ、行こうぜ』

 

 ブレイズも告げた。

 

『達者でな! 勇者カリナ』

 

 そして、200柱の歴代の英霊たちは光の門をくぐっていき、最後の一人が門の向こうへと姿を消し、光の門は音もなく閉じた。

 こうして、一つの戦いは完全に終わりを告げた。

 カリナは大空を見上げてつぶやく。

 

「本当に、ありがとうございました」

 

 そののちレギオンブレイドを鞘に納めると、気持ちを引き締めて歩き出す。

 

「さぁ、参りましょう! 私たちの故郷の街へと!」

「はっ!」

 

 カリナはエルリックと共に、仲間たちのもとへと向ったのだった。

 

 

§

 

 

 それから――

 ソルスター自由連合軍は、セプタリアの領域に到達して数日を、負傷者の治療と、諸軍団の事後処理、また関係本国との連絡のために野営することになった。

 そして、本国や活動拠点との連絡が取れ次第、一度、帰参することになる。

 8つの国と、10の種族――、それぞれの暮らす場への帰還――

 カリナはそれらを一つ一つ、見送った。

 グレインリーフ、モントクラウド、アクアリス、ヴァルハイト、ガルガンダイン、エーテルノヴァ、ネルガル――、そして、カリナの故郷、ルミナリア、

 さらには、

 ドラゴン族、獣人族、ケンタウロス、リザードマン、グローム、ドワーフ、エルフ、グラスランナー、トロール、そしてゴブリン――

 彼らたちもまた、この戦いの中で新たな暮らしの拠点を得ていた。

 それぞれの代表と語らい見送ると、最後に残ったのはカリナが率いる、大切な仲間であるアルカナヴァンガードだ。

 エルリックが言う。

 

「これで俺達がここから出発すれば、最終決戦は本当に終わりだな」

「えぇ、それでは参りましょう」

 

 その言葉に導かれて、カリナは仲間達とともに、一路、ルミナリアの王都を目指したのである。

 ルミナリア――、光あふれる大地セプタリアに存在する八大国の筆頭であり、カリナの生まれ故郷でもある。

 魔王軍との長い戦いで中心的存在となり、繁栄の時代を謳歌していた。その中心となる王都ブライタリア――、カリナたちはそこへと、一路、歩き続ける。

 王都へと向かう道の左右には、郊外型の邸宅や、街道筋の街並みが広がり、さらには豊かな農地も広がっていた。

 

「本当に平和が訪れたんだわ――」

 

 カリナは道沿いの光景を眺めながらつぶやいた。人々の顔に憂いは無く、明るい表情とともに、平穏を満喫しているのがひしひしと伝わってくる。

 農地を耕す農夫がカリナの馬車に気づいて頭を下げ、道沿いでは子どもたちが遊び手を振ってくれる。それはカリナへの敬意の表れである。

 

「勇者様!」

「巫女様!」

 

 人々から声がかり、カリナは思わず手をふる。笑顔と笑顔の交換である。

 ソフィアがカリナに問いかける。

 

「うれしそうね。カリナ」

「そう?」

「えぇ、とっても」

 

 カリナはソフィアの言葉に微笑みながら周囲の光景を見た。

 

「この国の人々が戦火に怯えずに暮らしているのよ。人々が待ち望んだ平和と自由がやっと到来したのよ」

 

 だが、ミリアが冷静な言葉を投げかける。

 

「でも、魔王軍残党の問題は残るのでは?」

「それを言う? ミリア」

 

 ソフィアが不満げに言えば、エルリックが仲裁する。

 

「ミリアが気にするのはもっともだ。魔王軍は崩壊したが、すべてが降伏し、恭順したわけではないからな。だが――」

 

 エルリックもカリナのように周囲に視線を投げた。

 

「今は、平和を謳歌しようじゃないか。気ばかり張っていても、体が持たん」

「――それもそうね」とミリア、

 

 そして、カリナが笑った。

 

「まずは、無事に帰還することを目指しましょう。ルミナリアのブライタリア、そこにある私たちの拠点へ」

「えぇ、そうね」と、ソフィアも笑った。

 

 彼らには、故郷への道がなおも続くのだった。

 




第5話までお読みいただき、ありがとうございます。

死したものは天へと還る。それが不変の理りだったとしても、一抹の寂しさがあった。
だが、カリナたちには還るべ場所が有るのだった。
少女勇者カリナが未来世界の戦場で歩み出す物語を続けて投稿していきます。
続きが気になると思っていただけましたら、ブックマーク・フォロー・評価などで応援いただけると、とても励みになります。

引き続き『聖剣機兵カリナ』をよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。