勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
それから――
ソルスター自由連合軍は、セプタリアの領域に到達して数日を、負傷者の治療と、諸軍団の事後処理、また関係本国との連絡のために野営することになった。
そして、本国や活動拠点との連絡が取れ次第、一度、帰参することになる。
8つの国と、10の種族――、それぞれの暮らす場への帰還――
カリナはそれらを一つ一つ、見送った。
それぞれの代表と語らい見送ると、最後に残ったのはカリナが率いる、大切な仲間であるアルカナヴァンガードだ。
エルリックが言う。
「これで俺達がここから出発すれば、最終決戦は本当に終わりだな」
「えぇ、それでは参りましょう」
その言葉に導かれて、カリナは仲間達とともに、一路、ルミナリアの王都を目指したのである。
ルミナリア――、光あふれる大地セプタリアに存在する八大国の筆頭であり、カリナの生まれ故郷でもある。
魔王軍との長い戦いで中心的存在となり、繁栄の時代を謳歌していた。その中心となる王都ブライタリア――、カリナたちはそこへと、一路、歩き続ける。
王都へと向かう道の左右には、郊外型の邸宅や、街道筋の街並みが広がり、さらには豊かな農地も広がっていた。
「本当に平和が訪れたんだわ――」
カリナは道沿いの光景を眺めながらつぶやいた。人々の顔に憂いは無く、明るい表情とともに、平穏を満喫しているのがひしひしと伝わってくる。
農地を耕す農夫がカリナの馬車に気づいて頭を下げ、道沿いでは子どもたちが遊び手を振ってくれる。それはカリナへの敬意の表れである。
「勇者様!」
「巫女様!」
人々から声がかり、カリナは思わず手をふる。笑顔と笑顔の交換である。
ソフィアがカリナに問いかける。
「うれしそうね。カリナ」
「そう?」
「えぇ、とっても」
カリナはソフィアの言葉に微笑みながら周囲の光景を見た。
「この国の人々が戦火に怯えずに暮らしているのよ。人々が待ち望んだ平和と自由がやっと到来したのよ」
だが、ミリアが冷静な言葉を投げかける。
「でも、魔王軍残党の問題は残るのでは?」
「それを言う? ミリア」
ソフィアが不満げに言えば、エルリックが仲裁する。
「ミリアが気にするのはもっともだ。魔王軍は崩壊したが、すべてが降伏し、恭順したわけではないからな。だが――」
エルリックもカリナのように周囲に視線を投げた。
「今は、平和を謳歌しようじゃないか。気ばかり張っていても、体が持たん」
「――それもそうね」とミリア、
そして、カリナが笑った。
「まずは、無事に帰還することを目指しましょう」
「
彼らには、故郷への道がなおも続くのだった。
§
その時、古参の魔導剣士である中年男性のアーヴァインがぼやいた。
「帰参したら、諸軍団のお偉方や、王国の貴族やら、王族やら、各都市の名士や、豪商――そう言った連中が謝意を表すとか言って、カリナ団長との面会に殺到するだろうなぁ」
ソフィアもぼやいた。
「それがあったか……、王族へはこちらから報告に出向かないと――、あぁ、礼服の準備や馬列の同行者の選抜とか――、あ、体の手入れとかも必要――」
と、そこまで言ってカリナをチラ見する。
「この数ヶ月、ずっと行軍だった体の手入れはイチからやり直しね」
「は?」
ソフィアの言葉に思わずカリナは変な声を上げた。
「なんでそうなるんですか?」
「なんでって……当たり前でしょう? あんた、魔王軍を滅ぼしたのよ? 歴史に残る偉業よ? それこそ終身名誉貴族の肩書くらいは硬いわよ? そこいらの貴族の上に立つのよ? 下着から髪の毛の一本まで徹底的に見直すからね!」
「え……ヤルんですか?」
「やるの! 変な匂いさせたままで国王に謁見するわけ行かないでしょ!」
それこそソフィアは〝キーーー!〟と言い出しそうな剣幕である。
「終身栄誉貴族――、そうか、それがあるな」と、エルリックもうなずく。
アーヴァインも言葉を漏らした。
「ルミナリア王家から、荘厳な邸宅が送られて、諸王国から終身年金が出される。国事儀礼にも引っ張りだこだ。それこそ国家の名誉そのものを生きることになるだろうぜ」
「え……?」
アーヴァインの言葉にカリナは青い顔でげんなりしていた。すると通信兵が言いにくそうに近寄ってくる。
「申し上げます――、その件ですが、ルミナリア国軍総本部経由にて、カリナ団長あてに終身栄誉貴族授与が内定したとの報せ。よって帰参次第、軍本部に出頭せよとの事です」
「え?」
唖然とするカリナの脇で、エルリックは努めて冷静に答えている。
「行軍工程を消化次第、軍本部に使者を送ったうえで出頭する――、そう伝えろ」
「はっ!」
通信兵が去っていくその姿をカリナは呆然としてみている。
「軍本部まで動いてる――なんだか、すごい面倒そう」
途方に暮れるカリナに、言いにくそうにソフィアは打ち明けた。勇者に対してこれでもかと、役目がのしかかってくるのだ。
「いいにくいけど、それ加えて政治の場にも担ぎ出されるわよ。きっと」
貴族、軍本部、国事行為、そして、王族との付き合い――無惨なまでのお仕事予定が山積みである。
ソフィアの忠告にカリナは涙目だった。
「なんでぇ!!?」
「だって――、それだけ〝箔〟がついてるのよ。なにしろ、世界を救った勇者ですもの」
「それもそうだな」と、エルリックは神妙に頷いていた。
「それに、俺たちも勇者とともに戦った〝家臣〟として、相応の武功が認められ、高い地位に昇ることとなる」
ミリアも苦笑していた。
「そうなれば、今まで通りとは行かないわね」
それらの話を聞いてカリナは青い顔でげんなりしていた。
「なんだか全然嬉しくない――」
「大丈夫よ! これでみんなバラバラってわけじゃないんだから! ね!」
ソフィアがカリナを抱いて慰めた。頭を撫でられて頷くカリナだった。