勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う―   作:美風慶伍

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魔導爆弾兵器 ―往生際が悪い魔族たち―

 カリナは足音を潜めつつ歩き出す。

 

「カリナ、慎重に――」

「えぇ」

 

 そう言いつつ、聖剣をいつでも抜刀可能な状態に柄を握りながら、その不審な男たち3人に近寄っていく。

 

「貴様ら、そこで何をしている」

 

 その力強い声に男たちは振り向いた。

 

「か、カリナ・ウィングス――」

「な、なぜここに?」

 

 フードの中には特徴的な顔立ちの男たちが居た。金色の目、有角――、犬歯が鋭いのも特徴だった。彼らは魔族である。

 魔族の男たちは驚愕の表情を浮かべていた。あっさりバレたことが意外だったようだ。

 

「バレないと思った? 勇者として戦場を駆け巡った私を甘く見ないことね!」

 

 そのカリナの声に、アルカナヴァンガードの隊員たちも即座に多数駆けつけてくる。軽装鎧にズボン姿の軽歩兵や、背中に弓矢を背負った斥候兵も居る。なにしろ、魔王軍との戦いからの帰参途中のだ、武装と戦意は筋金入りである。

  

「カリナ団長!」

「いかが成されました?」

「不審者を追い詰めました。ですが敵意の反応があります。所持品検査を」

「はっ!」

 

 アルカナヴァンガード隊員が腰の剣を抜刀しつつ、魔族の男たちに迫っていく。すると追い詰められたと悟ったのか、魔族たちは懐に隠していた剣を抜く。

 

「構わん! 〝あれ〟を炸裂させろ!」

 

 3人のうち二人が前に出て威嚇し、残る一人が小さな丸いものを懐から取り出した。

 

「炸裂――?」

 

 炸裂となれば――爆薬しか考えられない。その言葉にピンときたカリナは号令を発する。

 

「一斉制圧! 殺傷許可!」

「了解!」

 

 彼らは魔王軍の中枢に乗り込み、魔王を討伐した堂々たる勇者の軍勢〝アルカナヴァンガード〟である。戦闘が卓越しているのは日の目を見るよりあきらかだ。

 同行しているエルリックの指揮も加わり、複数が一気に二人の不審者を取り囲み、引き剥がし取り押さえる。多勢に無勢、一人あたり数人の隊員に抑え込まれたらひとたまりもない。魔族の男たちの装備も貧弱で、手にしていたのはナイフと変わらないショートソードのみだ。

 おそらくは戦いの最前線から逃げてきた元逃亡兵だろう。

 職を得られず、糧もなく、追い詰められて徒党を組み、暴徒と化して犯罪に手を染めた――と言うところだろう。落ちぶれ魔族の成れの果てである。

 

「くそっ!」

「人間ごときが!」

 

 叫ぶ魔族にアルカナヴァンガード隊員たちは真っ向から言い換えした。

 

「黙れ! 魔族には生存権を与えている!」

「大多数の魔族は今の社会に適合している!」

「上級幹部の中には自ら命を差し出して、部下の助命を嘆願した者も居る」

「個々の事情について勘案して生きる道を用意している!」

「無駄な抵抗をする〝利〟はどこにもない!」

「お前たちのようなはみ出し者が許されると思うな!」

 

 地面にあっという間に押し倒されて後手に縛り上げられた。

 だが、残る一人はその場から逃げようとして走り出す。その両手に持つ丸い物体――それを大事そうに抱えている。

 

「炸裂と言ったからおそらくは爆弾ね」

 

 カリナの言葉にエルリックは頷いた。

 

「その可能性が高い!」

「追うわよ!」

「おう!」

 

 その場から逃れて走り出す残る一人を追ってカリナも飛び出す。その速力は圧倒的にカリナが早く、すぐに捕まる。

 

「はっ!」

 

――ザクッ!――

 

 逃亡魔族兵を背中から軽く威嚇として斬りつければ、魔族の男はもんどり打って倒れた。

 その背中をエルリックが踏みつけにして取り押さえ、、魔族兵が手にしていた爆発物であろう物をカリナが視線で負う。

 それは路上に転げていく。確かに爆発物――それも導火線がなく、魔導機構にて点火する形式の物だ。

 

「きゃぁあ!」

 

 女性の悲鳴が響き渡り、母親が子供を抱えて走り出していた。また、ある老人は突然のことに手にしていた杖を手放して転げてしまっていた。

 商人たちは店どころではない。のどかな市場が、一気に戦場のようなささくれだった空気に飲まれた。

 かたや――、

 爆発物の球体表面上には複雑な呪術文様が描かれている。それがほの赤い光を放って明滅している。市場に居合わせた市民たちが騒然となる。

 そこかしこで、パニックが広がる中、一人カリナは逃げること無く爆発物の方へと一気に駆け出す。

 

「市民の避難を!」

「はっ!」

 

 さらに駆けつけた隊員たちにも指示を出し、カリナは爆発物への対処を始めた。 

 

「ここから離れてください! 危険です!」

 

 その声に市民たちは速やかにこの場を離れていく。その間にも球体の明滅はさらに進む。

 

「まずい、爆発する! エリュシオ! 球体周囲に結界を張って爆発を封じ込めるわ!」

『かしこまりました。封印結界発動します』

「封印結界! 作動!」

 

 カリナが聖剣の剣先を上にして垂直に構えると、意識を眼前の爆発物に向ける。すると、レギオンブレイドの十字鍔の中心の宝珠クリスタルが輝いて結界が発動する。それが、爆発物を中心にして球形の魔導結界を形成した。あとは魔導を維持するために意識をどれだけ集中させられるかである。

 

――ピッ、ピッ、ピッ、ピッ……――

 

 球体表面の魔導呪文が音を鳴らす。その球体をカリナが張り巡らせた結界が封じる。

 その状態で冷や汗をかきつつ、カリナは意識を集中させ続けた。それから数分後――

 

――ピピピピピ――ピーーーーーーーーーーッ!――

 

 ひときわ甲高い音が鳴り響いたかと思うと――

 

――ドッ、ゴォオオオオオンッ!――

 

 封印結界のフィールドの形がゆがむほどの爆発が起きた。周囲に軽い振動が響いた。音響がとどろき、閃光が広がった。

 

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