勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
カリナ、無人の荒野を歩く ―小さき案内者―
カリナは眠りについていた。
未知の無人の荒野で未知の〝小さな者たち〟と触れ合い、
彼らと共に敵を倒し、体を休めるところをどうにか確保した。
打ち捨てられた荷物から毛布を見つけてそれにくるまり一夜を過ごした。
夜の冷え込みはそれなりに厳しかったが、眠れないほどではなかった。
ただ眠りは浅かったのだろう。色々なことを克明に夢に見ていた。
「エルリック――、みんな――」
寝言のように言葉が漏れる。朝の冷え込みにカリナの眠りはさらに浅くなる。
その時、カリナの脳裏に奇妙な声が囁きかけてきた。
【――目を覚ませ! カリナ・ウィングス――】
その言葉がカリナを目覚めさせる。
「ん――? 誰?」
【――すまない、私は失敗した――】
「何? どういう意味?」
【――今は長くは話せ――】
そこで謎の声はぷっつり途切れた。
カリナは現実に引き戻されてハッとなりで体を起こした。
「今のは何?!」
そして周囲を見回す。そんなカリナに彼女の腰で鞘に収まっていた聖剣レギオンブレイドの精霊エリュシオがカリナを労わるように声をかけてきた。
『どうなさいましたか?』
「今、男の人の声で〝すまない、私は失敗した〟――と」
『声? ここには私たちしかおりませんが?』
カリナは意表を突かれたように呆然と周りを見回す。だが、現実を知るとすぐに冷静になった。
「そうね誰も居ないわね」
カリナはどこか寂しそうだ、エリュシオもそれを察したのだろう。
『どうなさいました? なにか夢でも?』
「うん――、みんなと魔王城で魔王を倒したときのことを夢に見てたの」
『なるほど、では――その夢の続きでは?』
「かも知れないわ。それより、ここから移動しましょう」
『はい、カリナ様』
カリナは体を起こすと、廃屋の外に出た。そして、太陽の昇る朝の大地で周囲を見回した。
「海は見えない――盆地ね――、それに岩砂漠と言うより、荒れ地――岩礫地帯といえばいいかしら?」
エリュシオも周囲を知覚する。
『私の遠隔視能力でみましたが、人家が存在するような兆候はありません。ただ、元は農地であったり、人の住む居住地だったはずの廃墟などが点在しています』
「徒歩で歩く範囲は?」
『絶望的です』
「そう――」
遥か彼方に見えるのは小高い山々、そこに到達するまでの範囲は絶望的だった。
「あの山を超えた向こうにもしかしたら」
『可能性はあります。ですが、生死をかけた賭けになります』
「無論、その賭けに外れたら死ぬしかないわ」
『その通りです』
だが、カリナは疑問をいだいた。
「だったら生存するために、目的レベルを落としましょう。食料になるような生物を探すわ」
『適切な判断です。では川を探しましょう。山岳地帯が見えると言うことは、水資源は望めるはずです』
「えぇ、行きましょう」
そう決意して歩き出す。すると、どこに隠れていたのか、あの2体の小さな飛行体――、昨夜、カリナとともに戦ったあの2体が近寄ってきたのだ。
――ピッ――
電子音がなって存在をアピールする。そのレンズでカリナを見ている。
「あなたたち! 生きてたのね」
その2つはカリナを見つけるなりすぐに近寄ってくる。その動きはまるで自らの意思を持ってるのが明らかなようだ。カリナは思い切ってその〝2人〟に尋ねた。
「あなたたちに聞きたいんだけど、救助を求められる人間たちがどこかにいないかしら? いたらば案内してくれる?」
カリナがそう問いかければ、2体の飛行体は沈黙したように静止していたが、またあの電子音で答えると頷いたように上下に揺れた。
「案内してくれるの?」
――ピッ――
お互いの間で会話がしっかりと成立していた。
『行くのですか? カリナ様』
「ええ、ここでこうしていても先は見えない。だったら人間たちのいる場所へと何としてもたどり着くわ」
『分かりました、ご一緒します』
レギオンブレイドを左腰に下げるとその廃屋を後にして、2つの飛行体とともにカリナは歩き出した。見知らぬ世界の見知らぬ大地の上、カリナの戦いの日々はここから始まるのである。