勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
やがてトラックは3時すぎに目的地に着いた。防衛都市から離れること60キロの地点にある外部駐屯基地だ。圧倒されるような数のヴァンガードが整然と並びその操縦士のアーセナルコマンド達が行き来している。カリナはその光景を感慨深げに眺めている。
マイクのトラックは基地内を走り倉庫区画へと向かう。
食料を収めたコンテナをおろした後、回収物を納めたコンテナを載せるのだが、その作業は一般作業用のヴァンガードが用いられるため力仕事は皆無だ。
「マイク君、私は何をすればいいの?」
「うん、カリナさんはトラックの見張りをして。俺1人だと目が行き届かないし、トラックにイタズラしたり部品を盗んでいく奴がいるんだ。傭兵の中にもたちが悪いのはいるから」
「そういうことね。分かった、ここで待機してるわ」
「頼むね。時間はあまりかからないはずだから。それじゃ」
そう答えるとマイクは手続きのためにどこかへと行った。見張りということなら武器を携行しても問題ない。カリナは左腰に愛用の聖剣を下げるとトラックの近くに立ち、周囲に視線を配る。
すると、カリナに視線を向けてくる人影があったのだ。
§
何事もなく荷卸し作業が進められていたが、思わぬ声がかけられた。
「誰かと思ったが、いつぞやの剣士様じゃないか」
声を振り向けば以前に見たある顔だった。
「あなたは確かレオン隊長のところの――」
「覚えててくれたか」
「はい、戦場で会った人の顔は可能な限り記憶してます」
声をかけてきたのは、戦場でカリナを保護した傭兵部隊サイファーブレイクスのメンバーの一人だった。
「この辺りがあなたの仕事場ですか?」
「基本的にな。休息を兼ねて月の半分は防衛都市だ。その様子だと上の連中はお前の行動の自由を認めたようだな」
彼の表情は固く、レオンやジェイと違いまだカリナを受け入れる雰囲気ではなかった。
「自由が得られたということは〝こっちの世界〟のために戦う覚悟ができたんだな?」
「はい、そのつもりです」
だがその一言が彼をイラつかせた。
「〝つもり〟じゃ迷惑なんだよ」
カリナを睨みつけながら彼は告げる。
「最前線の人間として言っておく。この世界じゃお前が腰に下げている剣は何の役にも立たない。俺たちが戦っている鉄の悪魔どもを撃ち抜けるだけの圧倒的な火力が必要なんだ。それを成しとげられるのはここに並んでいる〝ヴァンガード〟だけだ」
そしてひときわ強く威嚇するように彼は問い詰めてきた。
「お前にあれが乗りこなせられるのか? それができて初めてこの世界のために戦えると口にできるんだ」
強い口調で吐き捨てて背中を向ける。
「やる気だけが空回りしている新兵ほど見苦しいものはない。現実を理解するんだな」
そして足を止めて振り向く。
「それができた時にお前の名前覚えてやるよ」
その言葉を残して傭兵の彼は立ち去った。入れ替わりにマイクが戻ってくる。
「お待たせ! それじゃ、帰ろう」
だが、その時のカリナの張り詰めたような表情にマイクは戸惑った。
「お姉ちゃん……」
言葉を発しようとしてカリナは飲み込んでいた。どう声を出していいか迷っている。あの男の語る言葉は決して間違ってないからだ。