勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う―   作:美風慶伍

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一方その頃―― エレナのガレージのジェイ

 同じ頃、ジェイはまだエレナのガレージにいた。

 レオンから整備用の部品の発注依頼をメールで受信していたからである。

 

「お、隊長からだ――、うへ、うちの部隊のヴァンガード、全部の部品かよ――。アクチュエーター用の液体パッキンに、こっちは機体内のTasCANネットワークのハブルーター、ゴッシュのやつ頭部メインカメラの右アッセンブリー――ってまた壊したのかよ! 隊長は、相変わらず右脚部のショック吸収ダンパーの液漏れが治ってねえな。あの人右足で射撃姿勢を支える癖があるからな――」

 

 事務所の中で1人ブツブツ言いながら、部隊の仲間たちからの部品発注依頼を淡々と整理していく。

 ノートタイプの小型PCで発注書を作成する。

 

「エレナばあさん、書類がしっかりしてないと部品発注してくんねえからな」

 

 彼女の人となりを知っているだけあって、必要な作業は分かっているジェイだった。

 慣れた手つきで部品発注書類を仕上げて、プリンターで紙焼きにする。

 

「これでよしと」

 

 書類をエレナの事務デスクの上に置いてペーパーウェイトで止める。

 

「一応話をしておいた方がいいな」

 

 彼女は今、ガレージの方で作業しているはずだ。ジェイはエレナを探しに歩き出した。

 壁にかけられたデジタル時計が、マイクたちが出発してからすでに2時間を超えていることを示している。

 

「そういや、カリナとマイク、もう〝壁〟は超えたころか――」

 

 カリナが〝壁〟の外で果たして何を見て何を感じてくるのか――、

 

「いずれにしろいい刺激にはなるはずだ」

 

 そう信じて送り出していたジェイだったのだ。

 

 

§

 

 

 ジェイはエレナの工房の建物の中をあちこち歩き回った。

 彼女の工房は2つに分かれている。事務所と居住空間のある3階建てのビル部分。

 それと隣接して存在するのが建物の高さは隣の3階建てビルと同じ高さの大型の整備工場である。

 中には様々な形状のヴァンガードが懸架できるハンガークレーンが3機並んでいる。そのうちの1つにはカリナが試し乗りをしたグリーンドワーフが懸架されていた。

 その工場の一番奥の方にあるのが機械加工部屋、さらにその隣に部品庫が続いている。その他にも細々とした部屋が色々あるのだがエレナはそのどこにもいなかった。

 

「ばあさんどこ行ったんだよ」

 

 ジェイがいるからと言って事務所にも工場にもいないというのはあまりあることではない。1人で工場を回しているのであまりここから離れるということがないのだ。

 一通り探し終えてジェイははようやく思い出した。

 

「そういや敷地の裏手にもう一つあったな――」

 

 工場の奥へ、そしてそこにある通用口を開いて廃棄処分前のヴァンガードや部品取り用のスクラップが並ぶ裏の解体置き場へと向かった。そこにも彼女の姿がなかったが、どこにいるかも分かっていた。

 通用口から出てその左手側そこにバンガードは2機くらいは入りそうな大きさのガレージがあった。そこは入り口がシャッターが固く閉じてしばらくの間は開けられたことのないということを示していた。だが――

 

「お、やっぱりここか」

 

 裏手の謎の倉庫の片隅に通用口がある。そこの扉が開けっぱなしになっていた。

 ジェイも勝手知ったるように遠慮なく中へと入っていく。

 するとそこには、思った通りつなぎ姿のエレナが、ハンガークレーンに固定された一体の人型のヴァンガードを見上げて佇んでいたのだ。

 

 

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