勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
それから絶対防壁のメインゲートを目指してマイクの運転するトレーラーは東南東へとひた走っていた。
日没が近くなり周囲は少しづつ日が暮れ始めている。時計を見たマイクはつぶやく。
「絶対防壁までたどり着くまであと1時間かな」
ナビシステムのマップには現在地が映し出されていたが、絶対防壁まで残り40キロと言うところだった。
「完全に日が落ちる前には帰りつけますよね」
「うん、外敵の接近情報も出てこないし、よほどの事態がなければ――」
そこまで語ってマイクは黙り込む。
「どうしたの?」
「静かに」
それまで穏やかだった表情が打って変わる。張り詰めた冷静な表情でナビシステムのデータを見つめている。その豹変ぶりにカリナは思わず息を呑んだ。それをよそにマイクはトレーラーに装備された支援AIに指示を出した。
「ナビ、パッシブレーダー作動させて」
『了解、パッシブレーダー作動します』
聞き慣れない言葉が聞こえる。
「パッシブ?」
「電波で敵の存在を探知するシステムをレーダーって言うんだけど、その際に自分自身から探知用の電波を発してその反射から敵の存在を探知するのがアクティブレーダー、これに対して自分からは信号を発せず外部からもたらされる信号だけを受信して外部の存在を探知するのがパッシブレーダーだよ」
そう説明しながらマイクはレーダー解析画面を見つめる。そしてその画面を指さして説明しながら語った。
「ほらこれ、後ろ〝3つ〟ほど光る点が写ってるだろう?」
「あ、なにか一つに固まってる」
「そう、これ――位置的には俺のトレーラーの後方だよ。このレーダーに移るのは自分自身で電波や電磁波やノイズを発している存在なんだ。たとえばヴァンガードや軍事車両は自分でレーダー信号を発しているし、高出力の電脳や電子機器を装備していると電磁ノイズが漏れる。また外部との通信を行っている機体もその信号の余波が漏れるんだ」
「それがこの画面に映るのね?」
「そう、そして何より問題なのは――」
マイクはハンドルをしっかりと握りながら告げる。
「俺たちのトレーラーの後ろを走っている車両もヴァンガードも居ないんだよ!」
「えっ? じゃあ! これはアイアンオーダー?」
「その可能性が高い」
〝敵〟が接近している――、その事実にカリナは思わず表情を張り詰めさせた。
「もしかして私の寄り道のせいで――」
不安がるカリナだったが、マイクは穏やかに否定する。
「それはないよ。俺だってプロの運び屋だよ。敵に追尾されないように気配を消すくらいはできるよ」
「じゃあこれは?」
「これはアイアンオーダーの中でも独立部隊――さらに個別に行動している
「〝うろつく〟個体?」
「そうだよ。敵集団の司令系統とは独立して無軌道に移動する。そして俺たち人類側の勢力と偶発的に遭遇することを目的としてさまよい歩くんだ。何しろきめられた目的がないから、その行動パターンは非常に読みづらいんだ」
「厄介ね」
「うん。それになによりも、敵の本体と連絡を取られると増援部隊が襲ってくる危険性が出る。一刻も早く振り切らないと――」
そう話す間にも、パッシブレーダーに写っている敵影は瞬く間に近寄ってきていた。
「やばい、かなり速度が早い! 追いつかれる!」
マイクが焦りを口にして後方監視モニターに視線を向ける。するとそこには――
「なにか来る!」
「クロムハウンドだ!」
「それがアイツらの名前?」
「あぁ、アイアンオーダーが駆使する配下の機械たちはそう呼ばれるんだ」
マイクは改めてハンドルを握りしめアクセルを踏みこんだ。
「カリナ姉ちゃん! しっかり捕まってて! とばすよ!」
「えっ? は、はい」
トレーラーがさらに勢いを増す。速度があがり、車体はさらに激しく揺れ始めた。
状況は危機的になりつつあったのだ。