勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
それから3日ほどカリナは東へと歩いた。太陽の昇る位置と沈む方向、そこから方向を割り出した。
人間たちが居住することを放棄した大地は、割とたくさんの動物たちで賑わっていた。
野うさぎや野鳥を見つけ投石や罠で捕まえて火を起こして調理する。
魔王軍との戦いに長年従事していた間に、こうした野営のための食料調達の方法は様々な人から教わった。それを思い出しながら、一歩一歩着実に前を進んでいく。
場所が変われば道の跡も見つかる。人が住んでいたであろう街の跡もあった。
夜露をしのげそうな建物跡を見つけて夜を過ごす。幸いにしてさらなる敵は今のところ出会っていない。
「無事にこのまま誰かに出会えればいいのだけど」
『楽観はできませんが〝彼ら〟が導いてくれていると信じましょう』
あの2つの飛行体がカリナを導いてくれている。それが唯一の今のところの希望だったのだ。
それから3日目の夜がやってくる。また体を休められる場所を探し始める。だがそれまでとは明らかに周囲の状況は異なり始めていた。
自然の多かった場所から、かつての市街地の後のような場所へと景色が変わる。まだ人影は見えないが、人間が居たという名残は間違いなく増えていた。
手頃な廃屋を見つけて潜り込み、すでに確保していた食料を口にする。日が沈み暗がりが広れば、あの2つの小さな飛行体が周囲警戒をしてくれるはずだ。もはやお互いの役割に慣れ始めたときだ。
――ピーーーーーーーーッ!――
飛行体の一つが甲高い警告音を鳴らしたのだ。敵に撃たれた一体が停止するときに鳴らした〝悲鳴〟に近かった。
『カリナ様!』
「なにか起きたんだわ!」
右手に聖剣レギオンブレイドを握りしめて飛び出す。するとそこには戦火の炎が燃えていた。見据える先にあるのは炎と煙と死の匂いが飛び交う戦場だった。
「何これ? どこかで見たような気が――」
だが、それには奇妙な既視感がある。どうにも見覚えがあるのだ。
「!――あれは」
『マスター、わたしも見ていました。あれは魔王との戦いの後の、時空の裂目で――』
「えぇ、あそこでわたしも見たわ」
そう――、時空の裂目の中で見た、別世界の光景だった。
『ではここは――』
「あの時に見た鋼の戦争の世界!」
二人は衝撃を持って受け入れざるを得なかった。
夕闇の大地を、向こう側から進軍してくる巨人たちがいる。
「巨人? ギガンテス? 違う――まるでゴーレム――」
否、巨人と呼ぶには生物のようなしなやかさに欠けていた。
だが、それが歩むたびに大地がひしぎ、瓦礫を砕き、地響きがカリナのところにまで響いてくる。
呼吸のような躍動感はなく、重く低く響くような唸り声ともつかない響きが、闇夜に広がっている。
何より、それは銃砲兵士の軍勢のように銃器のごとき〝武器〟を所持していた。
その巨躯と武器は、夕暮れの赤い光と月光に、重たい金属のような輝きを放っている。
「鋼のゴーレム?」
思わずつぶやくと同時に巨人たちの〝武器〟が轟音とともに閃光を放つ。
――ヴォオオッ!――
そして、カリナの頭上を一条の光線が飛び交った。
「なに? 雷光魔法? 収束火炎魔法?」
光線が飛んでいったその先で爆発が起きた。鋼鉄の塊のようなシルエットが吹き飛んだのだ。
「え? 砲撃戦? 陸上で? 海の艦隊戦並みの砲撃じゃない! あんな兵器見たこと無い!」
状況は彼女の認識の力を遥かに超えていた。
見知らぬ戦場の真っ只中で、カリナは呆然とするよりほかはなかった。