勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
マイクはトレーラーを操りながらナビシステムのAIに指示を出した。
「ナビ! 現在状況をまとめてブレイブハーツアライアンスに通報! 救援を要請! それとアーセナルコマンドの戦闘部隊が常駐しているポイントへの最短ルートを算出!」
『了解、現在地点と敵クロムハウンド3個体との遭遇をブレイブハーツアライアンスに通報します』
さらにそれと同時にナビのマップ画面に最寄りの戦闘部隊常駐ポイントが複数映し出された。
「ここから一番近いのは5キロ先の――ここか」
最寄りのポイントを探し出すとそこへの道を探る。幸いにして旧時代のハイウェイが残存しており、そこを走ればなんとか逃げ切れそうだ。マイクはトレーラーを運転しながら、追ってくる追跡者への対処を淡々と進めていた。
その傍らではカリナが、命の危険も考えらえれる切迫した状況を不安げに守っていた。そんなカリナにマイクは言う。
「ごめん、とんだことになって。まさかこんな、大規模都市の近くにまで
詫びるマイクだったが、カリナは彼を責めなかった。
「ううん、しかたないわよ。想定外の遭遇戦なんていくらでも起こり得るもの。それより――」
カリナはトレーラーのキャビン後方ののぞき窓から背後の状況に視線を向けた。
「なんとかアレを振り切らないと」
「あ、視認できるほど近づいてる?」
「うん、もう目と鼻の先、ものすごい勢いで走ってくる」
そのカリナが眼にしているものは、聖剣レギオンブレイドの精霊であるエリュシオにも見えていた。
『マスター、形状的にコカトリスや
「走行に特化した2本脚タイプね、視認性の良い頭部といい、非常に理にかなっているわ」
『ですが、追いつかれると厄介です。毒や雷撃、あるいは火炎放射による攻撃が想定されます』
「そうね、敵が接近しても手を出せないように策を講じないと――」
エリュシオと語り合うカリナに、マイクは不思議そうに問いかけた。
「カリナ姉ちゃん、何と話しているの?」
隠しても意味はない。素直に打ち明けた。
「これよ、私の愛剣、精霊がやどっているの。今までの戦いでも助けられたわ」
『エリュシオと申します、お見知りおきを』
「あ、よ、よろしく――」
精霊という存在を前にして少し驚いたようなマイクだったが、すぐに冷静さを取り戻す。
「正直追いつかれてタイヤを破壊されるのが一番困るんだ」
「タイヤ?」
「車輪だよ、特に後ろの2軸は一番重要だ。エンジンとつながっているから。そこがどちらか片方やられたら走れなくなる。そうなれば終わりだ!」
その時だ――
――ヴォオッ――
トレーラーの車両の右側を炎が通り過ぎた。
「えっ? 火炎放射?」
「ナパームだ! 焼き殺すだ!」
状況はさらに切迫した。防御能力の低い物資運搬用トレーラーでは対処にも限界がある。
「単なる偵察型と思ったけど――」
『明らかに危害行為を想定しますね』
「まずい、まずいぞ」
マイクは明らかに焦りを浮かべていた。トレーラーを燃やされたらそこでアウトだからだ。そんな状況の中にあってカリナは冷静だった。いや、危機的状況に迫られると人格が変わったように真剣になっていた。
「マイク、ここから後ろの荷台に出ることできる?」
「え? 可能だけど? キャビンの後部中央に脱出ハッチがある。そこからなら行けるけど」
「これね?」
教えられるがはやいかカリナはハッチを開けた。
「えっ?! なにするんだよ!?」
「外に出て防御結界を張る! 敵の攻撃を阻止して生存の可能性を上げる!」
「無茶だ! 揺れる荷台の上から投げ出されるよ!」
「でも、追いつかれたら二人とも助からない! 救援が追いつくまで持ちこたえましょう!」
マイクも流石にカリナの気迫に気圧された。と、同時にその言葉に励まされたのもの事実だ。
「わかったよ、そのかわり、後部荷台の一番前にウィンチワイヤーのリールがあるんだけど、そこからワイヤーを腰に巻いて命綱にして。少しでも落下を防いで!」
ハッチから顔を出せば、その直ぐ側に鋼鉄製のワイヤーを巻いたリールがあった。
「わかったわ。早速始めるわね」
「気を付けて!」
「はい!」
今こそ、カリナは、生き残るために戦う決意をしたのである。