勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
マイクの声を受けながらカリナは揺れるトレーラーの荷台の上に出た。そして指示されたとおりにウィンチワイヤーのリールから鋼鉄のワイヤーを引き出して自らの腰に巻きつける。そして、とりあえずの安全を確保してそのまま荷台の上を最後尾まで張って進む。そのカリナの視界の中では3体の高速2脚歩行型のクロムハウンドが間近に迫ってきていたのだ。もはや猶予はなかった。
「はじめるわよ! エリュシオ!」
『心得ました、マスター』
揺れる荷台の上で慎重に立つと、左腰に下げていた鞘から剣を取り出す。愛用する聖剣レギオンブレイドだ。
「エリュシオ! 防御結界展開! 魔導攻撃は考えられないから物理攻撃特化で!」
『了解しました、防御結界展開します』
エリュリオと言葉をかわしてカリナは剣を掲げた。そして――
「防御結界陣! 展開!」
カリナの詠唱を受けて、レギオンブレイドはその刀身を輝かせる。そして鈴の音が鳴るような音を響かせて光の障壁を生み出し始めた。
――キィィイイイイインッ――
かたやトレーラーに追いすがってくる3体のクロムハウンド、カリナの防御結界魔法を目の当たりにして戸惑う様子が見られた。彼らの認識の中では理解しきれていないのだろう。防御結界はこの世界の物理事情では有りえないモノだからだ。
だが――
「来る!」
『火炎攻撃です、ご注意を』
――ラプタータイプのクロムハウンドは追撃の手を緩めなかった。2体が火炎攻撃を継続し、1体が更に走る速度を上げて、トレーラーに食らいつこうとする。
――ヴォオッ! ヴォオッ!――
火炎攻撃2連を防ぎ切り、その後に残る1体の体当たりを受け止める。
――ギィインッ! ギィインッ!――
足の長い鳥のようなシルエット――、その頭部を打撃用のハンマーの如くに振り回して防御結界に打ち当ててくる。それらの連携攻撃をカリナは必死に受け止めた。
「なんて強い打撃力! 火炎攻撃も熱量が半端ない! くっ!」
強力な防御結界を張り巡らせていても、防御結界を超えて火炎の熱は伝わってくる。それも火傷しそうなくらいに。
「熱っ!」
それに足場は揺れる走行車両の荷台だ。振り落とされないように踏ん張るのも一苦労だった。
『マスター、大丈夫ですか?』
「大丈夫! これくらい!」
カリナはそれでも踏ん張った。自分のみならずマイク少年も生き残るには、ここを守りきらねばならないのだ。それでもなおクロムハウンドは諦めずに追撃を継続する。
――キイィイイイイッ!――
怪鳥の如き声が轟く。それと同時にラプタータイプのクロムハウンドは再度防御結界への体当たりを試みてきた。
――ギィインッ!――
さらに畳み掛けるように火炎攻撃の2連だ。
――ヴォ、ヴォオッ!――
ここでもなんとかカリナは食い止めた。だが――
「魔導が無くてもなんて力! 阻止しきれない!」
さすがのカリナも焦りを感じ始めていた。その間にも敵の攻撃に変化が生じ始めた。
――キイッ!――
後方に下がり火炎攻撃をしていた2体も進み出てきた。そして、3体そろっての体当たり攻撃へと移行したのだ。
――ギィインッ! ギ、ギィインッ!――
防御結界を物理的な障壁と認識したのか、物理的に殴り続けることで叩き割ろうとしているのだろう。3体の頭部を何度も狂ったようにぶつけてきた。
『火炎放射よりも物理攻撃のほうが、効率が良いと判断したと思われます』
「ただの機械じゃないってことか!」
その猛攻の前にさすがのカリナも心が折れそうになっていた。その時、運転席からマイクの声が聞こえた。
「カリナ姉ちゃん! 救援の連絡が来た! もう少しで来るよ!」
救援の知らせは希望の知らせだった。
「分かった!」
希望が見えたなら、勇気が湧く。折れそうになっていた心は燃え上がった。
「この結界! 破らせるものか! はぁああっ!」
腹から力を込めて気合を入れる。自然に聖剣へと込める力は勢いを増す。そしてその勢いは、周囲に展開されている防御結界へと力を及ぼした。
――ギィッ?――
ラプタータイプのクロムハウンドは防御結界の変化に戸惑っていた。さらには、その頭部を叩きつける物理攻撃は防御結界に弾き返されていた。
戦いは結着を付けつつあった。