勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
そして――
――ゴォオオッ!――
カリナたちの頭上を5機ほどのヴァンガード機体が通り過ぎていく。ローターレスのジェットスラスターヘリにより空輸されてきたヴァンガードだった。それが絶妙なポイントで地上へと投下され、ラプタータイプのクロムハウンドを包囲する。
「救援が来た!?」
『マスター、どうやら守りきれたようです』
走り続けるトレーラーのはるか後方、そこでクロムハウンドとヴァンガードが戦闘を開始している。だが、激戦にはならずヴァンガードからの一方的な攻撃に終始しているのが見えた。安堵する気持ちとともに防御結界は解除される。
『お疲れさまです。魔導防御結界を解除します』
「うん、ありがとう。エリュシオもお疲れ様――はぁ――」
落ち着いて答えつつも、トレーラーの荷台の上にて思わず座り込んでしまう。カリナの全身を強い疲労感が襲う。そんなカリナにマイクの声がする。
「大丈夫? カリナ姉ちゃん?」
「うん、なんとか」
自然にトレーラーの速度は落とされ、車体の振動も落ち着いていく。荷台の上を這うようにして移動するとトレーラーのキャビンへと戻ってきた。
「お疲れ」
「うん、マイクくんもね」
剣を鞘に収めて左腰に戻す。そして助手席に座り直すと背もたれに体を預けた。思わず変な声が漏れた。
「はぁああ――」
「ちょっと、大丈夫?」
「うん、平気、ただちょっとだけ疲れたかな」
カリナがそう言った理由に、マイクは気づいていた。
「そうだね、カリナ姉ちゃんにとって、今までにない戦いだっただろうから」
「分かる?」
「うん、なんとなく」
まさにその通りだった。未知の敵、未知の戦い――
「やっぱり、この世界での戦い方を身に着けないといけないな」
「うん、そうだね」
カリナはキャビンの後ろ窓から外を眺めながら答える。
「うん、やるわ。絶対に」
それはカリナにとって覚悟を示す一言だ。こうしてカリナとマイクは危機的状況を無事に回避したのだった。
すると――
ジェットスラスターヘリの一機が地上へと着陸した。何事かと見ていれば、以外な人物が現れたのだ。
「カリナ! マイク! 大丈夫か?!」
その声をカリナは知っていた。
「ジェイさん!」
「兄貴!」
カリナもマイクも喜んでその名を呼んだ。急いで駆けつけてくるジェイにカリナは、聖剣を左腰に収めると、車上から飛び降りて駆け寄る。
「来てくれたんですか?」
「あぁ、ローミングタイプの目撃情報があってな、上空からの偵察に駆り出されたんだ」
ジェイはマイクのトレーラーの状況を上空から見ていた。車両の後部は大きく破損し、走行不能になるまであと一歩――
「ギリギリの戦いだったようだな」
ジェイはカリナの肩を叩きながら言う。
「よくやった」
そして、力強く抱きしめてくれた。
「ジェ、ジェイさん――」
突然のことに戸惑うカリナだったが、遠慮するジェイではない。マイクも車両状態をたしかめながらトレーラーから降りてくる。
「兄貴、カリナ姉ちゃんが頑張ってくれなかったら、俺たち生きていなかったよ」
「あぁ、こんな都市近郊でクロムハウンドに遭遇するなんてのがレアケースだからな、生き残って何よりだよ」
ジェイが心から安堵しているのがわかる。それほどに危険な情況だったのだ。
かたや、カリナは男性にここまで抱きしめられるというのは生まれて初めての事だ。背丈が伸びてからはなおさらだった。その力強さとたくましさに、カリナは思わず夢見心地になる。
「そんな、わたし無我夢中で――」
「でも、君が戦ってくれたから生き残れたのは事実だ。
そして、抱きしめているカリナをあらためて褒め称える。
「よく頑張ったな。偉いぞ――」
「え?」
それは初めて聞く言葉だ。〝偉いぞ〟――それは褒めるという言葉だ。
「ありがとう――ございます――」
半分、震える声でカリナは答えた。そんなカリナの背中をジェイは優しく叩いた。
そこから帰路は、カリナはジェイと一緒に縁に乗り込むことになった。マイクはトレーラーを行きつけの整備屋に持ち込まなければならない。修理しないと仕事に使えないからだ。
「カリナはブレーブハーツアライアンスに一緒に来てくれ。臨時戦闘について報告を上げないといけないからな」
「報告と証言ですね? わかりました」
そして、振り向きマイクにも告げる。
「マイク君、ありがとう助かったわ」
「何を言うんだよ。助かったのはカリナ姉ちゃんのおかげだよ。お礼を言うのはこっちさ。とりあえずジェイの兄貴とゆっくりしなよ!」
マイクはそう言い残すとトレーラーを走らせて去っていった。それを見送り、ジェイはカリナに肩を抱いて歩き出す。
「さ、帰ろうか」
「はい!」
ジェットスラスターヘリへと乗り込むと、二人はイスタンボールへと向けて飛び立ったのである。