勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
しかしそこから先は習得の速さが徐々に加速していった。
トゥェンティ・シークエンスの前半、機体制御編――
第三段階の基本歩行訓練を終えると、そこから先の教程段階は一日で複数の段階を終える程の勢いでこなし始めたのだ
「あっ、そうか――」
カリナは何やらコックピットの中でつぶやき始めた。
「馬に乗って手綱を握る時と同じだわ――、頭で考えるんじゃなくて、体に覚え込ませる――、丸暗記しなきゃって思い込みすぎてたわ」
第4段階の段差・斜面踏破訓練教程をこなしているその途中でおもむろに呟いたのだ。
「うん! 今なら見える! 何があるかどこをどうすればいいか!」
カリナは恐怖を乗り越えてヴァンガードの機体を前へと進ませた。
第4段階は斜面を登ったり降りたり階段状の構造を乗り越える操作を行う。ちょっとした斜面がそびえ立つ壁のように見えていた。だが恐れずに脚部のペダルを直接眺めずに操作する。
「姿勢制御はオート、ボディバランス安定作動、脚部障害物センサーオン――前方視界は――直視・レーダーともにクリア」
足回りの操作は前後左右にさせる方式のペダルが右足左足それぞれに存在している。これを足で踏んでスライドさせて操縦する。両足のペダルを同時に前へと進ませることで機体が前へと進むのだ。
「よし! 足元の傾斜が変わり始めるところ――うまくいった! このまま少し加速して」
カリナが操作するままにグリーンドワーフは忠実に動いてみせた。緩斜面を乗り越えて、急斜面も難なくクリアして見せた。
「行ける! もう怖くない!」
すると機体の外からジェイが呼びかける声が聞こえた。
『カリナ! よくできた! 今までと動きが違うな。〝コツ〟を飲み込んだか?』
「はい! 頭で考えてやっていたのが、どこに何があるかどうすれば動いてくれるか急に見えるようになったんです」
『壁を超えたな! その感覚を身に付けられるかどうかで、ヴァンガード乗りとしての才能に差が出てくるんだ。それじゃあ今日中にどこまでできるかやってみようじゃないか』
「望むところです」
ジェイの言葉にカリナは勢いよく答えたのだった。
そして第5段階・走行/加速操作訓練を境に、カリナは教習課題をほぼ一発でクリアするようになっていった。
急制動と緊急回避――跳躍制御訓練――空中姿勢制御――障害物突破演習――
ここまでを開始5日までクリアした、そしてその日の夕暮れすぎカリナ本人のたっての希望で、教習前半の締めとなる複合移動訓練に挑もうとしていた。
訓練場所は、エレナのガレージの裏手近くにある資材置き場兼、廃棄物置き場だ。そこで、通過ポイントを複数設けて、そこを順番にクリアするのだ。
『カリナ、本当にやるのか? もう夕方五時だ、足元も暗くなるぞ?』
「いえ、やります。心と体が、勢いが出ているんです。このまま突破します。それに戦場では昼だ夜だと言ってられませんから」
『よく言った! だったらやってみよう! 教習工程前半の締め! 移動コースのデータはグリーンドワーフの情報統制AIにすでに送ってある。そこに表示される7つのチェックポイントをクリアしろ!』
「はい! それでは〝複合移動訓練〟開始します!」
カリナは眼の前の〝戦場〟に望んだのだった。
――結果から言うと、複合移動訓練は成功だった。
設置された資材を傷つけること無く通過し、障害物とした廃棄ヴァンガードの機体を見事に乗り越え、開けた場所では加速走行し、跳躍、機体背面にある高圧プラズマガスの噴射による簡易飛行もこなしてみせた。高さ3mの段差も一気に乗り越えてみせた。
――ガシイインッ!――
高い段差を乗り越えて、飛び降りたとき、地面を響かせて、グリーンドワーフの機体の脚部が衝撃を吸収した。そして、残りは一気に走り出す。
「あ! 障害物!」
前方視界のスクリーンとレーダーマップに赤い光点で、不意に飛び出してきたドローンが複数感知できた。そしてそれを難なく回避していく。
「これ――予定にない! ジェイね!?」
『ほう? 躱したな? これならどうだ?』
物陰から不意に飛び出してきたのはジェイのサイファーブレイクだ。レオン隊長とチームを組んでいるので、同型の機体を常用しているのだ。物陰から飛びかかるようにして接近してきたジェイの機体を、カリナはホバージャンプで飛び越えた。
「浮上!」
――ゴッヴワァアアアッ!――
機体背面と両下腿部に存在する高圧プラズマガスの噴射ノズル、そこからの噴炎の力で浮上し舞い上がる。そして、ジェイの機体を乗り越えて最終チェックポイントにたどり着いた。
――ガシンッ!――
チェックポイントを踏みしめた瞬間、エレナの声が聞こえた。
『全チェックポイントクリア! 基礎機動訓練カリキュラム、終了! よくやったね!』
「はい!」
そして、当然、ジェイからも――
『カリナ! よくやったな! この勢いで後半も突破するぞ!』
「はい!」
ジェイのその言葉が心からうれしかったのだった。