勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
機体の中に収まったカリナに、ルーカスがモニター越しに指導してくれる。
「ヴァンガードにおける格闘戦は操縦方式によりできることに違いが生まれるが、一般的なレバーコントロールの機体は白兵格闘戦闘のアクションをプログラムで再現、AIが補助補正し、操縦者はレバーコントロールで攻撃タイミングや微妙なアクションを補正することとなる」
「終わりましたマニュアルに従いやってみます」
いわば旧時代の格闘アクションのテレビゲームに近い。それでもカリナは操縦のコツを見抜いて瞬く間にヴァンガードにおける格闘戦闘をものにしていく。射撃訓練時の不手際と比べれば驚くほどの違いだった。
ターゲットドローンをルーカスが制御しつつ、接近し、カリナはそれを訓練用の白兵戦闘武装である無動力ダガーナイフで反撃していく。あくまでも訓練なので命中させればよく、破壊まではしなくていいルールだ。同時に6機のドローンで攻撃するルーカスだったが――
『嘘だろ? 一振りの攻撃で3機を同時ヒット?』
たとえレバーコントロールであっても、ダガーナイフの切っ先を精密コントロールし、瞬間的に複数の目標を連鎖攻撃して見せる軌道を見抜いたのだ。残る3機もダガーナイフの返す動きで連鎖ヒットさせる。コントロールレバーを介した操縦なのにまるで人間が直接ナイフを振るっているがような動きだった。
「次、お願いします!」
疲れたそぶりもないカリナに対してルーカスは本気になった。
『だったら1工程飛ばすか』
格闘戦闘教習の第2段階は回避行動を伴う攻撃だ。ルーカスがギャリソンヘクスブレードで直接攻撃してきたのだ。
『そっちの行動を直接抑えに行くぞ』
「望むところです」
ギャリソンのサブアームが展開され6脚歩行で巧みに接近し、全方位に隙の無い動きでカリナのグリーンドワーフに近づいていく。だが――
「AI! ナイフ型武装放棄! 徒手格闘の戦闘プログラムを選択して即時起動!」
『了解、軍隊格闘術のマニュアルプログラムを起動します。脚部ペダルで接近、左右のコントロールレバーでマニュピレーターを制御しトリガーで掴みます。胴体体勢はこちらでアシストします』
「支援よろしく!」
早くもカリナはAI支援による戦闘の呼吸を掴みつつあった。そして、予想外の方向から攻めてくるギャリソンを躱しつつ、コマンドサンボやレスリングの様なフットワークを再現しながら一気に懐に飛び込む。
「そこっ!」
カリナは小柄なグリーンドワーフの機体を逆に活かし、ギャリソンの胴体下部に滑り込むと左列の脚3本を同時にホールドしてみせた。
「もらった!」
そしてとどめとばかりにギャリソンの機体を持ち上げようとした――
『待った! ちょっと待ってくれ! まいった! 降参だ!』
実際、ギャリソンの機体は2mほど持ち上がっていた。そのままだと間違いなくひっくり返されていただろう。
ルーカスが焦った声を出してもカリナはなかなか止まろうとしなかった。
「人格が完全に
見かねたエレナが外部から強制介入して動きを止めた。
『カリナ! 止まりな!』
エレナのその言葉を聞いて我に返ったように動きが止まった。外部からの強制操作でギャリソンを下ろすと、そのまま後方へと下がらせる。そして中から慌てたようにカリナが飛び出してきた。
「すみませんやりすぎました! 大丈夫ですか」
ギャリソンの中から姿を現す。
「ああ、問題ない。たださすがに驚いたよ」
「私もだよ。事実上の訓練用、軽戦闘用目的の機体でここまで動きを見せるとはね」
「射撃訓練の時とは全く別人だ。しかもレバーコントロールだろ? どうやったらあんな動きになるんだ」
2人とも驚くことしきりだった。
「えと、ルーカスさんに教えられた通り、AIにサポートしてもらっただけなんですけど」
その言葉が2人を2度驚かせた。
「一発で行動目的に似合うAIサポートを引き出したってわけか」とエレナ、
「しかも格闘戦闘しょっぱなですよ」とぼやくルーカス、
「こいつはとんでもない逸材を引き当てたのかもしれないね」
そう言われても何を言われてるかカリナにはさっぱりわからなかった。