勇者カリナ/未来戦線クロスロード ―魔王を倒した少女は、AI戦争の未来世界で、聖剣精霊と豪剣人機とともに人類を救う― 作:美風慶伍
そして、荒涼とした戦場の大地を眺めながら、装甲オフロード車両に揺られて、イスタンボールのシリウリの街へと戻った。
「只今戻りました」
「おかえり、大丈夫かい?」
無事に帰還したカリナをエレナは不安げに迎えてくれた。
「はい、無事にお別れいたしました」
「そうか、それは良かった」
そして、自室へと向かうカリナのそばには、彼女を案じるルーカスが寄り添っていた。どん底の心理状態から持ち直したとは言え、やはりまだ、心の奥底に不安は隠しきれない。そんな自室でソファに腰を下ろすカリナにルーカスは告げた。
「カリナ、訓練だが2~3日休みにしよう」
「え?」
「疲れているだろう?」
「はい――ですが――」
カリナは聖剣を手に立ち上がる。
「戦える姿を見せて、ジェイさんを安心させてあげたいんです」
「そうか――」
ルーカスはカリナの覚悟の程を悟った。そして、
「ならば今日一日だけ休め、指導教官として命令だ。そして、明日から正式に再開しよう」
「はい」
こうしてカリナは再び立ち上がったのだ。
§
何もしない、何もできずにボーっとする――
でもそれはカリナがいちばん苦手な行為だった。
「落ち着かないな――」
そう呟いて、左腰にレギオンブレイドを下げて自室から出る。そして、意味なくエレナのガレージの中を散策する。エレナのガレージは3機同時にメンテナンスができるハンガークレーンセットが並び、それが屋根付きの工場母屋の中にある。外は屋外作業場であり、裏手はサブガレージや廃材置き場になっている。そして、その更に裏の離れの建物に気づいた。
「あれは?」
高さは低いがヴァンガードが複数丸ごと入る大きさが有る。ただ、シャッター扉は固く閉じられており。中になにが有るかはわからない。
『マスター、閉ざされている扉です。エレナ様に無断で近づくのは――』
「うん、わかってる」
そう、答えつつもカリナの歩みは止まらなかった。並んだシャッター扉のさらに左端にノブ付きの片開きの扉がある。ダメ元でノブを握って回せば――
「あ、開く」
――鍵はかかっていなかった。恐る恐るに中に入れば、そこには一体の
「これは――未完成のヴァンガード?」
『そのようです。しかも〝剣〟を装備しています。手足や胴体のバランスから考えて、完全に近接白兵戦闘を重視した機体です』
「白兵戦専用機体――」
それはカリナにとっては衝撃だった。その未完成の機体の周囲をまるで取り憑かれたように歩いてみる。
「剣は腰の後ろ、普段は畳まれてるんだ」
『収納を重視しているのでしょう。それと、両腰から副腕のように伸びているものがあります――途中から砲身のようになっていますね』
「遠距離攻撃兵装――おそらくビーム砲だわ。両腕で剣を使う事を専念する代わりに、両腰の位置に銃砲武器を装備したのよ」
『ユニークな構造ですね。ですが、人でなく機械である以上、こう言う構造も許容されるのでしょう。操縦するなら、剣を人間が、AIがこの稼働銃座を制御する物と思われます』
「わたしなら――相性良さそう」
『同意します』
「でも、なんでこんなところに?」
カリナが疑問の声を漏らすのと同時に、聞こえてきたのはエレナの声だった。