【アユト】
約1年前に初ログイン。これといった推しはいる様子はなく、友人同士の遊び場として活用。ログインだけして終わる日もあるのでのめり込んでいる訳ではない様子。
あと分かったことはどうやら彩葉と同じ学校に通っていること。でも名前を聞いたことはない。本当に今回のライブだけの関係なんだろうか。
なんか色々考えてたらムカついてきた。あいつは現実世界に干渉できる、私は見守ることしか出来ない。逆に言えば【ツクヨミ】にログインしていない間はあいつの独壇場……
「そうだ、そうだよ!その方法がある!」
良いことを思い付いたように意気揚々とパネルを操作し始める。その様子を傍らに見るFUSHI の表情は難しいものだったが、勇気を出して声をかける。
「ヤチヨ、あいつとのコラボ配信どうするの?」
「あー……そういえばそんな体だったっけ。チャンネルも持ってないのに何しようか」
「それなんだけど面白いのを見つけたんだ」
FUSHI の目から投影されるホログラム映像。それに記載されたアカウントを見てヤチヨは目を丸くする。
「これ、あいつの?」
「前のアカウントみたいだけど、まだ生きてるみたい。もしかしたらゲーム専用じゃないかな」
「へぇ」
ヤチヨは悪い顔をしながらどこかへ連絡を始めた。ホログラムの投影を切り、FUSHI は【ツクヨミ】の城下町を見渡す。
「【32%の一致が確認】か……なんて伝えようかな」
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いつもの登校時間よりずっと早い時間にバスに揺られている。今日は初の行事である校外学習ーー遠足だ。
表向きは歴史の勉強のようだが、目的地が漁港に近い観光場所に設定されているので完全に遊びに来ている。
時間を見る限り旅も順調に進んでいる。このまま行けば想定より早く着いてより時間も取れる。
そんなことを考えているとスマートフォンに着信が入った。画面には見たことのない番号が表示されている。
そのまま無視してバイブレーションが終わり、番号検索を行おうとするとすぐさま同じ番号でかかってきた。知り合い……か?
もう一回スルーするとまた同じ番号が入る。本当になんかの知り合いかもしれない。
「もしもし?」
『ヤオヨロー!』
第一声を聞いた瞬間、反射的に通話を切った。何今の悪質な通話。
「今ヤチヨの声しなかった?」
「え、さ、さぁ?」
隣の席のクラスメイトは頭を傾げるがそれ以上聞いては来なかった。むしろ通話なのになんで隣まで聞こえる程の声出せるんだ。
そしてまた電話がかかってくる。通話音量を最小限にして通話に出る。
「あとで掛け直すから」
言いつけてまた通話を切ると通じたのか鬼電は収まった。何を考えているのかーーそもそもなんで電話番号知ってるの?
『ヤオヨロー』
「こっちも暇じゃないんで一回で出てくれませんかね」
一時休憩のパーキングエリアに到着し折り返し電話を掛けること3回。ようやく電話に出た相手はさっきよりもテンションは低めだった。
『急とはいえ2回もスルーされたらねぇ、いじわるしたくなるもんでしょ』
「さいですか……一応、敵対してる認識で間違ってないよな?」
『ヤッチョはそんな風に思ってないよ』
思ってたら電話なんてしてこないか。
「じゃなくて、なんで電話番号知ってんだ」
『こちらの電話番号は商品発送に使用され、それ以降は破棄させていただきます』
自動音声の声真似のつもりか……
『冗談は置いといて、この間の暗号解読の話。コラボ配信なんだけどどうしようかなーって。こっちで決めちゃっていい?』
「面倒なもんじゃなければ」
『オッケー。それよりさ……今、学校にいないよね?』
「え?あー、い、いるよ?」
挙動不審に周りを見るもそれらしいのは見当たらない。そもそもあいつライバーだしーー
「……GPSか」
『ピンポーン!言っとくけど他の生徒のSNSも巡回済みだからこれから何するかとかどの辺にいるかとか大体分かるからね』
これもう犯罪だろ。じゃあ四六時中自分の行動見られてるってこと?ヤンデレかよ。
『じ・つ・は~ヤッチョから一つお願いがありまして』
「断る」
『お、個人情報ばらまいちゃうぞ?』
イカれてる。こいつ本当にイカれてる。
「無理のない範囲で」
『それはもちろん。それでは~』
「…………」
「お待たせ芦花~何見てるの?」
綾紬芦花が見つめる先には電話をしている歩人。騒がしく電話している姿が少し奇妙に見えていた。
「あれが真実が言ってた奴?」
「富士君ね。作戦は分かってるよね?」
「彩葉と仲直り大作戦、だっけ。なんで真実が肩入れする訳?」
「ん~……なんか不器用なところがあるから、かな?あとカップル割してくれたから」
真実並みの相手なら喜んでしてくれる男子は多いだろうというのはとりあえず置いといて。
実際、真実が彩葉に近づくためにテスト勉強を利用したのは事実ーーというより彼に頼ろうとしたらもっと難しい勉強してたので話しかけにくかったのがあるけれど。私も学年2位の彩葉を頼ったのは本当だし。
「ところで当の本人はーー真実?」
隣にいた彼女は一人でとことこ富士の元へ向かっていく。あの子って結構マイペースなところあるかもしれない。
「富士くーん」
「だから……っと、諫山さん?」
「もうすぐ出発だよ。誰と話してるの?」
「えっと……あ、姉貴!お土産買ってこいとかうるさくて」
通話中の電話を咄嗟に隠す。【ツクヨミ】のトップと話してるなんて知られたら目立って仕方ないだろ。
「お姉さんいるんだ」
「そうそう。自分と違って騒がしいし勝手だし面倒臭いけど」
「真実ー!」
「芦花?」
「ほら、早く行くよ」
「うん。じゃ、また後でね」
なんか2人でこそこそ話をしているようだけど……また後でって班行動だから違うよな?
疑問を感じながらヤチヨのことを思いだし通話を続ける。
『誰が姉貴だ』
「こっちから願い下げだ」
嘘でも言ってしまった自分を呪いたい。
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目的地の静岡に到着した。ここから先は自由行動だが、一応校外学習の面も兼ねているので施設とか行ってレポート提出することになっている。
『1人でバスに揺られて~』
「自分の勝手だろ」
勝手とは言うものの、実際は各クラス別れて地域を探索しレポートに纏めるもの。題材はなんでもいい。で、取材が終わったところから夕暮れまで好きな観光をする。
自分が来たのは指定された地域からは外れた場所のとある資料館に向かっている。
『一人寂しい遠足なんてヤッチョは望んでないんですけど』
「んなもん知るか……あまり動くなよ」
画面通話状態でスマホがぶら下がってるので、端から見れば壁紙をヤチヨにしてるファンにしか見えないと思うが……声はイヤホンに繋げてあるから漏れないし。
目的地に到着し、見えてきたのはーー【かぐや姫資料館】。地元に住んでいる時は片手で数えるぐらいしか来たことない。
地域によっては色んな童話が所縁になっているが、静岡にある富士山の頂上にはかぐや姫が別れの際に手渡した不老不死の薬を帝が投げ捨てたなんて話がある。もちろん悲哀的な意味で。
何かしらの対抗になるヒントはないかと来てみたがーーそもそも【竹取物語】が事実だとしたら不老不死の薬、もといそれに至れる方法が月にはあるということだ。完全勝利は不可能と見て間違いない。
『…………』
騒がしかった声が無くなった。重要な資料スペースは撮影不可なのでメモしながら館内を回っていく。にしても本当に静かになったな。
「おい?」
『……ん?なに?』
「いや、何でもない。通話が切れてないかの確認」
ふと、竹取物語をアレンジした映画を思い出す。確か地球に憧れた罰として月から降ろされたとか、そんな設定だったか。そうじゃなきゃわざわざ地球に来る理由もない。
改めて思うがヤチヨがここに来た理由が見当たらない。かぐや姫が創作じゃなくて事実とするなら、月人も不老不死に近い者。それを前提にするならわざわざ地球調査も必要ない。月だって生命体が生き抜くには過酷な環境だ。
資料館のイラストは、最後に月へと帰っていくかぐや姫が描かれている。妥当に考えるなら服役が終わったから連れて帰るとかか。
「(……無期懲役?)」
嫌な単語が浮かぶ。不老不死の無期懲役だとしても、コイツは二度と月に帰れないってこと?
「富士?」
肩を叩かれて振り返ると、見覚えのない女子生徒がいた。いや、確かさっき諫山さんと話してたような気もする。
「真実からは何も聞いてない感じだね。私は綾紬芦花。彩葉と同じクラスで……それよりなんでいるの?地域違うよね?」
「……こっちの課題が片付いたから来た。うん、そう。」
レポート全部書くことを条件に離れたのは話さないでおこう。
「なんか間があったけど……いっか」
「芦花、そっちはもうーー」
「酒寄さん。同じ班なのか?」
「そうーーそうだ。片付いたならこっち手伝ってよ」
「え?」
「学年1位と2位がいればより良いレポートも書けるし、ね?」
半ば強引に連れられて行く。ヤチヨの通話状態、バレてないよな?
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酒寄さんと綾紬さんの班と一緒に回ることになり、一通りの情報収集が終わった。
途中で班の人が携帯画面に気づいた時は焦ったが、待ち受け画面で押し通して一旦通話を切った。
で、時間は昼時。今は元々の班メンバーと酒寄さん、そして諫山さんのいる班の3つが合体している状態。合計12人は多くない?
『女子組に混ざってこい』
「は?」
『ガールズトーク!』
8000歳が何を言う。お願いだからさっきみたいに黙ってて。
「富士」
「なに?」
「お前さ……諫山さんと仲良いけど、どうなの?」
「どうなのって……別に何ともないよ。タイプじゃないらしい」
「そっか……そっか。わかった」
何がわかったのかさっぱりだが、解決したならいいか。
『こっちも意外と面白いかも』
ヤチヨの発言の意図が読めずにいると、話をしていた諫山さんがこっちにやって来た。
「富士君ってここが地元って言ってたよね?どこか穴場とか知らない?」
「穴場ね。確かーー幸紀?」
「ん?」
見覚えのある姿があった。思わず声を掛けると、ソフトクリーム片手にこっちに振り返った。
「丁度よかった。じゃなくてお前学校は?平日だろ」
「なんでいるの?!」
こっちが聞いてるんだが。
「課外学習。そっちは?」
「え、テスト終わりで店の手伝いがあるからお休み貰って」
片手に持つ袋を見せる。てっきり学校嫌になって不良になったかと思った。
「その様子だと店開いてそうだな。12人行ける?」
「12?座敷が空いてるかどうかだけど」
俺を見越して後ろにいる制服の集団を確認する。すぐ後ろの諫山さんと目が合ったのか、笑顔で会釈した。
「え、あ……そ、そちらの方は?」
「友人の
「そ、そうなんだ。ちょっと待ってね」
諫山さんはそそくさと他のメンバーと合流して何か作戦会議を始めた。
「ビジュ120点のイケメンが出てきたんだけど?」
「帝一筋の真実でも思うんだ。私達も思う」
「類は友を呼ぶってこと?」
「彩葉、芦花。偵察!」
「「えっ」」
真実とその他全員から背中を押され並び立つ。
「初めまして。もしかしてどっちかが酒寄さん?」
「え、あ、わ、私です……」
「へぇ~……美人さんだね。歩人がお世話になってます」
『(彩葉が緊張してる……帝と違うベクトルとはいえ、見たことない
でも見方を変えればヤッチョと似てるか……?いや、タレ目くらいしかないか。でも明らかに女慣れしてる感じもあるし、取られる……?!
「同性相手にそんな緊張しなくても。そんなに人見知りだったっけ」
「人見知りって……同性?」
「え、違うの?」
芦花の問いかけに幸紀は少し驚いた表情をする。
「初見で見破られたのは初めてだよ。勘違いされっぱなしだったら黙ってようと思ってたけど」
「いい性格してるね。私は綾紬芦花。よろしくね」
「綾紬芦花……もしかして美容インフルエンサーの?」
「おっと、まさかのフォロワーさん」
「動画、参考にしてます!あまり聞かない名字ですよね。リアルでも美人さんなんて羨ましい」
勝手に意気投合した様子で歩き出す2人。あの、自分の立場はどこにいきました?
5000字近くになったので中途半端ですが切ります。大体何文字ぐらいが読みやすいんですかね