ゴリ押しでS級に至った冒険者、身に覚えのない弟子が多すぎる 作:やーーーーーーーー
俺はパワーである。
名をゴリウス、転生者だ。
もう名前から分かる通り、俺の転生チートはパワーだった。
あらゆるものを力で粉砕し、時に力で再生をもたらす。
パワーとは破壊と再生を司るこの世の真理であると言わんばかりに、あらゆるものをパワーで破壊してきた。
そんな俺も、今年で二十三になる。
冒険者として活動してきた俺は、ついにこの年でS級冒険者となった。
一般的にはかなりの速さでの到達であるが、俺自身の強さを考えると「ようやく」と評価する知り合いもいる。
まぁこれも、転生者でありながらパワーしか持っていない脳筋ゴリラであるがゆえ。
転生者ってもっとこう、工夫とアイデアで強くなっていくものじゃないの?
と思ってしまうくらい、俺の道程はパワー一辺倒だったのだ。
とはいえ、俺にだって自分が問題児であるという自覚くらいある。
あまりにもパワーですべてを解決してしまうせいで、周囲に頭痛の種を撒き散らしていることくらいは、わかっていた。
でもしょうがないじゃないか、そうしないと救えない生命があったりしたんだから。
周りだってそれはわかってくれるから、ため息をつきながらも「仕方がない」と諦めてはくれるんだ。
要するに何が言いたいかというと、俺は決して立派な人物ではなく、周囲の助けを借りながら生きているだけの普通の人間ってこと。
誰かから慕われるようなことをしているつもりはないんだ。
でも、なぜだろうか。
俺がSランクになったあたりから、
俺は決して、その弟子たちになにか大切なことを教えたわけじゃない。
むしろ、ほとんど面識もないような相手も多いのである。
なのにどうして、彼らは俺のことを師匠と呼ぶのだろう。
俺には皆目、その理由の検討がつかないのであった。
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その日、俺は依頼を受けてギルドの倉庫で仕事をしていた。
やっていることは非常に単純で、デカい金属の塊を手にとって――
「ふん!」
――と圧縮する仕事である。
俺が力を込めると、俺の身長と同じくらい――二メートルくらい――あった金属の板が、一瞬にして圧縮されていく。
何度か力を込めると、手のひらサイズの球体へと金属は変貌を遂げた。
「相変わらず、とんでもねー剛腕ですわー! 金属をただ握りしめるだけで圧縮するなんてとんでもねーですわー!」
それを、風魔術で金属を俺のもとに浮かしながら、ギルド職員のオーゼが感嘆の声をこぼす。
オーゼはなぜかギルド職員なのに金髪ドリルのですわ口調なギルド職員だ。
フルネームはオーゼ・ウサマという。
「まぁ、マナメタルの特製でもあるからな。よし、次行くぞ」
「かしこまりですわー! どっすん!」
俺が今圧縮しているのはマナメタルという特殊な金属だ。
マナというこの世界特有の大気中に存在する物質を、特殊な錬金術で固形化したもの。
まぁこれが剣や鎧や、はたまた魔術の触媒に使ったりと非常に便利なのだが、固形にすると最初はクソデカい金属の板になるのが困りもの。
マナを注ぎ込みながら力をかけると圧縮される特性があり、生成されたマナメタルはまずギルドに持ち込まれる。
それを新人冒険者がいい感じに金槌やらなんやらで叩いて圧縮するのだ。
鍛錬に使われたり、圧縮する際に出る御駄賃で小遣い稼ぎをするのに使われる。
まぁ、地味で面倒な作業であるため人気はなく、こうして俺みたいなひましてるゴリラに圧縮依頼が回ってきたりするわけだ。
「ふん!」
「どっすん!」
「ふん!」
「どっすん!」
現在は俺とオーゼの二人がかりで、オーゼが運んだマナメタルを俺が圧縮する作業を繰り返していた。
別に俺一人でやってもいいのだが、なんだかんだ圧縮に専念できると作業効率が段違いだからな。
オーゼの謎の掛け声は……よくわからん。
そうしてしばらく作業をしていると……
「ふん!」
「あっ」
「あっ」
マナメタルが勢いよく弾け飛んだ。
やっべ。
「やっちまいましたわー!」
「やっちまったなぁ」
マナメタルは、普通なら圧縮しても弾け飛ぶことはない。
しかしあまりにも強い力をかけると、こうしてパァン! となる。
といっても本当に強い力が必要で、マナメタルを吹き飛ばすのに必要な力の総量が一万だとしたら、一般の冒険者が出せる総量は十がいいところ。
だが、俺の場合はちょっと本気を出すと出せてしまうんだなぁ、一万。
軽く力を込めるだけなら、俺のパワーは七千くらいだ。
だから、気をつけていればそうそうマナメタルを吹き飛ばすことはない。
けどたまに、勢いよく圧縮していると、勢いが余りすぎてしまうことがあるのだ。
うーん、失敗失敗。
「しょうがない。ちょっと
「ガッテン承知のスケスケですわ!」
「なんかちょっといかがわしいな、それ……」
ともかく、しょうがないので俺はオーゼが距離を取ったのを確認してから、周囲に視線を向ける。
マナメタルだったものが、見るも無惨にあたりへ散らばっていた。
それを確認してから、俺は勢いよく息を
「すぅうう!」
すると、人並み外れた俺の肺活量によって、散らばったマナメタルの破片が口元まで集まってきた。
それを確認した俺は――その破片に向かってマナを注ぎ込む。
結果――
マナメタルはマナの結晶みたいなものだからな、マナを注ぎ込めば再生するんだ。
まぁ、これも莫大な量のマナが必要になるけれど。
「ふん!」
そして改めて再生したマナメタルを圧縮し、作業は完了。
まさか最後の一個で破裂するとはなぁ。
「やりましたわー! お疲れ様ですわー!」
「お疲れ」
もどってきたオーゼがぴょんぴょん跳ねる。
なんとも楽しそうなことで。
俺としても、仕事が終わって何よりだ。
「ゴリウス様に感謝ですわ! ふつー、ゴリウス様みたいな高ランクの冒険者が、こんな難易度が低いけど面倒な雑用みたいな依頼をうけることはないのですけれど、だからこそ盛大に感謝ですわー!」
「まあ、そこは――俺が依頼を受ける基準は、俺のパワーを尤も活かせる依頼であることだからな」
「ありがたいですわー!」
知り合いの中には、高難易度の依頼ばかりを受注し解決する冒険者も多い。
まぁ、難易度の高い依頼をこなすことも、高ランク冒険者の責務の一つではあるだろう。
しかし俺としては、やはり自分にあった仕事を受けるのが一番いいと考えていた。
結果としてこうして、俺にとっては実入りも悪い、受ける冒険者がいなくて放置されていた依頼を受けることもあるということ。
まぁ、それは別にいいか。
ひとまず仕事は終わったんだ。
適当に昼でも食べようか――そんなことを考えたところで。
「や……やっと見つけました」
ふと、倉庫に一人の少女が入ってくる。
美しい白髪の、どこか儚い雰囲気の小柄な少女だ。
教会の修道服を身にまとっており、それは彼女が教会の人間か、あるいは治癒系魔術を修めたヒーラーであることを示している。
ヘソとか出てるしスリットが深いことを考えると修道服は魔道具の類で、彼女はヒーラー系の冒険者なんだろう。
「お、お嬢様みたいですわ……!」
小声でオーゼがなにか言っている。
お前がそれを言うのか……いやまぁ、多分どこかいいとこのお嬢様なんだろうけど。
一体この場になんのようなのだろう。
「……Sランク冒険者、”賢者”ゴリウス様……でお間違いないでしょうか」
「あ、ああ」
賢者、というのは俺の二つ名。
絶対俺にふさわしくないだろ、森の賢者ならともかくただの賢者なわけないだろ、と思うけどなぜかいつの間にか賢者の二つ名が定着していた。
ともかく、少女の言葉を待つ。
すると少女は――
「お会いしとうございました。――
俺のことを、お師匠様だなんて呼称するのだ。
それを聞いて、俺とオーゼは顔を見合わせる。
これでも結構長い付き合いだからな、言いたいことはすぐに分かった。
そして、俺は実際にそれを口にした。
「
……と。
不思議そうに、少女が小首をかしげる。
「ええと……また、とは?」
「ああ……君みたいな子。俺の前に突然あらわれて、弟子にしてくれとか言ってくる子のこと」
「……」
「もう何回目かな。――ここ最近、俺のことを師匠と呼ぶ人間が如実に増えている」
その言葉に、少女は息を呑んだ。
どことなくショックを受けているようにも見える。
ええと……私だけのお師匠様だったはずなのに……とか、そういう?
いやまぁそれはいいんだ。
俺は天を仰いで、吐息をこぼす。
「一体全体、俺の身に覚えのない弟子は、全部で何人いるんだよ……?」
その問いに答えるものは、存在せず。
俺は、どこからともなく現れた弟子たちの相手をするべく迫られる。
これは、脳筋極まりないただのパワーな男と、そんなパワーでしかない俺を師匠と慕う変人達の物語だ。
だいたいパワーで片付くお話です。
脳筋いいよね……