伝説の超ブロリー姫   作:ねこイヌ

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 コンピューターの弾き出したデータによりますと、ブロリーとかぐやは『悪魔と呼ばれる金髪の宇宙人』であり、まったく同じ存在ですじゃ。


第一話 かぐや姫って何だぁ?

 ――今は昔……ではなくて?

 

 

みんなー!!

 

 ――大昔でも超未来でもエイジでもなくて~

 

 

大変なことになったぞー!!

 

 ――今とあんまり変わらない、少しだけ未来の世界。

 

 

地球に謎の物体が落ちてきおったわ!!

 

 ――ハイスぺスパダリ女子高生ありけり。

 

 

 〇 〇 〇

 

 

 今よりちょっと未来、限界多忙ハイスペ女子高生と言ふ者ありけり。母親と離れ一人で暮らして、学び舎で学を修めつつ、電子の海で遊びつつ、アルバイトで生活費を稼ぎつつ、推し活などよろづのことに使ひけり。名をば、酒寄彩葉となむ言ひける。

 

 彩葉って呼ぶべし。

 

 そんな彩葉のいつも通りのある日の帰り道、もと光るゲーミング電ちゅ――

 

『あれれ?』

 

 ――ではなくて、真っ白で丸いサイヤ人の宇宙船ポッドなむ1機ありける。

 

 怪しがりて寄りて見るに、ポッドの扉が開きたり。そこから戦闘力14億ばかりなる黒髪の細く筋肉質で尾の着いた宇宙人が出てきて地面に倒れこみます。

 

「カ……カカロット」

 

 彩葉言ふやう。

 

 

「ん?????ブロリー?????」

 

 

 彩葉とブロリーの摩訶不思議な物語のはじまり、はじまり~。

 

 ○  ○  ○

 

 それから彩葉はとっても大変でした。

 

 突如としてサイヤ人の宇宙船ポッドが動き出し、彩葉たちを残して空の彼方へ飛び出して行きました。残された宇宙人は気を失っているのか、地面に倒れたままピクリとも動きません。

 

 立川の夏の夜道で女子高生と宇宙人の邂逅。彩葉の日常にハチャメチャが押し寄せてきました。

 

 

 ☽  ☽  ☽

 

 

 お巡りさん(110)?  お医者さん(119)

 

 このありえない光景に対し常識的な対応を求められても、3連休前の超ムリ限界ギリな彩葉にはまじ無理なのです。目の前の光景を飲み込めずフリーズしていると、酔っぱらいの声と足音が聞こえてきます。

 

 ハイスペ女子高生と上半身裸で倒れている宇宙人。そんな場面に事情を知らない人が出くわしたら、間違いなく110番です。仮に、警察に事情聴取をされようものなら――

 

「サイヤ人の宇宙船ポッドからですね、サイヤ人が出てきましてですね。それがブロリーなんですよ」

 

 ――正直に事実を答えてもダメすぎます。お巡りさんから病院か保護者に連絡されてしまいます。もし、母に連絡がいけば、京都弁によるお説教の後――『どれだけ多くの人間が迷惑をこうむったか、まだわからんか?やっぱり彩葉は甘ちゃんやからね』――月ではなく実家に戻されてしまいます。そうなれば親に無理言って始めた一人暮らしも終わってしまうでしょう。

 

 母親への苦手意識と疲労困憊による思考の低下からこぉんな最低な将来を思い浮かべてしまった彩葉は、今の生活を守る一心で人目につかないように身長2m超えの宇宙人を抱えたままアパートの階段を駆け上がり、家にたどり着いたのです。

 

 玄関の鍵をかけて、仏の御石の鉢並みの難題を達成し一安心。

 

 ――ではなくて、いろいろツッコミたいことがあるけれど精根尽き果てた彩葉は宇宙人を床に置き、眠ってしまうのでした。

 

 

 ◑  ◑  ◑

 

 

 朝が来て、鳥たちの鳴き声が聞こえてきます。ゆっくりと体を起こしますが、超久しぶりの6時間睡眠でまだまだネムネムな彩葉です。

 

 お布団の誘惑に負け二度寝したくなるも――『明日の自分に恨まれるで』――脳内で再生された母の言葉に目が覚めてしまいました。

 

 渋々起き上がり、ふと鏡で自分の姿を見ると、制服のままです。服がシワになっちゃうなとか、何で着替えてなかったんだろうと思い返してみると、彩葉の両眼がハッと開き昨夜のことを思い出します。

 

 女子高生がいつもの帰り道に宇宙人を拾う、そんなハチャメチャな物語なんて現実にあるわけない。あれは限界ギリな自分が見た幻覚のはず。

 

 目を開ければいつもの部屋の光景が広がり、計画がいっぱいの3連休が始まるはず。長時間睡眠(彩葉比)で頭と体がリフレッシュした彩葉は、ゆっくりと目を開け家の中の様子を眺めます。

 

 いつもと変わらぬ首を横に振ることしかできない扇風機、予定がギッチギチに書かれた学習計画表、勉強机に並んでいるエナジードリンク(パスタ4食分)、最推しであるヤチヨの神棚アクリルスタンド、玄関で横たわっている宇宙人などなど……いつもと変わらない光景が広がっています。

 

「なーんだ……夢か……夢!?」

 

 現実は思ったより摩訶不思議な物語のようです。

 

 

 ☾  ☾  ☾

 

 

 女子高生の家の玄関に未だ目覚めぬ宇宙人。年齢は26歳ほど、肩甲骨のあたりまで伸びた黒く若々しい長髪、細いが遠目でもわかるほど筋肉質な肉体で、地球人にはついているはずの無い猿のような尾がある青年。今は昔、お兄ちゃんとやったゲームに出てきたキャラクター。サイヤ人、ブロリーそのものです。

 

 地球に送られるのは孫悟空ではないのか。そもそも、何故アニメのキャラが現実にいるのか。疑問が尽きませんが、今はどう対応するのかの方が大事です。

 

 サイヤ人は多くの星々を侵略してきた戦闘民族です。そんな彼らが宇宙の中で一番環境が整った美しい地球を見れば必ずや侵略を開始するでしょう。戦闘力の低い地球人では、彼らの挨拶(クン)に対してまともに返すこともできません。

 

 ただでさえ彩葉は突然『カパッ』と、いなくなっちゃいそうなのですから。

 

 どうしようかと頭を抱えていると、意識が戻ったのか宇宙人の体が動き始めます。ゆっくりと上体を起こし、こちらを見つめてきます。

 

 コミュニケーションは始めが肝心。どうか穏便に済みますように、と神様仏様ヤッチョに祈ります。

 

 ――『神頼みするやつは阿呆や』――母の言葉がRememberされますが願わずにはいられません。意を決し声をかけると――

 

「ブロリーってなんだぁ?」

 

 どうやらサイヤ人は頭を打つと記憶が飛ぶのは稀によくあるみたいです。

 

 

 ●  ●  ●

 

 

 かくして、彩葉の知る限り人類初めての異星間交流が立川のアパートで行われました。

 

 残念ながらブロリーは記憶を失っており、自分の名前も地球に来た目的もどうやって現実の世界に来たのかもわかりませんでした。

 

 少しでも彼自身の事がわかるように、タブレットのアプリを起動し、彼に関する動画を見せます。

 

 ……一通り見終わったブロリーが立ち上がり宣言します。

 

「ブロリーは、かわいい!!」

 

 どうやら違う動画(ブロリーMAD)を見せてしまったようです。

 

 その発言につい立ち上がってツッコミを入れてしまいました。

 

 こうして彩葉とブロリーの奇妙な生活が始まったのです。

 

 

 ☽  ☽  ☽

 

 

 朝が来て、キジバトの鳴き声と新聞配達員のバイクの音で目を覚まします。3連休も終わり、今日から学校です。

 

 結局、彩葉のお休みはブロリーにまともな方の動画と常識を教えるだけで終わってしまいました。動画を見て自分の運命を知り、ブロリーは言い放ちます。

 

「ならばこの俺がバッドエンドを破壊しつくすだけだぁ」

 

 まるで親父ぃのように人差し指をこちらに向けたポーズを決めてきます。この四畳半の部屋で。

 

 でも、彩葉は誇るべし。いくら頭を打って記憶が無くなったサイヤ人は穏やかになるとは言え、立川の地形が変わらなかったのは、メチャ頑張り彩葉のおかげなのです。

 

 世界の救世主って呼ぶべし。

 

 ◐  ◐  ◐

 

 思ったより言いつけを守ってくれるブロリーに留守番を任せ、彩葉は学校に行きます。休み明けの友人たち(芦花と真実)との交流にメンタルを回復しつつ授業を受けます。

 

 放課後、友達とオシャレも価格もハイクラスなカフェに寄って、ふわふわ三段重ねのパンケーキで幸せに浸っていると――カシャン、カシャン、カシャン――遠くからサイヤ人が近づいてきます。

 

「やぁ……」 

「えー、ブロリーコス可愛い。誰この子?」

「初めて制御装置を着けられる『親父ぃなんだぁ?ヘアッ』のシーンの時の服装をしている。彩葉の友達?」

「ブロリーです。はい」

 

 彩葉の親友たちは、もうブロリストです。

 

 

 ☾  ☾  ☾

 

 

 友人たちと別れ、家に帰ると夕飯の時間です。今夜はブロリーの作ったお好み焼きです。予想外においしく久しほっかほかなごはんを久しぶりに食べて彩葉は幸福に満たされていると、ゲーム音が聞こえてきます。

 

『カカロカカカカカカカロカカカカロットォ』

 

 ブロリーが夢中でカチャカチャ弄っているのは、兄が置いてったレトロな超家庭用ゲーム機。家から持ってきた荷物の中にあったのを勝手に出したのでしょう。

 

『カカカカカロカカカカカロカカロットォ』

 

 どんなに頑張っても7カカロットが限界なようです。

 

 そうこうしていると、設定していたアラームが鳴ります。遂に来た。ヤチヨのライブもあと少しで始まります。推しのライブに行くために、一人用のスマコンを準備します。

 

 ヤチヨのライブもあと少しです。残念ながら、ブロリーはツクヨミに行く手段を持っていません。かわいそうですが、この部屋でお留守番です。一人残してしまうことに罪悪感を感じますが、ヤチヨの生ライブに行きたい気持ちのほうが上なのです。

 

 朝のように留守番を頼もうとブロリーの方を見ると、何故か彼の手に見慣れないコンタクトレンズ型のPCデバイス、スマコンがあります。

 

 もう片方の手に明細書が握られています。ひーふーみー、¥124,400。

 

 すぐに端末を確認すると同じ額が残高から減っています。

 

 あまりの現実に愕然とし、油の差していないブリキの玩具の様にグギギと首を元凶に向けると――

 

「イエイ♪」

 

 普段はダウナー系なくせに無駄に素敵な笑顔で返してくるブロリーはサイヤ人そのものであり、彩葉の財布は破壊し尽くされてしまったのです。

 

「なに!? なんてやつだ! あ……ああ……」

 

 彩葉の怒りにうろたえるブロリーとは裏腹に、室内にアラームが再度鳴り響きます。ライブまであと少しの時間です。ヤチヨのライブに遅刻するわけにはいかない、と怒りを収めた彩葉はブロリーを連れてとツクヨミにログインするのでした。

 

 

 ○  ○  ○

 

 

 さて、ブロリーはいったいどんな姿でツクヨミに現れるのか。初ログインでアバターをクリエイトしているのを待っていると、空間に光の波紋が走ります。

 

 光の中心を切り裂いて、赤紫色と白色のコーデで、金色のVの字首飾りや腕につける装飾品にベルトはおしゃれな感じで現れ――

 

 緑がかった金髪でムキムキの伝説のスーパーサイヤ人が降臨なされた。

 

 

 

 彩葉とブロリーの摩訶不思議な物語は始まったばかりでこの始末☆

 はてさて、この先どうなりますことやら……

 




もし来たのがカカロットだったら

「あなた、どこから来たの?」
「オラ、腹減っちまって」
「で?宇宙人は何しに来たの?侵略?」
「だーめだ! オラ腹ペコなんだぁ」
「だーめだ! オラ腹ペコなんだぁ」
「だーめだ! オラ腹ペコなんだぁ」


『ウォレット残高 \452 前日比 \マイナス540,000』


「払えないサイフは必要ない」
「ご飯も、涼しさも温かさも、遊びも断って、推しへの課金も我慢して」
「悪りぃけど、急ぎの用事が出来ちまったんで……ピッコロ! お前ぇの番だ」
「10円!!」


『ウォレット残高 \462 入金 \プラス10』


「死ぬ気で……死ぬ気で!! 貯めたんですけどっっ!!」
「あ……悪魔だ」

 彩葉の財布はこの始末☆
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