ゼロカラアリエザルイセカイセイカツ   作:鯖みそ

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長くなっちゃったよ、どしよこれ


『ハジメテノヒトゴロシ』

二度目だ。二度、僕は大切な存在を失った。家族、友達、どれも大切な人たちだったのに...それなのに!

 

 

 

「かわいそうに、あの(おぞ)ましい死体を見たのね....」

「確かあの子って、孤児院の子よね、なら尚更....」

 

 

 

「君は安心していい、我々が見つけ出して裁く」

「誰か、この子を一時的に生活できる場を提供できる方はいますか?」

 

野次馬、優しい励ましの言の葉。あの時とは違い村の人たちは生きている。

騎士の人たちが到着し、犯人捜索に当たる

 

 

そう、人が殺されて、それに事件性があるというなら、治安維持、法執行等ができる組織に任せることが普通。何も危険を冒してまですることではない

 

 

「坊主。落ち着けよ、お前はまだ若いし弱い、もし犯人を見つけれたとして、相手をすれば死ぬ」

 

 

 

老齢な、騎士は確かにとしか言えない現実を突きつける

わかっている。けど、それでも、怒りは愚者のように勝手に体を動かしてくる

 

 

『ああ、忠告されたってのに、バカなの?』

 

最近、明瞭になってきた幻覚と幻聴。原因なんて、言わずともわかる

 

 

俺が、クズだから、あの時何もできなかったから

 

 

 

その無念が、形を作り、俺と瓜二つな姿で、貶してくる

『そもそもさぁ、君って矛盾してるよねぇ、復讐って誓ったくせに、家族を失ったばかりに、その代わりのようにあいつらと仲良くし出してさぁ』

 

 

うるさい

 

 

『それに君ってまだ目標は継続中なんでしょ?君は僕だからわかる』

 

 

煩わしい

 

 

『ナツキスバルの仲間になる....なんて、復讐においては邪魔になるでしょ、絶対『それだけで生きようとするんじゃねぇ』とか言って説得してくるよ』

 

 

語るな

 

 

『矛盾矛盾、死にたくないからどうにかしてくれる主人公に近づこうとして、でも、死んでも奪っていった奴を殺したいという気持ち』

 

 

騙るな

 

 

『君って、怠惰で、傲慢で.....強欲だ』

 

黙れ_____!!

 

 

 

 

『黙らないよ!これは君自身が言わしてるんだぜ、しかも律儀に()の姿じゃなくて、弟の姿で表れてるときたもんだ。認めたくないんだろ、これは今の僕が言ってるんじゃなくて、別の誰かが言ったことにしたいっていう表れさ_____』

 

 

 

 

「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ」

「お、おい坊主。頭抱えてどうし___」

 

 

「う、うわ、ああ、あああああああああ!!?」

 

 

傍から見れば、突然狂い出した少年、しかし宥めるより前、人の叫びが村中に響く

 

 

 

 

叫んでいる者はすぐにわかった。両腕が欠損して血を流し、苦しみのあまり膝をついて死んだ騎士の死体と両手をあげて、喜びを表す子ども

 

 

 

だが、その騎士を殺した原因はその子どもであり、騎士の腕だったものを振り回しているからの判断である

 

 

「ははははははは、いい、大変いいじゃねぇぇぇですか!」

 

 

「この、叫び。ああ、お母様にぜひ聞いて欲しかったのですが...ああでも、この視線の独り占めもお母様らしいか、ああならもっと、もっと」

 

「喘いで、愛して、狂って、依存して、独占させようじゃねぇーですか!!」

 

異様な光景、しばしの沈黙の後に、周りにいた騎士は剣を抜き、逃げ出す無辜の人々を守るかのように突撃す___

 

そいつは金髪で、蛇のように鋭い歯が二本飛び出していて、どこか見たことあるかのような姿形。子供なのは見てとれるが、惨劇を起こしたのが子供だということに動揺しているのか、騎士の動きはどこか鈍く感じる

 

 

 

「おいおい、マジかよ。犯人は子供っていうのか?」

 

 

「おい坊主、ここから離れろ!」

 

 

「あ....はい、ですが」

 

 

「お前の心配はごもっともだが」

 

突然の惨劇、さっきまでは精神的に追い込まれていたヴァニ。老齢の騎士は、それでも心配してくれる彼にしわくちゃな微笑みを向ける。

 

 

「確かに、剣鬼のように歳食っても衰えていないわけじゃねーし、今も腰はいてーが」

 

 

 

「経験は人一倍積んでんだ。若かりし頃の俺でも負けはしねーよ」

 

 

 

「あ、そうじゃ.....くそ、かん、がえがまとま....」

 

二度あることは三度ある。理不尽に突発的に大切な存在を奪われたのはこれで二度目だ。

嫌な予感しかしないんだ。もう失いたくないんだ。

 

 

 

 

「ら、あららら、あーん歳くったおじさまがお相手してくれるんですかー?」

 

 

「黙れ、弟子が見てんだ。さっさと死んでくれや」

 

「あーん、いけず〜、でもお母様なら『それもアタクシの深ーい愛で包むんでしたっけ?』」

 

 

 

なんともまぁ軟体生物くさい言葉使い、見たことのない姿だが、カペラ(色欲)か?.....にしてはお母様と言っているし、原作で言うところの子供達、それも改造済みか

 

 

 

ああほんと、クソッタレだ。この世界はただでさえ残酷で、理不尽に奪われて、ある程度の知識を持っていたとしても

 

 

それとは関係ない、または知らない要素がうじゃうじゃと

 

 

 

 

 

 

「ぬぉぉぉぉぉぉ!」

「威勢はいいですけど__やっぱ老人ね」

 

 

老躯から繰り出された剣撃は、確かに威勢だけがいいだけの、頼りのない重み、しかし、老齢な騎士は言った。経験で勝ると

 

 

飄々と避けた少女へ、横一線で剣を振るう

 

 

「あぁん、意外に動けるじゃない!」

 

何が楽しいのか、避けられているとはいえ、数歩ずれれば胸部がさけ、中の心臓を曝け出していたと言うのに

 

 

「何が楽しいんじゃこのカス」

 

「?...さぁ、知らねーですけど」

 

 

「はっ?」

 

 

意外に返ってきた答え、だが、その内容が知らないだと?

ならなぜ、その顔はなんで恍惚としている

 

「お前はなぜ笑う?」

 

「そりゃ、お母様らしいからですよ、正直に言っちまいますと、人殺しも、戦いも苦手ですし」

 

 

 

「お、お前、お前、ならなぜ?」

 

 

なぜ、殺す。なぜ、戦う

 

 

 

「...お母様が言ったんです。愛の反対は無関心、拒絶はある種の好きの現れ、なら、それを受け止めて愛すのが道理でしょう?」

 

 

「わからん、わからんぞ、この問答だけで、貴様が理解できぬ生物以外、わからぬ」

 

 

 

「そ、わからないんじゃ教える。教えなきゃ、でも残念」

 

 

「なに__」

 

瞬間、老齢の騎士の背中に衝撃が走る。

 

 

 

「お、お前、なぜ生きて」

 

 

その衝撃の正体。それは、両腕もげてショック死した騎士の死体が、みにくき変貌を遂げ、怪物へと変わったそれが

 

 

老齢の騎士の心臓を後ろから、爪で貫いていた。

変化の影響か、すでに失っていた両腕は黒き皮膚の獣のような腕へと変化していた

 

 

「お母様の依頼であなたたち殺さなきゃなの、ごめんね__?」

 

 

死んだ。呆気なく死んだ。あれから何分、いや何秒で死んだ?

 

 

 

「は、はははははははははははは...はははははは!」

 

 

 

 

声、高らかに笑った。迫り来る罪悪感に耐えるためか、狂ったように、また理不尽に奪われたことを、認めたくなかったのか

 

 

「___ああ、あんとき言えばよかったなぁ、お前は死ぬって、二度目なんだ。それでこれが三度目で」

 

 

「はぁ、てめーまだ逃げてなかったんですか、あーあーうるさいし」

 

 

 

「うるせぇ」

 

「はい?」

 

 

「うるせぇんだよテメーはさっきからよ!!そもそもあいつは誰なんだ。大罪司教か?色欲か?カペラか?にしてはあいつ今までやってきたこと楽しくないだとか、自分じゃない奴をお母様って、じゃぁなんだ。あいつはカペラの子供だってのかふざけんじゃねぇ、まるっきり写し身みてーじゃねぇかよ!」

 

「______」

 

 

「確かにあの外道は自分の分身みたいなの作って本当の子のように愛でて、愛されようとするかもしれねぇが、クソがクソがクソが、ああもうなんなんだよ、しらねぇこと、ばっか起きやがる。知らない理不尽がきやがる。しらねぇ奴がいる、は、ははははははははははははは」

 

 

頭を抱え、掻きむしり、盛大に大声で漏らす独り言、傍から見れば、錯乱してるだけの、理不尽にあった無辜の村の民。彼女は、すでに獣となった騎士に食い殺せと命じる

 

 

 

「何を言ってるやつか最後まで話からねぇやつでしたが、まっ、気にする必要は__」

 

 

 

<ブシャ>と、何かが勢いよく溢れる音。少女は、最初こそ錯乱した相手が、獣によって切り裂かれたか、牙で噛まれ、血袋の中身がこぼれただけだと思っていた。しかし、咀嚼音は?権能で変わった(騎士)に理性などなく、殺せと命令されたら、殺したのちに相手を食うなんてザラにある

 

 

振り返り、その違和感を確かめると

 

 

 

「へぇ、ただの子供じゃねぇーですね?」

 

 

「はははははは、くそ、ああくそ、涙も、笑いもとま、とまらない、クソが」

 

地に伏していたの獣。その近くに、使われた直後だとわかる血が滴る荒々しい意匠のナイフ

 

 

 

「殺す、そうだ。まずお前を殺して、自信でもつけて、復讐の糧にしてやる」

 

 

「いい、いいですね!....おっと、母様ならいいじゃねーですか、でしたね」

 

 

 

これ以上、くだらぬ会話に付き合う余裕などない、ヴァニはナイフを逆手に持ち替えて、首へと突き刺す。

 

 

絶殺の意思表示を表す一撃であったが、無造作にその一撃は獣のような腕に防がれる

 

「キャハ...あぁん、いけずなチビ肉。でぇもーー愛してあげる、ゆうだいで__」

 

「話が長い!」

 

 

あいあいあい、愛。正直今でもしんじられないこいつというカペラの写し身。だが、実際に目の前にいて、あいつがいううざったるい愛の話を聞くと、確かにあいつの子供だと否が応でも認識する

 

 

 

「そ・れ・に・しても理解できないですね__ほらおかしいと思わないんですか?」

「なに___くそっ、さっさと離せ__」

 

 

 

ナイフの刀身掴んでいる腕ごとにじられて、<ギリギリ>と体が悲鳴を上げる

 

 

「だってぇ、親しい人、好きな人が死んで復讐する...なんて、おめーが苦しむだけでしょう?」

 

「_____」

 

 

ああ、こいつは_____

 

 

 

 

「殺された。だから復讐するなんて、不利益被るだけでしょうに、まぁーあ、メンツのためとか、打算ありならいいんですよ。あたしも母様も多分そうする。習った通りなら、教わった通りなら、でも___」

 

 

 

「何かしらの組織に所属しておらず___ましてや幼いてめーが、逃げればいいだけでしょうが、誰も責めませんでしょうに、負けが目に見えてる復讐しようとするなんて、低脳、ばかなんじゃないんですか?」

 

 

「ふ、ははは、はははははは、ああ確かにおめえ、あいつの娘だよ。打算なき愛。所詮は下心混じりの感情のことをただ恋、愛などと称すんじゃねぇよという身勝手な理論を俺たちに振りかざす」

 

 

 

「へぇー、お母様のこと知ってるんですか?」

 

 

「知ってるだけだがな、ああ確かに、否が応でもじゃなく、お前があのクソど外道の娘だって、頭でも感情でも理解できた」

 

 

頭にハテナ浮かべる少女。ああ、僕はどこまでも愚かなのだろう、知らない存在だから、未知の存在だからと『ありえない』の一言で片付けようとする感情も、今の今で従わせることができた。ちゃんと考えて殺せ、あいつ相手に自分の全てを使いこなしてからやっと土俵に立てる

 

 

 

「そもそも、お前の名前なんだよ」

 

「名前ですか、ええ、まぁいいですよ恋の始まりは名からですからね」

 

 

 

「大罪司教、色欲担当のカペラの娘、デネブ・アルケディ。名も、姿もお母様のように可愛くありませんが、ええ__いつしか恥じぬ容姿で取り繕えたいと思うお母様の子です」

 

 

星の名前。知らないそいつはそうなのった

デネブアルケディ、意味は仔やぎの尾。雌やぎではないが、確かにあいつの子供として名乗るなら相応しいと言えるでしょう

 

 

 

 

「その努力。罰の分野で発揮したら?」

 

「あらー?そんな表情で顔を隠さずに、あ・な・たのお名前を教えて、抱いて__?」

 

 

「気色悪い。その一言に尽きる」

 

 

「キャハー突き放すその姿勢も、アタクシの雄大な愛で_____」

 

包むという言葉を遮るように、強引にナイフを引き抜く、鉄の刃が皮膚を切り裂き、獣毛から血が滲み出す、しかし、そこまでは生物の原則に則ってはいたが、カペラの子供というだけあり、肉体の再生は得意のようで、たちまち傷口は新たな皮膚で塞がる

 

 

「強引ですね、でもそこが___」

 

「気持ち悪い」

 

続いて、ナイフを顔から縦一線で切ろうとするが、これまた獣の腕で防がれ、弾かれた。その衝撃波だけで、地面へと打ち付けられる

擦り傷、血反吐。肉体から漏れ出る液体は、致命傷でなくとも痛い

 

 

「か...クソが、き、気分が悪くなんだよ見てるだけでよ

 

「キャハハーー!いい、いい声で泣くじゃねーですか!!」

 

「小鳥扱いかよ....」

 

ふざけるなと言いたいが、勝てる見込みは_____

 

 

 

 

ある。正直、ちょっとした違和感があった。こいつの母様、カペラの権能は(正式名称は未だ知らず)変貌と変異。いわゆる肉体を自在に書き換える能力で、それは他者にも有効

 

 

みにくき、恐ろしい何かに変えられて、誰からも愛されず、拒絶されて、変えた張本人に依存されられる

 

 

自身の肉体を書き換えて、相手の好みがわかる洞察力を用いれば、誘惑したり、相手の好きな人に化けて精神的攻撃もできちゃうぞ☆

 

 

 

....と、化ける系の能力で考える限りのできる悪行ができ、したのがカペラ・エメラルダ・ルグニカという人物である

 

そして、この能力を使えば不死のような芸当もでき、応用してある者の大切な人に化け心臓をナイフで貫かせ、あわや心がくじかれそうになった事件もあった

 

 

 

加えて、カペラは確かに能力を使用した戦闘は強く、現在でもまだ殺されていない大罪司教だが、そいつはどちらかというと精神を追い詰めることに重点を置く、そのため、物理的な攻撃よりも、精神攻撃を多用することが多い

 

 

 

(こいつがカペラの娘であるならば、あいつと同じようなことをするなら、似た芸当ができるなら、なぜ先ほどの攻撃で親しい人に化け、あえて攻撃を受けるはず)

 

 

 

 

試すか___

 

「なぁ、俺がなぜ、復讐しようとしてると思う?」

 

「?...突然変な質問をしま...やがりますねぇ、この腐ったクズ肉が殺されたから起こってやがりますんでしょう?___あと」

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

少しづつ、仮説が確信へと変わってゆく

 

「そうか....ふっ、ふふふふ」

 

「よーく笑いやがりますねぇ、てめー」

 

「そりゃぁ、俺が知ってる知識がやっと役に立ちそうだから嬉しくてな....な!!」

 

 

いつの間にか、ヴァニの手には、手のひらいっぱいの地面の砂が握られていた。

 

 

「このアタクシに目潰し!?」

 

こざかしくも、その砂を目潰しとしてデネブの顔へとかける

 

カペラによく似て、傲慢な性格で、油断しやすいようだ。それに賭けて得た結果が、相手が狼狽え、胴体を切り裂けたということ

 

 

「ひゃ、ひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ〜ーーーー!!?なにしやがるー!!」

 

 

「ちっ、あんま深く裂けなかった....が、貴様、動揺してるな?呼吸も早くなっている」

 

 

(しか)めて、睨んでくるこいつは、確かに腕部等はカペラのように再生できるのだろうが、全身ではない

 

 

 

 

「お前の言動を鑑みた結果だ。自業自得だぜ」

 

「なぜ....私の弱点を...」

 

 

 

「お前はお母様に憧れ、それになろうとしていたが、あいつは外道だ。他人の苦しむ顔が好きだ。権能利用して、親しい人を手にかけるような感覚に陥

させることが得意だ。またお前もそういったことをしたかったようだが、できないんだろう?腕部と下半身以外の部分を貶下させることができない」

 

「そこで倒れている若き騎士が、中途半端に誰か特定できる変化をしてるのも、それが理由だろう?」

 

 

「黙れ、黙れ黙れ!」

「驚いちまうなぁ、依然として、怪我はこっちの方がひどいってのに、今の会話だけ聞くと、立場逆転しちまってるよなぁおい」

 

 

 

「!...」

 

依然として血が滲み出る腹を抱えて、逃げ去るそいつ、間抜けに見えるその様は、傷も大したことないのに、過剰な反応で、そいつが今までどんな人生を送ってきたのかよくわかる

 

 

 

 

 

 

「逃がさねぇぞ!クソ野郎!!」

 

 

「ちっ!」

 

 

逃げると同時に、辺りの死体は立ち上がるという不条理が起きる。

権能によって中途半端に変えられたその姿は、痛ましく、虚な目も相まって、心臓に締め付けられる感覚がして__

 

 

「痛いのはやだとかいう矛盾した事言う人間味があることするくせして、ど畜生なことしやがるなぁおい!」

 

 

 

 

 

長生きしていたのがわかるくらいにその毛は白く、屈強な騎士の姿もいた

 

 

「数にして十一か、はは、流石にこの体じゃぁ無理か、ふぅ、俺の最後はこんなもんか」

 

意外にも、怒り満ちる心を持つくせに、諦め

 

『でも、終わらない、簡単には終わらせないよ』

幻影が

 

突如として、紅い光沢放つナイフが、さらに紅く光り___

 

 

「はぁ....?」

 

 

     ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

住民はとうに逃げ去り、もぬけのからとなったこの村で、少女は汗と血を垂らしながら駆ける。

絵面こそ、何かに怯え逃げている哀れな逃げ遅れに見えるが、張本人は彼女で、傷も大したことないのである

 

 

「は、はぁ、ここまで来れば....」

 

 

 

「ここまで怯えてるとなると貴様、痛いが嫌というより、その体が傷付くのを極端に恐れているな?」

 

驚き、振り向きと同時に紅いナイフがお腹にさらなる傷を作らせた

 

「あ、ああああああああ!??」

 

 

「その感じ、容姿自体はお母様の権能でわざわざ作らせてもらったのか、なんで自らその大切なお母様に手塩かけて作ってもらった体を無碍にするのかわからんな」

 

 

 

「お母様からの命令か、それともお母様のような振る舞いをするため...いや、わざわざこんな田舎に来るか?まぁいい、殺すのが先だ」

 

 

「な、なんであんた、あたしの眷属に__」

 

 

止まり、震えながらの独白が始まる

「やられてなかったか...わかんねぇよ、突然ナイフが光ったと思えば、何にも起きなくて、でもこれで切ったら、切ったやつから、目から、口から、血が出て、泡吹いて倒れやがった。師匠も......................オェ」

 

 

意味が分からなかった。突然力が目覚めて、ピンチを打破する展開なんて、聞き飽きて、よく言えば王道の展開で得たこの力は、あまりにも荒々しく、あんな死に方しちまうこの力は....

 

 

「はぁ....もう、最悪だ。この世界は、最悪で分からないことだらけで、なんで....もっと、この力は、こんな都合のいい展開があの時来てくれなかったんだ畜生が、畜生....」

 

物草と恨み節体て、いっぽ、一歩踏んで、着実と近づく

 

 

目の前の少女を狩る瞳とナイフと共に

 

 

「や、やめ____」

 

 

「...やっぱ、中途半端だよお前、みすてられたんじゃねぇの?愛しい愛しいお母様によ」

 

 

 

 

グチャ_____

 

 

 

っと、人が出来損ないの肉へと変わる音が、村中に響いた

 

 

 

 




最後まで、中途半端だった彼女は、あまりにも人間みたいに見えて、錯覚して、手にかけたヴァニを罪悪感で蝕む
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