ゼロカラアリエザルイセカイセイカツ   作:鯖みそ

6 / 10
『アリエザルシュウゲキ』

ある種僕は平和ボケしていたかもしれない、この世界に転生したその後、確かにスバル一行(またはその友人)の仲間入りすることこそが目的だと

 

 

でも、僕は今まで何をしていたのだ、何か鍛えていたのか?努力していたのか?

 

 

僕はそういった鍛錬を怠っていた。僕の権能で、”妹”に変身すれば体格も、筋力もある程度付いた形となる

だがそれもある程度。鍛錬しないという理由にはならないのに

 

 

ならなぜか?多分、いじめが原因だと思う

 

 

最初こそ、ただ見るだけで不快なことだったのに、でもいつしか疑問は確信へと変わった。

 

 

.....僕は演じるのが好きなんだ。それも生きていくには必要なほどに

 

 

 

不安だったんだ。僕の権能によって人じゃなくなったから

 

 

姿形が別の人間に変わるだけ?それが気持ち悪いんだよ、全くの別人に変わるんだぞ、しかも中身も別人に置き換わるといった手厚い変化も加えてだ

 

 

 

それに、たまたまだったんだが、僕は鏡の、いや、水たまりか、とにかく僕の体を映す物質の目の前で、変化した。

 

 

 

 

 

その過程がとてつもなく気持ち悪かった。変化する過程でどういうわけか視界はそのまま見えていたけど、見えてなかった方が良かったんだ。

 

 

 

だってあれは人間がやることじゃない、肉が音を立てて、皮膚を骨を臓器を表面に出しながら.....

 

 

 

 

だからこそ人から避けられ、いじめられたが、そのいじめが僕が人間として演じれる機会だったんだ。

 

 

直接的な暴力、痛がる僕、やめてと小声でいう僕、実際には感情を切り離していたからこれっぽちも辛くないけれど、それでも痛いと言えるのは僕がまだ人間なんだと言えて、都合の良い舞台だった

 

 

 

 

....なんで今まで気づけなかったんだろうな、少なからず壊れていたことに、異世界に飛ばされて、親しかった人に会えないのはとても辛いことなのに

 

 

 

 

 

      ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

この世界を物語としか認識してなかった僕への罰のように、街は燃えていた

 

ボウッと真っ赤な炎が辺りを覆ってゆく、それはあるとあらゆる建物に、人が住まう居住スペースへと侵食していく

 

 

人は悲鳴と共に走って逃げる。炎に包まれて、黒くなった同胞の焼死体を見てしまったから余計に声をあげて、必死に

 

 

 

 

こうなった時、案外種族による差別は起きにくい、皆我先にと逃げるために

 

 

 

「ただの子供じゃなくて本当に良かった....」

 

 

 

大の大人に踏まれ、揉まれ、圧死し、窒息死してゆく子供か小柄な人たちと無事な己の肉体と比べ、言った

 

 

 

今、僕はある人の家へと向かっている。それはもちろん世話になり、この世界で尽くしてくれた家族。生きているのか、もしかしたら僕と一緒に逃げるために探しているかもしれない家族に

 

 

「無事だと良いなぁ」

 

 

(うつろ)な目で走っていた僕、そんな家族のためにかけてゆく少年に、ある魔の手が襲いかかる

 

 

 

「危ない!!」

 

一瞬、何が起きていたのか分からなかった。推測のために先ほど僕が進もうとした先を見ると、そこには鋭い、命をかる剣が振るわれていた。あのまま行けば僕の肉体は半身切れていただろう、縦半分で、そして僕を押し倒しているこいつは、今世の兄貴であった。

 

 

 

「に、にいちゃん」

「おうお前の兄貴だぜ、外で呼ばれるのは久しぶりだがな!」

 

 

殺されかけていたという現実と不安なんて、兄の屈託のない笑顔でかき消される。

その掛け合いに割って入るように話しかけてきた男。

 

 

「あ、ああらら。なんとも微笑ましい兄弟、兄妹劇ですね。....ええううん、本当に欲しくなる」

 

 

「や、やいお前。俺の弟に...今弟だなよし」

 

「弟に手を出すなんて15年以上早いんだよ!」

 

 

「く、クククク、ええそそ、そうですか、たった十五年早いんですか十五年でくれるのですか」

 

 

 

不気味だ。この男、声も口調もそうだが何よりその見た目、赤黒い血のようなラインの教徒の服。耳元まで裂けている口。紅の目。

服を見るに、リゼロの主人公。ナツキスバルを苦しめた組織。嫉妬の魔女を信仰する者。

街を襲う下手人はどうやら魔女教の奴ら

 

 

 

まぁ確かに原作には描写されてないだけでこいつらに滅ぼされてる街、村、里は多そうだが

 

 

 

ならば首魁はなんだ__こいつの容姿には僕の原作知識には存在しない....相手から名乗ってくれれば良いのだが

 

 

「ヴァニ、ここは俺に任せて先に行け」

 

「は、はい?」

 

思わず聞き返す。なんでだ、こいつの正体もわからないのに逃げるのは....

 

 

 

不満を漏らそうとした口が閉じる。兄の目線はあまりにも必死なもので、覚悟が座っていた

 

 

 

 

ああ、いやそうか、これが兄というものか、弟が死ぬかもしれないなら命投げ出してでも救うのが

 

 

 

それなら僕も素直に従おう、まぁこれで幼少の頃にしたことを許したわけじゃねえがな!忘れんぞ

 

 

 

「にいちゃん、生きて__」

 

 

特大なフラグ発言を残して走り去る弟の背中を見送る兄

 

 

 

「ふ、ふふしし、死にゆく人間だと今の歳でもわかると思うのですが?」

 

 

「うるせぇ」

 

 

「あ、ららどど、どうされましたか?」

「今俺は、一番兄貴をしてるところなんだ。だからよ___」

 

 

 

名乗れよ_____

 

 

 

幼き少年から出たとは思わぬ挑戦状の叩きつけ、この世界において、名乗りとは強者同士が一対一で戦う際に互いの名前(と二つ名)を告げ合う、暗黙の了解という風習がある

 

 

 

しかし、名乗れと言っている少年は決して強者ではない、この歳で覚悟を決めたというなら精神の(つわもの)と呼べるかもしれない

こんな戯言、聞き流してさっさと殺して弟も殺しにゆくのが常

 

 

なのに相手は__

 

「は、は、ハハハハハはっっはっっっは!!ふふふふ....」

 

彼はひとしきりに笑い飛ばした後

 

 

「ええいい、良いでしょう、その覚悟に応えて、名乗るとしましょう」

「え、いや、おう、わかった。なら言い出しっぺの俺から名乗る」

 

 

余計な会話をして、弟が逃げる時間を稼ごうとした考えで、『名乗れ』と言っただけで、応えてくれるとは思いもしなかった

 

 

 

「俺は......『親不孝』のアスミディスケ・ティション」

 

 

「は、ははばば、馬鹿みたいな名乗りだねぇ、でも覚悟なんだろうねぇ、良いねぇ、ほほ、欲しくなってきた」

 

 

 

   ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

未だ。消えぬ人々の悲鳴と炎が燃える音。

 

 

 

 

 

はぁはぁと息を散らして、明るく燃える街道を駆けるヴァニ、あそこの角を曲がれば僕が暮らしていた家に__

 

 

 

というところで、突然体が倒れ込む。と言いつつも、頭の頭痛により、頭を抱えて、膝から地面へと崩れ落ちただけである

 

 

(い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!)

 

頭を直接手で掻き回せられてるような感覚。それと同時に何かが抜けるような....大切な何かがかけたかのような....

痛い、吐き気もする。でも....

 

 

 

 

 

 

(はぁ、は、ふう、いえ、家に行かなきゃ)

 

激痛により意識は朦朧としても歩みは止まらない

目的はもちろん親と会うこと、一緒に逃げること

 

転生した、だからこそ前の世界の親に会えない、まぁ会えてたとしてもこの姿と、気色悪い権能を持ってたら合わせる顔なんてないし、そんな無念があるから、この体の親くらいは守りたい

 

 

 

 

 

「ふう、大丈夫。痛くても....足は動ける。妹になったほうがいいか?いや、弟なら身長低くて見つかりにくいし」

襲撃犯は魔女教徒、見つかれば容赦なく殺されるし、複数人いるだろうし

 

 

とは言いつつも、ここまで道中でさっきのあいつ以外の教徒は見えなかった

 

 

大罪司教だけなんてことは....性格的に単独でやりそうな奴がいて否定できない

 

 

「考えより、両親を見つけることが先だぞ、俺」

 

 

ふらふらと揺れながら、目的地前の角へと曲がり.....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

は___________?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬で頭が真っ白になった。家が燃えていた?そりゃ、街全体が燃えているなら自分の家だって燃えてるだろう、じゃあ何に驚いているのか?

 

 

 

 

 

 

親がいた。良いことなのでは?

 

 

 

でも、

 

 

 

 

赤い液体を流して、倒れていた。

 

 

どう考えても、どう見ても、死んでいた。何も言わない人の形をした肉塊。父親の方は虎のような荒々しい牙を模した赤いナイフを持っていた、無抵抗ではなく、僕を探している途中に魔女教徒にあって、抵抗虚しく殺された。呼吸が激しく、己の左側に手を当て、激しく鼓動する心臓。

 

 

 

近寄って、名前を呼んでも、返事をしない、当たり前だろ、死んでいるのに

 

 

 

 

 

(あれは、違う、親じゃない、親じゃない、親じゃない、そういう形をしただけの肉、あれは肉、あれは肉、あれは肉)

 

 

 

 

「違う、違う違う違う違う違う違う違う」

 

 

ちがうちがう、ちがう見間違い、見間違い、ちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがうちがう

 

 

 

 

「違わないよ」

耳元で囁く男の声、誰だ?さっきの男とはちがう、僕は顔を確かめるために振り返ると、そこに立っていたのは、どこか親に似ている顔をした誰か

 

 

 

 

「ヴァニ、なんでお前えは逃げなかったんだ?僕が命かけて時間を稼いだのに」

 

 

 

「ああ、君は怠惰だね」

 

 

 

その顔を見てると、なんでか動悸が激しくなって、何か、何か忘れてる?そう、確か、こういうことができるのは

 

 

「暴食?」

 

「!.....んん、ふふふ、はは、はははははははは!」

 

 

 

「知ってる?知ってるんだ。僕のこと、親しくて、君のことを殺そうとした兄の名を_!」

 

 

 

 

「.....なんて、言ってみたけど、残念不正解だ。僕は暴食じゃないよ」

 

 

 

「ああ、でもほんと怠惰だよ君、逆に欲しくなるくらい」

 

 

いつの間にか、僕の顔はあいつの手で掴まれて

 

 

「ええっと、確かこうするんだっけ」

 

 

 

 

 

___________いただきます

 

 

 

 




もうちっとだけ、この惨劇は続くんじゃよ



...えっ、これ以上の地獄があるのかって?ないよ、流石にねぇ
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