今後の展開でマクロス・クロスオーバーでゼントラーディを出せるよね!
/*/ クロノス日本支部 開発局連絡室 /*/
クロノス日本支部の開発局職員たちは、明らかに怯えていた。
理由は、要望書である。
ただの要望書ならよかった。
作業型獣化兵の小型モデルを増やしてほしい。
調整医療ステーションの予約枠を拡大してほしい。
農業研修の倍率を下げてほしい。
そういう話なら、まだ分かる。
だが、今日の要望書は違った。
署名数、数百万人の世界規模。
場所は日本、半島、大陸、北米、欧州が多い。特に日本。
発起人は、民間競技団体、旧競馬関係者、芸能興行会社、スポーツ医学研究者、地方復興自治体、配信事業者、観光業界、そして調整希望者有志。
題名。
『ウマ娘実現プランに関する嘆願書』
誰が総帥へ持っていくのか。
開発局内で、非常に醜い押し付け合いが発生した。
最終的に、くじで負けた若い職員が、顔面蒼白で資料端末を抱え、クラウド・ゲート上層の総帥執務区画へ向かうことになった。
同席者は、バルカス、ヴァルキュリア、村上征樹、アプトム。
職員は、ほとんど処刑台へ向かうような顔で入室した。
アルカンフェルは書類から顔を上げる。
「どうした?」
「はっ……民間からの要望書でございます」
「要望書?」
「署名が、数百万人分集まっておりまして……日本支部だけで処理するには、その、社会的にも、広報的にも、無視が難しく……」
職員は震える手で端末を差し出した。
アルカンフェルは受け取る。
表示された題名を見た瞬間、彼の眉がわずかに動いた。
「……ふむ?」
バルカスが横から覗き込む。
「何でございますかな」
アルカンフェルは、読み上げた。
「ウマ娘実現プラン」
会議室が、妙な静けさに包まれた。
アプトムの声が入る。
「……今、何て?」
「ウマ娘実現プランだ」
「平和だなぁ、人類」
アルカンフェルは続きを読む。
「獣化兵の調整技術を応用し、女性を対象に、獣化能力なし、戦闘器官なし。ウマ耳、ウマ尻尾、常人の約四倍の走力。馬のパワーと人間の持久力を兼ね備えた調整体を作成」
村上征樹が目を閉じた。
ヴァルキュリアは端末を開き、無言で監察項目の準備を始めた。
バルカスの目が、危険な好奇心で輝き始めた。
「色とりどりの勝負服を着用し、専用競技場にて興行レースを開催。競技後には歌唱、舞台、配信、地域観光連動を実施。現在の公益賭博以上のガス抜き効果が期待できる……」
アルカンフェルは、そこで読むのを止めた。
しばらく無言。
そして、ぼそりと呟く。
「ウマ娘があるのは知っていたが、こうきたか」
誰も意味を理解できなかった。
アプトムだけが、面白そうに笑う。
「総帥、今なんか変なこと言ったな」
「何でもない」
アルカンフェルは資料へ視線を戻した。
「公益賭博以上のガス抜き効果が期待できる、か」
彼は端末を置いた。
「ガス抜きなどと遠回しに書くな。祭りにしたいのだろう」
職員は、ひっと小さく声を漏らした。
アルカンフェルは続ける。
「競走、歌、衣装、配信、観光、賭博。人間の欲望が綺麗に並んでいる。悪いとは言わん。欲望がなければ、人間は街も祭りも作らん」
アプトムが笑う。
「総帥、理解あるじゃねぇか」
「理解はしている」
アルカンフェルは淡々と言った。
「放置はしないがな」
ヴァルキュリアが端末を見ながら言った。
「論点を整理します。本人の自由意思、所属管理、外部資本の干渉、競技者の身体管理、興行収益、引退後医療、賭博化、容姿規格化、配信権管理」
「未成年禁止、とはしない」
ヴァルキュリアが少しだけ顔を上げた。
アルカンフェルは続ける。
「私は現生人類の親ではない。年齢だけで線を引くつもりはない。重要なのは、本人の意思がどこまで本人のものかだ」
会議室が静かになる。
「親が売る。事務所が囲う。スポンサーが走らせる。地方自治体が観光資源として囲い込む。そういう形は認めん」
ヴァルキュリアが頷いた。
「調整後は、クロノス芸能部門所属としますか」
「そうだ」
アルカンフェルは言った。
「外部の親、事務所、スポンサー、旧競馬団体、配信企業の意向で走らせるな。調整を受けた時点で、競技者はクロノス芸能部門の保護下に置く」
村上が静かに言った。
「既存の獣化兵バンドと同じ枠ですか」
「獣歌隊か」
アルカンフェルが頷く。
獣歌隊。
クロノス統治の最初期から活動している獣化兵アイドルバンドである。
帰還兵の慰問や戦後キャンペーンではない。
もっと早い段階から、獣化兵という存在を市民へ認知させるために作られた芸能部門所属のアイドルたちだった。
大柄な筋力増強型がベースを弾き、飛行型がステージ上空を舞い、音響特化型が人間では出せない声域で歌う。
最初は恐れられた。
次に笑われた。
その後、なぜか人気が出た。
子供たちは獣歌隊の真似をし、老人は「あの角の子は礼儀正しい」と言い、街の祭りに呼ばれるようになった。
クロノスは、獣化兵を兵器としてだけではなく、見られる存在として社会に置く術をすでに持っていた。
「獣歌隊は、獣化兵の認知を高めるために役に立った」
アルカンフェルは言った。
「なら、今回の調整競走者も、クロノス芸能部門の女性部門として扱えばよい」
ヴァルキュリアが記録する。
「クロノス芸能部門内に、運動特化調整体の女性部門を設置。競技、歌唱、舞台、配信、地域興行を一括管理。外部事務所所属は禁止。スポンサーはクロノス芸能部門を通す。個人への直接支配契約は禁止」
「よい」
職員が必死に入力している。
バルカスは、資料を読み込みながら楽しそうに言った。
「しかし、技術的にはなかなか興味深い。獣化能力なし。戦闘器官なし。耳介、尾椎周辺、腱、心肺、筋骨格、平衡感覚、聴覚、瞬発力、持久力の最適化。馬の形質をそのまま入れるのではなく、人間の二足走行へ合わせて再設計する必要がある」
「楽しそうだな、バルカス」
「研究者としては」
「競技者を実験体にするな」
「もちろんでございます」
ヴァルキュリアが即座に言った。
「バルカス博士の『もちろん』は監察対象に入れます」
「ヴァルキュリア嬢、儂はそこまで信用がないのかね」
「はい」
「即答か」
アプトムが笑った。
「博士、日頃の行いだろ」
「お前に言われるとは心外じゃ」
アルカンフェルは資料をめくる。
「常人の四倍、か」
バルカスが少し身を乗り出す。
「安全域としては、まず二・五倍から三倍程度で試験し、骨格と腱の負荷を確認すべきですな。四倍は競技映えしますが、初期型で無理をすると故障が出る」
「四倍ありきにするな」
「はっ」
「興行が欲しがる数字に身体を合わせるな。身体が耐える範囲で競技を作れ」
ヴァルキュリアが記録する。
「競技規格は、調整体の安全域を基準に設定。興行上の速度目標を先に置くことは禁止」
村上が少し苦笑した。
「それでも通称はウマ娘になるでしょうね」
「通称は止めきれん」
アルカンフェルは言った。
「公式分類は、馬型運動特化調整体。競技名は調整競走。興行部門名は……」
アプトムが割り込む。
「ウマ娘でいいじゃねぇか」
「公文書に書くな」
「じゃあ、クロノス・ダービーとか」
職員が一瞬だけ顔を上げた。
ヴァルキュリアが冷静に言う。
「興行名は後日、芸能部門と競技者候補者の意見を聞いて決定します」
「それでよい」
アルカンフェルは、要望書の発起人一覧を見た。
「旧競馬関係者の関与は認める。ただし主導権は渡すな。馬を走らせていた者たちが、人間に近い調整体を同じ感覚で扱うなら事故になる」
ヴァルキュリアが頷く。
「競馬文化のノウハウは使うが、所有馬制度の発想は禁止」
「そうだ」
アルカンフェルは言った。
「所有させるな。所属させろ。所属先はクロノス芸能部門だ」
その言い方は、現代倫理としては冷たい。
だが、アルカンフェルらしい整理だった。
個人の自由を声高に語るのではない。
地球生命の管理者として、調整された個体をどの群れに置くかを決めている。
野に放てば食われる。
外部資本に渡せば搾取される。
ならば、クロノスの檻に置く。
檻であると同時に、巣でもある場所に。
「本人の自由意思は、どう確認しますか」
村上が問う。
「芸能部門と医療部門だけでは足りん。監察部門を入れろ」
アルカンフェルは答えた。
「親や事務所が連れてきた申請は一度戻す。本人だけで説明を聞かせる。複数回、間を置いて確認する。それでも望む者だけだ」
ヴァルキュリアが記録する。
「本人単独説明。複数回確認。外部圧力検査。調整後の所属はクロノス芸能部門。契約解除・引退後も医療保障は継続」
「よい」
バルカスが資料に目を落とす。
「生殖能力への影響は、獣化兵ほど大きくはないでしょう。ただし、内分泌と骨盤周辺をいじる以上、妊娠出産への影響評価は必要ですな」
「調整前に記録と保存を取れ」
「生殖細胞保存ですな」
「本人が望むならな。望まぬ者にまで押し付けるな」
「御意」
アプトムがぼそりと言った。
「総帥、ずいぶん柔らかいじゃねぇか」
「柔らかいのではない」
アルカンフェルは言った。
「調整個体を長く使うには、壊さない方がよいだけだ」
「言い方は相変わらずだな」
「お前に言われたくない」
職員が恐る恐る問う。
「あの……日本支部への回答は、許可ということでよろしいのでしょうか」
「限定許可だ」
アルカンフェルは端末へ短く文面を打った。
民間要望は受理する。
運動特化調整体および調整競走に関する医学・競技・興行研究を限定許可。
本人の自由意思を前提とする。
外部の親族、芸能事務所、スポンサー、旧競馬団体による所有的契約、強制、囲い込みを禁ずる。
調整後の競技者はクロノス芸能部門女性部門に所属し、医療・競技・興行・引退後保障を一括管理する。
獣歌隊で得た運用経験を参考に、社会認知と娯楽興行の両立を図る。
公開興行は段階承認制とする。
職員は、その文面を見て、深々と頭を下げた。
「承知しました」
バルカスは、すでに耳介可動神経と尾による姿勢制御の試算を始めている。
ヴァルキュリアは監察項目を増やしている。
村上は少し呆れたように画面を見ている。
アプトムは面白がっている。
アルカンフェルは、端末を閉じた。
「まったく」
彼は小さく呟いた。
「宇宙怪獣が終わったと思ったら、これか」
アプトムが笑う。
「人間の欲望は宇宙怪獣より厄介ってか」
「そうだな」
アルカンフェルは、珍しく否定しなかった。
惑星統一後の人類は、住宅を求めた。
医療を求めた。
宇宙を求めた。
そして、祭りも求めた。
クロノスはそれを切り捨てない。
ただし、野放しにもさせない。
欲望もまた、調整されるべき地球生命の一部だった。
まぁクロスオーバー増やせば話は膨らませられるんだけど、どこまでやるかだよね。
金星開拓で終わるかその先も膨らませて話を展開するか。
この段階でガイバー要素を使っクロス先を利用した話になっちゃってるから区切って本編完結にして別で続きを書いた方が良いのか。
迷うね。