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休載10年目の漫画の二次創作とは思えない!
ねぇ、僕たち。ずっと原作再開を待ってるんだよ……
/*/ クロノス統治一周年特別番組 /*/
画面には、青い地球が映っていた。
雲が流れ、海が光り、夜の大陸には都市の灯が連なっている。
かつては国境線で色分けされていた世界地図は、今は違った。
大陸ごとの行政区画。
資源管理圏。
環境再生区。
宇宙開発管区。
その上に、ただ一つの紋章が重ねられている。
クロノス。
その下に、女性キャスターの声が流れた。
『さて、まもなくクロノスが地球全域を統治するようになってから一年が経過します。ここで改めて、我々人類が迎えた新しい時代、その最初の一年を振り返ってみましょう』
画面が切り替わる。
崩れた国会議事堂。
武装解除される戦車。
投降する兵士たち。
当時、世界中の人々は恐れていた。
超国家的軍事組織クロノスによる、武力支配。
獣化兵による弾圧。
逆らう者を消し去る恐怖政治。
だが、次に映されたのは、当初の予想とは違う光景だった。
食料配給所。
再稼働した病院。
補修される送電網。
武装解除後に再編された治安部隊。
旧国境地帯から撤去される地雷。
『クロノスの支配によってもたらされたもの。それは、当初多くの人々が恐れていたような、武力による無差別な弾圧、いわゆる恐怖政治ではありませんでした』
キャスターの声は落ち着いていた。
『では、世界はいったいどう変わったのでしょうか』
地図から国境線が消えていく。
かつて紛争地帯だった地域に、物流路が引かれる。
宗教対立で分断されていた都市に、クロノス統治機構の行政官と治安部隊が入る。
『まず、政治的な意味での国境が排除されました。これにより、国家間の対立に基づく軍事衝突、関税障壁、資源の囲い込み、そして地域ごとの経済的不均衡は急速に縮小しました』
画面には、旧紛争地帯の学校が映る。
異なる民族の子供たちが、同じ給食を受け取っている。
『また、クロノス統治機構は、宗教と政治の完全分離を宣言。宗教活動そのものは保障される一方で、宗教組織が行政、教育、司法、軍事を支配することは禁止されました。これにより、長年続いた宗教紛争の多くは、少なくとも政治的な根を失いつつあります』
次に映るのは、巨大な医療施設だった。
調整槽。
遺伝子治療施設。
再生医療センター。
旧来の病院とは異なる、白く無機質な巨大設備。
『医療技術も飛躍的な進歩を遂げました。クロノスの持つ生体工学技術により、従来なら治療困難とされた遺伝性疾患、神経変性疾患、重度外傷、免疫疾患の多くに、新たな治療法が提示されています』
寝たきりだった患者が、補助器具をつけて歩行訓練をしている。
失明していた子供が、光を見て泣いている。
『さらに、核融合発電の実用化によって、長年人類を悩ませてきたエネルギー問題は大きく改善しました。化石燃料依存は急速に縮小し、地球規模での大気汚染、森林破壊、海洋汚染への対策も進められています』
砂漠に並ぶ核融合発電施設。
旧油田地帯に作られた環境再生プラント。
都市上空から消えていくスモッグ。
干上がった湖へ水が戻る映像。
『これらの事業は、単なる社会安定化政策ではありません。クロノスが掲げる最終目標――惑星国家の確立と、他天体への進出。そのための地盤づくりでもあるのです』
画面が宇宙へ切り替わる。
軌道上の建造施設。
月面基地計画図。
火星圏有人調査計画。
そして、まだ詳細を伏せられた巨大構造物のシルエット。
『人類は、もはや地球上の国境に縛られた種ではなく、惑星全体を一つの文明圏として運用する段階へ入った。クロノス統治機構は、そう説明しています』
そこで、番組の雰囲気が少し変わった。
画面に表示された文字。
――新人類への革新。
『そして、その一環として掲げられているのが、“人類は新たな世界を切り開くため、新たな種へ進化しなければならない”というスローガンです』
映像には、ゾアノイド調整センターが映る。
受付。
適性検査。
カウンセリング。
調整槽。
そして、調整後の身体能力検査。
『ただし、クロノスはゾアノイドへの調整を義務化していません。新人類への革新は、個々人の自覚と自由意思によるべきである。これが、統治機構の公式見解です』
街頭インタビューが映る。
「病気が治るなら、調整を受けたいです」
「正直怖い。でも、子供に遺伝病を残さなくていいなら考えます」
「獣化するなんて嫌だ。人間のままでいたい」
「職業によっては調整済みの方が有利になるんじゃないですか? それは本当に自由意思と言えるんでしょうか」
キャスターの声が重なる。
『ゾアノイド調整により、多くの病気や疾患から解放される可能性があることは、大きな魅力です。一方で、それは本当に自由な選択なのか。社会的圧力は生まれないのか。調整を受けない者が、将来不利益を受けることはないのか。そうした議論も始まっています』
次に映るのは、女性団体の集会だった。
プラカードには、こう書かれている。
――女性にも調整を受ける権利を。
――保護の名を借りた排除に反対。
――新人類への進化から女性を除外するな。
『また近年、大きな議論となっているのが、女性へのゾアノイド調整制限です。クロノスは現在、妊娠中の獣化が母体および胎児へ悪影響を与える可能性があるとして、女性への調整を慎重に扱っています』
画面には、クロノス医療局の会見映像が流れる。
『医療局は、女性への調整を完全に禁じているわけではありません。ただし、妊娠可能年齢にある女性、妊娠中の女性、出産予定のある女性については、長期的な安全性が確認されるまで調整を原則見送る方針です』
スタジオに戻る。
『しかし、この方針に対しては、女性差別ではないかという見解も出ています。ゾアノイド調整による病気からの解放、身体能力の向上、寿命延伸の可能性。それらの恩恵から女性だけが遠ざけられているのではないか、という批判です』
専門家パネルが映る。
クロノス医療局の担当官。
旧国連系の生命倫理学者。
女性権利団体の代表。
調整済みゾアノイドの男性。
未調整の女性医師。
議論は穏やかだが、緊張していた。
『クロノス統治下の一年は、戦争を終わらせ、飢餓を減らし、医療とエネルギーを進歩させました。しかし同時に、人類とは何か、人間のままでいる権利とは何か、進化を選ぶ自由とは何かという、新たな問いを我々に突きつけています』
画面は再び地球へ戻る。
青い惑星。
国境線のない地図。
その上に、クロノスの紋章。
『恐怖政治ではなかった。だが、自由な旧世界でもない。混乱は減った。だが、選択の重さは増した』
キャスターは静かに言った。
『クロノス統治一周年。人類は確かに、新しい時代へ入りました。しかし、その時代を我々がどう生きるのか。その答えは、まだ出ていません』
映像の最後に、アララト山頂でのアルカンフェルの宣言が流れる。
『今日から、この惑星は我々クロノスが統治する』
その声の後、ナレーションが重なる。
『世界征服から一年。次に問われるのは、統治された人類が何を選ぶのかです』