赤より紅いヒーローアカデミア   作:幽界愉快

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十話目にして漸くヒロアカ世界に行けるようになりそうです。
うーん、進みが遅い。慎重派と言ってください。


【十話】夢を見せる妖怪

「レミリア・スカーレット。五百の年を生きた吸血鬼。過去に異変(紅霧異変)を起こした問題児。そして納豆が好き。」

 

「あら、そんなに私の事を知ってるアピールしてくれるなんて。残念だけどサインは売り切れてるよ。」

 

「また入荷したら教えてください。領収書を持ってきますから。」

 

辺りを浮かぶピンク色のゲルっぽい何かを抱えながらニマニマと笑い、レミリアを見下ろすドレミー。

レミリアははっきりと今の目的を認識できた。夢から別の世界へ行く方法の確立と、他同行者(フラン達)の行方(ゆくえ)。レミリアと同じならば、夢に囚われている筈だ。

 

「私と一緒か先に来た者達が居ると思うんだけど、どこにいるか知ってる?」

 

「夢はいつか醒(さ)めるものですよ。それも、とびっきりの悪夢なら尚更(なおさら)ね。」

 

「きっと夢見が悪かったのかな。」

 

例え夢から目覚めて現実世界へ戻っていなくても、レミリアが信用し信頼した頼れる仲間達だ。自力で何かしら対応しているに違いない。自信満々に空へ浮かび、腰を下ろすように足を組んで不遜(ふそん)な態度でドレミーを睨みつけた。

 

「早速本題なんだけれど、私は夢を通って別の世界に行きたい。通してくれる?」

 

「それはできないご相談ですね。夢の悪用をさせない為に私が居るのですから……真正面から来られても無理です。」

 

だろうなと言う反応だった。伊達(だて)に管理人と名乗ってないし、これが許されるのなら今頃世界はもっと無秩序だ。

実力行使をしてもいいが、それでもきっと意地でも通してくれないに違いない。説得しなければならない。

どうにかしてまずは自分の話に興味を持ってもらわなきゃならない。無関心の相手の話なんて頭に入ってこないだろう。レミリアはうんと悩んだ。

くあ、とドレミーは欠伸(あくび)をひとつしてみせた。

 

「諦めなさいな。夢の世界を通ってどこかへ行くことは許しませんよ。特例も例外もありはしないのですから。」

 

「そりゃ残念。」

 

「それにしても、貴女はよく夢で空で溺れてる。本当は怖いのかしら。 悪夢ではないけれど、かと言っていい夢でもない。困ったものです。最近みんな夢見が悪いから美味しくない……。」

 

ドレミーは夢を監視する。例えそれが幻想郷の住人であろうと。巫女はいつものんびりしてるし、魔法使いはファンタスティックな驚きの夢が多い。本人の望みや隠した思考がよく分かる。

そしてレミリアは空(・)で(・)溺(・)れ(・)て(・)る(・)ときた。どういうことなのだろうか。当の本人も首を傾げていた。

 

「それってどういう意味?」

 

「さあ?私は見たままを言ってるだけ。意外ね……もっとバイオレンスなものかコンプレックス増し増しなものかと思ってたわ。」

 

「ケチつける気?」

 

「いえいえそんな……滅相(めっそう)もない。」

 

のらりくらりとしながらくすくすと笑われる。なんとかして食いついて貰わないと困るが、かといって糸口と言うものは見当たらない。

そう考えていたレミリアだが、ふと気になる事をドレミーがさっき口走っていたので、思わず疑問をぶつけた。

 

「さっき夢(・)が(・)美(・)味(・)し(・)く(・)な(・)い(・)って言ってたけど、アンタってそういうのが主食なの?何味?」

 

「ええ、私は夢を食べる獏(妖怪)ですから。口に入れるものはなるべく美味しくしたいでしょう?」

 

夢に美味もなにもあるものなのか。と首を傾げながらとりあえず事実を飲み込んだ。これは、もしかしたら使えるかもしれない。

 

「私なら、アンタに極上の夢を提供できるわ。」

 

ドン。と大きく言い切った。挑戦的に口角を上げてふんぞり返ってみせた。流石のドレミーもこれには困惑を禁じ得ない。

 

「もしかして吸血鬼クッキングでもする気?血を掛けてお湯を注いだら完成とかしないんですけど……。」

 

「血は鮮度が命よ。3分くらいの。」

 

ニッコリと笑みを深めながら一歩踏み出し、ドレミーに近寄る。ドレミーは錯覚かもしれないが、まるで手を伸ばせば触れるくらいまで近寄ってきた気がした。しかし、目をこすってよく見ればそんなことは全然ない。レミリアのカリスマ的威圧がその錯覚を呼び起こしている。

 

「私は、私はただ夢を見たい。リアリティがあって、面白くって、楽しくて、それからほんのちょっぴり過酷でスリルのある夢がね。別に、悪用はしないわ。貴(・)女(・)が(・)そ(・)の(・)夢(・)に(・)案(・)内(・)し(・)て(・)く(・)れ(・)れ(・)ば(・)い(・)い(・)だ(・)け(・)。私たちはただ寝るだけで良いからね。」

 

代わりに、美味しい夢を見せてあげる。

レミリアは甘美に囁いた。

 

「どんな夢がお好みかしら。もっとロマンティックなもの?それともエキゾチックで燃え上がるような?ああ、もしかして静かに海へ沈むような美しくも儚いものかしら。私なら全てを見せてあげられる。」

 

「はあ、なるほど。」

 

「貴女がその夢を見せてくれるなら、私たちは全力で貴女の望むように楽しんで、面白がって、時には悩んでいい朝を迎えてあげましょう。どうかしら、素敵でしょ?」

 

「要は、共犯者になれって事ですか。違法に悪用するのではなく、私の権能を持ってして合法に公認で夢を使うと……。」

 

「そういうこと。面白そうでしょ?」

 

そして、ドレミーはそんな面白そうなのは好きなはずだ。なぜなら、それが我々妖怪という存在だから。

レミリアはまた一歩近付いて、そしてドレミーへ手を伸ばした。あと一押しだと確信している。今のドレミーは天秤のようなものだ。あと少し、レミリア側の重りを一つ足せば完全に傾く。

 

「さあ、手を取りなさい。ドレミー・スイート……私が貴女に夢を魅せてあげる!」

 

レミリアの手がドレミーの目の前にある。本来なら、この手は取らないべきだ。当たり前である。レミリアのやろうとしてる事はドレミー(夢の管理人)を巻き込んで完全犯罪してやろうと言うものだ。

当初レミリア達は秘密裏に、あるいは許されてはないが夢から夢へ渡って望む世界へ行くことを目的としていた。

しかし、今のレミリアは違う。ソ(・)レ(・)が許されてないのなら、許されればいい。許す立場の者から望んだ夢を取り替えて見せてもらい、その世界へ渡っていけばいいと考えついてしまったのだ。

この手を取れば、ドレミーはその共犯者として担ぎ上げられることになる。レミリアの望む夢から別の世界へ渡ることを許してしまう。方法は違えどやってる事は最初の目的と同じ夢の悪用だ。

 

「ああ、でも。見てみたくなってしまう。」

 

ゆるりとニヒルな笑みは深まって、レミリアの手にそっと熱が触れた。

 

「期待してます、レミリア・スカーレット。貴女の見る夢の先を、その甘美なる味を。」

 

手のひらにキスを落とし、レミリアを見上げた。

 

「交渉成立ね、ドレミー。私につくのだから、期待を超えたものを約束するわ。だって、貴女と契約したのは五百年を生きる夜の支配者たるこの私だよ。椅子を用意しなさい。転げ落ちる準備をするのよ。」

 

「労る腰は生憎と無いもので。」

 

そうして、レミリアは別世界への切符を手に入れたのであった。




妖怪は楽しいのが好きです。年がら年中宴会を開いてもきっと毎日来ますよ。なんたって3日おきの宴会を飽きも来ず楽しみにしてる魔法使いが居るくらいですから。

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