以前見切り発車で始めた小説の内容をリセットし、書き始めることにしました。
他のも更新しないといけないのにな…。
JR北海道の車両たちの整備を行う、苗穂運転所。
…その中にある一つの訓練線。
銀を基調にした服を纏った一人の少年が、静かに走っていた。
「…あと、もう少し…!」
彼の名前は
その形式名をキハ285系という。
…北海道内をさらに早く移動できるようにするため、北の大地へやってきた。
様々なJR北海道が持つ最先端技術を併せ持っており、JR北海道のフラッグシップとなる車両、…となるはずだったのだが。
「…少しでも俺ができるってことを見せないと」
…彼は苗穂の訓練線を走ることしかできず、彼が本線を走る機会は片手で数えられるほどだった。
…理由はJR北海道の方針転換である。
彼は北海道内を速く走るために生まれてきた。
…ただ、彼の親とも言える、JR北海道が彼にかけることができる時間・余裕は全くなかった。
鉄道会社として一番大事なこと…、『安全に人々を北海道内を移動させる』こと。
…それができていなかったのだ。
『…北翔、来たばっかりだが本当に申し訳ない!』
北海道にやってきた北翔は、到着してすぐにJR北海道からそう謝られたことを、彼は忘れたことがない。
『安全を最優先する方針に変えた今、お前という速さを追求した車両を走らせる余裕はない。
…お前がこの北の大地を駆け抜ける姿は僕も見たい。
だが…、これからのうちを考えたら、お前はウチが目指すものとは真逆の車両なんだ。
…これから僕も、お前が活躍できる場所を探す。
…すまない。苗穂の訓練線で力を積んでおいてくれ』
『…分かり、ました…』
JR北海道の申し訳ない表情から言い放たれた実質の戦力外通知。
…北の大地にやってきたばかりの彼は静かにそう答えた。
◇ ◇ ◇
「…北翔、そろそろあがれ。
いくらなんでも、これ以上はオーバーワークだぞ」
訓練線で走り続ける俺の姿を見て、苗穂にやってきていた俺の大先輩、キハ281系の、
「いえ、まだまだですよ、走那先輩。
俺の役割が見つかるまで、それまで休んでろなんて…」
そう拒む俺に嫌気がさしたのか、頭をかいて走那先輩はいつも以上の強い口調で言ってきた。
「いいから今日はもう休め!先輩命令だ!
お前が衰弱していく姿を、これ以上見てられねえんだよ!」
そう言い放った走那先輩は、俺の手をつかみ、そのまま無理やり背中に乗せてそのまま部屋へと歩いていく。
「…そ、走那先輩!
自分で行きますよ、俺!
他の
そう恥ずかしがる俺だが、走那先輩は「いつものことだろ」と気にしない。
確かに訓練線で走り続ける俺を無理やり連れていく走那先輩の姿は苗穂名物になってるって聞いたけど…。
「そこまでのことをしてんだ、お前はよ。いったんおとなしくおぶさってろ。
…後輩を、こんな下らねえオーバーワークでつぶしたくねえよ私は」
そう話しながら、走那先輩は俺を連れていく。
「…そういや、この前苫小牧で稚咲のやつにあってよ」
「…姉さんに、ですか…?」
北見
苫小牧にいるキハ160系であり俺の姉だ。
「『…苗穂に行ったら、北翔に『無理しすぎないように』』って伝えてくれだとよ。
ったく、姉を心配させるんじゃねえよ…」
そう話す走那先輩に、俺は「そんなことしてないですよ…」と返す。
「心配させるなんて、俺はただ自分のできることを探すために毎日走っているだけで…」
そう話すと、先輩は「そう思ってんのはお前だけだっての」と返してくる。
「『苗穂の訓練線で走り続けてるやつがいる』って話題になってんだよ。
…この前は函館でもその話が出たんだぞ?
お前はいい加減休むってことを覚えるんだな」
「…はい、走那先輩…」
走那先輩の言葉に対して、俺は静かにそう答えるしかなかった。
◇ ◇ ◇
「…ふうっ」
走那先輩によって風呂に入らされ、自分の部屋へと戻ってきた俺。
ベッドに横になった俺は天井を見つめる。
「…姉さん、心配しなくてもいいのに…」
俺はそうつぶやく。
…確かに、俺はトレーニングをしすぎていたかもしれない。
姉さんと一緒にいた頃は、姉さんが俺を止めてくれていた。
「…でも、もう状況が違うんだよ。姉さん…」
苫小牧で過ごすことになった姉さんを見送り、俺は1人になった。
たまに走那先輩が声をかけてくれるとはいえ、それでも…。
「俺は、走って居場所を見つけなきゃ…」
姉さんと別れてから数か月が経ったころ、俺の耳に聞こえてきた言葉。
『…もうこれ以上、北翔を苗穂にとどまらせることはできない』
あの後、俺に変わる車両たちが現れ、俺の予定していた場所はすでに埋まってしまった。
それ以外にも俺ができることを北海道さんは探してくれていたが、どれも無理がありすぎる話らしい。
「…せめて、人のためになることがしたい。
…それが鉄道車両として、俺の唯一の願いです」
俺は何度もそう伝えた、…だが、いい返事が返ってくることは一度もなかった。
それから眠れない日々が続いている。
目の下のクマ、憔悴しきった表情…。
…いつのまにか俺に声をかけるのは、仕事の合間に来てくれる走那先輩と姉さんだけになってしまっていた。
「…外の空気を吸ってこよう」
いつまでたっても眠れない俺は、部屋から出て行った。
◇ ◇ ◇
「…いつまで走れるんだろうな俺」
いつもの訓練線を歩きながら、俺はそう呟いた。
…場所は選ばない、俺は求められた場所を走る。
それが北海道…、いや北海道以外のどこでもだ。
そう思う俺だが、いつ終わってもおかしくないこの命。
…俺はどうしたらいいのか。
そう考えていれば、自然と俺はもう走ることを選択していた。
…そんな中である。
「…あれ、こんな道あったっけ…?」
訓練線の終着点の直前に、茂みの中へとつながっていく道があった。
訓練線は苗穂の中からつながり、奥へ奥へとつながって終わりがあるだけの一本道である。
分岐する道なんてあるはずがない。ここのことは俺が一番知っている。
…ただ、憔悴しきった俺に選択肢はなかった。
「行ってみよう、この道」
…初めて通る道を走れば、多少気が紛れる。
そう思った俺は、その道を選択した。
キハ285系である主人公は基本的にはクールな少年なのですが…。
登場して早々、自分の価値を否定されたので、かなり自分に否定的な性格に変わってしまいました。
姉がいる頃はそこまでだったのですが、姉がいなくなり基本的に一人になるとストッパーが消えてしまい、「自分の場所を見つける」という漠然とした目標のために、ただただ訓練線を走るだけの車両になってしまいました。
…それと途中で出てきたキハ281系の先輩はこんな感じ。
【挿絵表示】
基本的には「走れば何かわかんだろ!」という豪快な思考の持ち主ですが、この状態にまでなってしまった後輩である彼の状態を姉以外で一番心配している車両。
初めて会った時に「悩んでるより、一緒に走ろうぜ!」という言葉で彼を連れだしたのですが、その言葉と彼を取り巻く状況により走ることしかできなくなった彼に責任を感じており、自分に新たな後輩(キハ261系たち)ができてもなるべく苗穂へと顔を出すようにしています。
苫小牧にいる姉についてはまた後々に…。