俺が目を覚ましたと連絡をきき、倒れていた俺をこの永遠亭まで連れてきてくれた藤原妹紅さん、幻想郷のエンジニアと呼ばれる河童の河城にとりさんもやってきた。
「妹紅さん、助けてくれてありがとうございました」
俺がベッドの上で頭を下げると、妹紅は「良いってことよ」と返してくれる。
「迷いの竹林には、よく人間が迷い込んでるし。
それと同じことをしただけだよ、私は」
そう妹紅さんが話すと、にとりさんが「それでさ」と聞いてくる。
「君の心臓からエンジンの音が聞こえてきたんだけど、君の体どうなってるのかな?
まさか、外の世界で作られた精巧なロボットとか…」
そう目をキラキラさせながら聞いてくるが、「そんなんじゃないっすよ」と答える。
「俺は列車っていう乗り物の精霊みたいなもんです。
だから人間ではないし、俺の心臓はエンジンで動いてるんですよ」
「まあ、詳しいこと言ったらややこしくなるんで割愛させてもらいますけど」と続けて説明していく。
「…それで、これからどうしていきたいのかしら?
いつまでもあなたをここに置いておくわけにはいかないわよ」
俺の話を聞いていた輝夜さんが俺にそう聞いてくる。
…確かに、何もしないままここにはいられない。
それこそ苗穂でいたころの俺と何も変わっていないからだ。
「…誰かのために走りたい。
…ですかね」
「…走りたいって、どういうこと?」
鈴仙さんからそう聞かれ、俺は「その通りの意味ですよ」と返す。
「…俺みたいな鉄道車両って、誰かのために走るために生まれてきたんです。
ただ、俺は向こうの世界にいる間、人のために走ることが出来なかった…。
自分のためにしか走ることが出来なかったんです」
俺は自分の足を見やりながらはなしていく。
「…多分、あなた達がこうやって俺を認識できている以上、あなた達を乗せて走るってことはできない。
ってなれば俺ができることは、ただただ走ることしかありません。
…人のために走る、それをここでやりたいんです」
俺は真剣な目でそう話す。
「なるほど、誰かのために走りたい、ね…」
永琳さんはそう考えこむ。
「…そうだわ、妹紅」
「…なんだよ」
輝夜さんの言葉に妹紅さんが嫌そうに返す。
「あなた、人里の上白沢慧音と仲が良いわよね」
「…そうだけどよ、慧音になにしてもらうんだ?」
妹紅さんがそう聞くと、輝夜さんは「慧音の元で働かせるのよ」と続ける。
「慧音の元で働いていれば、慧音だけじゃなく徐々に人里の人間たちからの信頼も得られるようになるんじやないかしら?
教師だから、幻想郷についても教えることが出来るし、いい案だと思わないかしら」
そう話す輝夜さんに妹紅さんは「確かにな…」と告げる。
「慧音さえよければ、北翔は後ろ盾を貰って安定した仕事をすることが出来る。
いい案だな」
そう言って妹紅は、立ち上がって外へと歩いていく。
「慧音に外から来たやつの面倒見てくれねえかって聞いてくる。
多分断られることないと思うけどよ」
「そうね、お願いするわ妹紅」
永琳さんは出ていく妹紅さんにそう声をかけた。
◇ ◇ ◇
そして、それから数日後。
ついに俺の退院の日がやってきた。
「…永琳さん、輝夜さん、今まで治療ありがとうございました。
その内また来ます」
俺は永琳さんと輝夜さんにそう頭を下げる。
「ええ、あなたの体を診せてもらったけど、あなたの体のことを一番知ってるのはあなた自身。
体調には気を付けてね」
「久々に外の人間と話せて私もうれしかったわ。
気になったことあれば、いつでもいらっしゃい」
「…北翔、私も人里には足を運ぶつもりだから、あった時にはまた色々と話聞かせてね」
「…ああ、分かってるよ鈴仙。
あった時はいろいろ話そうぜ」
…ちなみにだが、鈴仙は「敬語とかいらないから」ということでタメ口で話すようになった。
どうかとは思ったのだが、鈴仙からそう言ってきたし、永琳さんと輝夜さんも何も言わないので大丈夫なんだろう。
「…それじゃ、また」
俺はそう言って一礼してから永遠亭の門を出る。
…門の外には妹紅さんが待ってくれていた。
「…お待たせしました、妹紅さん」
「ああ、さっさと行こうぜ。
慧音にはもうお前のことは言ってるからよ」
そう言って歩いていく妹紅さんの後を俺は着いて行く。
「…あの、慧音さんってどんな人なんですか?」
俺がそう聞くと、「寺子屋で教師やってるんだよ」と妹紅さんは話してくる。
「…人間と妖怪のハーフなんだけどよ、アイツ。
全部人里の人間を守るためにやってるんだよな…。
私にもいろいろと世話焼いてくれるし」
「そうなんですか…」
「…まあ、怒ったら頭突きしてくるけど、基本的には大丈夫な奴だから安心しとけよ」
「なんか今の言葉で一気に不安になったんですが!?」
俺は妹紅さんの言葉に突っ込むようにそう返した。