深く、暗い水の底に沈んでいくような感覚だった。
全身を圧迫する息苦しさと、骨の髄まで凍りつくような冷たさ。
だが、その絶望的な暗闇の果てに、ふっと温かい光が差し込んだ気がした。
「……ん、んん……」
重い瞼をゆっくりと押し上げる。
視界に飛び込んできたのは、見慣れた宿屋の木目の天井ではなく、無機質で真っ白な天井だった。
鼻をくすぐるのは、甘いケーキや芳醇な紅茶の香りではなく、鼻の奥をツンと刺すような薬草と消毒薬の匂い。
背中には硬めの清潔なシーツの感触がある。
(……ここは、どこ?)
ぼんやりとする頭で思考を回転させる。
記憶の最後にあるのは、
(生きてる。私、生きてる!)
自分が海の藻屑にならなかった事実を悟り、思わず歓喜の声を上げようとした。
だが、体を起こそうと力を込めた瞬間。
「がっ……、ぁ……!?」
全身の筋肉と骨がすり潰されるような、凄まじい激痛が走った。
「痛っ……痛い痛い痛いっ!」
たまらずベッドの上で身をよじる。
何事かと思い、私は恐る恐る自分の体を視界に収めた。そして、息を呑んだ。
「嘘、でしょ……?」
自分の右腕、左腕、そしてはだけた衣服から見える胸元や首筋にかけて。
私の真っ白な肌に、まるで陶器が割れたような痛々しいヒビが幾筋も走っていたのだ。
しかもその亀裂の奥からは、まだ微かに青白い魔力の光がほのかに漏れ出している。
擬似的なレベル10という未知の領域にまでステイタスを引き上げた『
魔力による肉体の自壊現象が、未だに私の体を蝕んでいた。
(こんな状態で寝てる場合じゃない! 早く治さないと!)
私は激痛に震える右手を無理やり持ち上げ、気力を振り絞って魔法の詠唱を紡ぎ始めた。
声がひどく掠れていたが、構うものか。
「【ここに幕は開かれる 原初の蒼 流れる紅】」
病室の空気が微かに震え、私の周囲に淡い水の魔力が集束し始める。
「【玉座に眠る龍王の心臓が すべてを赦し すべてを癒す】」
蒼い水流と、生命の象徴たる紅い光が螺旋を描きながら私の体を包み込んでいく。
「【愛の杯を掲げ 貴女に捧げよう】――『メル・プリモルディアル』」
発動。
自己再生と広域回復を司るチート魔法。
その圧倒的な再生の力が、私の肉体に染み渡る。
蒼と紅の光が、ヒビ割れた肌の亀裂に吸い込まれるように入り込み、ジュワァァァッという微かな音と共に、肉と皮膚を内側から強引に修復していく。
痛みがスーッと引いていき、熱を持っていた体が心地よい清涼感に包まれた。
青白い光を放っていた亀裂は、ものの数秒で綺麗に塞がり、痕一つ残さない元の純白の肌へと戻っていく。
「ふぅ……完璧ね。さすが僕の魔法だ」
私がベッドの上で満足げに自身の腕を撫で回していた、まさにその時だった。
バンッ!!!
「な、何してるんですか!?」
病室の扉が、蝶番が壊れそうなほどの勢いで蹴り開けられた。
入ってきたのは、白衣のような制服を纏ったヒューマンの女性。
彼女の胸元には、光玉と香草を象ったエンブレム――
「……おや。騒々しいね、ここは君たちの――」
「勝手に魔法を使わないでください!!」
私が優雅にターンを決めて挨拶しようとしたのを遮り、女性治療師は鬼の形相でベッドに詰め寄ってきた。
「あ、あなた、自分がどれだけ危険な状態だったか分かってるんですか!? 魔力と
「え、あ、うん……」
「ディアンケヒト様の特製霊薬を何本使ったと思ってるんですか! 少し安定したからといって、起きて早々に魔法を使うなんて言語道断です! また魔力暴走を起こしたらどうするつもりですか!」
(えええぇぇっ!? なんで私、起きて早々に見ず知らずの女の人にブチギレられてるの!? こっちは患者なんですけど! しかもめっちゃ顔近いし怖い!)
内心でビビりながらも、私は彼女の「無茶な魔法の使い方」という言葉に、こっそりと首を傾げた。
(いやいや、無茶な使い方って言われてもねぇ。私が好き好んで自爆特攻みたいな魔法の使い方をしたわけじゃないし。あれは単に、リヴァイアサン戦が長引きすぎて『前奏審判』のステイタス補正が異常な数値まで跳ね上がって、私の器の限界を超えて勝手に魔力がオーバーフローしただけ。言うなればスキルの仕様による不可抗力。だからそんなにガチギレされても、いまいちピンとこないんだけど……)
とはいえ、ここで「スキルの仕様なんで」と言い返せば火に油を注ぐのは目に見えている。
私はスッと目を伏せ、余裕ぶった笑みを顔に貼り付けた。
「ふふっ、心配性だね。だが無用な気遣いだ。君たちの薬など気休めに過ぎない。僕の圧倒的な回復魔法の前では、どんな傷も――」
「気休め!? 1ヶ月も目を覚まさなかったくせに何言ってるんですか!」
「……え?」
私の言葉が、ピタリと止まった。
病室の空気が凍りつく。
「い、1ヶ月……?」
「そうです! オラリオ中がお祭り騒ぎになっている間、あなたはずーっと死線を彷徨って眠りこけてたんですよ! 本当に、手間のかかる患者なんだから……!」
(1ヶ月!? 私、あの海から帰ってきて1ヶ月も寝てたの!? ちょっと待って、オラリオの有名スイーツ店が今月出してる期間限定のタルトとか、全部終わってるじゃん! 私の至福の時間がぁぁぁっ!)
私が絶望のどん底に突き落とされ、口をパクパクさせていると、背後から「騒がしいな」と扉をノックする音が聞こえた。
「フリーナ!? お前、目ぇ覚ましたんか!!」
勢いよく病室に飛び込んできたのは、朱色の髪を束ねたエセ関西弁の女神、ロキだった。
いつもの飄々とした糸目は限界まで見開かれ、その顔には隠しきれない安堵と疲労が滲んでいる。
「あ、ロキ様……! ちょうどよかったです、この患者、起きて早々に魔法を使って……!」
「すまんな、うちのアホが迷惑かけて。後はウチが説教しとくさかい、ちょっと二人にしてくれへんか」
「……はぁ。わかりました。後で必ず精密検査をしますからね!」
女性治療師は私をジロリと睨みつけながら、足早に病室を出て行った。
「……ふん。大げさな連中だ。僕の体など、僕自身が一番よく理解しているというのに」
(助かった……! あのナース、マジで怖かったんだけど! ロキ、グッジョブ!)
私がベッドに座り直して髪をかき上げると、ロキはズカズカと歩み寄り、私の額を指で思い切り弾いた。
「痛っ! なにするんだいロキ!」
「ホンマに、アホちゃうかお前は……! アルフィアの盾になるとか、どんだけ無茶な魔法の使い方しとんねん! ウチは聞いてへんぞ!」
ロキの怒声が病室に響く。
だが、その手は微かに震えていた。
「全身ヒビ割れて、魔力垂れ流しで運ばれてきた時、お前ホンマに死体かと思ったんやぞ……! 1ヶ月も起きへんから、ウチがどれだけヒヤヒヤしたか……っ」
(だから、無茶したわけじゃないってば! スキルが勝手にオーバーフローして自壊し始めたから、どうせ壊れるならってヤケクソでアルフィアの盾になっただけだし! 私としてはスキルの仕様でこうなっただけだから、別に無茶したつもりはないんだけどなぁ……まぁ、心配かけたのはちょっと悪い気もするけど)
自壊の理由を知っている私としては、周囲の大騒ぎが少しだけ滑稽にすら思えた。
「当然だろう、ロキ」
私はロキの言葉を遮り、フッと不敵に笑いかけた。
「僕の完璧なサポートがなければ、あの『静寂』でも灰になっていたはずだ。僕に感謝するんだね。それに、僕は死なないと言っただろう?」
「……アハハ、相変わらず口が減らんやつや」
ロキは深くため息をつき、ベッド脇の丸椅子にどっかりと腰を下ろした。
「で? 結末はどうなったんだい? 僕は途中で寝てしまったからね」
「ああ、完璧や。アルフィアの魔法が直撃して、リヴァイアサンは完全に消滅したらしい。残骸は海の底や。オラリオ中が今、悲願達成のお祭り騒ぎになっとるわ。ゼウスもヘラも、鼻高々やで」
ロキの言葉に、私は心の中でガッツポーズを決めた。
(よしっ! これであの絶望的なクソ海蛇とおさらばね! 生き残った! 私の平穏な日常が帰ってきたわ!)
「ふふっ、僕の活躍のおかげだね。マキシムたちには、報酬にたっぷりと色をつけてもらわなければ」
「せやな。……ただ、ちょっと残念なお知らせがあるんやけど」
「残念なお知らせ?」
ロキが、気まずそうに視線を逸らした。
「あんたを海から引き上げた時な、あんたの剣が見当たらんかったんよ」
「……」
「海に落ちた反動で手放してもうたんやろな。あんた、あれ『高かった』言うてたやろ? 勿体ないことしたな。まあ、命があっただけめっけもんやと思い」
(……嘘でしょ)
私の思考が、ピタリと停止した。
(75万ヴァリスが!? 稼いだお金をスイーツに全ツッパしてる私が、文字通り血の滲むような思いで貯めたなけなしの貯金叩いて買った、あのレイピアが、海の底!? 嘘でしょおおおおおっ!! あのクソ海蛇め、死んでからも私の財布を苦しめる気!? 許さない許さない許さないっ!)
「フ、フリーナ? 大丈夫か? 顔が死んでるで?」
「……問題ない。神である僕にとって、金銭など俗なものに過ぎないからね」
顔の筋肉を引きつらせながら、私はギリギリの精神力で外面を保った。
* * *
翌日の昼下がり。
「おう! 邪魔するぜチビっ子!」
「ちょっとバルス、声が大きいのよ。ここは病室よ。常識というものがないのかしら」
病室の扉が開き、現れたのは見慣れた二人だった。
無骨な大剣を背負った筋肉ダルマの
(うっわ、来たわね戦闘狂コンビ。フィンやガレスが来ないってことは、やっぱりあいつらは留守番だったのね。当然だけど)
二人の姿を見て、私は内心で少しだけホッとしていた。
バルスは腕に分厚い包帯を巻いているが足取りは軽く、セリアは少し顔色が青白い程度で済んでいる。オラリオの最前線で戦い抜いた彼らも、無事にあの地獄を生き残ったのだ。
「ふん、君たちも無事だったようだね。僕が体を張って稼いだ時間のおかげだよ。大いに感謝したまえ」
「ははっ! 違いねぇ! あの時のお前、最高にイカれてたぜ!」
バルスが豪快に笑いながら、ベッドの脇に立って私の頭をガシガシと乱暴に撫で回した。
「痛い痛い! やめたまえ、髪が乱れるだろう!」
「いやマジでよ、あの魔法! あんな威力出せんのかよ! リヴァイアサンのブレスを正面から叩き斬るなんて、マキシム団長でもできねぇ芸当だぜ!」
「……本当に、見ているこっちの寿命が縮んだわ」
セリアが扇子をパチンと閉じ、ベッドの端に腰掛けた。
その瞳には、呆れと、隠しきれない安堵の色が浮かんでいる。
「貴方の体がヒビ割れて青い光を噴き出した時は、魔力暴走で自爆でもするのかと思ったわよ。海面に落下した貴方をバルスが引き上げた時は、本気で手遅れかと思ったんだから」
「おう! あの波の中、鎧着たまま海に飛び込んで引き上げてやった俺に感謝しろよな!」
「うるさいな! 結果的に勝ったんだから僕の戦術は完璧だったということさ!」
(死ぬかと思ったわよこっちも! 誰が好き好んで自爆ギリギリまで力を使うもんですか! そもそもあんたたちが海に落ちた私をサッと拾ってくれれば……いや、あの海流じゃ無理か。鎧着たまま海に飛び込んだバルスには感謝しといてあげるけど)
私が唇を尖らせてそっぽを向くと、バルスがニヤニヤと笑いながら顔を近づけてきた。
「でもよ、聞いたぜ? お前、海に落っことされた時に剣を手放しちまったんだってな」
「……ッ!」
傷口に塩を塗り込むバルスの言葉に、私の肩がビクッと跳ねた。
だが、彼から続いて出てきた言葉は、私の想定をはるかに超えるものだった。
「ま、命があっただけでも丸儲けだ。それにいい機会じゃねぇか。お前、いい加減あんな安物の剣を使うのはやめろよな」
「え?」
「そうよ。貴方のあの規格外の魔法を纏わせるんだから、数十万ヴァリス程度の安物じゃあすぐ折れるに決まってるわ」
セリアが呆れたようにため息をつき、私をジト目で睨む。
「次からはちゃんとしたものを買いなさい。ヘファイストス・ファミリアのトップ層が打った、最低でも数千万から一億ヴァリスはする第一級品の剣じゃないと、貴方の力には耐えきれないわよ」
「……」
(…………は?)
私の思考が、再び停止した。
バルスもセリアも、至極当然の事実を述べているという顔をしている。
(ちょっと待って。数千万から、一億ヴァリス!?)
確かに、彼らの言うことは冒険者の常識に照らし合わせれば正論だ。
基本的に付与魔法を纏わせた状態でしか使わないとは言え下層を超えて深層に挑むには、75万ヴァリスのミスリル合金芯材のレイピアでは限界を迎えていた。
むしろ良く持ったと言ってもいい。
レベル1の時に有り金全部で買ったレイピアをここまで使い続けたのだから。
ただ、私の現状のスペックから見れば、あのレイピアは完全に「安物」だったのだ。
だが。
(冗談じゃないわよ! そんな数千万もする剣を買ったら、私の至福のスイーツ代が何年分吹き飛ぶと思ってるの!?)
ダンジョンで稼いだお金を、オラリオ中の高級ケーキや限定タルト、そしてフカフカのベッドの維持費に全ツッパしている私にとって、貯金などという概念は無に等しい。あの75万ヴァリスのレイピアでさえ、泣く泣くスイーツのグレードを一つ落として(それでも十分高級だが)必死に貯めた超絶奮発の買い物だったのだ。
(それを安物扱い!? あんたたちの金銭感覚どうなってんのよ! ゼウスとヘラの第一級冒険者予備軍だからって、金銭感覚バグりすぎじゃない!? 買えるわけないでしょそんな一億の剣なんか!)
言い返したい。
「あれでも私にとっては高かったんだぞ! スイーツ代のせいでお金がないんだよ!」と胸ぐらを掴んで揺さぶってやりたい。
だが、ここでそれを言えば、「75万ヴァリスの剣を海の底に沈めて泣いている上、スイーツ代のせいでお金がない神」という、最高に情けない図が完成してしまう。
「ふ、ふふっ……」
私は顔の筋肉を引きつらせながら、口元を手で覆った。
「た、たかが安物の剣一本失ったくらいで、僕が落ち込むとでも思ったのかい? 君たちの言う通りだ。僕の圧倒的な力に耐えきれないような鈍らなど、最初から不要だったのさ!」
「おお、わかってんじゃねぇか!」
「素直に聞き入れるなんて珍しいわね」
「う、うるさい! 次はもっと相応しい剣を見繕ってやるさ! 僕の魔法があれば造作もないことだ!」
(うわあああぁぁぁん! 75万ヴァリスううぅぅぅっ! 一億の剣なんて一生買わないわよ! 絶対に魔法だけでなんとかする戦法を極めてやるんだから!)
私が内心で血の涙を流していると、バルスがドンッと自分の胸を叩いた。
「はははっ! なら、快気祝いに俺が奢ってやるよ!」
「奢る?」
「俺たちもあのトカゲ討伐の特別報酬がガッツリ入るからな。酒場じゃなくて、お前がいつも言ってる、あの甘ったるいケーキの店で奢ってやるよ!」
「……バルス」
私はスッと視線を戻し、真剣な顔で彼を見つめた。
75万ヴァリスの傷を癒すには、それ相応の甘味が必要だ。いや、一億ヴァリスの精神的ダメージを埋めるには、百個でも足りないかもしれない。
「言ったな? 今、言質は取ったぞ。オラリオで一番高い極上ケーキを、百個奢ってもらうからな!」
「ひゃ、百個!? 待て待て、いくら報酬が出たからって俺の財布が死ぬ!」
「知るか! 海から引き上げてくれた恩はこれでチャラにしてやる! 君の財布がすっからかんになるまで絞り尽くしてやるから覚悟したまえ!」
「アホね、貴方たち」
セリアが呆れたようにため息をつきながらも、その口元には柔らかな笑みが浮かんでいた。
病室に、私たち三人の笑い声が響き渡る。
泥臭く、死と隣り合わせだったあの海上の戦い。
それを生き抜いたからこそ味わえる、この他愛のない会話が、今はただ心地よかった。
* * *
その後。
「退屈だ……退屈すぎる……」
私はベッドの上でゴロゴロと転がりながら、恨めしげな声を漏らした。
目を覚ましてから、ディアンケヒト・ファミリアの厳しい監視――主にあのヒューマンの女性治療師――のもと、経過観察としてさらに一週間も入院を強制されることになったのだ。
身体に異常がないか。
自壊の兆候が再発していないか。
毎日毎日、念入りに調べられる。
(こんな念入りに調べなくても、私のチート魔法で完全に治ってるっての! 無茶したわけじゃないって言ってるのに! 早く外に出してよ! バルスの財布を空にするケーキ祭りが私を待ってるのよ!)
暇を持て余した私は、見舞いに来るロキやバルスに「第七区の限定タルトを買ってこい」「あそこのシフォンケーキじゃないと食べない」と無理難題を押し付け、病室にいながらオラリオのスイーツを満喫するという暴挙に出ていた。
そして、ついに訪れた退院の日。
「もう二度と無茶な魔法の使い方はしないでくださいね! 次やったら、ベッドに縛り付けますから!」
「はいはい、わかっているよ。君たちの世話にはもうならないさ」
女性治療師の小言を適当に受け流し、私はディアンケヒト・ファミリアの本拠を出た。
扉を抜けると、眩しい太陽の光が私の全身に降り注いだ。
抜けるような青空。
石畳を行き交う冒険者たちや商人たちの活気ある声。
遠くから漂ってくる、香ばしい屋台の匂いと、甘いお菓子の香り。
(ああ……最高だ)
大きく深呼吸をして、私は目を閉じた。
波の轟音も、絶望的な化け物の咆哮もない。
やっぱり私は、泥臭い戦場より、この輝かしい街で安全に、遊んで暮らすのが一番合っている。
数千万の剣なんて買わなくていい。私はスイーツを食べて生きていくのだ。
「ふふっ……さあ、僕の優雅なる日常の再開だ! 待ってろ、極上のスイーツたち!」
私は新調したばかりの豪奢なマントをバサァッと翻し、オラリオの青空の下、意気揚々と歩き出した。
私の「楽して遊んで暮らす第二の人生」は、まだまだこれからなのだから。
フリーナは金が無いと思っていますがパーティーを組んで以降のお金の管理はセリアが行なっていて基本このパーティーは稼ぎを10としてそれぞれに3ずつ、残る1をパーティーの資金にプールしている形になります。
3の中から1をファミリアに入れていても残る2は手元に、もっと言えばギルドに預けているわけで、レベル1の時点で中層にいるフリーナが今までの数年間、下層、深層と稼ぎは増え続けているのにスイーツの食べる量や宿屋、武器までほとんど変わっていないことからギルドにはかなり蓄えられています。
ただ、ギルドの手続きが面倒だとセリアに任せているせいで稼いでいる額を知らないため、(こんなにスイーツを食べてるんだから)金がないと錯覚しているだけです。
1億の剣なら2,3本買えるくらいには膨れ上がっているはずです。