ここだけ命の答えに辿り着いた少年に脳を焼かれたゲヘナ生がいる世界線 作:伝説の超三毛猫
ホラー映画に出てきそうなナース姿のチナツ。
抑圧してきた本音は「自分勝手に傷つく問題児たちを何故診なければならないのか」という徒労感・燃え尽き症候群、「いっそ手遅れになればいいのに」という冷酷な本音と、そう思ってしまう自己嫌悪。
『今度はどんな怪我をしてきたの~?―――まぁいいわ。全部治すから。だって私は火宮チナツですからね~。都合のいい救急箱。それが私。………笑っちゃう。』
『……なんで怪我したの?怪我しないようにしたの?してないでしょ。だったらその程度の怪我、自分で責任取れば?』
『自業自得でしょう。私は痛い思いをしたあんた達を見ても、かわいそうなんて思えない。………『いい薬になったじゃない』って思ってる。』
『助けたい?「助けなきゃいけない」の間違いでしょう?だって、見捨てたら私が責められるから。救護担当だから。常識人だから。いい子のチナツだから―――そう思われたいだけでしょ?』
『苦しい…つらい…嫌になる…!そんなやさしさ、本物じゃない!………ねぇチナツ。その“火宮チナツ”の役を脱いだら、あんたには何が残るの?』
『我は影…真なる我……』
『自分勝手な患者さんにはまず―――頭の治療から始めましょうか!!!』
ネ ネ「なんて公開処刑を…」
作 者「目の前の愉悦部たちはこういうの好きだと思うよ」
チナツ「こんなの…こんなの私じゃ」
通りすがりの番長「そこまでだ」
雨塚ネネ先輩。
自分―――火宮チナツにとって、彼女は放っておけない人だと思っていた。
風紀委員会の中で、よく自己犠牲でケガをしてくる委員だと思っていたけれど、一週間の失踪後からは、信じられないくらいに、心配の“種類”が変わったように思えていた。
最初は、救急医学部のベッドで休んで以降、休憩したり眠ったりしている姿を一切見なくなったことにある。
大丈夫ですかといっても、大丈夫というばかりで。
顔色は悪くない。呼吸も乱れていない。食欲も最低限はある。
それなのに――疲れている人間が自然と見せるはずの"隙"だけが、綺麗になくなっていた。
医療に携わる者として、睡眠不足の症状くらい何度も見てきた。
でも、その症状がネネには見られない。
まるで―――身体だけが眠ることを忘れてしまったみたいだった。
次に気になったのは、先生と初めて会った時。
一目見た瞬間に、ネネ先輩は完全に固まってしまった。
何を思って、あんなふうに言葉を失って先生を見ていたのかは分からない。
でもあの様子は驚いた、というより。
懐かしい人を見つけたような。
もう二度と会えないと思っていた誰かを見つけたような―――そんな顔だった。
『……ネネ先輩?』
『ううん、なんでもないわ。……ちょっと、眩しかっただけ』
あの時、声をかけた私にそう笑っていた。
でも、その笑顔は、どこか泣きそうで。
何度もその時のことを聞こうと思った。
けれど、その度に話題を変えられたり、巡回任務が入ったりして、結局今日まで聞けないままだった。
救護室の記録も、おかしかった。
ネネ先輩は決して丈夫な方ではなかった。
イオリ先輩の無茶に巻き込まれたり、自分を盾にしたり、誰かを庇って撃たれたり………
その度に、「また無理したんですか!」と叱って、「ごめんごめん」と困ったように笑う。
それがいつもの光景だった。
でも。
失踪から帰ってきてから。
診療記録は、ぴたりと止まった。
怪我をしなくなったわけじゃない。
怪我をしても、来なくなった。
誰にも見せなくなった。
まるで―――痛みに慣れてしまった人みたいに。
―――そして。
『ペルソナ!』
今日…あの戦場で見てしまった。
ネネ先輩が、自分のこめかみに拳銃を向ける姿を。
引き金を引いた瞬間……見たこともない異形が現れた現象を。
あれを見た瞬間、「何でもない」なんて言葉は、もう信じられなくなった。
その姿は、ヒナ委員長もイオリ先輩も、しっかり見ていた様子だった。
―――私は、私たちは、ネネ先輩に何があったのかを知らなければいけない。
◆◆◆◆◆
「あ、あのぉ………」
「…何?」
「ひっ、い、いや、なんでも、ないです……」
エデン条約の調印式での戦いが終わり、アリウスが撤退した今。
風紀委員会の委員長室は、普段以上に物々しい雰囲気が流れていた。
客用のソファにネネは座らせられ、その向かい側に先生とアコ、チナツが座っている。
ネネの両隣にはヒナとイオリがいて、しっかりと手を握っていた。…………仮に逃げ出しても、すぐに捕まえられるように。
“えぇと、どういう状況なのかな?……アコに呼ばれて以降、なんの説明もないんだけれど…”
困惑した様子の先生が、気まずい沈黙を破った。
その温かく優しい声に、ネネの肩がびくりと跳ねる。
ネネは伏し目がちに視線を泳がせ、先生と直接目を合わせようとはしなかった。
……というより、合わすことができなかったのだ。
「……先生。お忙しいところ申し訳ありません。
ですが、これは風紀委員会の活動において、見過ごせない事態なのです」
アコが厳粛な面持ちで口を開く。
その隣で、チナツは膝の上で固く拳を握りしめていた。
自分の目で見、自分の手で記録してきた「雨塚ネネ」という少女の異変。
眠らなくなり、痛みを表に出さなくなり、先生を見て泣きそうな顔をし――そして、己の頭を撃ち抜いた、あの異様な光景。
「先生……今日、私たちが戦場で目撃したネネ先輩の行動について、説明を求めるために集まっていただきました」
チナツの静かな言葉に、先生は首をかしげる。
“ネネの……行動?”
「ええ。単刀直入に言います」
両隣でネネの手をガッチリとホールドしているイオリが、我慢しきれないといった様子で身を乗り出した。
「こいつ、あの時に出てきたバカデカい敵を前にして……自分の頭を拳銃で撃ち抜いたんだ!!」
“……っ!?”
先生の表情が一瞬で凍りついた。
息を飲み、絶句する先生の視線が、一気にネネへと注がれる。
ネネは、気まずそうに眼を逸らした。
(……カイザーPMCと戦った時は、狂人扱いされるのが嫌で必死に隠したのに……)
心の中で深くため息をつく。
あのアリウスとの最終戦―――マシロを救うためには、もはや隠れて召喚する余裕などなかった。
結果として、ヒナとイオリにその姿をバッチリと目撃されてしまったのだ。
「イオリ、言葉が足りないわ」
静かに制したのはヒナだった。
だが、その目にも普段の冷静な姿とは違う、切実で重々しい感情が宿っている。
「ネネは……頭を撃ち抜いた直後、ヘイローが割れるどころか……背後に『異形の存在』を顕現させた。そしてその力で敵を一瞬で粉砕したの」
“異形……?”
「はい。正義実現委員会のマシロさんも目撃しています」
チナツが手元の端末を操作し、当時の様子が録画されたものを開いた。
ドローンが撮影していたのだろう。
「あれは普段の私たちの活動では起こりえない……全く新しい未知の現象です。ですが……それ以上に問題なのは」
チナツは言葉を切り、まっすぐにネネを見つめた。
「あの時の行動……自分の頭に銃を突きつけ、引き金を引くという行為に対する、ネネ先輩の迷いのなさです」
「…………」
「……逃げずに話して、ネネ。あなた、あの一週間の行方不明の間に……一体どこで、何をしてきたの?あなたの身に何があったの?」
ヒナの静かな、けれど温かい問いかけが室内に響く。
ネネの手を握るヒナの力は、逃がさないためというより、「もうどこにも行かせない」と繋ぎ止めるためのように優しかった。
ネネは、目を閉じた。
―――いつか、バレるだろう。
心の底で、思っていたことだった。
それがいつになるかは、漠然としていて分からなかった。
そもそも、思い出すだけで胸が締め付けられるような、あの一年間。自分の仲間に―――風紀委員会の仲間に、先生に、理解してもらえるだろうか。
仮に理解してもらえたとして……それでも、背負わせたくはなかった。
だが……いざその場面に直面して痛感した。もはや隠し通すなど不可能だ。
「………分かりました」
ネネは、観念したように息をついた。
そして一丁の拳銃を取り出す。普段戦闘で使っているものではない……S.E.E.S.の頃使っていた、ペルソナの召喚器だ。
「…それは?」
「まずあの時の力について話しますね。………アレの名前は『ペルソナ』。心の力のようなものです」
「心の…」
「力?」
「それを呼び出すためには、この銃が必要なんです。銃の形をした召喚器……もちろん、本物じゃありません」
「確かに……銃口が埋まっているわ。引き金も撃鉄も、ただの飾りみたい」
「はい。だから実弾なんて出ないし、頭に当てて引き金を引いたところで何かが飛び出したりもしない……いわば、ただの器具のようなものなんです」
ネネは淡々と、至極まともな事実としてそれを口にした。
そう、本物の銃ではない。弾丸など一発も入っていない。
「そう聞くと、まるで別の世界のお話のようですね」
「はい。実際、私は別の学校に行っていましたから―――一年間ほど」
「は!?」
イオリは立ち上がった。
無理もない。ネネの話には明らかな矛盾がある。
「お前、一年も失踪なんかしてないだろ? 一週間だったじゃないか!!」
「落ち着いて、イオリ」
「で、でも委員長……!」
“ヒナの言う通りだよ、イオリ。一旦、ネネの話を聞こう。………それで、別の学校というのは?”
「―――月光館学園。私もどこにあるのかは分かりません。少なくともキヴォトスではありません」
「証拠は?」
「…………私の部屋の、クローゼットの中。ゲヘナ学園の替えの制服の隣に、青い制服があります。胸の内ポケットには、その学生証も」
「じゃあ私が取ってくるわね」
ヒナはそう言って、委員長室から出ていく。
しばらくの沈黙の後、話を引き戻すようにアコが口を開いた。
「………仮に、その。別の学校に行っていたとしても、にわかに信じがたいですね。ペルソナ、などという力は……」
ネネは、ペルソナについて言葉でいくら説明しても分からないだろうという一種の確信があった。百聞は一見に如かず、という考えも。
そこで、流れるような動きでテーブルにあった召喚器を手に取った。
「見せた方が早いですね」
いうが早いか、召喚器のスライドを引き、歯磨きをするかのような自然な流れで、ソレを持ち上げて―――自分の眉間に当てた。
「……え?」
空気が止まる。
「お、おい?」
イオリが目を見開いた。
「ネネさん……?」
アコの表情が引きつる。
「せ、先輩……?」
チナツの血の気が引く。
そんな中で、先生だけは反射的に立ち上がった。
“ネネ、待っ──”
しかし、ネネは、本当に何の迷いもなく。
呼吸をするのと同じくらい当たり前の動作で―――
「――ペルソナ。」
―――引き金を引いた。
――パァンッ!!
乾いた破裂音が、委員長室いっぱいに響き渡る。
青白いエフェクトが砕け散り、ネネの背後に巨大な影が立ち上がる。
天秤を宿した鎧に、大剣と杖を携えた異形。
ペルソナ――アイアコス。
だがそれを最初に見た者は、一人もいなかった。
“ネネっ!!!!!!”
先生の怒鳴り声が部屋中に響く。
普段の温厚な表情とは程遠いくらいに顔色を変えて。
そして机を回り込む勢いで駆け寄り、ネネの身体を抱き寄せた。
“大丈夫!? どこか痛い!?”
「え?」
先生の急な行動に、ネネは目を丸くした。
「せ、先生?」
その横では。
「ひっ……!」
「う、うそ……頭が……」
「ね、ネネ先輩っ!!!」
アコが椅子から崩れ落ち、イオリが青ざめたまま後ずさる。チナツは半ば泣きながら救急バッグをひっくり返し、包帯や止血材を床いっぱいに散らばらせていた。
委員長室は、一瞬で阿鼻叫喚と化した。
「意識は!? 脈拍は……え? 傷が、ない……!?」
「い……今、頭が…ヘイローが………」
狂ったようにネネの頭や顔をペタペタと触りまくり、涙目で安全を確認しようとするチナツ。
ネネは背後のアイアコスをスッと消滅させると、自分の頭を触るチナツを見下ろして、小首をかしげた。
「あ、あの、チナツ……そんなに触らなくても……コレはおもちゃみたいなものでしょ?だから―――」
“ネネ”
「先―――え」
呼びかけた先生の声が硬い。
そう思って彼の顔を見たネネは、信じられないものをみたように呆然とした。
ネネが、幾度となく重ねてきた、愛しい人―――結城理ににた表情を、怒りと悲しみと心配がごちゃ混ぜになったような感情にゆがめていたからだ。
理に似た髪色を揺らし。
理に似た瞳でネネを見据え。
理に似た声色で。
理とは似つかない重さで。
理では絶対に出さないような感情を乗せて。
―――先生は、言葉を告げた。
“二度と、私の前でそんなことはしないで”
「っ……」
“君がどれだけ大丈夫だと言っても、おもちゃだと笑っても……生徒が自分の頭を撃ち抜く姿を見て、平気な大人は、どこにもいない”
“自分の命を軽く見るような真似をされて、安心しろと言われてもできない”
“お願いだから、私を…皆を怖がらせないで、ネネ”
「!!!」
それは、心の底から生徒たちを、何よりもネネを心配した大人の説教だった。
ネネは、この時に思い知った。
理は、絶対にこんな叱り方はしない。
どこまで彼に似ていても……絶対に彼ではないのだ。
それに……安心させるためにした行動が、愛する仲間が、生徒が自殺する悪夢のような光景でしかなかったことを。
ネネにとってはタルタロスで行っていたルーチンであり、当然のように行っていたことなど、関係なかったのだ。
そこに気付いたネネは、すっと目を伏せて小さく呟いた。
「ごめんなさい………」
「ほんとだよ…!わた、私もチナツもアコちゃんも、ビビったんだぞ…!」
「……そうだよね。普通、あり得ないよね………本当に、ごめんなさい……」
そのネネの反省の色を見て、先生は静かに息を吐き出す。
それから、震える手をゆっくりとネネの頭に伸ばし、いつものように優しく、けれどしっかりと包み込むように撫でた。
“……わかってくれたなら、いいんだ。もう二度としないって、約束して”
「……うん。約束する。もう二度と、みんなの前ではしない」
“……『みんなの前では』じゃなくて、『二度と、絶対にしない』でしょ?”
「うっ」
二度と、絶対に。
それを言われると、ネネは内心弱ってしまった。
脳裏に過ったのは、先生と出会った日の夜に討伐したシャドウだ。
あれ以降出てこないが、もしキヴォトスでシャドウが出てきた場合、困ってしまう。
シャドウがペルソナでしか倒せない以上、その約束は出来ない。
“………”
「「「…………」」」
しかし……目の前の仲間や、愛する人によく似た先生の、たっての懇願だ。
ネネに……どうして、断れようか。
「……はい。二度と、絶対にしません」
わずかな葛藤の末、ネネが素直にそう頷くと、先生はふうっと大きく息をつき、ようやく緊張を解いた。
床ではアコがまだ膝を抱えて震えており、イオリは壁に寄りかかってぐったりしている。チナツはネネの服をぎゅっと掴んだまま、まだ涙目を拭おうとしていなかった。
そこへ、制服の入った袋を抱えたヒナが、静かに扉を開けて戻ってきた。
「……外まで声が聞こえたけれど、一体中で何があったの?」
青ざめた顔で固まっている風紀委員たち。
なぜかぐったりしている先生。
そして申し訳なさそうに頭を下げているネネ。
確実に何かあった様子の面々を見て、ヒナはわずかに眉をひそめる。
だが、その手にある青い制服が、この奇妙な空間の現実味を静かに裏付けていた。
この後事情を知ったヒナからも「軽率な自殺(ペルソナ召喚)禁止令」が出されました♨
ネ ネ「そんな……これじゃあ、あいつらが出た時に対処できない……」
ヒ ナ「(無言で銃口を向ける)」
ネ ネ「ごめんなさいでした」
通りすがりのロボカス「ネネ以外もペルソナを使えばいいのに…」
ネネのこと、どう思ってる?
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セイア「敵わない人」
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ヒナ「頼れる後輩」
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アコ「理解できない人」
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イオリ「戦いたくない人」
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チナツ「放っておけない人」
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フウカ「一緒に料理したい人」
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アズサ「より戦場を知っている人」
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アツコ「泣けなくなった人」
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シロコ「ん、似てる人」
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ホシノ「無理して大人になった子」
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サクラコ「祈りを知る人」
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先生「戦う必要のない、傷ついた子」
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その他()