ここだけ命の答えに辿り着いた少年に脳を焼かれたゲヘナ生がいる世界線 作:伝説の超三毛猫
俺よりもペルソナ3に詳しい人もブルアカに詳しい人も書ける人も山ほどいるだろうに…!!!
ヒナが騒動のわけを知り、ネネが「お騒がせしました」と頭を下げた後。
一同の興味は制服と学生証……そして、ネネの背後に浮かんだ騎士の存在に移っていた。
「見たことのない制服ね…」
「……ダメです、アコ行政官。調べても、出てきません」
「でも、学生証や制服だけは本物………何なのでしょうね、『月光館学園』というのは……」
「分かりません。でも、別世界なんだろうな、と思ってまして」
制服や学生証は本物のソレと大差ないのに、月光館学園という名前だけはキヴォトスのデータベースから出てこない。
その矛盾の答えは、ネネでさえ知らない。
きっとこことは別世界なんだろうな、という考えはあったが、ネネに証明する手立てはこれ以上ない。
あるとするならば。
「どうしてそう思うの?」
「そうですね……やはり、ヘイローを持ってる人間が…私以外にいなかったからでしょうか」
ちなみに、磐戸台では、ネネのヘイローは他の人にも見えていた。
誤魔化し方など知らなかったため苦労したが、S.E.E.Sのメンバーと共に考え、最終的に「コスプレ」ということに落ち着いた。
お陰で、あそこでは「自分を悪魔だと思い込んでる厨二病患者」として有名になってしまった。発案者の順平にもしもう一度会えたら、ビンタの一発はかましてやろうと思っている。
「それに加えて……」
「加えて?」
「銃火器の持ち歩きが法律で禁止されてたんですよ…!」
「何だと…!!?」
「よく耐えられましたね…!?」
「ありえない…!!!」
“ありえない、かぁ………………”
「………………………………確かに、キヴォトスとは決定的に違うわね」
信じられないものを見たように目を見開くイオリ・アコ・チナツ。そして、その生徒達の反応に天井を仰ぐ先生。
ヒナの言う通り、キヴォトスというには、決定的に文化圏と価値観が矛盾していた。これが、ネネにとっては決定的な証拠だった。
ちなみに、ネネはこの時、磐戸台に住み着いたばかりの頃に銃火器不携帯に慣れずゆかりに相談して「危険人物か!」とツッコまれた事を思い出していた。
「……まぁ、治安の良し悪しはともかく、あそこは私にとって、ゲヘナとは全く違う日常がある場所でした」
ネネは懐かしそうに目を細め、机の上に置かれた青い制服の袖をそっと撫でた。
そして、語っていく。
あの世界にのみあった、影時間のこと。
人を襲う怪物———シャドウのこと。
シャドウに食われた人間の末路。
しばらく部屋の空気が静まり返る。
誰もが制服と学生証を見つめたまま、何を口にすればいいのか分からなくなっていた。
やがて先生が、静かに口を開く。
"……つまり、その世界では君たちしか戦えなかったんだね。"
「……はい」
ネネは小さく頷く。
「警察もいました。大人もいました。でも……その時間だけは、誰もシャドウを認識できませんでした。」
先生は何も言わない。
ただ続きを促すように頷くだけだった。
「私たちは、そのために戦っていました。」
ネネは学生証を見つめながら続ける。
「放っておけば、人が死ぬから。」
その一言だけで十分だった。
誰も軽々しく質問を挟まない。
戦場を知るヒナも。
幾度となく銃撃戦を経験したイオリも。
医療に携わるチナツも。
その言葉の重さだけは理解できた。
「だから……」
ネネは苦笑する。
「怪我くらい、気にしていられなくなっちゃって。」
チナツが息を呑む。
今までずっと疑問だった診療記録。
その理由がようやく分かった。
「痛みに慣れたんじゃありません。…、…慣れたら終わりです。」
「……」
「怖かったです」
その言葉に、全員がネネを見る。
「毎回怖かった。
でも、その場で立ち止まったら、誰かが死ぬ。
……だから走るしかなかった。」
静かな口調だった。
泣きもせず。
誇ることもせず。
ただ事実だけを語る。
だからこそ、その一年がどれほど過酷だったのかが伝わってくる。
先生は静かに立ち上がる。
そしてネネの前まで歩くと、その頭へそっと手を置いた。
"……もう十分だよ。"
ネネが顔を上げる。
"無理に全部話さなくていい。"
"話せることだけで十分だから。"
その優しい声に、ネネは一瞬だけ目を閉じた。
理なら、きっと違う言葉をかけていただろう。
でも。
この人は。
この人らしい優しさで、自分を受け止めてくれている。
「……ありがとうございます。」
その時だった。
制服を畳んでいたヒナが静かに口を開く。
「あなたが経験したことを、私たちは完全には理解できない。」
ネネはヒナを見る。
ヒナは、丁寧に畳んだ青い制服をネネの膝の上にそっと置いた。
「どんな怪物と戦って、どれだけの恐怖の中で走ってきたのか……そのすべてを分かってあげることは、きっと誰にもできないわ」
静かな、けれど有無を言わせない力強い響き。
ヒナは、ネネの目を真っ直ぐに見据えた。
「でもね、ネネ。……今のあなたは、ゲヘナ学園風紀委員会の一員よ。私の部下で、私たちの大切な後輩」
「委員長……」
「これからは、もう一人で走らなくていい。立ち止まっても、私たちが背中を支える。……だから、もうあんなふうに、自分を犠牲にするような戦い方は許さないわ」
その言葉に、イオリが腕を組んで力強く頷く。
「当たり前でしょ。次にあんな真似したら、私がその『召喚器』とやらを没収してやるんだから」
「ふふっ……そうですね。私からも、ネネ先輩には特大のペナルティ課題を用意させていただきますからね」
「救護室への定期健診も義務付けます。絶対に、逃がしませんよ」
アコとチナツも、少しだけ目を赤くしながら、けれど温かい笑みを浮かべていた。
みんなの優しさが、不器用な気遣いが、心に沁みる。
ネネは膝の上の青い制服をぎゅっと抱きしめ、今度は隠すことなく、ポロポロと涙をこぼしながら深く頷いた。
「……うんっ……。……ありがとう……っ」
過去のすべてを話すことはできなかった。
あの戦いの結末も、自らの命を封印に変えた彼のことも。
そして―――
―――ネネはもう既に、キヴォトスでシャドウと戦っていることも。
先生と初めて出会った、あの日の夜。
あの路地裏に現れたシャドウは、確かに存在していた。
幸い、被害は出なかった。
誰にも気付かれることなく倒すこともできた。
唯一襲われた不良も、その時の記憶を「ただの悪い夢」と処理していた。
だからこそ、黙っていた。
もし話してしまえば。
「また現れるかもしれない」という不安を、みんなに背負わせることになる。
そんなことは、したくなかった。
先生は、生徒を守ろうとする人だから。
ヒナ委員長も、イオリも、アコ行政官も、チナツも。
きっと、自分のことのように抱え込んでしまう。
だから、あの日の出来事は、自分だけが覚えていればいい。
そう思っていた。
だけど―――。
胸の奥が、小さく痛む。
『二度と、絶対にしない。』
さっき交わした約束。
先生の真剣な眼差しを思い出す。
あれは、嘘をついてまで守りたくない約束だった。
だから、ちゃんと本気で頷いた。
けれど。
もし、またシャドウが現れたら。
もし、誰かの命が懸かったら。
私は、きっと。
また召喚器を手に取るだろう。
それがどれだけ先生を悲しませると分かっていても。
それがどれだけ仲間や先輩を怖がらせると知っていても。
それでも私は……あの夜に戻ったとしても、同じ約束をしただろう。
(……先生、ヒナ委員長、みんな…ごめんなさい)
だから心の中だけで、小さく謝る。
(もし、その時が来たら……私は約束を守れません)
誰にも聞こえない懺悔だけが、胸の奥へ静かに沈んでいった。
◆◆◆◆◆
数日後。
トリニティ総合学園の管区内にある、大聖堂。
ゲヘナの喧騒とは対極にある、静謐で厳かな空間。
ステンドグラス越しに差し込む色とりどりの光と、微かに香る乳香、そしてどこからか聞こえるパイプオルガンの低い音色。
非番の時間を使い、ネネは一人、この場所を訪れていた。
(……視線が刺さってるな)
トリニティの大聖堂内にゲヘナの生徒がいることに、視線を注がれる。
だが、嫌味の声が聞こえないのも、噂話が聞こえてこないのも、ここが神聖な大聖堂だからだろう。
また、エデン条約の一件を経て、両校の関係性がわずかに軟化していることもあるが、それ以上に―――今、最前列の長椅子に座り、神壇に向かって静かに頭を垂れるネネの纏う空気が、あまりにもこの場所に馴染んでいたからだ。
ネネは目を閉じ、両手を軽く組み合わせていた。
(荒垣先輩、理……私、今日もちゃんと生きてるよ。新しい仲間と一緒に、ちゃんと生きてる)
思い描くのは、青い空。
そして、もう二度と会えない大切な仲間たち。
次に思い描くのは、戻ってきた故郷でできた、新たな縁。
ヒナ。イオリ。アコ。チナツ。チアキ。イブキ。フウカ。―――そして、先生。
自分の命を、これからどのように使っていくのか。どう使えばいいのか。静かな対話を行っている最中のことだった。
「……
ふと、透き通るような声が耳に届いた。
目を開けて隣を見ると、黒い修道服に身を包んだ、凛とした佇まいの少女が立っていた。
シスターフッドの修道長―――歌住サクラコだった。
「あ……はい、どうぞ。私、そろそろ行きますので……」
「いえ、お気になさらず。……ただ、あまりにも『深い』祈りでしたので、つい声をかけてしまいました。ゲヘナの生徒さんがここへいらっしゃるのは、『珍しいこと』ですから」
サクラコはネネの隣に静かに腰を下ろし、神壇へと視線を向けた。
サクラコは、この大聖堂で数え切れないほどの生徒の「祈り」を見てきた。
テストの点数が上がりますように。好きな人と結ばれますように。明日の天気が晴れますように。
それらの祈りは純粋で可愛らしいものだが、どこか「他力本願な願い事」の域を出ないものが多い。
だが、今隣にいるこの少女の背中は、全く違っていた。
悲しみを知り、喪失を受け入れ、なおも立ち上がり続けるための『覚悟』。死者への深い悼み。
神に何かを乞うのではなく、ただ自らの魂と対話するような、圧倒的に純度の高い祈りの姿だった。
「私、神様にお願い事をしていたわけじゃないんです」
ネネは、少しだけ照れくさそうに笑って言った。
「ただ……もう会えない人たちに、『私は今日も生きてるよ』って……報告していただけで。だから、シスターさんが思うような、立派な祈りじゃないと思います」
その言葉を聞いて、サクラコの目がわずかに見開かれる。
孤独と悲哀を内包しながらも、決して折れることのない強さを宿した瞳。
サクラコは、胸の奥が静かに震えるのを感じた。
この方は神へ願っているのではない。
大切な誰かへ、今日も生きていると報告している。
その祈りは、あまりにも静かで。
あまりにも尊かった。
まるで、それこそがシスターフッドが教義の奥底で求める、真の「祈り」の形のようで。
「……
サクラコは、深い敬意を込めて首を横に振った。
「『それ』こそが、最も尊い祈りです。……あなたは、『祈りの本当の意味を知る人』なのですね」
「え……?」
「キヴォトスには、あなたのように『深く、静かに』魂と対話できる方はそう多くありません。……
「……雨塚、ネネです。ゲヘナ学園、風紀委員会所属……です」
「ネネ
サクラコは柔らかく、慈愛に満ちた微笑みを浮かべた。
「ネネさん。もしこの後
「……紅茶」
ネネは目を丸くした後、ふっと肩の力を抜いて、穏やかに笑った。
ゲヘナではコーヒーばかり飲まされているから、たまには紅茶も悪くないかもしれない。
何より、目の前のシスターからは
「はい。……喜んで」
ステンドグラスから差し込む光が、二人の横顔を優しく照らしていた。
……なお、この二人の会話を聞いていたトリニティ生からは、「サクラコ様がゲヘナの生徒に説教してる!」「いいえ、あれはもっと恐ろしい拷問を始めるんだわ!」「きっとゲヘナが大聖堂に踏み入った見せしめに…!」と謎の噂が飛び交うことになるのだが、本人たちは全くもって何も知る由もなかった。
余談だが、ネネとの茶会のお誘いが目撃された少し後、正義実現委員会がこの一件について、怪しい儀式をしていないか調査が入ったのだが、サクラコの部屋からは何も出てこなかったという。
「……それなら、私のやっていたことも、間違いじゃなかったんですね」
「はい。ネネさんは、大切な方々へ語りかけておられましたね。ですが、その想いによって、ご自身の心を見つめ直していた。……それは祈りと何ら変わりありません」
「そんな大げさな…私は、毎日報告してるだけなんです。『今日も無事だったよ』とか、『新しい仲間ができたよ』とか。……返事なんて返ってこないって、ちゃんと分かってるんですけどね」
「返事がなくとも、その想いは決して無意味ではありません。大切なのは、忘れないこと。そして、その方々から受け取ったものを胸に、生き続けることです」
「……受け取ったもの、ですか」
「ええ。亡くなった方は、もう言葉を交わせません。ですが、生前にあなたへ託した想いや願いは、今もあなたの中に生きています。祈りとは、それを確かめ続ける営みでもあるのですよ」
「……そう、ですね。……きっと、私の知る彼らも……『前を向いて生きろ』って言うと思います」
「ふふっ。その言葉を、あなたはもう知っているのでしょう」
サクラコとネネはマジで当たり障りのない雑談をし、祈りについてちょっと話していただけだから当たり前である。
ネネはサクラコと誤解せず話せる数少ない一人です。邪な目的を持っている人間との会話とか経験してるしね。
あと、今回の話はサクラコとの意味深会話と「磐戸台は銃火器持ち歩かないんですよ」「「「な、なんだってー!」」」のくだり書きたかっただけです。ゆるして。
ネネのこと、どう思ってる?
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セイア「敵わない人」
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ヒナ「頼れる後輩」
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アコ「理解できない人」
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イオリ「戦いたくない人」
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チナツ「放っておけない人」
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フウカ「一緒に料理したい人」
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アズサ「より戦場を知っている人」
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アツコ「泣けなくなった人」
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シロコ「ん、似てる人」
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ホシノ「無理して大人になった子」
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サクラコ「祈りを知る人」
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先生「戦う必要のない、傷ついた子」
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その他()