ここだけ命の答えに辿り着いた少年に脳を焼かれたゲヘナ生がいる世界線 作:伝説の超三毛猫
行けども行けども変わらない、砂の海を風紀委員の装甲車が走っていく。
周囲には、似たような車が多数。仲間たちが乗っている。
『もうすぐ予定の場所に着きます。総員、戦闘の準備を』
アコ先輩のその通信で、風紀委員が全員、戦闘準備を始めた。
そう……私達はこれから、戦いに行くのだ。
この作戦における私達の役割。それは、小鳥遊ホシノを救出に向かうアビドス生+先生に対して、カイザー理事が呼ぶであろう援軍……その殲滅。
相手の、四方から大軍で押し潰すという策を……その上から潰すというもの。単純だが有力な作戦だ。
他の方角の援軍は他の団体に頼んでおり、それぞれ援軍の殲滅を頼んであると言っていたので、私達は一方面からの援軍を叩き潰せば良いだけだ。
「ねぇ、この後どこに行く?」
「そうだ、気になったお店があるんだよねー」
「美食研究会に潰されてないといいけど…」
風紀委員たちの雑談が聞こえてくる。
気楽なものだ……戦う前から、もう勝った気でいる。
いざという時は、ヒナ委員長やアコ先輩、イオリが何とかしてくれるだろう………なんて、考えているのかな。
全く情けない。そんなんだから「ヒナ抜きの風紀委員会は怖くない」なんて馬鹿にされるんだぞ。
「……………アコ先輩、敵影は」
『まだ見えません。ですが、作戦ポイントには到達しました。合図はこちらから出します』
この戦いにおいて、私はどう動くべきか考えていた。
まず大前提として……ペルソナ能力・アイアコスを使う予定はない。
そもそも、あの召喚方法は――そう簡単に誰かに見られる訳にはいかない。
『自分の頭を銃で撃ち抜く』なんて姿を見られでもしたら一大事………あっという間に精神を病んだ狂人扱いされて、精神病院の隔離病棟へ送られてしまう。
特に今はただでさえイオリと先生の件で神経が尖っているのだから、余計な誤解の種を蒔くわけにはいかない。
だから私は、あくまでゲヘナ風紀委員会の遊撃隊員として、このアサルトライフル一本で戦い抜く。その覚悟を固め、ボルトを引いて弾薬を薬室に送り込んだ。
『――来ました! 敵の先遣部隊です! 総員、射撃開始!!』
アコ先輩の鋭い怒号がインカムに響くと同時に、装甲車のハッチが開いた。
眼前に広がる砂塵の向こうから現れたのは、カイザーPMCのロボット兵の群れ。
「風紀委員、前進! ゲヘナの邪魔をする有象無象を蹴散らせ!」
イオリが先陣を切って飛び出し、スナイパーライフルを乱射しながら砂丘を駆け下りる。
私もそれに続く。砂漠にあった岩から砂漠に埋もれた建物へ、遮蔽物から遮蔽物へと素早く跳躍しながら、三点バーストでロボット兵の頭部センサーを次々と撃ち抜いていった。
「口ほどにもない。ただの物量作戦ね」
後方からはヒナ委員長の圧倒的なガトリング砲の掃射が響き渡り、敵の陣形を文字通り一瞬で消し飛ばしていく。さっきまで雑談をしていた平委員たちも、戦闘が始まればそれなりの動きを見せ、戦況は完全にゲヘナの優勢に見えた。
――だが、それは長続きしなかった。
『委員長!PMCの第二陣を確認!迎撃を!!』
「「「「「!!」」」」」
アコ先輩の通信が、風紀委員会全体に行きわたる。
さらに。
『……なんですって!? 第三陣と第四陣も接近中!?』
「……多いわね」
たった今、確認したのだろう、アコ先輩の追加通信。
ヒナ委員長の呟きが静かに響いた。
風紀委員たちの反応は様々だ。
めんどくさいなぁ、と愚痴る者。いくらでも倒してやる!と息巻く者。弱音を吐きながら銃を握る者。
そんな彼女たちを見ながら、私は…………ゲヘナに戻ってきて以降、これまでで一番かと思うくらいに焦った。
(………まずい)
何がまずいかって…風紀委員全体が、だ。
ヒナ委員長は絶対大丈夫だ。あの人の規格外さはこんなものではない。
アコ先輩やチナツも大丈夫。後方支援だから。
イオリも大丈夫だろう。最前線でピンピンしている。
…でも他の風紀委員がまずい。
砂塵の向こうから現れたPMCの増援部隊は、先程までの無機質なロボット兵とは明らかに違っていた。
統率された分隊行動、一糸乱れぬ射撃陣形、そして重装甲を施された自動戦闘車両。
それは、普段ゲヘナの不良たちを力押しで制圧することに慣れきってしまっている平委員たちにとって、最悪の相性だった。
「ひ、ひえっ!? 反撃が正確すぎる……っ!」
「ダメ、弾幕が厚くて頭が上げられないよ!」
「右翼押されてます!」
『弾薬、補給間に合いません!』
突撃しようとした平委員たちがクロスファイアに捕まり、次々と遮蔽物の裏へ押し戻されていく。
「何やってるんだ、押し返せ!!」
イオリが叫び、必死に銃撃を浴びせる。
けれど、敵は的確に防盾を掲げて前進を止めない。
ヒナ委員長がガトリングを構えて敵の拠点を吹き飛ばす。
だけど、倒しても倒しても広大な砂漠のあちこちから、包囲網を狭めるようにPMCの別働隊が迫ってくる。
数の暴力。そして、戦術的な「練度」の差。
このままでは、いくらヒナ委員長が強くとも崩されるかもしれない。
ここを突破されるわけにはいかないのに……!
(……やるしかない、の!?)
じわり、と額に冷や汗がにじむ。
ペルソナの召喚は危険すぎる。―――頭への銃撃に、奇妙なものの召喚、現実離れした効果の魔法……どう頑張っても説明不可能だ。
けれど。
「きゃあああああ!!?」
「下がりなさい!ここからは……私がやる!アコ!!」
『委員長! これ以上の無理は……ッ!』
(また……また、背負う人が出る!)
インカムからアコ先輩の叫び声が聞こえる。
ヒナ委員長がガトリング砲を構え、さらに前方へ出ようとする。
その小さな背中にかかる負担が、どれほどのものか。
このままでは、あの人が一人で戦線を支え続け、最悪の場合……。
(……そんなの、絶対に駄目だ)
脳裏をよぎる、あの青い空と、世界のために命を差し出した『リーダー』の最期。
二度と、あんな結末を見届けるものか。
たとえ狂人扱いされようが、精神病院に叩き込まれようが、目の前の仲間を失うことに比べれば何百倍もマシだ。
覚悟を決める。
ただし……無策に手の内を晒しはしない。
私はアサルトライフルを抱えたまま、カイザーの装甲車両が爆発した後にできた、黒煙の立ち上る巨大な死角へと滑り込んだ。周囲の平委員たちは、目前の防衛線に必死でこちらを見る余裕はない。
問題は、あとひとつ。インカムだ。
キヴォトス製のこれは、音声だけでなく、映像もキャッチできてしまう。だから。
だから私は物陰に背中を預け、作戦通達用に繋がっているそれに指をかけた。
『ネネさん! 前線維持を……イオリと共に委員長の援護を――』
「――こちらネネ!アコ先輩、敵の電磁妨害が激しく…………………こちらの通信機器に障害が……! これより……、……一度、通信を……」
『えっ!? ちょっと、ネネさん!? ネネさん、応答しなさい!!』
そこらの砂をマイクに押し付けることで砂嵐を真似る。
そして最後にはブツッ、と私はインカムのスイッチを切った。
アコ先輩、後でいくらでも怒られてあげますから、今は許してください。
幸い、周囲の平委員たちは敵の激しい対空砲火を避けるのに必死で、私の方を見ている余裕はない。イオリもヒナ委員長も、前方から迫る重戦車の対処に追われている。
――今、ここが全員の死角。時間にして、数秒。
チャンスは1回。スキル発動にしても一つ。
それで、流れを変える必要がある。
「……はぁ」
深く息を吐き出し、私は制服の懐から、銀色に鈍く光る「召喚器」を取り出した。
銃口を、迷うことなく自分の右のこめかみへと直角に突き付ける。
ひんやりとした金属の感触が、狂いそうな戦場の熱を鋭く冷ましていく。
見つかれば終わりの、命懸けの隠密行為。心臓がうるさいほどに鼓動を打つ。
引き金にかけた指に力を込め、私は心の中で、あの懐かしい名前を叫んだ。
(――ペルソナッ!!)
パァン、と、乾いた音が脳内に響く。
撃ち抜かれた頭部から放たれたのは、弾丸ではなく、気高く美しい青い光の粒子。―――その光の粒子が、私の背後に巨大な、厳格なる裁判官の姿を形作る。
ここから、私が彼に―――アイアコスに命じたこと。
私の静かな命令に応じ、アイアコスがその重厚な腕を掲げる。
放たれたのは、戦場を吹き抜ける清冽な碧い波動。
ゲヘナ風紀委員会全体を、光の風が包み込んでいく。
術の完成を感知した刹那、私は即座にアイアコスを消滅させ、召喚器をポケットの奥深くへと滑り込ませた。
時間にして、わずか三秒。目撃者は―――ゼロだ。
「……っ、これは?」
最初に異変に気づいたのは、最前線で銃撃に晒されていたイオリだった。
重装甲車両から放たれた、避けることのできないはずの機関銃の掃射。それが、今のイオリには見えたのだ。まるで、スローモーションでも見ているかのように。
「なに、これ…」
身体が羽根のように軽い。吸い込まれるようにステップを踏むと、すべての弾道が彼女の身体を掠りもせずに背後へと通り過ぎていく。
「当たらない……? ううん、違う、全部見える! これなら……いける!!」
だけどイオリは、己の身に起こった変化を、好機と見たようだ。
イオリの放ったスナイパーライフルの弾丸が、砂塵を切り裂く。
その弾丸カイザーPMCの戦闘車両のわずかな装甲の隙間………エンジンの基部へピンポイントで着弾。大爆発を起こした。
「な、何なのこれ!? 身体が勝手に、一番良い動きを選んでるみたい!」
「敵の照準が全部外れるぞ! 押し返せーッ!!」
「すげぇっ! 戦える……戦えるぞ!!」
己の身軽さと器用さが限界突破した平委員たちが、まるで熟練の特殊部隊かのように一斉に躍り出た。
敵のクロスファイアを紙一重でかわし、放つ銃弾は百発百中でカイザー兵の急所を撃ち抜いていく。
「……!?」
誰よりもその「異常な風」の恩恵を感じていたのは、ヒナ委員長だった。
マシンガンの反動が全く苦にならない。敵の陣形、死角、弾道、そのすべてが直感的に頭へと流れ込んでくる。
(動きが、噛み合っている……? ううん、それ以上に、この戦場全体の『流れ』が、私たちに味方している……!)
驚愕するのも無理はない。
誰も知らぬことだが、これは……ネネのペルソナが引き起こしたこと。
彼女ら風紀委員会に恩恵をもたらした風。
まるで、勝負に自然すべてが味方になったかのように体が軽く……銃弾の狙いが正確になる。
そんな、幸運の追い風。その癒しの風の名は―――マハスクカジャ。
味方全体の回避・命中を上げる、アイアコスの支援魔法である。
論理は一切わからないにしても、ヒナ委員長はその好機を逃すような甘い指揮官ではない。
「総員、突撃! 敵の陣形は既に崩壊しているわ。一気に、殲滅する!」
「「「「おおおおおーーーッ!!!」」」」
形勢は完全に逆転した。
さっきまで統率された動きでゲヘナを圧倒していたカイザーPMCの正規軍は、突如として神がかった動きを見せ始めた風紀委員の猛攻を前に、完全にパニックに陥っていた。
撃っても当たらない。相手の攻撃は、こちらの防盾を嘲笑うかのように隙間を抜いてくる。
圧倒的な物量と練度の差を、一瞬の『審判』によって覆されたカイザー軍は、文字通り塵のように砂漠へと吹き飛ばされていった。
「はぁ、はぁ……。な、何だったの、今の……」
戦闘が終わり、静寂が戻り始めた砂丘で、イオリが肩で息をしながら自身の両手を見つめている。
そこへ、何事もなかったかのようにアサルトライフルを肩に担いだ私が、物陰から歩み寄った。ポケットの中で、インカムのスイッチを入れ直す。
「ふぅ……。皆さん、お怪我はありませんか? 電磁妨害が酷くて、今ようやく通信が復旧しました」
『ネ、ネネさん!? 無事なのですか!? ……って、えええええッ!? カイザーの第三陣も第四陣も、全滅……!? 一体何が起きたんですか!?』
通信の向こうでアコ先輩がひっくり返ったような声を上げている。
私は小さく息を吐きながら、ふと視線を感じて顔を上げた。
そこには、ガトリング砲の銃口から煙を上げながら、じっと私を見つめるヒナ委員長がいた。
その鋭い瞳は、私がいた物陰と、私の様子を交互に観察している。何かを見通しているかのような、だけど、何も考えていないかのような、けれど深い信頼の入り混じった眼差し。
「……何でもないわ、アコ。ただ、風紀委員の意地が勝った、それだけよ」
ヒナ委員長は通信にそう答えると、小さく息を吐いて銃を収めた。
「任務完了よ。各自、帰投するように。負傷者優先ね」
「はい!」
イオリたちの元気な返声を聞きながら、私は胸の奥の召喚器にそっと触れた。
良かった。これで守れた。
風紀委員会の仕事はこれまでだ。後は、先生たちが勝つことを祈るだけだ。
モモトークのメッセージを先生に送ってる途中で寝落ちしてしまって、先生はほうぼうを探すけど見つからず。最後に探したネネの部屋でぐっすり寝ている所を見つけるんだ。
そして先生は寝ているネネの隣で添い寝する。
一見他の風紀委員たちのようなやばいメモロビだけど、実はネネには他の人が周りにいると寝ないという癖があって。
つまり添い寝のメモロビが表す意味は、そういう事である。
ネネ(この後は誰と過ごそうか……)
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ヒナ
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アコ
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イオリ
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チナツ
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先生
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羽沼
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イブキ
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チアキ
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フウカたん
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キララ
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エリカ
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カヨコ
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アカリ
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その他