薬屋のひとりごと〜南方将は西国の血を引く男〜 作:花札こいこい
「・・・。」
「何か心当たりがありそうだな?朱雀よ。」
玄武の言葉に壬氏に高順と阿多妃そして梨花妃が朱雀を見る。朱雀は顎に手を当てながら
「私の考えすぎでなければよいのですが、一人。文官の高官で「四方将」をよく知らないのに私を味方に引き入れればさらに権力が増すと豪語している者がおります。」
「「四方将」の中でも「南方将」を引き入れると?そんな発言をする高官が?」
壬氏は高官がそのようなことをするとは考えられないようだが
「言いにくいのですが、宮廷では今梨花妃と「南方将」が婚姻することが多くの派閥で問題視されています。」
高順は今回の出来事がそれとつながっているのだろうかと訊ねる
「そうでしょうね、私を妓楼に連れて行き女遊びをしろと特に高官がそのように動いていますからね。」
「だから私の下賜が決まらないのですか?」
壬氏と高順は下を向くそれが事実だからだ
「私は・・・!」
「梨花様がお一人で抱え込むことではありませんよ、私が下賜を願い出でて、そして主上は了承したのですよ?宮廷の時間稼ぎなどさして問題になりません。むしろ時間稼ぎなどで私の意志が揺らぐことはありません。」
「朱雀。」
「それで「南方将」その高官の名は?」
と壬氏がその名を聞くと
「
「あの息子を勘当したことで有名な?」
「養子に来ないかと度々打診されましたが全て断っていますし。そもそも無理矢理に連れられる妓楼巡りも下賜を願い出てからは逃げているので苛立ち手法を変えたのならば納得もできます。」
「悪手に手を染めたなそやつは。」
「こうなった以上情報が筒抜けの宮廷にはこちらの情報を伝えるべきではないですね。後宮で独自に体制の強化をするしかありません。」
「「南方将」、「北方将」、「東方将」、「西方将」どうすれば彼等がより本来の力を発揮し敵を制することができるかに重きを置いた方が良いだろうな、実際「四方将」はどう動きたい?」
阿多妃は彼等こそが現在の後宮で最大にして最高の
「まずは白虎が索敵に集中できる環境を作りたい。それが一番なのだがそれには、」
「「西方将」が護衛に回らないということは残りの「四方将」で護衛をと言うことか?」
「そうなのだが、敵が多数で乗り込んできた場合に対応できるようにしたいからな、本音を言えば上級妃の護衛は一人でするのが望ましい。」
「四人を一人で?」
「そのくらいこなせないなら「四方将」ではない。」
玄武の一言には「四方将」としての絶対の
「「北方将」。この場に居ない上級妃を集めるのでしたらいずれかの宮にするのが望ましいですか?」
「できればだが、他の妃が素直に応じるかだな。」
「では妃達には私から説明しましょう。阿多妃?玉葉妃と里樹妃をこの宮に連れて来てもよろしいですか?」
「構わないよ。」
「では早速、とりあえず一度失礼します。」
壬氏と高順は一礼して柘榴宮を出れば梨花妃は
「朱雀。」
最愛で自分を娶る意志は揺るがないとはっきり告げた彼の名を呼ぶ
「はい。何でしょう梨花様?」
いつもと変わらない穏やかな雰囲気と優しい言葉を聞くとそれだけで安堵できる。梨花にとって先ほどの恐怖は消え自分が護ってくれるということは言葉にならないほどの安心感があるようだと感じた朱雀は
「ご安心くださいませ。お護りいたしますので梨花様。」
「ええ、貴方は約束を護ってくれるもの。」
その頃の翡翠宮では
「既に「東方将」はご存じでしょうが後宮に武装した者が乗り込んできました。玉葉妃申し訳ありませんが公主と数名の侍女を連れ柘榴宮に向かってほしいのですが・・・。」
「侵入者はどうなったのです?」
「朱雀か玄武殿が無力化したんだろう。」
「はい、「南方将」が既に捕縛しておりますので今しばらくは安心かと。」
「何故柘榴宮なのですか?」
「上級妃が一カ所にいることで「四方将」が本来の力を発揮できると判断なされて「四方将」が二人いる今の柘榴宮が最も安全だという「淑妃」と「賢妃」の判断です。」
「紅娘。鈴麗と猫猫を連れて柘榴宮に向かうわ。用意してちょうだい。」
「分かりました。」
「俺は「貴妃」に同伴すれば良いんだな?」
「はい。よろしくお願いします。「東方将」。では、私は金剛宮に向かいますので失礼します。」
「承知した。」
「お願いしますわ、「東方将」。」
「支度が整いました。玉葉様。」
「では、行きましょうか。」
四半時ほどで柘榴宮には四人の上級妃が揃いまた「四方将」も揃った。今後の方針を「四方将」と上級妃が把握しておくほうが妃やその侍女に余計な心労を与えないだろうと判断したので一同は窓に面していない大広間に集まる
「では、まず妃に我々からお願いしたいことがある。」
やはりこういう場を仕切るのは玄武なら容易で
「何でしょうか?」
武装した男が後宮に侵入したとなれば妃が不安になるのは当たり前だ。だからか気丈に振る舞っているがその仕草は恐怖に染まっている「貴妃」と「徳妃」に
「最短で敵を制するために護衛を朱雀一人でこなせるようにできれば全員が一部屋にいてほしい。」
「「南方将」が護衛なら他の「四方将」は何をするのですか?」
「索敵に特化している白虎が情報を集め、それを精査して私と青龍が敵の無力化をしたいのです。長期戦は不利ですから短期決戦で仕留めます。」
「「分かりました。」」
妃は承諾するさらに玄武は
「不調を感じた際は医学知識がある朱雀に申しつけを。よいな?朱雀。」
「分かりました。」
「では、白虎頼むぞ。」
「ああ、紅牙を借りるぞ朱雀。」
「どうぞ。」
大広間に集った彼らの中で白虎が部屋を出ると「貴妃」、「淑妃」、「徳妃」、「賢妃」はこの場にいて欲しいという玄武の願いを聞き入れて留まる
「「・・・。」」
不安からか何も言わない上級妃達だが翡翠宮の猫猫は
「すみません。」
「何か?」
「武装した男が後宮に侵入できるんですか?」
「武装と言っても剣一本です。その程度に「四方将」は後れをとりませんよ。」
「あっ、あの。」
「何でしょうか「徳妃」?」
「あの、おなかが痛くて。」
「お手洗いに行きますか?」
「え・・・と。」
「里樹様は緊張なさると腹痛が起こりやすく。」
最近金剛宮の侍女頭になった河南がそう説明すると
「分かりました。緊張にはリラックス効果のあるものをご用意します。「徳妃」口にできないものはありますか?」
「蜂蜜が食べれません。」
「承知しました、体の温まるものにしましょう。青龍。茶の用意をしてくるから少しだけ護衛を頼む。」
「ああ。」
「淑妃」厨房をお貸しいただけますか?」
「ああ、構わない。」
「上級妃の皆様も何かご用意してほしいものがあるのでしたら仰って下さい。」
「温かい飲み物がほしいですね。」
「私ももらおうか。風明。厨房まで案内するように。」
「かしこまりました。阿多様。」
「私も。」
「ではご用意しますので少々お待ちください。」
「こちらです。」
「よろしくお願いします。」
厨房には蜂蜜が置いてあったが「徳妃」だけ違うものでは格差をつけているように思われることは良くないかと思った朱雀は生姜湯を用意する
「お待たせしました。」
上級妃達はまってましたと言わんばかりでいるので
「生姜湯をお持ちしました。何かご用がありましたらば遠慮なくお呼びください。」
自分がいては休息にならないと感じた朱雀は大広間を出る。外には既に玄武と青龍が居て
「あの中には入れるお前は勇者だな。」
「そうでしょか?普通ですよ?」
「女性は苦手ではないのか?」
「苦手なのは我こそはという自意識過剰な方ですね。」
「ああ、上級妃には居ない
「自意識過剰な女性は妃には向いていないでしょう?」
「向くとかあるのか?女はつくづく理解ができない。」
「お前はぶれないな、青龍。」
「それでこそ青龍殿ですよ。」
その頃の大広間は
四人の上級妃達は全員が生姜湯を飲んでいて朱雀の言うリラックス効果は少なからず彼女達に安らぎを与えていた。
(里樹妃の緊張型の腹痛に体を温めかつリラックス効果がある生姜湯を用意するあたり本当に気の利く武官だな。)
猫猫は周囲を見回しながら誰も贔屓しない朱雀の対応に梨花妃が彼に下賜されたいと願うのは理解が出来るなと思う
「空気が重くて彼らが気を遣いそうだな。」
「「?」」
阿多妃がふと呟く、確かにそうだなと思うが話題がない。すると困惑しているのか鈴麗公主はぐずり始める
「鈴麗。良い子だから。」
玉葉妃があやすが一度ぐずるとなかなか収まらない今の幼い鈴麗公主のぐずりだ扉の向こうからは
「何かお持ちしたほうが良いものがありますか?」
朱雀の声がすると
「寝かせますのですみません。」
と玉葉妃は答え、そして同じ部屋にいる上級妃達にも頭を下げる
「赤子は泣くのが仕事だ気にするな。」
阿多妃がそう言えば他の上級妃も
「そうですね。赤子に泣くなと言うのは無理な話です。」
「私も大丈夫です。」
「ありがとうございます。」
公主の背を母である玉葉妃が撫でるとすっと寝てしまう鈴麗をみながら阿多妃が
「そういえば、梨花妃。「南方将」への下賜の話だが・・・。」
「何でしょうか?阿多妃?」
「今回の出来事は「四方将」が片づけるだろう?そうなったときに今一度彼らには褒美が与えられるはずだ。国賊を倒したのだからな、そうなれば彼らは今以上の英雄になる。そして先の男のあの有様は後世にも残るだろう。英雄「四方将」が下賜を願う妃に触れて怒りを買ったとな、理性のある高官なら「南方将」を始めとする「四方将」を手中に収めることができるのは主上だけだと理解し彼らを御するなどとは思わないだろう?そこで貴女を「南方将」に下賜することが「南方将」ひいては「四方将」を敵にしない選択になると高官は考えると思うのだが・・・。」
「そうなれば、私を朱雀に下賜することが高官にとっても問題ではなくなると言うことですか?」
「高官にとって自分の手駒の女か、あるいは娘を「南方将」に娶らせるより貴女を娶らせれば
「・・・。」
「後は貴女の覚悟次第だろうがな。」
「私は朱雀に下賜されるためなら、また一緒に同じ季節を過ごせるなら何だって使うそれが皇族の縁戚の立場でも。」
「「南方将」はその意志が揺るぐことはないと言ったんだ。あの温厚な「南方将」がだぞ?そこまで言わせるなんて愛されてるな。」
「ありがとうございます。阿多妃。」
思わぬ助言と背を押してくれた阿多妃に梨花妃は深く頭を下げる
「まあ、外の彼の頑張り次第だな。」
外の朱雀にも聞こえる少しだけ大きな声でそう言えば
「敵を討伐し害悪を壊滅し終わった時に今一度深く感謝の念をお伝えします。「淑妃」。」
朱雀の穏やかだが覚悟のある声音に阿多妃は
「では、そうなるように祈るよ。」
「「はい。」」
部屋の中と外から短い返事に満足したのか生姜湯が注がれた茶器を眺める阿多妃。妃同士には敵意からくる腹の探り合いしかないはずなのに阿多妃は梨花妃を一人の女性として心配しているそれは同じ主上の男児を産んだ妃だったという親近感からなのか、あるいは我が子が薨去してしてしまってる後宮では主上の寵愛が潰えた梨花妃だからこその心の奥底から愛している男がいるならその者の側に行くことを奨める。それが自分はできなかったが梨花妃と朱雀のお互いが愛し愛されたいと願う想いの深さは先ほどの侵入者への対応で垣間見えたから阿多妃は梨花妃と朱雀の背を押すと決めたのだ。
その頃索敵を行っていた白虎が柘榴宮に戻り「北方将」のための控え室に向かう、そこで後宮から
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