薬屋のひとりごと〜南方将は西国の血を引く男〜 作:花札こいこい
後宮に侵入した賊達を壬氏に明け渡し「四方将」は「貴妃」と「徳妃」そして「賢妃」を各宮まで護衛する。各自任された任務は最後まで完遂することは彼らには当然のことだ。
翡翠宮にには青龍が向かうそこで青龍は猫猫に
「おい、翡翠宮の毒味役。」
「はい。何でしょうか?」
「お前は妓楼に詳しいのか?」
「ええっと、養父が妓楼で薬師をしていて・・・。」
「・・・そうか。・・・。」
(自分から話しかけてこの沈黙かいっ。)
「お前の知る妓楼では朱雀は人気なのか?」
「私の知る限り妓女と話さずとも妓女が本気で惚れてますね。彼からの断りの文一つで一喜一憂していますからね。」
「そんなもんなのか。まあでも、女の扱いくらい知っていた方が良いんだろう?今後のためには。」
「そうでしょうけど梨花様が許すかどうかですよ?」
「やはり面倒だな女なんて。あいつらは何で面倒なことを進んでやるんだ?」
「さぁ?私に聞かれても・・・・。」
「だが。」
「?」
「あいつに「賢妃」が下賜されないとそろそろ朱雀が
「ああ、そっちですか。」
「ほかに何がある?」
「ないですね。」
そうこうして翡翠宮に着けば
「宮まで護衛は済んだから後宮を出るか。」
スタスタと歩き去って行く青龍に
「とっつきにくいな。」
とぼやく猫猫
水晶宮にて
「失礼します。梨花様。」
と帰ろうとした朱雀の裾を掴んで
「朱雀。」
自分を上目遣いで見つめる梨花様のその瞳が揺れているので不安なことがあるのだと察した朱雀は
「はい、何でしょうか?」
いつもより柔らかく優しい声で訊ねる
「私はいつ貴方に下賜されるの?」
宮廷がなんだかんだと理由をつけて下賜を先延ばししていることが少なからず
「この件の敵が一掃されれば「淑妃」に奨められた手法を使いましょう。褒美は梨花様の下賜それ以外いらないと何ヶ月待ったと思っているとも言えば宮廷の面子が立たなくなりますから、それがしぶしぶでも認めさせればよいのですから。」
「私も壬氏殿に同じように言うわ。私と朱雀の二人の問題でしょう?だから朱雀だけが言うことは違うと思うわ。」
「そうですね。私と梨花様の問題です。二人の意思が同じであることは宮廷に知られるべきです。」
「まさか後宮で背中を押してくれる人がいるとは思わなかったわ。」
「「淑妃」は梨花様に自分と同じ轍を踏ませたくなかったのでしょうね。」
「そうね、でも「淑妃」は隠れ寵妃でもあるのよ。」
「それは初耳ですね。東宮時代の妃が「淑妃」だけだったことは有名でしたが皇帝にもなれば一途が許されるわけではないことは不憫ですね。」
そこに強めの風が吹くと
「ええ。っ。」
梨花妃はその冷たさに体がこわばり声が出る
「風が冷たくなってきましたね。お部屋にお戻りください、風邪を召されますよ?」
朱雀は梨花妃にそう伝える。仕方なく梨花妃は
「そうするわ。またね朱雀。」
「はい。失礼します。」
水晶宮に戻る梨花妃を見送り朱雀もまた後宮を去る
翌々日
宮廷では後宮に賊が侵入してそれを「四方将」が捕縛したことを高官はその日初めて知り得る者の方が多かった。今日もまた主上に「南方将」への「賢妃」の下賜を許した発言を撤回するべきだと言う旨の話をする派閥の者には初耳でさらに追い打ちでその派閥筆頭の
「「四方将」「北方将」玄武。此度の賊の件を報告せよ。」
主上の厳格な声に玄武が
「はっ。」
同じように威圧感のある声音の玄武に高官は身震いする
「賊は高官
「
「どういう事か?」
ざわつく宮廷だが
「静まれ!」
主上の腹心が厳かな声で黙らせると主上は
「この件に関わった者は皆処断する。被害無く討伐できたのだ「四方将」の皆に褒美を与える何がよい?」
「褒美ですか?では「南方将」朱雀から。」
「私は「賢妃」梨花妃の下賜以外必要ありません。」
「「・・・。」」
高官は無言でどうもしないそれに対して腹立たしいのか朱雀は
「下賜を許し何ヶ月待たせるのですか?主上は一度許したことを覆すような男でしたか?」
「「南方将」不敬な!」」
「南方将」と「賢妃」の婚姻を問題視する高官達は口々に不敬と口にするが
「発言を撤回するとも言わずただ時間稼ぎしかしない貴方方に不敬などとは言われたくなりませんね。」
「「っ。」」
核心を突かれた彼らは黙る
「ふむ。」
主上は片手を顎に当て
「朱雀。そなたがそこまでいうとはな。」
「言わなければいつまでも手に入らないと判断しました。」
「主上。」
そこで玄武が
「私「北方将」玄武と「西方将」白虎も褒美は「南方将」に「賢妃」を下賜することを望みます。」
「「なっ。」」
まさかの朱雀の援護をする玄武と白虎に高官は言葉をなくす
「青龍、そなたは?」
「俺?」
「お前もだろう?青龍。」
白虎が青龍も味方につけようとする青龍も
「まあ、欲しいものもないからそれでいい。」
「「四方将」!それで良いとでも思っているのか!」
高官達は声を荒げているなので玄武と白虎は
「それで良い?随分上からの言い草だな。」
「どちらが国に貢献できているのか理解しているのか?」
とこちらも一歩も引かず朱雀の援護をする
「お前らなど剣を振るっていればいいただの能なしだろう!」
「我々が戦場で生きるか死ぬかの瀬戸際にいるとき貴様らは女遊びにいそしむのだろう?どちらが国の守護をしているのかも理解できないか?哀れな遊び人どもだ。」
「玄武、白虎。」
「「はっ。主上。」」
「そなた達の結束は理解した。壬氏を呼べ。」
「主上?」
暫くして壬氏が現れると主上は
「壬氏。早急に「南方将」に「賢妃」を下賜する準備をせよ、一週間以内に下賜を完了させるように。」
「「主上!」」
高官の非難の声に
「「四方将」がどれほどこの国の安寧に貢献しているかも理解できぬか?況してや「南方将」はその最強として君臨することで諸外国との
「「ですが!」」
「待たせてしまい済まない朱雀よ。」
「では、今度こそ感謝します。」
朱雀は一礼するそして
「よくやった「四方将」よ、下がるがよい。」
「「はっ。では失礼します。」」
「四方将」が去ると壬氏は
「よいのですか?主上?」
「よいのだ。」
「分かりました。」
その場にいた高官であり梨花妃の父は娘の下賜を朱雀が望んでくれたことに胸が熱くなった。こんなことになるくらいなら最初から梨花に朱雀を宛がうべきだったと後悔もした。だが、今はそれ以上に娘と添い遂げてくれる男はこの世で最も信頼できる男である朱雀であることが何にも勝る安心材料だ。
その日の夕刻
朱雀の屋敷には梨花の父が訪れた
「何でしょか?」
「義理の息子の顔を見に来てはいけないのか?」
「いえ、そのようなことはありません。」
「安心したのだ。」
「?何にですか?」
「梨花はちゃんと自分を心の底から愛する男を見つけられたのだとな。」
「最初から口外していれば梨花様が悩むことはなかったのです。それを今後悔しています。」
「そのようなこと、ならばこれからも梨花にだけ愛を囁いてくれるか?」
「はい。」
「会いに来れる孫はもう少し先かな。」
「努力します。」
「ははっ、朱雀。肩に力が入りすぎているぞ?力を抜け、お前にできないことなどないだろう?」
「評価しすぎですよ、私にはできないことの方が多い。」
「梨花が安心して過ごすのはお前が必ず護ってくれると信じれるからだ。それができるお前ができないことが多いなど自己評価が低いぞ?」
「気をつけます。」
「うむ。ところで庭が寂しいな。」
「梨花様がこの屋敷に来たら一緒に植える花を考えようと思っていますので今だけですよ。」
「そうか、なら安心だな。」
「旦那様。」
「うん?」
「梨花様の下賜を願い出る許しをくださりありがとうございます。」
朱雀は深く一礼するそんな朱雀の肩に手を置き
「お前ほどの好青年はいないのだ。だから世話を焼きたくなるのだぞ?何かあればすぐ言え、娘を護る男の頼みならば断らないからな。」
「その時はお力をお借りします。」
「ああ。ではな、朱雀。」
「はい。お気をつけてお帰りください。」
梨花妃の父を見送り屋敷の中に戻る朱雀は
「一週間で此処に梨花様が来られるのか。」
明確な下賜の日にちが分かり気分も高揚していることが自分でもよく理解できてしまうので
「明日からは使用人を雇い万全の状態で梨花様を迎えよう。」
と彼女が下賜されるに相応しい屋敷にしようと模索する朱雀であった
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