薬屋のひとりごと〜南方将は西国の血を引く男〜   作:花札こいこい

14 / 17
怖い人

李白と朱雀の決闘だと聞き白鈴は急いでくる

「李白様と朱雀様!」

「白鈴!」

「朱雀様、初めまして白鈴と申します。」

「白鈴?」

「李白様はお久しぶりですね。」

「嗚呼、久しぶり。」

自分への挨拶より先に朱雀に挨拶した白鈴に怪訝な顔をした李白だが白鈴が自分に天女の微笑みを見せてくれればそれだけで満足してしまうのは惚れた弱みというものなのだろう

「それでなんの決闘をなさるの?」

「それはな、筋肉自慢だ!」

 白鈴の疑問に何故か玄武が答えると

「き、筋肉ですって?」

「白鈴?」

「それは李白様と朱雀様、お二人のということですわよね?」

「そうだ。」

白鈴はじゅるりと唾を飲み込む、そして店先の賑わいに他の三姫である女華と梅梅が顔を出す

「武官の集まりか?」

「初めて見る顔だわ。」

「ここではなんですし、どうぞこちらに。」

 李白は勝つ気満々で腕をまくり

(見ろこれが俺の筋肉だ。鍛え方が違うぞ!白鈴は俺が身請けするんだ!)

 と早速強調(アピール)に余念が無い。一方の朱雀は牽制なんてことはせずかつ、脱衣もしておらず平常心を保っているので異質な雰囲気になっている。白鈴が店の中に彼等を招こうとするとふと後ろから子供の声がする

「おじ様!」

「うん?誰か呼んだか?」

「うん!呼んだよ玄武のおじ様!」

「何故か小花(シャオファ)の声が聞こえるんだが・・・、私は疲れているんだな。」

「こんなところに小花(シャオファ)が来るなんて教育に悪い!」

 白虎は愛娘の声のする方に顔を向けるとその場の朱雀の隣には愛娘がいて

「朱雀様?ここは何のお店なの?」

「妻子持ちが来る場所じゃない。」

朱雀からその一言が出ると小花(シャオファ)は

「じゃあおじ様も爸爸も来ちゃ駄目じゃないの?」

「嗚呼、だから小花(シャオファ) は明麗(メイリュ)殿に白虎殿と玄武殿が鍛錬と称し「緑青館」というところにいると伝えてきてくれないか?」

「朱雀様のお役に立てる?」

「嗚呼、この上ない味方だ。」

「分かった。小花(シャオファ)お母様に言いつけてくるから待っててね朱雀様!」

「頼むぞ小花(シャオファ)。」

「「朱雀!どういうつもりだ!」」

 玄武と白虎は声を荒げる、拒否する朱雀にこんな真似をしたとなれば妻が黙っているはずがない。妻子持ちの「四方将」達が最も恐ろしいと口にするものは妻の逆鱗に触れることなので万に一つこの場に来られたら「四方将」の威厳が崩壊する。ちなみにこの場にこの間(タイミング)で小花(シャオファ)が現れたのは先程通った大通りでよくお友達と「四方将ごっこ」をしていると小花(シャオファ)が朱雀に話したことがあり自分の目立つ出で立ちを見たならば小花(シャオファ)は必ず追いかけてくると確信しているからあえて列にそれることで自らを小花(シャオファ)の視界に入るようにしたのだ。

「私には婚姻を結ぶ女性がいます。妻の機嫌はとっておくものなのでしょう?これから始まる生活が不穏になるのは御免被ります。」

 彼は普段と変わらない冷静な口振りだがどこか勝ち誇っているようにも聞こえる朱雀の正論パンチだが白虎は

「だからといって何も明麗(メイリュ)に言わなくても良いだろう!」

 この対応に不服なのか抗議するが

「この前、小花(シャオファ)を貴方の屋敷まで送った時に明麗(メイリュ)殿に言われました。褒美で妃が私に下賜されたら「四方将」の妻の先輩として色々教えれることはあるから気軽に言ってくれれば良いからねと言われていますからお言葉に甘えます。」

 白虎も顔が青ざめているがそれ以上に顔面蒼白の玄武が

「うちのかみさんにも言うのか朱雀よ?」

「はい。明麗(メイリュ)殿も玄武殿の奥方冬花(トウカ)殿も同じように仰って下さいましたので。」

「白虎、我々の知らないところで妻達による包囲網が完成しているこれは由々しき事態だぞ。」

「確かに我ら「四方将」の唯一の負け戦になる。」

「だが、なぜ朱雀はあやつはこうも味方が多いのだ。」

「日々の行いですかね?」

 すると青龍がぽつりと呟く

「誠実な人は皆好くのだろうな。」

「我々に誠実がないと言いたいのか?」

「あっ、いえそういうわけではないです!」

まだまだ未熟な若き武官は「四方将」に対して尊敬の念を抱いている。だが時に「四方将」同士という既知の間柄から出る時に無礼に聞こえる会話で自分達に対して言われている訳では無いのだが毎回何故か周囲にいる武官は謝るようになっているのだ。そこに計ったかと思うくらいの速さで小花(シャオファ)が母明麗(メイリュ)をつれて「緑青館」にくる。すると明麗(メイリュ) は

「貴方は朱雀殿の婚姻に口出しするだけでなく妓女を選ばせようとするなんてどういう神経をしているの!そんな鍛錬が何処にあるのよ!」

「男にはあるんだ!」

「そんな鍛錬で何を護れるの!」

「お、男の矜持(プライド)・・・。」

「そんな矜持(プライド) なんて棄ててしまいなさい!どうせたいした役には立たないのですから!」

「なっ、なんてことを言う明麗(メイリュ)!」

 するとそこに玄武の奥方冬花(トウカ)殿も加勢にくる

「間に合いましたかね?良かった。明麗(メイリュ)殿が間違ったことを言っているとでも?白虎殿?」

「あ・・・いえ、そういうわけでは・・・。」

「ではどういうわけなんでしょうか?」

 (俺は明麗(メイリュ)だけでなく冬花(トウカ)殿も怖くていつも何かあれば尻に敷かれる日々を送っているのだ!ここは玄武殿に冬花(トウカ)殿をお叱り頂こう!)

 期待に満ちた白虎の瞳は玄武を捉えるだが玄武の顔は威厳ある武官というよりは妻に恐れを抱く恐妻家のようで

「冬花(トウカ)、何故こんなに早く来たのだ、私には逃げる権利すらないのか?」

「貴方から見ても可愛らしい小花(シャオファ)は私から見ても血は繋がってはいなくても可愛らしい孫ですから、その小花(シャオファ)から明麗(メイリュ)殿を通して鍛錬で妓楼に行くなんて聞いて黙って居るとでも?茘国で最も戦場に生きる「四方将」の妻の先輩として今は明麗(メイリュ)殿だけですけれど、いずれは朱雀殿の奥方になられる方にも頼られる存在で居たいのですよ?頼られる立場の者が迷惑をかけるなど有り得ませんからね?きつい灸を据えて差し上げますよ。」

 そう微笑みながら言う冬花(トウカ)だが目が笑っていない。何なら後ろにいる明麗(メイリュ)達が乗ってきた馬車の御者は妻の怒りの矛先を向けられている旦那であり主人である玄武と白虎を哀れんでいるような目で

「奥方様の逆鱗ですよ。」

と言いたそうな表情をしている

 その場にいる男達は皆居づらい空気に黙り込むのだがその中で朱雀と青龍はその空気に飲まれていない。朱雀はどう見ても被害者で奥方達は味方であり、青龍はそもそもこの場にいても妓楼に興味が無いなので怒られる理由もなく、ある意味年配者がと怒られる理由を多くしているように見えるし、実際そうなのだが妻からしたら鍛錬と称し妓楼という場所にいるましてや妻子がいる男の大人の茶目っ気で済む話ではないのはこの場にいる朱雀と青龍以外の武官は理解してい

るだが冬花(トウカ)と明麗(メイリュ)の正論パンチは武官達には灸で済む話ではないと彼らは戦場以上の緊張感に支配されていた。

さらに冬花(トウカ)が追い打ちをかけるように朱雀に対して

 「申し訳ないわ朱雀殿。貴方が「四方将」の長であるべきね。子供に好かれている「四方将」は朱雀殿しかいないから貴方は頼りがいのある旦那になるわね。」

「ありがとうございます。冬花(トウカ)殿と明麗(メイリュ)殿も奔放な旦那に苦労なさってお疲れ様です。」

「ええ、全くだわ。小花(シャオファ)は朱雀殿のような男性を選ぶのよ?間違っても爸爸や玄武のおじ様のような男は女が苦労するのだからね。」

「おば様心配しないで!小花(シャオファ)の旦那様は朱雀様だもん!」

「あら?朱雀殿は妃を下賜されるのでしょう?」

「下賜ってなあに?」

「妃は分かる?」

「うん、後宮にたくさん居る帝の奥さんでしょ?」

「その中の一人を朱雀殿は褒章として自分の奥さんにできるの、そのことを下賜というのよ。」

 冬花(トウカ)の分かりやすい説明を聞く小花(シャオファ)は

「朱雀様に奥さんができるの?小花(シャオファ)がいるのに?」

「まぁ、小花(シャオファ)は朱雀殿の奥さんになるの?」

「うん!朱雀様の大切な奥さんになるの!」

「小花(シャオファ)朱雀殿はもう心に決めた方が居るのよ?」

 母である明麗(メイリュ)にそう言われると小花(シャオファ)は朱雀の両足の膝より少し上辺りに抱きつき

「朱雀様は小花(シャオファ)より大切な人が居るの?」

「すまない。小花(シャオファ)が生まれる前からその御方とは知り合っていて、私にとってとても大切な御方で下賜されなければ「四方将」が一角「南方将」朱雀としてでしか護ることが出来ない。名も無き私に名を存在する意味をくれた方だ。 本音を言えば妃になどなって欲しくなかった、私以外があの御方を護るなど考えたくもなかったが、後宮では誰も彼女を護らない心の折れた彼女を誰も慰めない、そればかりか殺そうとまでする。そんなところに世界で最も大切な御方を一人にするわけにはいかない。」

「四方将」の奥方二人には今まで知り得ていなかった朱雀の本心を聞いてより一層彼の誠実さを手放しで称賛するように

「やはり男は誠実で毅然としていなければ女はついて行きませんね。」

「これほどの愛を注がれる下賜をされる妃は女冥利に尽きるますね。この場にいる武官全員に貴方の爪の垢を煎じて飲ませたいわ。」

「うー。」

大人の事情はよく分からなかった小花(シャオファ)だが朱雀がここまで大切だという妃には嫉妬してしまう。小花(シャオファ)だってと言いたいがまだ幼い自分は後宮がどういうところかも理解できないが、それでも誰も慰めないそう言われたら可哀想になる。現に今小花(シャオファ)は朱雀に構ってもらえなかったことなど一度も無い自分が話しかければ必ず手を止めて話を聞いてくれる。優しくて格好よくて強い朱雀だから小花(シャオファ)は大好きなのだ。

 とそこで一人の武官が

「筋肉自慢対決はどうなるのでしょう?」

 と聞くと「四方将」の奥方二人は眉をつり上げて

「「やるの?」」

 たった一言で、羽目を外したい男どもを黙らせるその手腕はまさに最強の武官の妻達だと女華も梅梅も納得する。それは白鈴の同様でここまで一途に愛される顔も知らない妃が羨ましい、妓女は一途ではいられない客と割り切り接するからだ、でも彼女は自分だけの白馬に乗った王子様が来ると信じているそれが朱雀だと思いたいようで

 (朱雀様は白馬も似合いそうだし、なによりその引き締まった筋肉を見たい・・・。)

女華も梅梅も白鈴の考えていることは手に取るように分かるのか

 (筋肉見たさに襲わなければいいが・・・。)

 (ほかの女性の王子様を襲うのはよくないわよ?)

 ((どうするか・・・。))  

 「奥様方の逆鱗に触れたんですし、もう今日はお帰りになってはいかがです?」

 梅梅はやんわりと帰ることを促す

「店先で迷惑をかけて申し訳ありません。」

「いえいえ、では。」

「ええ、失礼いたします。」

奥方達を先頭にして武官一行は帰る。玄武と白虎は奥方に怒られ小さくなってしゅんとしているのだが朱雀と青龍以外の武官は上官が小さくなっているためかそれよりさらに小さくなっているので奥方達の方が武官に見える

「大の男が情けないわ。」

 今の冬花(トウカ)はたった一つの砲弾で部隊を全滅に追い込む最強の砲撃手になるのであった。

薬屋のひとりごと~南方将は西国のを血を引く男~今後の話でこちらの中で読みたいと思うお話の需要を知りたいのでご協力お願いいたします。

  • 朱雀と梨花妃の恋
  • 猫猫の謎解きを「四方将」が手伝う
  • 「四方将」がメインにとなる
  • 「四方将」やその周りがメインの短編小説
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。