薬屋のひとりごと〜南方将は西国の血を引く男〜   作:花札こいこい

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やっと

後宮の中で多くの者の話題になる「四方将」が一人「南方将」に「賢妃」梨花妃が下賜される件で「水晶宮」は主人替えの為に大掃除が行われていたのだが同時進行くらいに「柘榴宮」も年末の大掃除として宮の侍女と下女達だけでなくそのほかの下女も動員されていたその中に何故か猫猫もいた、猫猫は「翡翠宮」の侍女なのだがその猫猫が感嘆するほど「柘榴宮」の侍女と下女も働き者ばかりで思わず水晶宮の口だけの侍女達は見習え思うほどであったのだ

水晶宮に仕えている侍女の多くは梨花妃の下賜後は実家に戻る者がほとんどだった。下賜後も梨花様に仕えたいと願っても間に合っているのでとやんわりと否定されたと実家から文が届く、なので侍女達は梨花に直談判するしかないと何人かが率先して片付けをしている梨花の元に向かう

「梨花様失礼いたします。」

「あら?何かしら?」

 侍女達は窓辺にいる梨花妃に対して

「何をなさっているのですか?」

と訊ねると

「この子が文を届けてくれるの。」

 欄干には一羽の鷹紅牙(コウガ)が居る紅牙(コウガ)の脚には文をつける為の金具がつけられて梨花妃はそれから文をとる

「梨花様、実は梨花様の下賜後も梨花様に仕えたいと願っても断れてしまうのですがそれは梨花様のご意思ですか?」

「それは朱雀が決めたの。私が信頼できて朱雀が安心して私を任せられる者を侍女として迎えると。」

「私達は後宮で梨花様を支えました。なのに私達は要らないのですか?」

「ごめんなさい。支えてくれたことは感謝しているの、でも私が信頼しても朱雀が信頼できない人を朱雀は屋敷に迎えない。誰でも彼でも雇って何かあったときの責任を負うはめになるのは朱雀だから、朱雀が信頼できない人は私も信頼できない。逆に朱雀が信頼できるなら私は無条件で信頼できるの。」

「それはそうかもしれませんが・・・。」

「教養もある貴女達なら侍女じゃなくてもどちらかの方に嫁ぐこともできるのだから、私の侍女でなければいけないこともないでしょう?」

「・・・。」

「今まで支えてくれたからなるべく良いところにいけるように私ができる努力はするわ。」

「「私達は梨花様にお仕えしたいのです!」」

「そう言われても・・・。」

「「お願いします!」」

 本当は彼女達を侍女として迎えたいと思うが朱雀は彼女達の無能さを知っていて、その上自らが無知だという自覚もないこともだからか以前文で

「屋敷には優秀な者を迎えるから今の「水晶宮」の侍女達は雇わない。」

 とはっきり書かれていて、妻の身と心になにかがあることへの懸念を払拭するために無知の上無能で自己保身に走るような者が梨花の側に居れないようにするのは夫として当然のことだと朱雀は考えていると理解している梨花がこればかりは朱雀に考え直してとは言えない。実際梨花自身が死にかけたのは紛れもない事実で、そこから救ってくれたのはほかでもない朱雀だ。無知でもそこから学ぶ意欲があるのならまだ良い。だが何故問題なのかを理解しようとせず同じことを繰り返される可能性があるなら最初から必要ないと切り捨てれば問題は無い、冷徹だと思われるだろうが何かあったときに罵倒されるよりはまだ幾分か互いの傷は少ないだろうに

「朱雀が決めたことだから・・・。」

「では、「南方将」に私達を侍女としてどうかと紹介してください!」

「だから・・・、それをしても・・・。」

 朱雀の中でもう無能認定されている彼女達を紹介したところでどうなるかは決まり切っている

「「南方将」が私達の何を知っているのですか?梨花様を支えれるのは私達だけです!」

「・・・。」

侍女は白粉の件で水晶宮に来ていた宦官を梨花はあれだけ朱雀と呼んでいたのにまさかあの宦官が「南方将」朱雀その人だと認識していないようで

(貴女達だけだったら今頃私は死んでいるのよ。)

 そう言いたいがそれを言ったところで理解はできないだろうと喉まで出かけた言葉を飲み込んだ梨花だが侍女達は

「「南方将」はあの宦官を知っているのですか?宦官に梨花様をとられるから下賜を望んだのではありませんか!」

「あの宦官はもう居ないわ。」

「何故言い切れるのですか?」

「あの宦官が朱雀だからよ。」

「「へ・・・?」」

「気づいていなかったの?私があんなに朱雀と呼んでいたのに?」

「武官の「南方将」が後宮に?」

「主上の許しは得ていたわ。」

「私達に侍女に殺意を抱くような男が「南方将」なのですか!」

「だから貴女達を朱雀は雇わないの、知識がない侍女を置いてまたあんなことがあれば今度こそ朱雀は侍女でも斬るでしょうから、私にできるのはなるべく貴女達を私から遠ざけることよ。」

「「そんな・・・。」」

「皆さんおそろいで。」

「壬氏殿。何かありましたか?」

「はい。梨花妃の下賜の準備が整いましたのでご報告を。」

「分かりました。明日の朝に出立しますね。」

「はい。賢妃の冠はその際のお返しください。」

「承知です。」

ぐるりと部屋を見回して

「今までありがとう。」

 と口にする梨花妃それはこの宮と侍女と下女に向けてのものだ。この先の仕事の決まらない侍女達はなんとかしなければと思うが、あの恐ろしい殺意を自分たちに向けた朱雀を恐れているのかいつもの気の強さはない

 

  翌日朝

 後宮の門扉の前で「賢妃」は冠を返し後宮を去る

 既に下賜の相手が「南方将」だと言うことは知れ渡っているので「南方将」見たさに多くの妃と侍女や下女も集まっている

 冠を返した梨花妃は堅牢な門扉の方に向かう門扉が開けばとその向こうには何年も恋い焦がれ続けた最愛の男性である「南方将」朱雀が大きな馬車を用意して彼女を出迎える

「南方将」様だわ。」

「ええ、素敵。」

侍女と下女だけでなく妃もまた一様に「南方将」に好感を抱く

 しっかりとした足取りで朱雀の元に行く一歩また一歩と彼の目の前まで来ると我慢してきた言葉が出てきてしまう

「ずっとずっとただ梨花で会いたかったの、朱雀。」

「私も貴女様を最愛の方として側に居させたかった。」

 馬車に乗ると今までできなかったからか梨花は朱雀の腕に自身の腕を絡めると

「夢じゃないのね。」

 歓喜極まったのか涙声でそう告げると

「夢ではないよ。貴女の側に俺はいて、俺の側に貴女がいる。」

 その一言は姫と護衛ではなく互いが互いを支える夫婦の距離だ。今までのどの言葉より二人の距離が縮んでいる証拠でもある馬車に揺られながら朱雀の屋敷に向かう

 

 朱雀の屋敷

 朱雀に同行(エスコート)されて馬車を降りれば全ての使用人が出迎える

「「お帰りなさいませ。旦那様、奥様。」」

「ああ。」

 その使用人達は梨花と面識のある梨花の実家にいた者達が多く、朱雀に優秀と言われるに相応しく梨花も同感だと感じる

「屋敷を案内する。」

 朱雀はそう言うと梨花の手をとり歩幅を合わせて案内する、何気ないことだが梨花には優しい朱雀がさらに優しくなったと感じて自分に合わせてくれる朱雀の精悍な横顔を眺めながら至福の時を過ごす梨花。

様々な部屋を案内された最後は寝室で梨花は

「ここは朱雀と私の兼用よね?」

「ああ。そのつもりだが嫌か?」

「そんなことないわ。むしろ兼用以外が嫌。」

「そうか、良かった。」

「朱雀のお屋敷らしいわね。」

「旦那様と同じことを言うな。」

「そうなの?」

「嗚呼。」

「お父様にもご挨拶しないと駄目かしら?」

「顔は見せておいたほうがいいだろうな。挨拶は明日にするか?」

「明日、朱雀はお仕事があるの?」

「年末だからそれほど立て込んでいるわけではないな、だから仕事が終わり次第行くことは可能だ。」

「じゃあ朱雀のお仕事が終わったら一緒に行くわね。」

「そうしよう。」

「旦那様。」

「なんだ?」

「大旦那様と大奥様がお見えです。」

「速いな。」

「本当ね。」

「大広間にお通ししましたので。」

「分かった、対応する。行こうか梨花。」

「はい。」

 大広間にて

「お待たせしました。旦那様、奥様。」

「それほど待っていないから気にするな。」

「梨花!」

「お母様。」

「嗚呼、梨花心配していたのよ。」

愛娘を抱きしめる妻を見て

「やはりお前が梨花の側に居ることが私達には一番安堵できる。」

と言われて朱雀は

「信頼してくださるならその信頼に応えることは当然のことです。」

「朱雀。本当にありがとう。娘を護れるのは貴方だけだわ。」

 安堵した母が涙を流しながら娘に

「貴女は本当に素晴らしい男性に愛されているのよ。梨花。」

「はい。私を何よりも大切にしてくれて愛してくれる朱雀を私も愛しています。だからお母様、心配しないで。」

「ええ、心配ないわ。それに可愛い孫を見たいわね。」

「お母様!?」

「孫のためにお皿を買ったのよ?朱雀も努力するって。」

「朱雀!?」

「嫌か?」

「嫌じゃないわ、けど・・・。」

「どうした?」

「私は子を成せるの?」

今の梨花にはそれが無理なことが一番恐ろしいもので無理ならば、やっと朱雀の妻になれたのにどこぞの女が朱雀の子を産むことは耐えられないそれを悟ったのか朱雀は

「鉛の毒に冒されてはいたがそれは体内から排出したし、あれ以降毒になるものを摂取はしてはいない。子が産めなくなる可能性は限りなく低いと思うが。」

「本当?」

「嘘をついて傷つくのは梨花だ、俺は梨花を傷つけたくない。」

もう、梨花を哀しませることをしたくない朱雀は傷つけたくないと言葉にする。梨花は朱雀に傷つけられたことがあるとは認識していないが慕情(おもい)を告げられても貴方は妃になるのだからと断っていたことは彼の中で苦しませたと感じていてそれを負い目にしているのでその言葉が出る

「朱雀・・・。」

梨花は母の抱擁からするりと抜けて朱雀の腕の中に入ると彼は彼女を抱きしめる。優しく暖かく安心させるように髪と背を撫でると梨花の瞳はとろんとして朱雀の胸板に頭を預ければ、その光景を見た梨花の両親は愛娘と二人が最も信用する義理の息子に微笑ましいと目を細める

暫くそうして朱雀は

「旦那様と奥様、夕食はどうなさいますか?」

「あら?もうそんな時間?」

「若い二人の邪魔はよくないな。」

「そうですね、今日はこのくらいで帰りましょうか。」

「すみません。」

「気にするな。見送りはいいからな。」

「はい、気にかけていただき感謝します。梨花。」

「では、またね。」

「はい、お気をつけて。」

「ありがとうございますお父様、お母様。」

 梨花の父と母が去ると

「食事にしようか?梨花。」

「ええ。」

 二人で食堂に向かう

 食堂

 二人には広すぎる机(テーブル)に二人の食事が用意されていて

「そういえば一緒に食べるのは何年かぶりね。」

「そうだな。武官になってからは時間がなかなか合わないからな。」

「でも今日からは一緒ね。」

「嗚呼、一緒だ。」

控えていた使用人は雇用されるときの面接で寡黙な印象の旦那様だったが奥様と話すときは少しだけ饒舌だなと思い、それは奥様にしか見せない安らいでいる証拠なのだろうと判断する。話している内容はたわいもない話で今まで互いが互いに離れていた時間を取り戻したいそんな風に見えていたのだった

 

薬屋のひとりごと~南方将は西国のを血を引く男~今後の話でこちらの中で読みたいと思うお話の需要を知りたいのでご協力お願いいたします。

  • 朱雀と梨花妃の恋
  • 猫猫の謎解きを「四方将」が手伝う
  • 「四方将」がメインにとなる
  • 「四方将」やその周りがメインの短編小説
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