薬屋のひとりごと〜南方将は西国の血を引く男〜 作:花札こいこい
猫猫が里帰りをしている頃後宮ではついに「賢妃」が武官に下賜をされることが噂となった。もちろん後宮では下賜は立場を下げるものだ。「賢妃」は東宮を産んだのに用済みになったから下賜されるのだからと他の妃とその侍女は皆哀れだと口にする。上級妃でもそれは例外ではなくむしろ上級妃だった「賢妃」が居なくなるならばその席が空けば中級妃、下級妃はのし上がる絶好の
一方鍛錬場では最近「南方将」を見ないが何かあったのかと大勢の部下と玄武と青龍に心配されていた朱雀
「あやつきっと高官から逃げているのだろうなぁ?」
「下賜も先延ばしのようだしな。」
「「賢妃」ならば相応しいだろうに、宮廷のいざこざは長引くぞ。」
「揉めるくらいなら選択肢に「賢妃」を入れなければいい話だ。」
「大方まさか下賜なんて言い出すとは思っていなかったんだろう?あやつも男という理解が宮廷にはなかったのか、根回しされる前に突っ込めばごり押し出来ると朱雀が踏んだのか・・・。」
「策を練らずにあいつが突っ込むなんて有り得ないだろ。」
「そうなんだよなぁ。恋心に火がつき燃え上がってしまい理性がなくなったなんて訳はないはず・・・。」
ふむっと玄武が唸るのだが青龍は
「まぁ、あいつの理性が無くなっているなら後宮に乗り込んで屋敷に連れ去るだろうけどな。」
「青龍よ?それはさすがに問題にしかならん。」
「一番手っ取り早いだろ?」
「一番問題だ。」
「面倒臭いな。」
「ないかもしれないがお前も妃の下賜を望む時、頼むからきちんと順を追ってくれ。「四方将」が後宮に乗り込んで来たなんて報告は受けたくないからな?」
「安心しろ。必要だとは思わない。」
「そうか?それはそれで不安だぞ?」
ピィー
「うん?」
「あれは朱雀の…。」
朱雀の飼い鷹である
「一体なんだ?」
「ほ…ぅ?」
そこには
「武官と文官の高官に私の居場所を聞かれても、とぼけてくれ。屋敷に乗りこんでくるようなら叩き潰すと言っていたと脅してくれ。」
と書かれていた
「どうやら、理性はあるようだな。」
「苦労するな。あいつ。」
書かれていた内容に対して玄武が
「承知。」
と書き足して
「では、紅牙。返事を書いたから頼むぞ。」
ピィー
紅牙は任せろと鳴き声を出して空に舞い上がる。
ところ変わり、朱雀の屋敷では朱雀が部屋の掃除をしていた。梨花がいつ来られても良いようにと彼女も住むようになったら侍女を雇うための銀も貯めている。どうして今雇わないのかと聞かれれば単純に掃除も食事も他人に用意されなくても自分で用意ができてしまうし銀はなにかがあったときに使えるようにと貯めておけばいいと朱雀は高給取りだが購買欲がほとんどない為に西国への留学費も国から出すと言われても断り全て実費で賄っても貯蓄はまだ十二分にあった。さらに「四方将」となり給料も上がりましてや最前線で戦う朱雀と青龍には危険手当も出ているし、使わない限り貯まる一方なことは誰でも分かる。彼女がこの屋敷に住むにあたり一番の懸念があの侍女達で、本音はできるならば雇いたくはない。また侍女の知識不足で梨花の命が危険にさらされることがあってはならない後宮にいる侍女達は梨花のご実家の侍女になるか名家の嫁にでもなれば良いとにかく梨花に関わることは許さない。
「庭には梨花の好きな花の株を植えるか。」
掃除を終え庭を見ていると
ピィー
「紅牙。」
朱雀が左腕を挙げると降下し朱雀に甘えるように首を動かす紅牙の脚には先ほど自分が出した小さな文には
「承知した。」
と書かれ理解してくれるのが早い仲間で良かったとしみじみと思う朱雀は紅牙の大好物の鶏肉を用意していたので
「紅牙、食べていい。」
朱雀の許しが出たので鶏肉を啄んで食べる紅牙に
「お前を、梨花に紹介しないとな。」
ピィー
紅牙は
(頼んだぞ!)
と言っているようで朱雀は
「俺がいない時にはお前が梨花を護るんだぞ?」
今度は
(任せろ!)
とバサリと翼を広げながら鶏肉を啄んでいるので
「暫くは白虎殿の伝令もないから自由だな。」
紅牙は白虎が貸してくれと頼む屈強な鷹で都に早馬で走るよりも早く情報を確実に報告できると大変重宝されるので朱雀が飼っているのだがほぼほぼ白虎とその妻そして主上の元を基本的に周回しているので余り朱雀のところには居ない。それでも紅牙は朱雀が主だと理解しているので朱雀のいうことは素直に聞くのだ。
「さて、花屋に行くか、紅牙。客は来ても無視していいからな。」
ピィー
「馴染みの花屋なら有るだろう。」
と屋敷を出て梨花の一族に世話になる頃からの付き合いの花屋に向かう
「やはり、冬前だな。」
王都を歩く人々もせわしなく歩いたりものを買ったりと皆今年を終える準備をしているように見える。そんな人々の中で小さな男の子達が四人で遊んでいて
「僕が朱雀様役だ!」
「俺は青龍様役。」
「僕は白虎様役。」
「じゃあ俺は長の玄武様役だから命令を聞け!」
「「え~。」」
王都で流行っている「「四方将」ごっこ」白虎の娘の周りでも流行っているようだがなにぶん本物の「四方将」を知る
「青龍様は眉間に皺が寄っていつも怒っているからそんなに優しい言い方はしないの!」
玄武様役には
「おじ様は大きな声で笑うから小声じゃ駄目!」
父である白虎様役には
「・・・。」
何も言わないだがこれが朱雀様役になると
「朱雀様は背が高くて優しくて格好いいの!朱雀様の役をやるなら髪は紅く染めて瞳も翡翠にしなさい!朱雀様は英雄なの!」
明らかに朱雀贔屓の鈴花主導の「四方将」ごっこ」ではない男の子だけのそれに
(憧れてもらえるようにさらに精進しなければならないとな。)
と心の中で思うと
「あれ?紅い髪の緑色の目・・・背が高い・・・朱雀様だ!!」
「四方将」ごっご」の最中の男の子達は本物の朱雀を見つけ大興奮のようで
「「朱雀様だ!」」
部下のようないや、それ以上に純粋に尊敬する眼差しを向けられると、この子達が成長して茘国は豊かだと言われるような国の礎になりたいと思える朱雀に子供達は
「どうしたら朱雀様のような強くてかっこよくて優しい人になれますか?」
「背を伸ばすにはどうしたら良いですか?」
「どうしたら女の子にもモテますか?」
「弟子にしてください!」
興奮状態な子供達は間髪を入れず朱雀に憧れているからか質問攻めをする
「守りたいものがあるだけで人は強くなれる、愛するものが居れば人は優しさを持つそれらを持ち続けることで人は成長できると思うが・・・。」
「背は?背はどうやって伸ばしたのですか?」
「俺も昔は小さかった。きちんと栄養価の高い食べ物を食べ適度な運動をすれば背は伸びる。」
「僕は女の子に見向きもされなくてつらいです。どうすれば良いんでしょうか?」
「何人もの女性を追いかければ誰でもいいのだと思われる。良い関係になりたいならその一人を大切にすればいつかは君にとって最愛で、相手にとってもそうなれる時がくるかもしれない。」
そして最後の質問の
「弟子にしてください!」
には
「今はまだ幼いから親御さんの意志もある、親御さんからの許可が出たらそのときは歓迎する。」
「朱雀様から教えてもらえた!みんなに自慢しないと!」
「ああ。」
「「ありがとうございました朱雀様!」」
ぺこりと頭を下げ再び「四方将」ごっご」をするつもりのような少年達は
「俺が朱雀様役だ!」
「僕だよ!」
「俺の方が朱雀様っぽい!」
「いや、僕だよ!」
先ほどまでは憧れが皆分かれていたはずなのだが的確な
その生きる道をくれた梨花には感謝してもしきれない程の恩がある。そして今はこの命が続くまで梨花を最愛の
「今年中に下賜されたいんだがな…。」
そんな想いからか花屋に向かう足もせいてしまう
「梨花に好かれる庭にしないとな。」
店先には顔なじみの店主がいて
「あら?朱雀君久しぶりね。お姫様にお花を贈るの?」
「お久しぶりです。贈るのではなく庭に植えようと思いまして。」
「お庭に?どんな花を?」
「そうですね・・・、大切な愛を意味する花言葉の花はありますか?」
「・・・。朱雀君、貴方・・・。」
「はい。何でしょうか?」
「お姫様以外に好いた人でも居るの!」
「はい?」
「駄目よ!お姫様以外に愛を囁くなんて!お姫様が妃に召し上げられてしまっても、想えばいつか側に置ける可能性があるんだからね!貴方はこの国最強の武官「「南方将」朱雀」でしょう!」
「・・・。」
「女性はね、好きを使い分けれるわ。お姫様は貴方を心の底から愛しているの、それが分からない貴方じゃないでしょう!」
(参った。下賜を承諾されたと言いたいが日取りが未定だ、曖昧にされないように言っておきたいが梨花を困らせたくない・・・。)
困る朱雀だが
「うん?好きを使い分けられる?」
なんだか聞き慣れない言葉を復唱すると
「そうよ!お姫様は一族のために入内したんでしょう?そんなこと彼女と貴方の関係を見れば誰でも分かるわよ!」
「そうなのですか?」
「当たり前よ!何年貴方達を見てると思うのよ!」
(俺は、想いを隠せてなかったのか?)
自分では彼女への想いを完璧に隠せていたと思っていた朱雀だが、この店主には見抜かれていたようでなんだか恥ずかしくなる
「諦めては駄目よ!お姫様を泣かせるならおばちゃん容赦しないわよ!」
「店主殿。私は分かりやすいですか?」
「そうね。貴方は知らないだろうけど、男は声にしなければ隠せると思っているんでしょう?女はそういうことには敏感なのよ?ましてや家族より信頼している相手ならなおのこと、貴方はお姫様は皇帝の后が相応しいと引き下がったでも、それは本心じゃない。誰の目にも貴方にとってお姫様はとても大切な
「は…い。」
まくし立てるように言われて朱雀は珍しく狼狽してしまうだが火がついたのかおばちゃんはなおも
「貴方は容姿も性格もその上稼ぎも満点花丸なの!貴方の妻になりたいから紹介して欲しいって今まで何人のお客様に言われたことか…、でもおばちゃんはね毎回「あの子には良い人がいる。」って張り倒していたんだからね!」
「張り倒さなくてもよいのでは?」
「張り倒さないと女は立ち上がって強くなるの!」
「はぁ…。」
「いいこと?朱雀君。貴方はこの国で一番の武官なの、ならこの国で一番のお姫様を娶っても文句を言われる覚えはないのだからさっさと後宮という鳥籠からお姫様を放ってあげなきゃだめでしょうが!」
「・・・。」
おばちゃんの迫力は武官としてこなしたどの任務よりも恐ろしく肝を冷やした朱雀は
「そうなるように努力します。」
「そうよ。お花はお姫様と一緒に買いに来なさいね。」
「はい、失礼しました。」
「またいらっしゃいな。」
結局何も買わず来た道を帰る朱雀に
「少し見ない間にまた逞しくなっているけど、主上もあの子に褒美の一つ、二つ与えても良いでしょうに、はあ。もうおばちゃん心配だわ。」
片手を頬に当てながら親戚の叔母ちゃんの
「また母ちゃんのお節介が始まったよ、心配しなくても朱雀様は結婚相手に困らないよ。」
「それじゃあお姫様が可哀想でしょう!あんたは朱雀君の爪の垢を煎じて飲んで早くお嫁さんを見つけな!」
「朱雀様の爪の垢を煎じて飲んでも朱雀様は未婚だから嫁は見つからないよ。」
「ああ言えばこう言うだねこの子は!だったらなおさら嫁が見つかるような朱雀くんのような理想の男になりな!」
「世の男が全員朱雀様のようになるならとっくの昔にそうなってるだろう。朱雀様は特別なんだよ。」
「あんたを当てにしたあたしが悪いのかねえ?同じ年頃なのに片方は国で最も強く優しい男で、片やしがない花屋の長男で・・・。」
「やべぇ、母ちゃんの小言が始まる・・・ちょっくら酒呑んでくる!」
「まちな!」
冬の日暮れは早く、空は夕暮れの赤と夜の黒で濃い闇に染まれば宵から始まる店の行灯が深い夜を照らす光となり昼と違う人々の活気が王都に広がっていくのだ
薬屋のひとりごと~南方将は西国のを血を引く男~今後の話でこちらの中で読みたいと思うお話の需要を知りたいのでご協力お願いいたします。
-
朱雀と梨花妃の恋
-
猫猫の謎解きを「四方将」が手伝う
-
「四方将」がメインにとなる
-
「四方将」やその周りがメインの短編小説