薬屋のひとりごと〜南方将は西国の血を引く男〜 作:花札こいこい
猫猫の里帰り最終日彼女は「緑青館」に李白を迎えに向かう行けば天上の甘露を知った上機嫌な李白と相性が良かった白鈴が猫猫を迎える。
「猫猫。奥でおばばが呼んでるわよ?」
「え?何だろ。」
「猫猫が戻るまでお茶をしましょう?李白様。」
「ああ、そうしようかなあ。」
(すっかり手綱を握られてるな。)
「行ってくる。」
「ええ、行ってらっしゃい。」
「婆さん~?何~?」
「きたかい。そこに座りな。」
「で?何の話?」
「一昨日の話を覚えれてるかい?」
「ああ、確か
「あの男は結構な高官だが息子に才能がなく勘当して、武官と文官双方に才能をみせる「四方将」の一人「「南方将」朱雀」殿に妻を紹介したという箔を作りたいようで他の妓楼でも相性の良い妓女を探しているようだけどね、花街の
「それと私が後宮で働ていることが関係あるの?」
「その縁戚は後宮にいる妃の一人なんだよ、あの男がお前を知ることで考えたくないがその妃に毒を盛れと言われる可能性もある。」
「私はそうするって思ってる?」
「しないだろうが、今度はお前の身が危険にさらされるだろう?後宮でも高官なら下女の一人くらいねじ込むだろうからね。」
「そういうことか。」
「少なくとも自らを差し出す必要はないよ。いいね?」
(やはり、梨花様のお相手は・・・。)
「分かった。」
「うちとしては「四方将」が訪れる妓楼という看板は欲しいものだけどこの先彼等と良好な関係でいるにはあの客は要らない。」
「婆さんがそこまで言うなんて珍しい。」
「知っているかい?朱雀殿がきた妓楼の妓女達はこぞって彼に文を送る、その彼の直筆で「武官として精進したいので」という断りの文があれば花街では自分は高級妓楼の妓女だという一種の証明になっているからね。」
「女の意地だな。」
「武官の割には細くて心配だけど脱ぐとすごいんじゃないかって皆噂をしているよ。」
「白鈴姐ちゃんが食いつきそう。」
「まあ「四方将」だし、銀もたんまりもらっているだろうからお前の連れてきた武官よりは上客にはなるだろう。」
「ちょっと待って、まさか朱雀様を連れてこいなんて言わないよね?」
「そうしてくれてるならこっちは三姫全員で朱雀殿をお相手するよ。猫猫?」
「無理だよ。私は武官に顔が利くわけじゃないんだから。」
「李白とかいう武官に紹介させれば良いじゃないか紹介の紹介でも「南方将」なら丁重に出迎えるよ。」
「皇族の縁戚と婚姻するかもしれない武官に妓楼を紹介ってそれこそ不敬になりそうなんだけど?」
「婚姻前に女の扱いを学ぶためとか言えば来るだろう?」
「そういう問題?」
「まあとにかく、できる範囲でやりな。」
「え~。本気で言ってる?」
「顔も金もある上客なんて久方ぶりだ、いいねぇ。」
既に聞く耳を持たないやり手婆に猫猫は大きなため息を吐く李白が白鈴との三日間で払えない銀は猫猫が肩代わりしなければならないのにと、だがやり手婆は
「お前が「南方将」を連れてくれば李白の足りない銀は目をつむってやっても良いよ?」
「分かったよ。できる範囲でやる。」
それ以外の選択肢がない猫猫を尻目にやり手婆は高笑いをしている
(できるかなぁ?)
内心既に疲労困憊の猫猫は白鈴と李白のところに向かい
「帰りますよ?李白様。」
「ああ、でももう少しだけ・・・。」
「おばばはなんだって?」
「「南方将」を連れてこいって。」
「「南方将」ってあの「南方将」をか!」
李白はこれでもかというくらいの大きさの声を出す
「あら?あの「南方将」様を?」
「そう。で、李白様は「南方将」に声はかけられますか?」
「無理無理、相手はこの国最強の武官だぞ?俺なんかが話しかけられる相手じゃない!」
「彼を連れてくれば李白様の足りない銀は目をつむってくれるらしいですよ?」
「それは・・・駄目だ。ちゃんと払うからだから・・・!」
「猫猫。こっちに。」
「何?姐ちゃん?」
「南方将」様を見たことはある?」
「あるよ?なんなら話したこともある。」
「筋肉すごそうだった?」
「う~ん。どうだろう、でも最強の武官なら李白様よりはあるんじゃない?」
「あの細身でも、筋肉がすごくて、顔も良くて、おまけにお金持ちなんて・・・。」
(まずい、姐ちゃんまでもが虜になる。)
「ふふ。何日持つかしら。」
(梨花様が知ったら大変なことになってしまう!)
「姐ちゃん、朱雀様にも好いた人くらい居るだろうし手加減しないと・・・。」
「あら?猫猫、朱雀様が私を本気にしてくれるなら全て捧げて奉仕するわよ、おばばの許可はあるんだから。」
(ひぃ。居なくても妓女を本気にさせる男がいるとは、恐ろしい。)
「じゃあ。猫猫、李白様。行ってらっしゃい。」
こうして三日間の里帰りから再び後宮に戻る猫猫
後宮翡翠宮にて
「お帰り猫猫!」
「どうだった?」
「充実して・・・ました。」
「その割には疲れてない?」
「まあ。」
先輩侍女達は温かく迎えてくれて、主人である玉葉妃にも帰ってきた報告をして侍女達は仕事を片付け厨房でお茶をしながらこの三日の話をする。その話題は「賢妃」が武官に下賜される話で翡翠宮でもその話は盛り上がっていた特に活発な桜花は身を乗り出して居なかった猫猫に話す
「「賢妃」の下賜、水晶宮を二分してるんですって。」
「何と何をですか?」
「確か侍女達は下賜に反対していて、下女は賛成しているんですって。」
「どういう?」
猫猫の疑問は貴園や愛藍も思っていたことのようで
「下賜の相手がまだ伝えられてないのかしら?」
「上級妃の「賢妃」が名もないような武官に下賜される?」
「そんなことある?誰かも分からない男に下賜されるなんて。」
(あの時朱雀様が言っていた玉葉様の一人勝ちって梨花様がいなくなるからってことだったのか。)
「園遊会の時に「賢妃」が話しかけていた武官がいたらしいけどその人なのかしら?」
(桜花様達も知らないなら園遊会のあの場で私がそれを知ったことは言わない方が良いな。)
「どんな人なんでしょう?」
猫猫は知らないふりをするだが流石上級妃の侍女だけある桜花達は
「「四方将」
「「東方将」様はつり目で怖いから女官は皆揃って「南方将」様を押すのよね、玉葉様と同じ紅い髪に翡翠の瞳でお優しい雰囲気で物腰も柔らかいまさに最強の武官に相応しいお方よねぇ。」
平民にも知られる武勇伝を持つ「四方将」のことは知識としてあるようだ
「「一度で良いから話してみたいわよねえ。」」
武官と接点のない後宮の侍女が揃ってそう願う「南方将」の人物像に
(間違ってはいないんだよな。実際お優しい方だったし、でも梨花様が関わると下手な女じゃ怖くて近づけない。)
「でも猫猫?貴女園遊会で「南方将」様が主上様の命で追いかけたんじゃないの?」
「はっ。そうでしたね・・・。」
「話した?」
「はい、まあ。」
「どんなお声だった?」
「男性ですから声は低くでも柔らかくお優しかったですよ。」
「「南方将」様と話せるなんて羨ましいわ。」」
「貴女達?何を話しているの?」
「「紅娘様!」」
「ええっと、「四方将」様達のことを。」
「それより壬氏様達から大切な話がある。と上級妃とその侍女頭及び侍女一名を連れ講堂に来るようにとお達しがあったわ猫猫ついてきて、愛藍。
「「はい。分かりました。」」
講堂には「貴妃」、「淑妃」、「徳妃」、「賢妃」が勢揃い、そのなんとも言えない緊張感を漂わせている
「わざわざご足労いただき申し訳ありません。」
壬氏が謝罪すると
「何故私達は呼ばれたのでしょうか?」
上級妃の中で最も位が高い「貴妃」が先陣を切って発言する
「実は宮廷にある書状が送りつけられまして。」
「「書状?」」
「現帝。我らにこの国を任せよ、貴様は井の中の蛙。手駒が優秀なだけだ。刻限はひと月後それまでに我に相応しい花園を用意しなければ貴様の大切な花園を踏み荒らし花を全て手折る。さすれば貴様の存在は無と同じだ。国のためにも正しい判断をすることを願う。」
「「!」」
「何ですか?その失礼極まりない書状は?」
「何者かが主上の治世を嫉み主上から全てを奪うそんなこといったい誰が。」
「未だ差出人も分かっていない状況ですが、狙われるのは後宮です。なので主上から特例として「四方将」が後宮に入ることの許しが出ました。敵の先鋒隊が侵入していてもおかしくないのでですが全ての妃に護衛を付けるような余裕はありません。だからこの件は上級妃にのみお伝えてしております。できるなら各宮に「四方将」を一人ずつ配置したいのですが妃たちはどうでしょか?」
「護ってくださるなら私達は構いません。ですが。名の知れた「四方将」が後宮に居ることを上手くごまかせますか?」
「それも問題だが、ただ後宮だけを狙うとも思わないが。」
「貴妃」は「四方将」の存在を隠せるかという懸念を「淑妃」は冷静な意見を述べる
「確かにそれも懸念材料ではありますが、狙われ対処ができないのは後宮です。一応夕刻に「四方将」が後宮のこの講堂に来るのでそれまで上級妃には残ってもらいそれぞれの宮に向かってもらうようにしてほしいのであります。」
「上級妃を妃を狙うなんて卑劣な真似をする。」
夕刻講堂にて
「ほう?これが後宮の講堂か。なかなか良い作りだ。」
「・・・。」
「まさか後宮に入るときが来るとはな。」
「で?俺達はどの妃の護衛だ?壬氏殿?」
「そうですね・・・。」
「賢妃」が隣に立つ朱雀の袖を少しだけ掴むと
「・・・。」
朱雀は不安そうな梨花の表情を見て安心させるように微笑む、この場に朱雀が居てくれるという安心感は梨花にとってはこの上ないものだ
「ではどの宮に誰をつける?」
「壬氏殿。申し訳ないが青龍は「徳妃」にはつけられない。こんなつり目では恐怖でしかないだろう、だがほかの上級妃ならば多少はましだろうからな。」
「では「徳妃」には誰を?」
「そうだな・・・。「徳妃」白虎はどうだろうか?」
「どなた様ですか?」
「私です。」
白虎が「徳妃」の前に出る
「白虎はそれほど恐怖を与えないだろうから適任だ。」
「徳妃」里樹妃とその侍女達は
「「よろしくお願いします。」」
「お任せください。」
「では次は・・・。」
「私は「北方将」に頼みたい。」
「淑妃」阿多妃は玄武を指名する
「お任せください。「淑妃」。」
「では最後「貴妃」と「賢妃」ですが・・・。」
「公主がいる翡翠宮には「南方将」の方が向いている気もしますがどうでしょう「貴妃」?」
「そうね。」
「貴妃」のその一言に「賢妃」は顔には出さないが朱雀をとられたくないそんな表情をしているように朱雀には感じた、だが相手は主上の寵妃だ手を抜くわけにはいかないのだが
「公主の近くに行かなければ良いんだろう?そんなの簡単な話だ。」
青龍がそう発言すると
(確かに桜花様達が言っていたつり目できつい印象だな。)
「嫌なのか?「四方将」が護衛をすると言っているのに。」
「では、「東方将」よろしくお願いします。」
「「賢妃」が「南方将」ということですね。では「四方将」よろしくお願いします。」
「「承った!」」
上級妃とその侍女達は見えない敵に対し恐れを抱いてはいるだがそれ以上にこの茘国で百戦錬磨の「四方将」が護衛をしてくれるという安心感は恐れを超えている。
各宮にそれぞれの主が戻れば侍女頭から侍女並びに下女全員に先程の書状の件と、この件が中級妃以下の全てに対して箝口令が敷かれること最後に上級妃の護衛として「四方将」がつくことが報告される
翡翠宮をはじめとした柘榴宮、金剛宮そして水晶宮はその日のうちに「四方将」に控え室を用意した上級妃の宮に他の妃が入るのは茶会の時くらいで顔を隠して宦官の服を着ていればよほどのことがない限り「四方将」とは知られないだろうという上級妃達の判断だ。
水晶宮では
控え室にいた朱雀に梨花妃が
「剣術のお稽古を見てもいい?」
「見て楽しいものではありませんよ?」
「そんなことないわ。」
「外に出ましょうか。」
「ええ。」
庭に出て剣を抜きその剣先に水の入ったグラスを乗せる朱雀
(どんなお稽古なんだろう?)
梨花はそういえば朱雀が鍛錬をしているところをまじまじ見ることは今までなかったと興味津々だ
瞑想するように瞳を閉じて呼吸を整えた次の瞬間、グラスが宙を舞い上がったその刹那で朱雀はおそらく何十回以上の斬撃を繰り出す
ヒュンヒュン
剣が空気を切るような音だけがしたので梨花はこれが何の鍛錬なのかが分からなかったのだがグラスが重力に従いかなりの早さで落ちてくる割れると思い目を瞑る梨花だがグラスが割れる音はしない。なぜなら朱雀の持つ剣の先にずっとそこに居たかのようにあったのだから
「すごい、宙を舞うだけでなくあれだけの斬撃を繰り出していてもグラスに傷をつけないなんて!」
「所定の位置で力まず斬撃を繰り出す鍛錬ですよ、慣れれば簡単です。」
「慣れるってどのくらい?」
「4、5年くらいでしょうか。」
「朱雀でもそのくらいかかったの?」
「私は1、2年ほどでしたね。」
「すごい。朱雀は本来かかる時間の半分くらいでできてしまったのね。」
「一応、最強の武官ですから・・・。」
梨花様が見たことないほど穏やかだと侍女も下女も感じたからか庭の端から顔を出してその様子を見る、まるで恋人のような彼女と「南方将」の会話や雰囲気に
((もしかして下賜の相手は・・・。))
ついに水晶宮の侍女も下女も梨花様お相手を悟る。誰かも分からない男など相応しくないと豪語していた侍女達だが、茘国の最強の武官ならば梨花様に相応しいと考えを改めていた。
それから数日が経ち書状以外に敵の動向は見えず上級妃達もその侍女達も見えない不安にストレスを感じ始めていると判断した「四方将」玄武は壬氏に上級妃以外の妃が悟らないように茶会と称し上級妃が集いかつ宦官のふりをした「四方将」が情報交換と妃の体調を考慮できるように配慮したほうがよいと「淑妃」を通じて願い出た。壬氏もそれを憂慮していたようでその日のうちに四夫人にその旨を伝え最初の茶会は「淑妃」と「賢妃」となる。「賢妃」が柘榴宮を訪れる体で柘榴宮は「賢妃」を迎えるために準備をする
茶会当日
「ようこそ柘榴宮へ、梨花妃。」
「本日はお招き感謝しますわ。阿多妃。」
「どうぞ中へ。」
「ええ。」
柘榴宮の中に入れば玄武と朱雀が顔を合わせる
「「淑妃」、「賢妃」、少し席を外しますが何かあればすぐにお呼びください。では、朱雀。」
「失礼します。」
玄武の控え室にて
「どうだ?」
「敵の狙いは妃達を心労で疲弊させ、正常な判断力を失わさせるものではないかと。」
「私もそう思う、だがこの後宮で我々が目立つことは避けたい。」
「敵の矛先を変えるには簡単な手ではありますが矛先が上級妃以外の妃に変わられたらそれこそ収拾がつかなくなり敵の思うつぼですからね。」
「しかし、長丁場にすべきではない。妃達の心労の方が先に限界になるだろうからな。」
「宮廷で犯人探しはしているので?」
「どうだろうな?白虎の居ない情報収集があてになると思うか?」
「なりませんね。今の宮廷と後宮のどちらの情報も敵に漏れていれば、それこそ我々がここにいる意味がありません。」
「どう考えてもそれにしか行き着かんからな。「四方将」が戦えないことがもどかしい。」
「同意です。」
「妃の様子は?」
「本人は平気な素振りをしていますが、ストレスからか寝付きが悪いようで食欲もあまり。」
「「淑妃」も似たようなものか、肝が座っているように見えてもこういう状況はそう経験していないだろうからな。」
「なるべく、!」
「!」
肌を刺すような殺気を感じた玄武と朱雀は茶会をしている庭の方に向かう
「梨花様!」
「「淑妃」!」
今、この後宮で仮初の主である四夫人の元に走り出す。主のその御身を護るために、
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朱雀と梨花妃の恋
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猫猫の謎解きを「四方将」が手伝う
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「四方将」がメインにとなる
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「四方将」やその周りがメインの短編小説