薬屋のひとりごと〜南方将は西国の血を引く男〜   作:花札こいこい

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敵は誰なのか

走る玄武と朱雀その先には

「「梨花様!」」

「「阿多様!」」

 各々の主の名を呼ぶそこには見た事もない宦官のようで宦官ではなさげな男がいる

「ああ、貴方方が「四方将」玄武と朱雀ですか?」

「なんだ貴様は?」

「名もなき男ですよ?」

「それで答えた気か!」

 阿多妃はその男が近くによってくることに不快を示し

「近づくな!」

「いいんですか?大切な侍女が死んでしまいますよ?」

「阿多様!」

「くっ。」

「貴女もですよ?「賢妃?」」

「侍女には手を出さないで!」

「まぁ、いい女ばかりで。」

「何が言いたい?」

「この花園には我が主に相応しい花が多くありますね、どうです?主変えは?」

「そんな真似はしない!」

「ですが「賢妃」貴女は違うのでしょう?」

「私は私を愛してくださる方の元に行くの、それが悪いと言いたいの?」

「さすが、貴方を下賜される男は男冥利に尽きますね、そうでしょう?「南方将」。」

「俺のことは武官の高官にも文官の高官にも知れ渡っているならば貴様の主はどちらかの高官だ。」

「では主から命令を遂行しましょうか。」

「できるものならばな。」

「できますよ?こうすればねっ。」

 侍女をかばうために前に出ていた梨花を抱き寄せるその男

「いや、やめて!」

「この妃を守りたければ膝を跪け「四方将」!」

だが朱雀は一歩一歩と男に近づく武器は持たず丸腰で

「それ以上近づくならこの妃を殺す!」

梨花の喉元に剣を突きつける男に

「梨花様に何かするならば俺に消される覚悟はあるんだろう?ここまでして払う代償は貴様の命だけだ。」

「丸腰でどうやって私の勝つのでしょうか?」

「侍女は妃とともにこの場から離れよ、巻きこまれたら終わりだ。」

玄武が重々しく告げる阿多妃はそれで察したのか

「お前達は水晶宮の方を窓のない部屋にお連れするように。」

「はい。阿多様。」

「感謝する「淑妃」、そして侍女の皆様方。」

 朱雀は彼女たちがこの場から居なくなると

「これでいい。」

「強がったって丸腰の「四方将」など恐れる価値もないな。」

 温厚な雰囲気の朱雀を見た侵入者はこれが最強の武官かと鼻で嘲笑う

「そうか?では手加減無しで。」

「は?何を?」

「何がだ?」

 目を閉じる朱雀を

「怖じ気づいて居るのか?はは、この程度のことで。」

「怖じ気づく?私が貴様ごときに?少しかじった程度の剣術程度のやつの何に怖じ気づくのだ?」

「貴様ぁ、愚弄するな!」

「そこまで言うなら試してやろう、我が殺気に怖じけつかないかどうか。」

朱雀がゆっくりと閉じていた瞳を開くそこには温厚の間反対の敵ならばなんであろうとも滅する

殺気をまとう朱雀がいた。その殺気はかつて水晶宮の侍女に向けられたものが可愛いほどのものでどこぞからこの後宮に入り込んだ男はその恐怖の余り膝が嗤い地べたに這いつくばるように逃げようとしているがさらに朱雀は空間を歪める程に殺気を強める。もはや正気すら保てずにいる男は朱雀が一歩近づくたびに言葉にならないわめき声を出しその指先は自らの腕の肉に食い込みえぐれている、今の今まで朱雀を格下のように侮辱し我こそが最強と天狗になっていた自称「名もなき男」は朱雀の殺意を身をもって知り格の差を体に叩き込まれた。距離を詰めた朱雀は戦う意志もない男の首に手刀を一撃食らわせる。敵意のない者にと思われるだろうが拒む梨花を抱き寄せるような男に男としての矜持(プライド)を持たせるのは癪に障るし、何より朱雀自身が梨花を抱き寄せるような穢らわしい男のそれを赦すつもりなどないのだから

「梨花様!」

 朱雀の殺気に怖じ気づく男から解放された梨花は恐怖からか腰が抜けたようで座り込みそうになるそれを察した朱雀は彼女を支える

「・・・、す・・・く。」

「申し訳ありません。私が居ながら怖い思いをさせてしまいました。」

ふるふると首を横に振る梨花だが目尻には涙がたまっているそんな彼女を安心させるように頭を撫でながら

「大丈夫ですよ。もう梨花様に敵意を向ける者はいませんから、少しだけ休ませてもらい水晶宮に戻りましょう。」

「う・・・ん・・・。」

 こくりと頷く梨花に

「歩けますか?」

 再び首が横に振られたので

「失礼します。」

「きゃ。」

 俗に言うお姫様抱っこで梨花を抱えて歩く朱雀に梨花は

「重くない?平気?」

 恐怖より歓喜しているようにも見えるがその口から出るのは心配だった

「重くなどありませんよ?」

 と言われて

「よかった。」

 今度は安堵を口にする梨花。少し歩くと柘榴宮の侍女と玄武がいた、侍女は阿多妃が命じた窓のない部屋に梨花妃と朱雀を案内するその部屋には既に水晶宮の侍女達が居て

「「梨花様!」」

 と駆け寄る朱雀が彼女を下ろすと玄武が

「朱雀。この件を主上に報告するのとほかに敵が居るかもしれないから白虎と青龍に伝えるのに紅牙を貸してほしい。」

「承知しました。」

 朱雀が指笛で紅牙を呼ぶ少しだけ待てばバサリと羽ばたき紅牙が柘榴宮の欄干にとまる、玄武が事の要所を簡潔に書いている間に

「この子は?」

 梨花が尋ねるので

「私が飼っている鷹の紅牙です。伝令に重宝していますのでそのうち梨花様が使うときもあるかもしれませんね。」

「初めてまして、紅牙。」

バサリと羽を広げる紅牙は言葉はなくとも知っているぞと言っているようで

「よろしくね。」

「よし、できたぞ。紅牙。主上に右の文を青龍と白虎には左の文を見せてくれよ?」

 玄武が説明するとそれぞれの脚に文をつける朱雀が

「いけ、紅牙。」

 承知したというような鳴き声をあげて高く空を舞い文を届ける紅牙を見送る朱雀と玄武

そこに「淑妃」が侍女を連れてきた

「平気か?「賢妃」。」

「ええ、朱雀が護ってくれましたので「淑妃」も大丈夫ですか?」

「私も平気だよ、しかし敵はどどうやって後宮に入ったのかが疑問だよ。」

「おそらく武官か文官のどちらかの高官の仕業でしょう。書状もおそらくはそいつが送りつけたもの、やり方が汚いので自らの知恵が優れているとでも勘違いしている文官の可能性が高いですが・・・。」

「文官がこの国に反旗を翻したと?」

「先ほどの男あの程度で我々に勝てると勘違いしていたのです。武官の高官ならあのような愚かな手先が「四方将」の我らに勝てるなどとは思いません。」

「確かにあの口ぶりは我々を表面的にしか知り得ていなかった。武官ならば我らを敵にする道は選ばない。」

「「四方将」を敵にする身内はいないと言うことだな?」

「はい。それにこの場に私と玄武殿がいると理解していました。それも宮廷では主上に壬氏殿と高官ぐらいしか知らない情報です。」

「敵の情報が少ないと思っていたが存外、敵が教えてくれるとはな。」

「淑妃」は今、手札としてある情報を足がかりに敵にカウンターを与えたいようで知略を巡らせる

「撃退はしたのだ。今しばらくは此処は安全だろうからな。」

「武装した男が後宮に入ったという情報が広がらない限りの話ですが・・・。」

「時間との闘いになるな。」

「長期戦にするべきではないですが短期決戦ができるほどの情報がないので致し方ないです。」

「白虎が索敵できればまだ違うのだがな・・・。」

「「南方将」、「賢妃」貴方達が良ければ水晶宮に戻らず柘榴宮に留まるのはどうか?そうすれば「四方将」が一人自由になる。そうなれば先の男を壬氏殿に明け渡すこともできる、そして情報が筒抜けでも刺客が負けるとは思っていないのならば宮廷にあの男が連行されれば間違いなく不測(イレギュラー)になり敵の尻尾を掴めるだろう?」

「「・・・。」」

「悪いお顔をしていますな「淑妃」。」

そう言う玄武も悪い顔をしているので朱雀が

「貴男もですよ玄武殿。」

 朱雀は少し深い息を吐く

「「淑妃」がよろしいなら私達を柘榴宮に留まらせてくださいますか?それが最良で「四方将」がその真価を発揮できるのなら最善です。」

「承知した、「賢妃」。この部屋のように窓のない部屋で構わないか?」

「ええ。」

「朱雀。私が先の男を壬氏殿に明け渡してくるから「賢妃」と「淑妃」の護衛を頼む。」

「承知しました。」

玄武はわら袋を持って先の男の方に向かう男は気がつくこともなくおそらくは一生で最も哀れな姿を晒している

「まったく、これほどの怖いもの知らずなのが居るとはな。」

 持参したわら袋を男に被せ荷物として宦官が運んでいる体にして後宮を出る。

 門を出ると紅牙は既に主上に文を届けていたようで壬氏と高順そして数名の武官がそのわら袋を被った男を渡す、わら袋を少しだけ開くと見ないほうが男のためだと思うほど哀れなその姿に武官は袋の口を閉じて見ていないふりをするその際に

「玄武殿、後宮はどうなっていますか?」

壬氏にそう言われ

「中で話す、そちらのことも知りたい。」

「そうですね。妃達は何処に?」

「「淑妃」と「賢妃」は柘榴宮に居られる。「貴妃」と「徳妃」はそれぞれの宮にいる。」

話しながら後宮に入る玄武に壬氏と高順は

「妃達は無事ですか?」

「ああ、無事だぞ。」

「敵は一人だったのですか?」

「そのようだ。怖いもの知らずだったがな。」

「どういう意味で?」

「「賢妃」を無理矢理抱き寄せたからな。」

「なん・・・と。」

「安心しろ、朱雀の殺気であの状態だよ。久方振りにあやつが本気の殺気を纏っていたな、はっはは。」

((笑い話じゃない。))

 壬氏と高順の内心を理解したか玄武は

「敵に情報が筒抜けならば手札(カード)は多くしておかなければ勝ち戦が出来ない。殺気で戦意をなくすような者が手先で統治できる国などないことを知らしめる為にも些細な技でも敵を制することは武官が初歩に習うものだ。」

玄武がそう言い終わるとちょうど柘榴宮に着く。宮に入れば朱雀への配慮から「淑妃」と「賢妃」両隣になる部屋で待っていた。両方とも窓がなく外から見られず、侵入するには朱雀の居る廊下からしか入れないある意味で堅牢な砦のようだ。

壬氏達がくれば朱雀は一礼し玄武が来たことで梨花がいる部屋の前に立つ

「阿多妃、梨花妃。少しだけお話を聞きたいのですが?」

 そう告げると内側から扉が開き二人の妃が出てくるその際にも「四方将」玄武と朱雀は外からの壁になるように立つことで妃の護衛を忠実に行う

「あの男はどこから入ったのでしょうか?」

「門扉から離れた庭で、でも侵入経路は一つしかないところで敵襲が来たらすぐに部屋には入れる場所を選んで茶会をしていたのだ入れたと言うことは門扉からの侵入だろう。」

「つまり後宮に入っても問題のないような者だったと言うことですね?」

「宦官でない者をねじ込んだ可能性もあるぞ?なんせ妃を値踏みしていからな。」

「やつはどうなりますか?」

「専門の者に任せようと思います。どうかしましたか?「南方将」?」

専門の者というのは拷問班のことだ。上級妃に剣を向け、しかもその一人は皇族の縁戚の上級妃だ。専門の彼等に任せるのは当然だが、朱雀は薄汚れた手で梨花を抱き寄せた者への罰を、この気分の悪い感情をただの仕事と割り切られるのは到底納得できない。あれが愛する存在をその眼前でむごい目に遭わせ、あれを絶望の淵に立たせるそのくらいのことはしても良いだろうと思っているのだがその間梨花様が一人になることは避けたい、と悩む正解の分からない感情の朱雀は梨花を見る

「?」

 見つめられた梨花は彼が何かに悩んでいるようだとは感じていて首をかしげる

「やつがなにも口を割らなければ、もう一度だけ手刀を食らわせても良いですか?」

「「・・・?」」

「「はい?」」

「朱雀それは何だ?最低限の譲歩か?」

「そうですね、嫌がる女性を抱き寄せるような汚物が得をしたと死なれるのは腹立たしいです。」

「南方将」手刀を食らわせたのですか?」

「申し訳ありません。殺気だけのつもりが頭にきていてつい一撃。」

(最強の武官の殺気だけでなく手刀も食らって、その上もう一撃とは・・・。) 

「記憶が飛んでなければ口は割るぞ、あれだけの醜態をさらしたのだからな。」

「そのようなきちんとした見識を持つなら勝ち目のない戦を仕掛けることはないでしょう?」 

「とりあえず・・・、それは敵が何者なのか知り得てからと言うのはどうでしょか?」

 朱雀の物騒な願いをやんわりと押さえた壬氏に阿多妃は

「「四方将」によれば敵はこの国の文官の高官ではないかと。」

「この国の高官が?何故?」

壬氏も高順も目も丸くし何を言うかと言う声を出す

「一に、敵は我々「四方将」が後宮にいることを知り得ていた。二に、「賢妃」の下賜を知りかつそれが先延ばしにされていることを知る口ぶりをしていた。三に、それらを知りながらあの程度の刺客で対処できるという判断を出した。一と二は宮廷の高官にしか伝わっていないはずで、武官の高官が我々相手にあの程度の刺客を差し向けるわけがない。よって消去法で自らの知恵が優れていると勘違いした文官の高官ならばこの状況を作り出すことは容易い。」

玄武がこの一連の騒動を彼なりに解釈して説明する。

「そういう相手に心当たりはないか?」

玄武の問いに一同は考えを巡らせる。その沈黙の中でただ一人がこの事件の首謀者を内心で暴き出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

薬屋のひとりごと~南方将は西国のを血を引く男~今後の話でこちらの中で読みたいと思うお話の需要を知りたいのでご協力お願いいたします。

  • 朱雀と梨花妃の恋
  • 猫猫の謎解きを「四方将」が手伝う
  • 「四方将」がメインにとなる
  • 「四方将」やその周りがメインの短編小説
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