英雄伝説・閃光の軌跡   作:雨の剣士

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トールズ士官学校

 それは……星が綺麗に見えるとある日の夜の幼少期の出来事である。

 

 

「ねぇ…トワ。星は好き?」

 

「えっとどうしたのノア君?」

 

「ん…何となく聞いてみただけ」

 

 

 隣で一緒に星を見ていた少女に聞いた。

 彼女はトワと言って俺と同い年の女の子。

 彼女のお爺さんか親父の知り合いだったのが切っ掛けで仲良くなった。

 

 

「勿論好きだよ。ノア君は?」

 

「俺も好きだよ。そうじゃなかったら親父の望遠鏡で勝手に見ないし」

 

「あはは…昨日も怒られてたね。でも…どうしたの?」

 

「何もないよ。ただ暫く会えないからさ。今度はバーゼルに行くみたいだし、着いていこうと思って」

 

「そっか…暫く会えないね」

 

 

 とても寂しそうな顔を浮かべるトワ。

 父の仕事の影響で、俺の家族は大陸各地に赴いている。

 着いていくときもあれば、場所によっては行けない場所もあるけど、今回は着いていくことに。

 しかも長期間滞在する予定らしいから暫くは会えなさそう。

 

 

「トワに会えないのはちょっと寂しいかな…」

 

「それを言うなら私だって同じだよ。でも逆に次会うのが楽しみになるかな。期間が空けば空く程」

 

「おー前向き。そういう所好きだよトワ」

 

「そ、そうかな……」

 

 

 頬を赤く染めて照れるトワ。

 会った頃からそうだけど、トワって本当に真面目で前向きっていうか。

 本当に同い年かって疑いたくなってくる。

 

 

「おーいノア。そろそろ行くよ」

 

「はーい。じゃあまたねトワ。手紙書くから」

 

「うん。私も書くよノア君。またね」

 

 

 トワに手を振って母さんの所に向かう。

 けど…これを最後に、彼女とは暫く会えなくなることを当時の俺はまだ知らないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――

 

 

 

 

「ノア。起きなさいノア」

 

「……ん」

 

 

 

 体を揺らされながら誰かに起こされる。

 ゆっくりと瞼を開けると、視界に一人の女性が現れた。

 それから列車の窓の外に視線を向けると、懐かしい光景が見えてくる。

 あぁ…エレボニア帝国に帰ってくるのはいつ以来だろうか。

 

 

「やっと起きましたか。随分といい夢を見ていたようですわね」

 

「うん。子供の頃の夢…。先生に助けられる前に最後に会った幼馴染」

 

「あぁ…確かハーシェル殿のお孫さんでしたか。昔に何回か話していましたね」

 

「覚えていたんだデュバリィ」

 

「えぇ。貴方が天体観測をするたびに名前が出てましたし、おじ様からも伺っていましたから」

 

 

 懐かしそうな顔を浮かべる彼女。

 名前はデュバリィと言い、同じ人を慕う親友で会って家族の様なもの。

 ややポンコツなところがあるけど、頼りになる人である。

 

 そして…俺の名前はノア・M・フルール。

 帝国生まれで物心つくまである里に住んでいたけど、ある出来事をきっかけにある人に恩返しするためにその人を一緒に行動しながら、父の仕事と慈善活動を行っている。

 

 

「元気だと良いけど」  

 

「意外とひょっこり再会しそうですわね」

 

「ありそうで怖い。出来れば会いたくないけど」

 

 

 今の俺はあの頃とは違うしもう戻れないから。

 それに、あの優しくて可愛いトワが士官学院に入学するなんてないない。

 あの子の事だから有名な高等学校に入学してるさ。 

 

 

「しかし…暫くはゆっくり出来そうですわね」

 

「そもそも任務は殆ど無いし。先生もちゃんと学生してこいって」

 

 

 今向かっている場所にある士官学院。

 先生の紹介で入学することになった。

 他の学院も考えたけど、帝国は先生にゆかりのある土地だし俺の故郷だし。

 一番妥当なのかと思って士官学院だと思って選んだ。

 

 

「時間あれば家に帰るかな…まぁ俺しか行く人居ないけど」

 

「たまには様子を見ておかないといけませんわよ。人が住まないと廃れるのも早いですから」

 

「分かってます-。っと次ヘイムダルだぞ」

 

「そうみたいですわね。さて荷物を…」」

 

 

 デュバリィの目的地である首都ヘイムダルに到着する。

 彼女とはここで別れ、この地にいるある人に会う予定だ。

 俺はこのまま列車に乗って次の駅で降りる予定である。

 

 

「ではノア。マスターの顔に泥を塗らぬように。あと定期的に手紙を出すことですわ。あと稽古も怠らぬよう」

 

「了解。アイネスとエンネアに宜しく」

 

 

 軽く拳を突き合わせてからデュバリィは列車を降りていく。

 そのまま駅の外に向かうのを窓から見送りならがら発射まで待っていると、俺が来ている緑の制服を着た学生を見かける。

 確か貴族生徒と一般生徒で分かれているんだったか。

 俺はごく普通の一般人だから緑の制服だが、仮にデュバリィだったら白の制服になるのか……ちょっと想像できないなあのポンコツお嬢様。

 

 

(とはいえ…士官学校に入学することになったのは運命なのかな…)

 

 

 己が体に流れてる血の事を考えてしまう。

 子供の頃から母さんとお祖母ちゃんか聞かされていた獅子戦役の話。

 どこまで本当だったのかはその時は分からなかったけど…先生に会ってあの時の話を聞いて全て本当だったとはな……。

 

 

「あの…相席いいですか?」

 

「っと構いませんよ……あ」

 

 

 声を掛けられたので視線を向けると、その先に居たのは俺と同じ緑の制服を着た少女。

 その少女の姿を見た瞬間、昔の幼馴染と重なり、俺は自然とその名前を口に出していた。

 

 

「もしかしてトワ?」

 

「え?どうして私の名前を…って…え?ノア…君?

 

「うん。久しぶり…かな。10年ぶりぐらい?元気にしてた?」

 

「……」

 

 

 驚きのあまり言葉が出ないトワ。

 まぁそれもそのはずだろう。

 最後に会ってから一度も連絡していないわけだし、彼女の反応は当然と言えるだろう。

 まぁ…俺の方も色々あったし。

 

 

「え…えっと…その…どうしてここに?しかも私と同じ士官学校の制服を着てるし」

 

「俺も入学するから。それより座りなよ。荷物もあるみたいだし。上に置こうか?」

 

「あ、大丈夫。そんなに多くないから。足りないものは取りに帰ったらいいし」

 

 

 トワは向かい座ったのを見てから、水筒に淹れていた紅茶をコップに容れて渡す同時に列車が発車する。

 それにしても…さっきデュバリィと話していたことが本当になるとは…世界って狭いな。

 

 

「それにしても驚いたよノア君。あれから全然連絡なかったから心配で」

 

「それはごめん。あれから各地を転々としてさ。手紙とか出す時間なくて」

 

「そっか。おじさん達急がしいから仕方ないね。でも元気そうでよかった。おじさん達も元気?」

 

「え?あー……どう…だろ。最近会ってないから分からないかな…」

 

「会ってないって…仕事で忙しいとか?」

 

「まぁそんなところかな……(うぅ…トワに嘘をつくのがかなり辛い)」

 

 

 両親が仕事で忙しいのは嘘。

 俺の両親は6年ほど前に大陸辺境の村で野党に襲われて命を落としている。

 その後に先生に拾われて付いて行くことにしたのだが、この事を話すわけにはいかないだろう。

 何とか話を合わせないと。

 

 

「ここ数年はバーゼルの天文台に籠りきりでね。俺は母さんの慈善活動手伝ってたんだ。大陸各地を転々しててね」

 

「そっか、だから会えてないんだね。てっきりまた怒られて家出てもしたのかなぁって」

 

「えぇ…確かに子供の頃はよく飛び出してたけどもうしないって」

 

「うーん。意外とやりそうだけどノア君」

 

 

 そんなに言うほと家を飛び出した記憶なんて無い筈なんだけど。

 一度魔物の群れに囲まれて母さんとお婆ちゃんに迷惑掛けたから二度としないって決めたし、仮に飛び出しても町からでないようにしていたから。

 

 

「でもよかった。ノア君とまた会えて。しかも同じ士官学院に入学するなんて」

 

「それは俺も同じかな。でもトワが士官学院に入学するとは思わなかったけど。マーサさん達に言われなかった?」

 

「あはは…まぁちょっとだけ。やっぱり高等学校に入学するって思ってたみたいだから」

 

 

 そりゃまぁそうでしょ、と俺も答える。

 でも、トワの性格を考えると、少しは可能性はあるのだろうと考えている。

 帝国に住まう以上は軍事から逃げられないし、トールズ士官学院は奨学金もあるからおば様が達の負担も減らせるし。 

 

 

「ノア君はどうして?やっぱりおばさんに言われて?」

 

「あー……母さんじゃなくて別の人。武術の先生の進めでね。まぁ俺も帝国人だし、学校行くならって」

 

「そっか。武術の先生ってことは槍の先生?おばさんは騎乗槍を使ったけど」

 

「そうそう。もう凄く強くてね。その人も帝国の人なんだけど」

 

 

 この当たりは本当の事を交えながら話を混ぜる。

 実際に士官学院は先生の薦めだし、凄く強いのも事実だしね。 

 

 

「まぁこの当たりは今度…っと、着いたみたいだよ」

 

「あ、本当だ。降りる準備しないと」

 

 

 列車か再び止まり、目的地であるトリスタに到着する。

 俺達は荷物をもって下車し、トリスタの町並みを見ながら学院まで向かうと、門の前で見覚えある酒豪の女性が一人待ち受けていた。

 

 

「あ、そこの君達。ちょっといいかしら?」

 

「はい?私達ですか?」

 

「えぇ。特に君。トワ・ハーシェルさんに用が合って」

 

「……(トワに用ね……)」

 

 

 若干気になることだが、俺としてはこの人と必要最低限関わりたくないのでバイバイしたい所。

 しかし、トワが俺の方をチラチラと見てくるので放っておくわけにもいかない。

 ので、一緒に話だけでも聞くことにしよう。

 

 

「えっと私に用って何ですか?」

 

「実はちょっと助けてほしいことがあるのよ。だから入学式が終わったら旧校舎の方に来てくれないかしら?」

 

「分かりました。入学式が終わったら旧校舎に向かえばいいんですね?」

 

「えぇ。担任の教官には伝えてあるから心配は要らないわ」

 

(あー…困ってる人を放っておけない所は変わってない。トワの良いところだけど)

 

 

 幼馴染としてはそこを利用されないか物凄く心配になってくる。

 というか元・A級遊撃士が困ってるって何のことなんだろう?

 士官学校で困る事なんて左程ない…いや、この人の事考えると結構あるのか?

 うーん…思い当たる事はないけど、トワが無理をしないようにこっそりサポートするか。

 

 

「お話終わったのなら行こうよトワ。入学式に遅れる」

 

「あ、うん。ではまた後でお伺いしますね」

 

「えぇ宜しく。じゃあよい学園生活を」

 

 

 女性に見送られ、俺達は入学式が執り行われる行動に移動し、ヴァンダイク学院長のありがたいお言葉を頂いたのちに入学式が終了。

 その後に解散となって配属されたクラスに移動移動することに。

 ちなみに俺はトワと同じⅣ組に配属さている。

 こればかりは幸運と言えるだろう。

 顔を知っている人間が居ると居ないとでは全然違うから。

 

 

 ともあれ、クラスに移動して自己紹介を兼ねたオリエンテーションを行った後、それぞれが住まう寮の部屋へと戻っていく。

 それにしても、あの女教官に呼ばれたトワが戻ってこなかったのがちょっと気になるけど…あとで探り入れておくか。

 あの女教官の事だから何かと面倒な事を押し付けそうだし。

 

 

「…と。あまり人のことを考えてたらダメだな。ちゃんと自分の事を考えないと。寮の部屋だって二人部屋だし、相方の事を配慮して……」

 

 

 一人部屋の貴族クラスとは違って平民クラスは二人部屋。

 新入生同士って話だけど、中には先輩と同じ部屋もいるとかいないとか。 

 まぁ誰が相手でも上手にやれるけど。

 

 

(とりあえず相方が来るまで待つのが妥当か。何だかんだで荷物が―――む。誰か来た…ってこの気配は…)

 

 

  

 扉の向こうから見知った気配を感じ取ったので一応警戒しておくと、扉が開いてバンダナ男が入ってきた。

 

 

 

「ここが俺の部屋だな。さて、これから二年間一緒に楽しく暮らす相方は――――マジかよ」

 

「残念だが―――マジだクロウ。二年間宜しく」

 

 

 

 どうやら色々と楽しい学生生活を送れそうだ。

 

 

 

 

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