俺は死んで、いわゆる異世界転生と言うのが行われるらしい。
なぜ“らしい”と言う不確定な言い方なのかと言うと……
「これお主! ちゃんと話聞いとったか!?」
「あっすみません“神さま”、少しボケっとしてました。もう一度説明おなシャス」
「お主本当にいてこますぞ! ったくしょぉがないのぉ…」
俺の前でカンカンとペンを紙に叩きつけ、少しイラつき気味に俺の顔を睨んでくる狐のコスプレ少女……本人曰く、神様らしい。
「本当に神様じゃわい!!」
「うぉ! 勝手に心覗かないでくださいよ……」
どうやら本当に神様らしい。
「ったく…二度説明する神の心情を考えんかってのぉ……ほれっ! しっかり聞いとるか!?」
ぐちぐちと文句を吐き散らし、キレ気味の口調で説明し始めた。
確かに、一回目でしっかり聞いてない俺も悪いが、こんな状況じゃ少しは多めに見てほしい。
なんせ俺は、一度死んだのだ。
生憎と死因はショックを避ける為に思い出せないようにされてるらしいが、死んだと言う事だけは明確に覚えてる。
そして死んだと言う事だけが明確な状態でなぜか目が醒め、死んだと思ってたのに居るのは四畳ほどの小さい空間。目の前にはちゃぶ台があり、座ってる下も上も側面も真っ黒な暗黒。
俺はそんな空間で急に目が醒めたのだ。そりゃ、保けて1、2回ぐらい話を聴き逃してもいいだろう。
ってか、本当に俺何が原因で死んだんだ…?
「はい、ちゃんと聞いてます!」
俺は手を挙げ、先生に質問をするかのように声を上げる。
「ふむよろしい……では話をやり直すが、大前提、お主は死んだことは自覚しておるのだな?」
「はい、そこまでは何とか覚えてますね」
覚えてるのは死んだと言う事実だけ、死因だけは頭をどう捻っても思い出すことはできなかった。
多分、超能力的な何かが使われてるのかな?
神様とかいる場所だし……。
「まず死因に関してじゃが、これに関しては言うことができん。
理由は様々あるが、大多数がショックをして話の導入までに時間を喰うと言うのが多目的かのぉ、どうせ死んでるのに過去の事でウジウジして時間を無駄にしても無意味じゃろ。だから話さないという結論に至った訳じゃ」
「ふむふむ、なるほど……」
神様ってのは意外とドライなんだな。
人に寄り添うみたいなイメージをしてたから意外と事務的というか何というか……。
まあ死人をたくさん相手にしてるのだ。これぐらいマニュアル化されてるか。
「で、まあ死因の説明無視義務があるというのが終わったところで、本題に移すのじゃが、まずお主には異世界に行って貰う」
「はい! 質問です!」
急にぶっ込んできた情報に、俺は手をピンと手を上げ質問する。
「はい。何じゃ人間、申せ」
「何で異世界に行く必要があるんですか?」
前提として、なぜ俺が異世界に行く必要があるのか、これは行くの肯否定ではなく、単純シンプルに気になったから聞いてみた。
「そうじゃのぉ、本当は天国という選択がお主にはあるのじゃが、最近ほれ、土砂崩れやら津波やらで自然災害が勃発しておったじゃろ? あれのせいで死者が増えてからに、天国のキャパが今やばい事になっとるんじゃ」
「キャパとかあるんですね天国にも……」
「そりゃお主、形あるものは有限じゃしな。無限なんて都合の良いもの存在せんよ」
なんか使い方間違えてる気がするが、まあいいか。
それに無限なんてものは無いと言われた方が確かなリアリティーがあるしな。
「なるほど、それで俺みたいな定員オーバーした天国行きの奴を異世界に送るって訳ですね」
「もちろん強制ではないぞ? 待ち時間が長くなったのをイメージをしてくれたら良い。しばらく暇にはなるが、時間が経てばお主は天国には行ける訳じゃしな」
なるほど、別に深刻ってほどの問題じゃない訳か……。
俺は異世界にするか、天国に行くまで長い暇時間を過ごすかと言う二択な訳だが……。
う〜ん別にどっちでもいいなぁ。
俺、別に前世に未練があったかというとそんな事無いし、確かに若くして死んだけど、元から太く短くがモットーみたいなもんだったから、別にこれと言って悔やみもない。
俺がどっちでもいいんだったら、考えるべきはどっちに言ったら喜ばれるかだな。結局自分がないなら他人に喜ばれる方を選んだ方が後悔は少ない気がする。
「う〜ん……神様はどっち行ったら嬉しいとかあります? 俺、ぶっちゃけどっちでもいいんで」
「わしの私情を挟むと、天国を選んでこのまま待機させる人が増えると、通常業務も合わさって管理が大変じゃし、できれば異世界を選んで欲しいかのぉ……」
業務中に私情を挟んでもよいものかと、律儀な事で苦悩している神様を見ながら、俺は異世界に行くことをあっさりと決めた。
別にしたいこともない前世だったしな……これを気に新しい事でも始めるか。
「だったら異世界でお願いします」
「ほ、本当によいのか? わしのさっきの話は忘れても良いのじゃぞ?」
「大丈夫ですよ神様、どうせ行くなら後悔がないようにしますんで」
「そうかぁ。じゃあお主、今からこの書類をわしと一緒に記入するぞ!」
ドスンと、ちゃぶ台が潰れそうなほどの書類を神様が乗せてくる。
「えっとぉ……かみさま? こ、これは?」
「ん? 異世界に行くに当たっての準備書類と考えれば良い。これから大変じゃぞ? 一緒に頑張ろうな! おー!!」
「お、おぉー……」
異世界に行くのって、思ったより面倒臭いんだなぁと、選んだ選択にすでに後悔をしながら、俺は神様と同じちゃぶ台で書類の記入を続けるのだった……。