ヘイズさん、結婚してください!   作:ねをんゆう

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07.テイム

 怪物祭とはダンジョンで捕獲してきたモンスターを地上でテイムするという興行であり、最近になって生まれた比較的新しい祭である。普段は決してモンスターを見ることがない冒険者以外の住民が、唯一それを見ることが出来る機会でもあり、当然ながらそれなりに盛り上がる祭事でもある。

 

 

「テイムかぁ……オレはじめて見ました、本当にできるんすね」

 

「これまで来たことが無かったんですか?」

 

「人が多過ぎるので、まあ別にいいかなって……」

 

「気持ちは分かります」

 

「けどあんなことが出来るなら、ダンジョンの中でも積極的にテイムした方が良くないですか?護衛になりそうですし」

 

「モンスター同士を戦わせると碌なことになりませんからねー、魔石を喰らいあって強化種になるので」

 

「ああ、なるほど」

 

 

 そこにテイムに必要な時間と手間を考えると、まあ普通に殺した方がよっぽど効率が良い。ということで流行らない、こういう興行で使われることがメインなくらいだろう。

 ……まあ当然に犯罪組織が使う手口でもあったりする、過去にはそれでこの街も酷い目にあった。故にこれに関しては今も不審な目でしか見られない冒険者も多くいる。ガネーシャ・ファミリアが主催でなければ、そもそも成立しない祭だったろう。

 

 

 

「――ん?なんか騒がしいですね」

 

「……あの様子、モンスターが脱走したのかもしれませんね。かなり焦っているようにも見えます」

 

「ああ、それは焦りますね」

 

「助けにいきますか?」

 

「うーん……」

 

 

 突然に慌ただしく走り始めたガネーシャの眷属達、あの様子を見れば何かが起きたことは容易く分かる。男神ガネーシャの性格を考えれば、恐らくそれは隠すことなく公表されるだろう。彼はそういう神だ、自身のミスを隠して他者の危険をよしとすることは絶対にない。

 

 

「多分、あんまり意味ないですね。今日はアイズも祭に来てるはずなので、そっちの方が早そうです。それより手薄になるここに居た方がいいかもしれません、怪我人もここに集まってくると思いますし」

 

「休暇中の私に治療をさせる気ですかー」

 

「流石にディアンケヒト・ファミリアの治療士が数人は常駐してると思いますから大丈夫ですよ。……問題はこれが"残り滓"共の策略の可能性があることなので。会場そのものを人質にされたら困りますからね、こういう時に敢えて動かない怠け者も世の中には必要なんですよ」

 

「……モノは言いようですねー」

 

 

 まあこういう時、大抵な実力者は進んで鎮圧に向かおうとする。故にこの騒動が何らかの誘導という可能性も否定はできないはずだ、モンスターの管理をガネーシャ・ファミリアが単に怠っただけとは考え難いのだし。

 故にこうして座っているだけでも意味があるという言葉は決して間違いではない。7年前の残り滓も未だに噂話は聞こえてくる、警戒し過ぎるということはないだろう。

 

 

 

「ということなので、お昼にしましょうか!弁当、作ってきたんで!」

 

 

 

「…………は?」

 

 

 

 ヘイズの表情が固まる。

 

 

 

「え?な、なんすか。オ、オレだって料理くらいできますよ、まあ流石にヘイズさんには負けますけど」

 

 

「…………こういうの、普通は女性側が用意しますよね」

 

 

「いや、まあ、確かにそうですけど……」

 

 

「それは流石に……想定していなかったというか……」

 

 

「あー、普通に外食にしますか。オレの夜食になるだけなんで全然いいですよ!」

 

 

「いえ、そうではなくてですね……」

 

 

「?」

 

 

 

 

「――――私も一応、用意してきたんですけど」

 

 

 

 

「!?」

 

 

 驚愕の瞳に見つめられたヘイズが、頰を掻きながら目を逸らす。けれど確かにその膝の上には鞄から取り出された包があって、言うまでもなくそれは彼女が作ってきたお弁当なのである。

 

 

「……」

 

 

「いえ、まあ……定番ですから。どういう経緯があったとしても誘いを受けた側としての責務と言いますか、用意すべきものなのではと……」

 

 

「……」

 

 

「あの、聞いてます?」

 

 

「……や、すみません。ちょっと今わりと気絶してました」

 

 

「わりと気絶ってなんですか……」

 

 

 いやそれは気絶もしたくなるだろう!

 嬉しさが天元突破して一周回って無になったほどだ!

 あのヘイズ・ベルベットが自分のためだけに作ってくれた手作り弁当!?!?!?!?!?!?

 3万個の金塊でさえその価値には及ぶまい!!

 

 

「こうなってしまったのなら仕方ないですねー。各自1つは相手に渡して、もう1つは互いの夜食にしましょうか」

 

「これ毎日食べたいです……」

 

「まだ食べてもいないのに何を言ってるんですか」

 

「許されるなら神棚に飾って永久に残しておきたい」

 

「流石に嫌過ぎるので普通に食べてください」

 

 

 つまらない男である自分が作った弁当は、まあどう足掻いても可愛くはならなかったので基本に忠実なあまりに面白味のないものとなっている。『まあまあそこそこいいんじゃない?』くらいの出来。

 しかし彼女のそれは開けた瞬間に発光したかと思うほどに華やかだった。色彩豊かで手が込んでいる。手をつけるのが勿体無いくらいの傑作。どこから食べたらいいのか、迷いに迷って3時間くらい経過してしまいそうだ。

 

 

「……あの、焦ったいので本当に早く食べてくれませんか」

 

「で、でもこんな、あまりに勿体無くて……!」

 

「普通のお弁当です」

 

「けど2度と食べられない可能性を考えると1欠片だって目に焼き付けておきたいといいますか……!」

 

 

「――――――ああもう!」

 

 

「!?」

 

 

 ザクッとフォークで刺した肉団子が、男の口の中に突っ込まれる。

 それは決して巷で見かけるような甘いものではなくて、肉団子なのだから甘いわけがないだろうという話でもなくて、乱暴で、力づくで、無理矢理で。けれどどうしても甘酸っぱさだけが抜け切ることのない、つまりはどうしようもない……あーん、の亜種。

 

 

「……どうですか」

 

 

「……めちゃくちゃ美味しいです」

 

 

「これでもう食べられますね、なら早く食べてください。自分の作ったものをあまりジロジロ見られたくないので。粗が見つかったら嫌じゃないですか」

 

 

「は、はい……」

 

 

 そうして俯きながらも、自分も弁当に手をつけ始めた彼女。髪に隠れてその表情を窺うことはできないが、そちらに割くことができるほどの思考能力が既に今の自分にはない。

 

 ……彼女は気付いているのだろうか、そもそも気にしていないのだろうか。それとも分かっていながらも、これ以上の醜態を見せまいと必死に我慢して隠しているのだろうか。

 

 自分のフォークはずっとこの手の中、では先ほど差し込まれたフォークは何処に?確かに直接な接触はほぼしていないのかもしれないが、それは単に突っ込まれた肉団子に刺さっていただけなのかもしれないが。だとしても、だとしてもである……!

 

 

「頭が砕け散りそう……」

 

 

 そんな2人の様子は、周囲の観客達からもバッチリ見られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、彼等を尾行していたはずのヘルン達は。

 

 

「戦闘は無理!戦闘は無理ですって!フレイヤ様を探してただけなのに何でこんなことに!?」

 

「ぎゃー!!なにこの緑色のモンスター!?いや強っ!?しかも硬っ!?絶対こんなのガネーシャ・ファミリアと関係ないやつじゃない!」

 

「助けてくださーい!!どうして私ばっかり追ってくるんですかぁ!!魔法を使う暇がありませーん!!」

 

「子供ー!子供いたー!!ちょっとアンタそのまま引きつけといて!!避難させるから!!」

 

「無理無理無理無理ぃー!!3体まとめては死にますからー!!剣姫ー!剣姫ー!!」

 

「せめて自分のファミリアの奴を呼びなさいよ!!」

 

 

 エラいことになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー。結局、なにも起きませんでしたね」

 

「そうですねー、とても良いことだと思いますよー。……ああ、もう上着を脱いでも良いです?どうせ個室ですし、見ているのも貴方だけなので」

 

「……お気遣いすいません。ただ本当に薄着のヘイズさん魅力的過ぎて……な、なんか最近色気がどんどん増してませんか?」

 

「さあ、特に自覚はありませんけど。まあ多少の視線くらいは我慢してあげますよー。変に意識されると、こっちも困りますから」

 

「こういう時ばかりは男な自分が恨めしい……」

 

 

 結局、あの後は戦闘なんて少しもすることなく。そのまま中止になったショーを横目に露天を回っていたのだが、まあ多少の被害はあったらしく、モンスター討伐後もガネーシャ・ファミリアの団員達は走り回っていた。

 そんなこんなで早めに予約していた店に入り、外の喧騒から隔絶された空間に避難したという訳であるが……まあやはり、個室ということもあって多少の緊張はしてしまう。リラックスするために取った部屋だというのに本末転倒というか。

 

 

「それにしても……今日はどこにいても視線を感じましたから、ここは落ち着きますねー。どうせヘルン辺りでしょうけど」

 

「そもそもヘイズさんほどの人が街中を歩いていたら注目が集まって当然ですよ」

 

「貴方が言いますか、それ。普段まったく外に出ない私より、貴方の方がよっぽど顔が売れているでしょう」

 

「まあ確かに声かけられる事はありますけど……それでもオレも直前まで悩みましたよ。ヘイズさんを祭の日に連れ出したりしたら、ヘイズさんの良さがバレてしまうのではないかと……」

 

「………」

 

「あ、なんか飲みます?帰りは責任持って館まで送りますから。オレは飲まないですけど」

 

 

 

 まあ流石にフレイヤ・ファミリアにナンパを仕掛ける愚か者はいなかったのか、単に傍にいた男が"首刈骸"などと呼ばれている物騒な奴だからかは分からないが、一日何事もなく平和なデートをすることができた。

 

 ……できたはず、なのだが。

 

 

 

「あの、ヘイズさん?なんでそんなに酒ばっかり頼むんすか……?それ全部飲むんです?」

 

「間違えました、私はお酒が苦手なので代わりに飲んでください」

 

「聞いたことないんすけど……」

 

「それにしても寒いですね、少し温度を上げましょうか」

 

「上着なら貸します……いや、薪入れ過ぎじゃないすか?あの、え、轟轟と燃え盛ってません?少し?少しとは?」

 

「ステーキ、ビーフシチュー、モツ鍋、旬の魚揚げ料理、1つずつください」

 

「おっも!?ディナーとは言えガッツリ過ぎませんか!?ほぼメイン!しかも全部熱い!!普通にコースでいいのでは!?」

 

 

 ヘイズによって唐突に始まった灼熱我慢大会。次第に上がっていく室温、同時に目の前に並べられていく酒と料理の数々。明確に慄いている自分と、変わらぬ無表情の彼女を見て、店員も特になにも言うことなく、というか言えることもなく、気まずそうに淡々と料理を運んでは逃げていく。

 ついでに彼女は今日購入した紅昌の髪飾りを外して、蒼昌の髪飾りに取り替え始めた。同じ色をした髪が対面で静かに揺れるが、それは大した話ではないか。

 

 

「あの……熱くないんすか、ヘイズさん」

 

「暑そうですね、大丈夫ですか」

 

「いや普通に暑いですけど……」

 

「今日は一日、貴方にエスコートして貰いましたから。最後くらい少しはサービスをしてあげようかと」

 

「フレイヤ・ファミリア式のサービスは誰も求めていないと思うんです」

 

「……私もそこまで鬼じゃありません、ちょっとしたお遊びです。少しくらい付き合ってくださいよ」

 

「!」

 

 

 それはその日、初めて見た彼女の笑み。

 作り物でもなんでもない、心底から楽しそうな、けれど少しだけ意地悪な、網膜に焼き付くようなあまりに美しく愛らしい笑顔。ただそれを見たいと願い続けてきたものが、意地悪くこの瞬間に突き付けられた。

 

 

「ずっ、る……」

 

 

 そんな自分の呟きに特段の反応を示すことなく。彼女は運ばれてきた鍋を丁寧な所作で器に少し取ると、ゆったりとした動きで机越しに身を乗り出してくる。

 

 ――この室温で少し汗ばんだ薄着の彼女。

 

 正直、朝に初めて見た時からずっと視線の行き場所にこまっていたのは、その衣服が一見すれば露出の少ない長袖に見えても、本当はインナーの上に着る前提のモノなんじゃないんですか?と思うほどに首〜胸にかけて開いているからだ。

 

 ……ぶっちゃけ、谷間が見えている。

 

 その上で生地が薄い上に、しっかりと身体のラインが分かるようフィットしている。そこに汗ばんでいるという条件が加わってしまえば、それは最早何らかの兵器だ。

 

 更にそんな彼女が机に乗り出すような姿勢をしてしまえば、目の前に映し出される光景は男を殺すに十分過ぎる。あと今日ずっと思っていたのだが、スカートも短過ぎる。ソックスとの間でチラチラ見えている素肌があまりにも健康に悪い。そしてこの姿勢は、それら全てを的確に強調するものだ。

 いつもの3倍くらいの速度で回っていく酒、頭が呆けそうになるような室温、理性が凄まじい勢いで削られていく。

 

 

「ふー、ふー……はい、どうぞ」

 

 

「え?あ、いや……」

 

 

「はーい、あーんしましょうねー。口開けてくださーい」

 

 

「あ……あ、あーん……?」

 

 

「よくできました」

 

 

 口の中に入れられた肉。さられるがままに、言われるがままに、それを食す。けれどもうこれが夢か現実かも分からない。今行われていることが正しく認識出来なくなってきている。

 酒にはそれなりに強いはずなのに、なんか医療知識を存分に活かして徹底的にやられている気がしている。明日の朝にこの記憶が本当に残っているのだろうか、心配するのはそこである。

 

 

「な、なな、なんでいきなりこんな……」

 

「目を逸らさなくていいですよー、好きなところを好きなだけ見ればいいと思います。これはご褒美みたいなものですからねー」

 

「唐突で過剰なご褒美に頭がおかしくなりそうなんですが……!」

 

「おかしくなってもいいですよ、死んでさえいなければ助けられますから」

 

「幸せに殺される!?」

 

 

 ぽたぽたと汗が落ちる。

 彼女の額から頬を通って胸元に落ちた雫、それを追うように自然と目線が下に落ちて固まる。冷静な思考などもう出来るはずもない、ただ目の前の光景に反射的な処理をすることしか出来ない。

 

 視界がいつもの半分以下しかないかのよう、いくらなんでも状況が悪過ぎる。このままでは、いや、よく考えたら彼女もまた苦しいのではないだろうか?だってこれだけ暑いのだし、熱いのだし、きっと……

 

 

「……ヘイズさんだけ水飲んでる」

 

 

 あと、熱い物とか食べてない。

 しかも自分より遥かに薄着な格好をしている。

 少なくとも酒まで飲んでる男よりは楽そう。

 なんなら顔色は変わってないし、汗も少ないし。

 まるで苦しさなんて感じてさえいないような……

 

 

「あれ…………いやあの、ヘイズさん?もしかして、自動治癒(オート・ヒール)魔法まで使ってません?」

 

 

「あ、バレました?」

 

 

「ずるい!!それは本当にずるい奴ですって!!」

 

 

「おっと、ついに逃げ始めましたか……これは追い詰めるしかないですねー」

 

 

「んなっ!?」

 

 

 最近では珍しい掘り炬燵式の個室、壁際に追い詰められてしまえば逃げ場など存在しない。これまでは対面に座っていた彼女は、ニヤニヤとした顔を隠すこともせずに立ち上がると、扉が閉まっていることを確認してから迫って来る。あまりにも冷静な立ち振る舞いだ。

 

 壁際に逃げる、けれどもう立ち上がることさえ儘ならない自分に気付く。そしてそれに気付いたのは彼女も同じ。弧を描いた口元は至極楽しそうで、フォークに揚げ料理を刺して持って来る。

 壁ドン、などと世間では言われている体勢。けれどされているのは男側だ。目の前にとんでもない代物を突きつけながら男を見下ろす彼女は、まさに天使のような悪魔。

 

 

「はい、あーん」

 

 

「あ…………はい…………」

 

 

「明日まで覚えてるかは知りませんけど、まあこの機会ですから言っておきます。せめて誘うならこういう人の目が少ない場所だと助かりますねー、今日みたいに着いてくる人達が居ますので」

 

 

「わ、かり……ました……んぐっ」

 

 

「まあそれが難しいことは分かりますけど……こういう食事くらいなら付き合ってあげなくもないですよ?貴方の選ぶ店はちゃんと美味しいですし、私も貴方の気持ちが治まるくらいまでは責任を持つつもりはありますしー」

 

 

「………???」

 

 

「んむ……これも美味しいですね、この味付けは参考になります。まあここまで丁寧な味付けをウチのファミリアの男達を相手にしたいとは思いませんけど。そういう意味では今日のお弁当の食べっぷりはなかなか評価高かったですよ、味を評価して貰える機会もあまりないので」

 

 

「お、おいしかったです……」

 

 

「ふふ、冷めてしまったお弁当という点だけが残念でしたね。どうせなら作ったばかりの一番美味しい物を出したかったですよ、そういう機会もありませんし。……だからと言って館での食事でそんな料理は出したくありません、どうせ誰も気付かず腹の中に詰め込まれるだけですからねー」

 

 

「んぐっ……!?」

 

 

 なんてことを話しつつ、彼女は酒をこちらの口元に当てがう。それを拒絶することなど既に出来ない、そんな力はないのだから。グイグイと注ぎ込まれ、真っ白になり始める目の前の景色。

 いくら困るとは言え、こんなに幸福な時間を終わらせたくはない。それだけを考えて懸命に意識を立て直そうとするが、彼女はそれを許してくれない。

 

 あからさまに意図的なボディタッチ、鼓動が早くなる度に意識が薄れる。距離が縮まる顔とそれ、意識するほど頭が煙を吹く。脳がパンクする、何かが途切れる、酒になど負けていられない。もう1秒でも長く彼女と2人の時間を楽しんでいたい。

 

 ……それなのに。

 

 

 

「次はダンジョンでデートでしたか」

 

 

「っ」

 

 

「もう悪いことしちゃダメですからね」

 

 

「はぐっ!?」

 

 

 かぷっ、という程度の刺激。

 けれどそれは蜘蛛の糸程度のもので辛うじて繋いでいた意識を手放すには十分な刺激であり、その瞬間に世界は完全に暗転した。耐え切れるはずがあるものか。

 

 

「耳……噛………」

 

 

「うーん、騒動通りの簡単(いーじー)な反応。ファミリアにはちゃんと送り届けてあげますから、あとは任せてくれてもいいですよ。はい、おやすみなさーい」

 

 

 男はようやく崩れ落ちた。

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