男女比1:10の世界で、俺は「私だけ」を作ることにした   作:晴口 丸

40 / 40
39

 

一ノ瀬家への自宅訪問を翌日に控えた、放課後の図書室。 緊張で生きた心地がしない麗華と梓は、「テスト前の勉強会」という名目で湊を呼び出し、少しでも彼の「家の情報」を掴もうと必死に机に向かっていた。その隣には、当然のようにサオリも座っている。

麗華たちが明日を思ってガチガチになりながら参考書をめくる中、湊は自分のノートを眺めて、ふと思う。

 

(……うん。やっぱりテスト勉強、特にしなくても全部覚えてるな。まあ、数学とか化学、生物あたりは、前世の知識が頭の片隅に残ってるからなんだろうな)

 

とはいえ、形だけでも勉強しているポーズは取っておくべきか、と隣のサオリに声をかける。

 

「サオリも一緒に勉強する? ほら、次の範囲のプリント、わからないところは優しく教えてあげよう」

「……? お兄様も私も、勉強は必要ないと思いますが……。でも、お兄様が直々に私に教えてくださるというのでしたら、何時間でもお付き合いいたしますわ」

 

サオリは小首を傾げ、至極当然のようにそう返した。

 

「そう? じゃあ参考書の後ろの方の応用問題だけ軽く解いてみようか」

「はい! おままごとみたいで楽しいですね!」

「?」

 

 そのまま二人そろってよどみなく解法を記述していく。俺はともかく、サオリもレベルが高い問題をこうもあっさり解いてしまうなんて、手放しに感心してしまう。

 

「あら、お兄様の方が先に終わりましたか。私は少し解法を思い出すのに時間がかかってしまって」

「そういいつつ、手を付け始めたのはほとんど同時じゃない。ただちょっと書くのが速かっただけさ」

「す、すごいですわね、二人とも……冷泉院の英才教育を受けてきた私ですらこの参考書のレベルは相当高いと思っていましたが……こうもあっさり解いてしまわれるとは」

「一度やったことのある問題なの? すごいスピードで解き始めてたけど」

「お兄様なら当然です。私は所詮お兄様の贋作。引き立て役にしかなりませんよ」

 

 そんな中、少し離れた席にいた歴女系の女子生徒たちが、教科書を広げながらヒソヒソと楽しげに話している声が、静かな図書室に小さく響いた。

 

「ねえねえ、この古い時代の記述、知ってる? 私の推しなんだけど。昔、『一年(ひととせ)』っていう謎の天才一族がいて、和歌、漢文、算術、政治、武術、芸術……とにかく何でも一年で習得して皇族をずぶずぶに依存させてたらしいよ〜」

「へえー、そんな人がいるんだ。おとぎ話みたいね」

「ほら、平杏(へいあん)時代の摂関政治を行った一年って習ったでしょ」

「え~わすれたよー。私歴史は全国試験で使わないしー」

 

女子生徒たちの軽い噂話を耳にしながら、湊は「へえ、そんな話もあるんだな」と、完全に他人事として聞き流し、手元のノートを閉じる。

そのすぐ隣で、サオリの瞳の奥に、一瞬だけ世界を冷笑するような昏い光が宿ったことなど、麗華たちはおろか、湊自身も気づくことはない。

 




お読みいただきありがとうございます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

女装スパイは今日もバレそう~男とバレても転生者とバレても死ぬ俺の学園生活~(作者:やっくん。)(オリジナルファンタジー/コメディ)

目が覚めたら、美少年になっていた。▼しかも転生先は、世界征服を企む謎の組織。▼記憶はない。素性もわからない。▼それでもどうやら俺は——「リク」という、組織のメンバーから溺愛されている美少年らしい。▼「お前が一番可愛い。だから行け」▼ロリ見た目のくせに底知れない組織のボス・エルミアの一声で、▼俺は女装して男子禁制の名門魔法女学園に潜入することになった。▼この世…


総合評価:400/評価:7.07/連載:12話/更新日時:2026年07月02日(木) 10:11 小説情報

鬼畜陵辱エロゲの世界に転生したけど男女比がバグってるせいで竿役が俺しかいない(作者:乳と地位が比例する世界)(オリジナルファンタジー/コメディ)

——なら俺が竿役全員やるしかねえっ!!▼カクヨムにも投稿してます


総合評価:982/評価:7.42/連載:9話/更新日時:2026年06月29日(月) 07:21 小説情報

その飲みかけ致死量につき。――男女比1:4の世界で普通に生活する俺が、飲みかけボトルを置き忘れた結果(作者:やっくん。)(オリジナルファンタジー/恋愛)

 男女比1:4。▼ 男性の人口は女性の4分の1ほど。▼ また、この世界の約9割の女性がパートナーを持てていない。▼ そして、男女の行為は、現実と比べ何倍も刺激的なものになっている。▼ 日常にあった些細な接触――袖が触れた、視線が合った――それだけのことで、この世界の女性の心臓はものすごい速さで跳ね上がる。▼ 女性たちは、恋に飢えている。いや、正確には――恋を…


総合評価:2084/評価:7.98/連載:17話/更新日時:2026年07月15日(水) 09:11 小説情報

あべこべ貞操逆転世界のミステリアス清楚系お兄さんの性癖がやばかった話(作者:フェルナンデス)(オリジナル現代/コメディ)

大学進学のため憧れの東京に上京した山本蒼空は、アパートの契約トラブルで住む場所を失い、十歳年上の親戚、陣内楓の家に居候することになる。▼清楚で美しく、どこかミステリアスな楓との共同生活の中で、蒼空は彼に惹かれていく。だが楓には、人には言えない特殊な秘密があったーー。▼貞操逆転ものです。誰も転生していません。▼男女比は1対1です。偏っていません。▼美醜は逆転し…


総合評価:434/評価:8.69/連載:5話/更新日時:2026年06月20日(土) 17:00 小説情報

貞操逆転した戦乙女学園の一般男子は、エロい目で見られていると気づかない(作者:マテリ-AL)(オリジナルファンタジー/恋愛)

ラノベとかでよくある学園に男は自分一人ってシチュ、▼あれ、主人公が女の子とラッキースケベするより先に……女の子たちが主人公をエロい目で見るのでは?▼これは、そんな発想から生まれた作品。▼魔力を持つ少女たち――戦乙女が通う学園に編入した唯一の魔力持ち男子・羽坂蓮が、周囲からエロい目で見られていることにまったく気づかないまま頑張る、現代ファンタジー入り貞操逆転系…


総合評価:479/評価:8.47/短編:3話/更新日時:2026年06月16日(火) 20:18 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>