男女比1:10の世界で、俺は「私だけ」を作ることにした 作:晴口 丸
――島に到着した初日。 そこは、どこまでも透き通った青い海と、白い砂浜が広がる、絵に描いたような楽園だった。
麗華や梓が眩しい水着姿で夏を謳歌し、サオリが日傘の下で俺の隣をキープする中、クラリスもまた、一人の学生とは思えないほど美しい水着に身を包み、海風にその輝かしいブロンドの髪を揺らしていた。
「見てください、湊さん。この素晴らしい太陽の光を」
クラリスが、パラソルの下へ歩み寄り、自身の長い金髪を軽くかき上げながら、少し誇らしげに微笑む。
「私の仕える教会の最高女神は、聖画において、私と同じこの『汚れなき輝かしいブロンド』で描かれているのです。だからこそ、この髪は私の誇り。神に選ばれ、世界の秩序を体現する証でもあるのですよ」
そう言いつつ、俺の隣に自然に腰掛ける。青い海と太陽の下で、彼女の金髪はまるで神聖なオーラのように輝いていた。
悩ましげな視線を向けてくる彼女に、俺は「そうだね、とてもよく似合っているよ、クラリスさん」と、いつも通り優しく微笑み返す。
クラリスは嬉しそうに目を細め、そのまま高台に見える、島にそびえ立つ古い西洋式の礼拝堂へと視線を向けた。
「あの礼拝堂……私、少しご挨拶に行ってまいりますわ。ああ、そんなにさみしそうになさらないで。もちろん、私はいつでも湊さんのことを考えていますわ」
「お兄様はそのようなこと言っておりませんが? さっさと行きなさいな、聖女モドキ」
「あら、ご挨拶ですね、偽妹さん」
クラリスは頬を引きつらせつつも、笑顔を絶やさずに礼拝堂へ向かっていく。彼女のシルエットが小さくなってきたところで反対の腕から圧迫感を覚えた。
「さあ、お兄様? 二人きりですよ?」
「クラリスに嫉妬したのかい? もちろんサオリは俺の大切な妹だよ」
そう言って彼女の吸い込まれそうなほど美しい黒髪を手櫛で梳いてやると、気持ちよさげに体を寄せてくる。
「あの、湊さん? 私もいるのですが?」
「はは、冗談だよ、麗華。こうして落ち着いた時間が過ごせるのも全部麗華のおかげだ。……後で好きなだけ、甘えさせてあげる」
彼女の耳元でこそっと囁くと、一瞬にして彼女の顔が赤く染まった。
「な、に、を、言っていらっしゃるの、ですか……!」
麗華は両手で顔を覆い、真っ赤になった耳まで隠そうとする。普段の傲慢なまでの自信はどこへやら、俺の一言で完全にキャパシティをオーバーしていた。
そんな麗華の様子を、梓は少し離れた場所から、複雑な表情で見つめている。護衛としての職務を全うしなければならない一方で、麗華に向ける言葉や、その一挙手一投足から目が離せなくなっている自分に、彼女自身まだ気づいていない。
「……お兄様、今すぐあの女を海の藻屑にしてきてもよろしいですか?」
隣でサオリが、声音に一切の感情を乗せないまま物騒なことを呟き、湊の腕をさらに強く抱きしめてくる。
「おや、それじゃあサオリを撫でられなくなっちゃうね」
「む、……むぅ、わかりました、今は、我慢しておきます」
「サオリさん……勝負ですわ! 今日の湊さんをかけて、ビーチバレーをしましょう!」
「嫌です。今お兄様に撫でられているのは私です」
「そう言うなって。友達付き合いも大切だぞ。行ってこい」
「お兄様がそういうなら……仕方ありませんね。十秒で終わらせましょう」
サオリが立ち上がり、軽くストレッチしながら麗華の後に続いてコートへ向かった。
お読みいただきありがとうございます