前職勇者のショタ配信者   作:曇らせはいつかガンにも効くようになる

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モンスター以上に危険性がある男

「もういいから、速く進んだら?」

 

カレンが苛立ちを隠さず、クロスにそう催促する。

 

「ああ、そうだね。共に戦うことで磨かれる友情もあるしね」

 

・世迷言が聞こえるんだけど

・友情(一方通行)だろ、お前の場合

・いつも以上にキモイな、この奇行子

 

「今日のダンジョンのこと、どれくらい知っているんだい?ロジェロ君?

良ければお兄さんが教えてあげよう」

 

Aランクダンジョン「亡月の戦場跡」

ダンジョン名にある通り、和風の戦場跡を思わせる異界型ダンジョン。

出現するモンスターは、落武者と呼ばれる具足を身に纏ったアンデットやゴーストなど。

絶えず湧き出る、耐久力の高い落武者とゴーストの奇襲が厄介なダンジョンだ。

 

「ダンジョンは、私と一緒に予習してきたから。説明いらない」

 

「フッ………そうかい。この、泥棒猫めッ

 

「私の方が先にロジェと出会ってるんだけど……………」

 

クロスの尋常じゃない敵意に、流石のカレンもやや困惑しているようだ。

 

こんな会話を交わしている間に、落武者が現れる。

 

「まあいい…………ちょうどモンスターも出て来たようだし、僕のいい所を魅せてあげようじゃないか……………ひとまず、ロジェロ君は僕の雄姿を見ていてくれたまえ!」

 

そう言って、クロスは腰に備えていたレイピアを引き抜いた。

 

「フッ!」

 

目にも止まらぬ速さで落武者に近づき、頭蓋、首、心臓を貫く。

 

凄まじい速さだ…………流石はAランク……………!

 

一体目を確実に仕留め、続く二体をまたも神速の連撃で切り刻む。落武者の体が地面に崩れ落ちるのと同時に、頭上からゴーストが襲い来る。そのゴーストに目を向けること無く、冷気を纏ったレイピアによる一突きで串刺しにする。そして、こちらに気障ったらしく微笑みと共に、ウィンクする。

 

「さぁどうだい!ダンジョン界一優雅な貴公子である僕の戦いは!」

 

「ああ………強かった………と、思う………ぞ?」

 

所々、意味の分からない動きをしていたが、その強さは確かなものだった。あれほどの速度…………この前の魔族以上だろう。

 

「ん♡………その困惑した表情………百点だよ♡」

 

・きも

・コイツ、フルスロットルすぎるだろ

・こんなのがAランクとか…………未だに認めたくない

・イケメンだからギリ許されてないだけの男

・↑認められてないんかいw

 

「ここから先は、モンスターの数が増えるからね…………一緒に戦ってくれるかい?」

 

「ああ、第七聖剣『疾風』開放………オレも戦おう」

 

「おおっ!最速の聖剣だね!いいねぇ………スピードが武器の僕に合わせてくれたんだね♡」

 

「死ね」

 

恍惚とした表情を浮かべるクロスの後ろから、容赦なく暴言をぶつけるカレン。

やっぱり、二人の相性は良くないようだ……………そういえば……………

 

「カレンはどういう風に戦うんだ?」

 

「ん?私は………これ」

 

そう言って、こちらに手のひらを差し出す。その上に―――――

 

「この子は、カブトムシだね。私は蟲遣い…………こういう昆虫のモンスターを使役して戦うんだ。虫嫌いな人も結構いるし、私は今日は戦わないよ」

 

私はカッコイイと思うんだけどなー、と不満気な顔で独り言ちるカレン。

これが、カブトムシ…………このフォルム、特にこの勇ましい角……………

 

「カッコいい……………!!」

 

「!!でしょ、そう思うよね。やっぱりロジェは分かってる。流石私の弟」

 

「くっ………ズルいぞッ…………家族マウントとりやがって…………僕もロジェロ君とイチャイチャしたい……………!」

 

機嫌を良くしオレの頭を撫でるカレンと、それを血涙を流す勢いで睨みつけるクロス。

 

「この怒りは………貴様らにぶつけてやらぁーー!!」

 

優雅さの欠片もない怒声を上げながら、落武者に突撃するクロス。

おっと、オレも戦わないとな……………そう思い、『疾風』を構え、走り出す。

 

「キェェェェェイッ!!」

 

クロスが奇声とは裏腹に、精巧な剣捌きで敵を圧倒する。

 

・キャラ崩壊の激しい男だなww

・薩摩武士かよw

・奇行子 の いかく

 

クロスが地上の落武者たち相手に無双している間に、オレは空中から奇襲を狙っているゴーストを倒すとしよう。ゴーストは魔力を介さないあらゆる物理攻撃を無効化する。そのため、倒すには魔法を使うか、武器に魔法を纏わせて攻撃する必要がある。

 

「フッ!」

 

ゴーストがいる高さまで跳び、風を纏わせた『疾風』で穿つ。更に、風によって空中を滑るように移動し、他のゴーストたちも貫いていく。そうして、ゴーストたちを一掃した頃には、クロスも落武者を全て始末していた。

 

「すまないね………貴公子らしからぬ姿を見せてしまった」

 

「ああ………貴公子?」

 

この人、今まで貴公子要素あったか?見た目は………確かに、貴族と言われても納得できるが……………。

 

・ロジェロ君も困惑してます

・正しい反応

・言動の全てが貴公子とはかけ離れてるからねw

 

「だが……初めてのロジェロ君との共同作業……………素晴らしかったよ……………」

 

・そういうとこだぞ

・吐き出す言葉全てがキショイw

・今まででもトップクラスでキモイぞ、今日のお前

 

 

 

 

 

 

 

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side:クロス・ラインラック

 

ああ………やはり、実物のロジェロ君は凄まじいな………。

溢れ出すロリ感は言わずもがな……………この強さ……この前の、魔族との戦闘を配信で見た時も思ったが………聖剣の強力さ、一本でコレだ。このレベルが十二本………末恐ろしいね。

 

そして、何より…………戦闘技能の高さ…………!僕も長いことダンジョンで戦ってる。幾つか死線もくぐり抜けてきた………だが、彼には遠く及ばない。戦闘時の判断力、冷徹なまでに戦場を俯瞰し最善手を選び取る…………あ♡僕の中の乙女が目覚めちゃう♡

 

恐ろしいのは、その選択時………自傷すらもその選択肢の中に入ること。自分の痛みを欠片ほども恐れていない…………自覚がないことなのだろうが、僕にはそれがとても恐ろしい。いつか………彼が異世界でやったように…………己を犠牲にするのではないか………。彼は、大勢の他人と自分の命を秤にかけた時、迷いなく自分を捨てられる人だ。その歪さも愛おしいが………だからこそ、僕は彼に聞かなくてはいけない。

 

「ロジェロ君」

 

「なんだ?」

 

群がるモンスターを蹴散らしながら、僕は問いかける。

 

「君は、どうして探索者になったんだい?」

 

もし…………もし彼が、ただ流されて………戦う力があるのだからと、他者に願われたから戦う道を選んだのであれば、僕は誰に何を言われようとも、君を戦いから遠ざけよう。ただ君が、平穏に普通の男の子として暮らせるよう、僕は全霊を尽くそう。君にはその資格があるのだから。

 

「最初は………まぁ、流れで探索者になった。だが、この世界の人々に、食べ物に、多くの文化に触れて…………オレは守りたいと思った。だから、オレは探索者をしている」

 

「オレは、戦うことしか能がないから、オレに沢山のものを与えてくれた人達のために尽くしたい」

 

そうか………君は、ちゃんと自分で道を選んだんだね。無用な心配だったかな?でも―――――

 

「『戦うしか能がない』なんてことは無いさ。ロジェロ君は、多くの人に愛されている。僕を含めてね………だから、君はとっくに沢山の人に沢山のものを与えているさ。戦いしかないなんて、言わないでおくれ」

 

「………ああ、ありがとう」

 

・クロスが、まともな事を言っている……………だと!?

・さっきまでの奇行子はどうした?

・クロスがいい事言ったなんて認めたくない………俺が言ったことになんねーかな

 

「視聴者の皆も酷いねぇ………僕はいつだってまともな事しか言わないのに」

 

・それは無い……100パー無い

・寝言は寝て言え

・さすがに草

 

「まったく……………僕の味方は君だけだ!ロジェロ君!!」

 

「ん?今はカレンも味方だろう?」

 

「そういう意味じゃないよ、ロジェ。そして、私はコイツの味方じゃない」

 

 

 

 

 

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side:ロジェロ

 

クロス…………初めは、ただただヤバイ人だとしか思わなかったが、根は優しい人のようだ。

こっちを見る目は、なんかちょっと気持ち悪いが………。

 

初対面では、不安ばかりだったが仲良くやっていけそうだと安堵していると、ちょうどボスのいるエリアまで来た。

 

「このダンジョンのボスは、亡月の侍大将。妖刀月隠れを使う、落武者たちの長だ。ロジェロ君、準備はいいかい?」

 

「ああ」

 

――第一聖剣『浄化』開放―――

 

右手に『浄化』を握り、そう答える。

 

「それじゃあ、行こうか」

 

 

亡月の侍大将、血の乾いた具足に身を包んだ侍たちの長が、ゆっくりと立ち上がり、妖刀を抜き放つ。妖刀月隠れの刀身は、膨大な呪いにより黒く染まり、その間合いを誤認させる。更に、その呪いは、ただ打ち合うだけでもこちらの身を蝕む。

 

侍大将の放つ唐竹割りを、ロジェロが防ぐ。

 

「ッ!!」

 

ロジェロを蝕むはずだった呪いは、『浄化』の力によって祓われ、逆に侍大将を『浄化』の光が貫く。

 

「そぅら!!」

 

クロスの放つ突きが、侍大将の面具を穿ち、ダメージを与える。

 

「一撃じゃやっぱり無理か…………おっと」

 

侍大将が苛立たし気に放った横なぎを避け、次の攻撃のため、魔力を溜める。

 

「それじゃあ、死ぬまで穿つ!!」

 

侍大将まで距離を詰めるクロス―――――

 

「『疾風』よ!!」

 

ロジェロがクロスの持つレイピアに風を纏わせ、その剣戟の速度を倍増させる。

 

(ありがとう!ロジェロ君!)

「氷雪斂針・斑の雨!!」

 

侍大将の心臓を目掛けた、無数の連撃が、侍大将を守る鎧を砕いていく。

抵抗ように、妖刀を振るおうと持ち上げた腕を「させるか」蛇腹剣が巻き付け、止める。

 

『呪詛』を召喚したロジェロによって最後の抵抗すら阻まれた侍大将は、その胸をクロスの白刃に貫かれる。

 

心臓を砕かれた侍大将は、地面に座り込み、妖刀によって己の腹を切り裂いた。

 

・切腹!?

・でたな「亡月の戦場跡」の名物

・切腹するんか……………モンスターなのに

 

切腹を行った、侍大将はその体をゆっくりと、塵に変えていった。

 

「ここのボスは、倒されるとこうやって切腹するんだよね」

 

そんなモンスターもいるのか……………驚きだ。

 

「これで、ダンジョン「亡月の戦場跡」攻略完了…………いやー、楽しかったよ!ロジェロ君!」

 

「また…………コラボ、してくれるかい?」

 

最初は怖かったが、クロスとのダンジョン配信は楽しかった。

 

「ああ、いいぞ」

 

「!?」 「やったー!ありがとう、ロジェロ君!!」

 

・まじか!

・考え直せ!!ロジェロ君!

・いいのか、そいつロジェロ君をいやらしい目で見てるぞ!!

 

「ロジェ、考え直して。コイツは危ない」

 

「カレンも視聴者の皆も!見たか、僕とロジェロ君との間に芽生えた愛を!!」

 

・くそ!!

・調子乗りやがって………冒頭では脳破壊されてたくせに

・少なくともそこに愛はねーよ!!

・一方通行の愛のくせしてよぉ

 

「はっはーー!皆の嫉妬が心地良いね!!それじゃあ、今日の配信はお終いだ!!次回のクロスとロジェロ君のカップルチャンネルをお楽しみに!!」

 

ーー配信終了ーー

 

 

その後、ダンジョンを出て別れるとき、最後まで名残惜しそうにこちらを見つめるクロスを、絶対零度の視線で睨むカレンがいた。この二人は、今度から会わせないようにした方がいいかもしれない。

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