前職勇者のショタ配信者   作:曇らせはいつかガンにも効くようになる

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この日………オレは"それ"と出会う

side:ロジェロ

 

アリスは泣き疲れて寝てしまった。これからどうしよ…………。

取り敢えず、アリスが起きるまで待とうと考えたオレは、アリスをベットまで運んだ。

しばらく待ち続けていると、玄関からピンポーンと音がなる。この世界での呼び鈴のようなものか………誰が来たか確認するとしよう。扉を開けると、カレンが立っていた。

 

「ロジェロ君……これからは、お姉ちゃんが守るから…………」

 

そう言ってオレを抱きしめる。どうすればいいか分からず、慌てているとカレンが少し震えているのに気づいた。オレは窒息しそうになりながら、カレンの背中をさすり落ち着かせた。二度目の死因が『女性の胸に溺れて窒息死』になるところだった…………

 

「いきなりごめんね…………」

 

落ち着くと、カレンは顔を赤くして謝る。

どうやら、カレンは配信でアリスが大泣きしているのを見て、心配して来てくれたようだ。正直めちゃくちゃ助かる…………この世界には聖人しかいないのか………?そう思い感謝を伝えると――

 

「気にしないでいいよ。私はお姉ちゃんだからね。」

 

そう言って胸を張る。聖人だ…………!

 

「ところで、ロジェロ君お腹空いてない?」

 

「空いているが、大丈夫だ。一週間位なら飲まず食わずでも戦える。」

 

そう言って彼女に習い胸を張ると、カレンは少し怒ったような顔をして、

 

「ダメ。これからは毎日三食しっかり食べてもらう…………!」

 

と言う。これから、毎日あんなに美味しいものを食べてもいいのか…………!年甲斐もなく興奮してくる。

 

「私のふぇいばりっとふーどを教えてあげるから、ついてきて!」

 

玄関に置いてあった鍵をとり、カレンはそう宣言する。

 

「ッああ!」

 

一体どんな食べ物が……!そうまだ見ぬ美食に胸を膨らませるまま、車に乗せられ目的地に向かう。

 

「アリスを放置するのは可哀想だし、今日はドライブスルーだね」

 

「?」

 

どらいぶするー?それがこれから食べるものの名前なのか?

 

「ふふっまぁお姉ちゃんに任せておきなさい」

 

しばらくすると目的地らしき店につく。

 

「ご注文いかがなさいますか?」

 

「ビックマックセット3っつ。ドリンクはコーラで」

 

「ビックマックセットが3っつ、お飲み物は全てコーラで宜しいでしょうか?」

 

「大丈夫」

 

おお………!この世界ではこんな風に注文するのか…………!まぁ前の世界でも、店で食事をしたことがあるわけではないのだが、もしかしたら前の世界でもこんな感じなのかもしれない。そんなことを考えていると、注文の品が届く。

 

こっこの匂いは………!これまでの人生ではかいだことがない食欲を刺激する香り。魔物の肉を焼いた時にかいだ香りとはまるで違う。

 

「食べるのは、家に戻ってからね」

 

おお、この匂いを前にして待てとは………幼少期の訓練よりもキツイかもしれない。カレンを見ると、涼しい顔で運転している。なっなんて精神力だ…………!!

 

店に行くまでの時間よりも遥かに長い時間待っていたような感覚に襲われるが、ついに家にたどり着く。

 

「食べるのはまだ、先ずは手を洗って」

 

まだおあずけか……!ほんのわずかな時間なはずなのに、途轍もなく長く感じる。

 

「よし!じゃあ、食べようか」

 

目の前に現れる円柱状の"それ"、思わず涎が垂れそうになるのを必死に抑える。

 

「ふふっ私のまねして食べてね」

 

カレンのまねをしてかぶりつく。

 

「…………ッ!!!」

 

舌の上を転がる肉汁、これまでの人生では経験したことのない刺激、その余りに罪深い味

 

「ぉいじい…………!!」

 

余りの美味しさに涙が出る。カレンが微笑ましいものを見るように、こちらに目を向けているのにも気づかないほど、目の前の美食に夢中になる。

 

「ん、コーラも飲んで。あとポテトも」

 

差し出された飲み物で口の中のものを流しこむ。

 

「!?!?」

 

舌を襲う想定外の刺激に驚く。むせそうになりながらも飲み込み、落ち着いてから改めてコーラを飲む。刺激と甘さ、自分の知らない味に初めは驚いたが、これもまた美味い。

 

「ごめん!!ロジェロ君!あたし寝ちゃってた!」

 

ポテトを口に放り込み、ビックマックにかぶりつき、コーラで流し込む。夢中でそれを繰り返していると、眠っていたアリスが起きてこちらに来る。

 

「あれっ?カレンさん!?ってかどういう状況?ハンバーガーあるし」

 

「安心して。アリスの分もある」

 

「あ、ありがとう。でも、なんで?」

 

「ロジェロ君にビックマックを布教した。これからは毎日三食一緒に食べる」

 

「ダメですよ!三食ハンバーガーなんて、健康に悪いです!」

 

「三食ハンバーガーじゃない。三食ビックマック」

 

「よりダメです!!」

 

アリスとカレンがそんな会話をしているうちに食べおわる。おいしかった。

 

「もう食べ終わったの!?」

 

「ああ、おいしかった………ゲフッ」

 

「流石私のロジェロ君。食べるスピードも一流。私も負けられない」

 

「『私の』ってなんですか!?」

 

アリスの混乱も意に介さず、もっもっ、とカレンはビックマックを食べ進める。

 

「もう、あたしが寝ている間になにが…………はぁ、もういいやあたしも食べよ」

 

そうして、アリスも食べ始める。

 

「ごめんね、さっきは急に泣き出してちゃって………」

 

「構わない。むしろオレのために泣いてくれてありがとう」

 

「うっうん」

 

アリスが顔を赤くする。すると、カレンがジト目でこちらを見ながら声を上げる。

 

「私も泣いたし……」

 

って言うか父さんも滅茶苦茶泣いてたし……と言ってカレンは機嫌を悪くする。

 

「ああ、お姉ちゃんもありがとう」

 

「お姉ちゃん!?!?カレンさんロジェロ君になに言わせてるんですか!?羨ましい!!」

 

「ロジェロ君は父さんの養子になるから、当然の権利」

 

胸を張るカレンを、ぐぬぬぅ~と悔しそうに睨む。

 

「アリスもお姉ちゃんって呼んで欲しいのか?」

 

「うっ………いや、いいよ。なんかイケナイことしてるような気分になりそうだし。っていうか誰にでもそんなこと言っちゃダメだからね」

 

危ない人もいるんだし……とこちらに言い聞かせるアリスと、頷くカレン。いつの間にかビックマックを食べ終えている。

 

「そういえば、ロジェロ君って何処に住むの?良ければあたしの家とか――「ダメ」

 

「ロジェロ君はうちの子になるんだから、当然私と住む」

 

空気が凍る……という状況に初めて遭遇する。なんだろうか、魔王を前にしたかのような緊張感を感じる。

 

「オレは何処でも………というか、慣れてるし別に野宿でも―――「「ぜったいダメ」」

 

背中に冷や汗をかきながら、野宿でもいいと言うと、いがみ合っていたはずの二人が揃って否定する。

 

長い口論の後、結局オレは橘家つまりカレンの家に住むことになった。

 

 

 

____________________________________________

橘家にて

 

「ならん」

 

橘弦一郎がきっぱりと否定の意志を示し、カレンを鋭い目つきで睨め付ける。

 

「でも―――――」

 

カレンもまた、弦一郎の目を見つめる。

 

「ロジェロ君と一緒に寝たい」

 

「だが、「やだ」

 

「しかs「やだ」

 

「いy「やだ」

 

カレンは断固として意志を変えるつもりはないようだ。

 

「姉弟なんだからいいでしょ」

 

「いや…………しかしなぁ」

 

どうやら、弦一郎は娘に弱いようだ。タジタジになっている弦一郎に声を掛ける。

 

「オレは別にいいぞ」

 

「ほら」

 

オレの言葉を聞き、より強気になったカレンがあたかも私の勝ちだと言わんばかりに威張る。

 

「だが……俺だって一緒に寝たい!!あっ間違えた。いくら姉弟でも、義理の、それもあったばかりの異性なんだぞ。同衾なんてだめだ。花恋と寝る位ならパパと寝なさい」

 

あっそうだった。余りに距離が近いから忘れていたが、今日会ったばかりだった。流石に会ったばかりで一緒に寝るとかダメだよな。

 

「悪い………やっぱりオレ一人で寝させてもらえないか?」

 

そうして、オレはソファーで眠ることになった。二人ともベットを譲ってくれたが、流石に申し訳ないし、昔からの習慣で座った状態で何時でも接敵に対応できるようにしないと眠れないので、断らせてもらった。

 

 

 

____________________________________________

一日たって―――――

 

「ロジェロ君、今日はダンジョン協会にいこっか」

 

早朝、朝食をとりながらカレンにそう声をかけられる。

 

「ああ、分かった。だが一体なにしに行くんだ?」

 

「探索者のライセンスをもらいに行くんだよ」

 

―――ダンジョン協会本部にて――――

 

「こちら橘ロジェロ様の、ダンジョンライセンスになります」

 

そうして、協会の職員からカードが渡される。オレの名前の下にBランクと書かれている。そういえば、まだランクのこととかよく知らないな。

 

「それでは、探索者に関して説明させて頂きます」

「まず、探索者とダンジョンにはランクがあり、上からS・A・B・C・Eとなっています。探索者は自分のランクより上のダンジョンには基本的に、入ることが出来ません。ここまでは宜しいでしょうか?」

 

「ああ」

 

「橘様は、特例で初めからCランク探索者として登録させて頂きました」

 

「ロジェロ君は、実力的にはAランク以上だと思うけど、Aランクからは国から直接依頼が来たりするから、そう簡単にはAランク以上のライセンスはあげられないんだよね」

 

合ってるよね?と、カレンが職員に確認する。

 

「はい。Aランク以上の方には、ダンジョンの調査や、救出任務などがある他、緊急事における招集に応じる義務などがございます。ランクを上げるには、ダンジョンに潜り実績を積む必要がありますが、その際、探索者の皆様には配信をして頂くことが推奨されています」

 

なるほど、配信を見て探索者の実力がどの程度のものなのかを正確に測る………ということか。

 

「また、Aランク以上の方には任務による報奨金の他、国からの支援金もございます」

 

「いわゆる、お給料………だね」

 

「はい。支援金の金額につきましては、その方の実績から担当の物が決めさせて頂いております」

 

「次に、そちらのライセンスカードの説明をさせて頂きます」

 

「そちらのライセンスカードは、探索者の身分証になる他、ご自身の魔力を流して頂くと、所有しているスキルを確認することが出来ます」

 

「ん。だから、探索者の間ではステータスプレートなんて呼ばれてる」

 

「以上で説明を終わらせて頂きます。ご質問がございましたら、協会職員に直接お聞きになって頂いても構いませんし、ダンジョン協会のホームページから質問して頂いても構いません」

 

そうして、ダンジョン協会での手続きは終わった。もっと複雑な手続きがあるものだと思っていた。もしかして、弦一郎が代わりに色々やってくれたんだろうか。

 

「じゃあ、帰りにビックマック買って帰ろっか」

 

「あと、ベットとか枕とかも選びに行こう」

 

!ビックマック…………昨日からオレはあの犯罪的な食べ物の虜になってしまった。超………楽しみだ………!ベットとかは、あってもどうせ使わないし断わらせて貰おう。

 

「オレは、ベットだと落ち着かなくて眠れないし要らないぞ」

 

「ふーん」

 

なんか………カレンのこっちを見る目が怖い………どうしたんだ?

その夜、一緒なら安心できるでしょ、と言われカレンのベットに引きずり込まれた。

 

 

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