前職勇者のショタ配信者 作:曇らせはいつかガンにも効くようになる
「ろ………ろじぇろ………?」
「ロジェロ君………?」
切り飛ばされた右手が、地面に落ちる。
「お前!!!」
状況を理解したアリスが、激昂し―――――
「まて!!」
オレの声で我に帰り、動きを止める。
「アリス、キサラ、奴に近づくなよ」
「おやおや、右手を切り落とされていながら、叫び声の一つも上げないとは………
強靭な精神力、驚嘆に値しますねぇ」
「お前は何者だ?」
「フフ……私ですか?私はリュードライト、伯爵の座を冠する魔族に御座います」
「魔族ッ」
前の世界でも存在していたあれらと同様の存在だろうか?まだ遭遇して間もない、情報もほとんどないが………この魔力、明確に理性、知性をもち言葉を解していながら、決して理解しあうことは出来ないと悟ることのできる邪悪さがにじみ出ている。
「なぜ、ここにいる?目的はなんだ?」
「言ったはずですよ?威力偵察だと」
「このスタンピードはお前が引き起こしたこと…………ということか?」
「その通りで御座います」
これではっきりした…………コイツは敵だ。
「おや?戦うつもりですか?右腕はその有様、加えて足手まといをニ匹も抱えたままで?
些か驕りが過ぎるのでは?」
「キサラちゃんを連れて逃げて!ロジェロ君!コイツはあたしが足止めするから」
「いや、その必要はない。前にも言ったが―――――」
「この程度の敵、これまで山ほど倒してきたからな」
「この程度?フフッ……随分舐められた―――――」
(右腕の出血が止まっている?止血はしていないはず…………回復魔法を使った様子も………)
「よく見ておけ………これが勇者の戦いだ」
勇者は皆、それぞれ固有の能力をもつ。そして、その能力を最大限活用するために勇者は固有の武器を作り出す。それが聖剣であり、その能力にちなんで勇者には『銘』が与えられた。しかし、ロジェロだけは、聖剣を生み出す事が出来ない―――――
――――勇者ロジェロは唯一、自身の肉体そのものを聖剣として扱う勇者である。
勇者としての『銘』は………『不朽』―――――
「右手が再生して………!?」
―――有する能力は肉体の再生。朽ちること無き不死の肉体。
「バケモノですか………あなたは………?」
「勇者だ」
無論、無敵の能力ではない。再生には魔力を要し、その発動は自動
ロジェロの強さとは、歴代の聖剣の召喚でも、不死に近い再生能力でもない。
王国を出て、ひたすらに魔王の軍勢と戦い続けた5年………神の座に指をかけた魔王との激闘………そうして積み上げられた実戦経験、それに裏付けられた戦闘技術………それこそが勇者ロジェロを最強たらしめる力。
(コイツは不味い………!先手を取り、潰す!!)
リュードライトがその爪で、ロジェロの首を引き裂かんと腕を突き出す。
―――第三聖剣『金剛』開放―――
「なッ!?」
ロジェロの左腕に現れた『金剛』によりその攻撃は容易くいなす。
―――第十聖剣『呪詛』開放―――
ロジェロの右手に握られた蛇腹剣が、リュードライトの右腕を引き裂く。
「くッ………まだまだ!」
リュードライトが右腕を再生させる。
「くらいなさいッ……爪々抜骨!」
リュードライトの両手の爪がさらに伸び、ロジェロを襲う。
「遅い」
『呪詛』……蛇腹剣の形をした聖剣が、リュードライトの爪がロジェロにとどく前に、四肢もろともその爪を粉砕する。
(くッ……回復を阻害される?いや、これは………)
「呪いの類か!!」
「その通り」
『呪詛』をリュードライトの体に巻き付ける。
「まっ―――――」
「呪炎大花」
『呪詛』を引き戻すと同時に、リュードライトの体に溜まっていた呪いが起爆剤となり、爆発する。
「終わりだな」
切り落としたリュードライトの四肢が塵となって消えていくのを確認し、一息つく。
コイツ以外の魔力は感じない………これで終わったと考えていいだろう。
「二人とも、怪我はないか?」
「ろじぇろ!!」「ロジェロ君!」
キサラとアリスがこちらに駆け寄ってくる。
「ろじぇろ!手は!?手は大丈夫なのか!?」
キサラがオレの右手を両手で包み込み、言葉を零す。
「ごめんなさい………わたし、あれだけ、みとめないとかいってたのに………
けっきょく、あしでまといになって………わたしのせいで、みぎて………うあぁ」
涙を溢れさせながら、キサラはそう謝る。
「あたしも、ごめん………なんにも出来なかった」
アリスもそう言って謝り、目を伏せる。
「二人とも、オレは大丈夫だ。怪我は治ってるし………そもそも、あの程度異世界じゃあ怪我とも呼べないものというか………とにかく、気にするな!」
オレの言葉に、アリスは顔を更に暗くさせ、キサラは声を抑えることもせず泣き初める。
しまった………失言だったか………!?
・大丈夫なのか!?
・ロジェロ君………手は!?手は!?
・魔族とかいうの、倒せたのか!?
っと、配信の方も何とかしないとな。
「みんな、オレは大丈夫だ。二人も特に怪我はしていないと思う。色々気になることはあると思うが、今日のところは配信を終わらせようと思う」
・良かったー
・しっかり休めよ!
・魔族とかなんだったんだ!?
・三人とも無事そうでよかった
「今日のことは、また後日配信で話そうと思う。みんな、またな」
ーー配信終了ーー
「取り敢えず、地上に戻るぞ」
「………うん」
「ロジェロ君は…………手、大丈夫なんだよね………?」
「ああ、心配要らない」
そうして、三人で地上に戻る。地上に戻る途中、キサラはオレの右手を離そうとしなかった。
地上に戻ると―――――
「!お姉ちゃ――――わぶっ」
カレンに抱きつかれる。
「無事………だよね?」
「ああ」
「………よかった……」
そう言って、抱きしめる力を強める。
「カレンさん、救援に来てくれたんですね」
ありがとうございます、とアリスは頭を下げる。
「ううん、心配で来ただけだし…………何も出来なかったから」
「それを言うなら、あたしだって………」
く、空気が暗い………!どうしたものか………あの程度の怪我は慣れているし、気にしないでいいのに………優しさが…………優しさが痛い……!!どうにか、空気を変えなければ!!
「申し訳ありません、ダンジョン協会の者ですが、今回のこと上が詳しく聞きたいと……」
救世主だ!!!今回のスタンピードは人為的………人?………とにかく、意図的に起こされたことなのは間違いない。協会も、早急に事態を把握したいはずだ。
「は?今すぐですか?ロジェロ君、大怪我したばっかりなんですけど?」
アリスが、ハイライトの消えた目で協会職員に問い詰める。
「いっいえ!後日で構いません!今日のところは、しっかり休養して頂いて構いません!」
「ん、二人も無事でよかった。二人は自分で家にかえれる?」
「……ひっく………うぅ」
キサラはオレの手を握ったまま、首を横に振る。
「あたしも、今はロジェロ君と離れたくないかな」
「じゃあ、皆でうちにいこっか」
オレ、アリス、キサラ、カレンの四人は、カレンの家(オレの家でもある)に移動した。
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しばらくして、うちに到着した。結局、移動の間もキサラはオレの手を握ったまま黙り込んでいた。
「ただいまー、あと二人ともいらっしゃい」
お茶持って来るね、と言い、カレンは台所に向かった。
「ロジェロ君…………ごめんね、今日もあたし……助けられて…………あたし、ずっと助けられてばっかで………ごめん、ごめんねっ」
アリスが涙を浮かべながら、謝り続ける。
「なに言ってるんだ?助けられてばかりなのは、オレの方だろう」
「え?」
「配信の度に手助けしてくれたし、不慣れなオレに色々教えてくれた。今日のことだって、二人がいなければ、モンスターを取り逃がして被害が出ていたかもしれない」
「でも…………」
「オレは戦いしか知らない。こちらに来てから、ずっと助けられてばかりだ」
カレンが、台所にから戻って来る。
「三人とも、お疲れ様。アリスもキサラも、後悔はあるかもしれないけど、皆無事だし被害も出てない。その後悔は、取り戻せる後悔だ。だから、暗くなったままじゃダメだよ」
「はい」 「…………ぅん」
カレンの言葉に二人はうなづく。すごい………!二人を元気づけた!
「それはそれとして、ロジェロ君?君はいっぱい心配かけたんだから」
え……?
「今日は一緒にお風呂に入って貰おうかな?」
「はぁ!?ちょっカレンさん!?なに言ってるんです!?」
破廉恥!破廉恥です!とアリスが抗議する。オレも流石に一緒に風呂は勘弁して欲しい。
「………わたしも……」
「え?」
「わたしも一緒に入るぅ」
「はぁ!?」
キサラの一言にアリスは呆然とする。
「ダメ。一緒にお風呂は、姉の特権」
「でも、ロジェロと離れたくないぃ~」
「うっ、その顔は卑怯。私は女の子の涙に弱い」
「ちょっと!そもそも、姉でも一緒にお風呂はダメですよ!カレンさんが一緒に入るくらいなら、あたしが入ります!!」
!?アリスはそもそも、「一緒に風呂に入る」こと自体をダメだと言っていたのでは!?
「あの……オレは一人で入りたいんだが」
「「ロジェロ君は黙ってて!」」
ふぇぇ~~
「ロジェローー!!パパ、心配したんだぞーーー!!!」
泣きながら弦一郎が帰宅し、オレに抱きついてくる。
か、カオス!!
その後、オレは何とか一人風呂を勝ち取ったが、未だにカレンと一緒に寝ていることがバレひと悶着あった。魔族との戦闘より疲れた………
弦一郎さんは、かなり忙しく滅多に家に帰ってくることはありませんが、今日はロジェロ君が心配で無理をして帰って来ました。いいパパだね!