牧師エドワードのありふれた日常   作:晴口 丸

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*「聞きたいことはたくさんある」

 

 

 

外に放置された二人は唖然としたまま固まっている。

 

「衛兵さん案件かな?」

「……明日には乾燥したシルヴィが釣り下がってるかも……」

 

 想像したシスターがブルりと震える。

 

「ちゃっかり持ってきた薬草全部持って行ってるし……。まあ死ぬことはないさ。少し待っていようか」

「やだぁ、ここ気味が悪い」

 

 釣り下がって干からびたトカゲを見ながら牧師の腕に縋りつく。

 

「しょうがない、あそこの橋で待ってようか」

 

 村を分かつように流れる小川にかかった小さな橋で、二人並んで腰かける。

 

「早いね、シルヴィが来てもう一週間か」

「あんたが帰って九日でもあるわね」

「早いねー」

 

 川の水の冷たさを、そろって素足で堪能する。バシャバシャと水をかけあうようにしぶきを上げ、その度に笑みがこぼれる。

 

「あんたが帰ってくる前にあった、とんでもない額の寄付金とか、お父様……牧師様のこととか、シルヴィのこととか、いろいろ聞きたいことあるのだけれど」

「ボクからはさぁ、としか」

「何よ、こいつッ」

 

思い切り水をかけられ、牧師は頭から水を垂らした。

 

「なんだよー。ほんとなんだもーん!」

 

 お返しとばかりに思い切り水をかけようとしてバランスを崩し、彼は川に落ちた。

 

「はぁ……最悪」

「あはは! ばーか」

 

 びしょ濡れの服を絞りながら牧師が川から這い上がってきたちょうどその時。

 

「テッド! クリス!」

 

 森の奥から聖女が走ってきた。そして牧師の姿に目を丸くする。

 

「テッド、どうしたのですか、その恰好」

「おお、シルヴィ。無事に帰ってきたか……」

 

 横でいまだにげらげらと笑い続けるシスターを恨みがましく見つめる。

 

「さあ、帰りましょうか」

「待ってくれよ。びしょびしょで歩きにくいんだ」

「知らないわよ。今日は天気がいいから勝手に乾くわ。帰って外の掃除でもしてなさい」

 

 

*「面倒ごとは牧師へ」

 

 牧師たちが川で待っている間、聖女は薬師の家を見まわしていた。

 そこにあるのは外に吊り下げられた奇怪な植物よりさらに奇怪な怪しげな瓶の数々。それでいて妙にまとまっている仕事机。部屋全体が陽の光を入れないような構造になっていて薄暗いが、意外と風通しがいい。

 

「何入り口で突っ立てるんだい。さっさと中に入りな」

「は、はい!」

 

奥に入り、薬師の前まで来ると、まるで値踏みをするかのような目つきでジロジロと聖女を上から下まで見つめる。

居心地が悪くなり、聖女は無意識に胸の前で手を組み、体を縮こまらせる。

 

「王都の聖女様かい。生憎とそれほど力は持ってないみたいだねぇ。……いや、あんたにとっては幸運か」

 

 ニヤリと笑う薬師に、聖女の顔に疑問符が浮かんだ。

 

「なんにせよ、下らないお祈りばっかりで退屈するような王都の生活はここにはないんだから、自由に生きな。面倒ごとはエド坊にやらせておけばいいんだよ」

 

最後に薬師は「お祈りで疲れたら飲め」と見たことない瓶詰の飲み薬を渡し、聖女を外へ追い出した。聖女は困ったままに、もらった瓶を大切に懐に仕舞った。

 

 

 

 

 

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