*「優しくお願いします!」
この日の教会は明日の安息日のため、少し慌ただしく動いていた。
「……チーナ、悪い」
「はいはい、ほら、蝋燭」
「さんきゅ。……あと」
「マッチならまだ残ってるわ。それより」
「歌詞カードだろ? 昨日夜なべして作っておいた」
てきぱきと作業を進める二人を見るのは五人。子供たちとそこに混ざる聖女だった。
「二人とも、一糸乱れぬ連携ですね……」
「あの二人、子供のころから一緒らしいからね」
「クリスは先生のことよくわかってるし、家事もできる……先生の嫁候補だな!」
「ええ、違うよ。先生のお嫁さんはアンゼだもん!」
「じゃあ聖女様は? すごくきれいだよ! 先生もメロメロなんじゃない?」
「で、でも、聖女様と牧師様って結婚できるのかな?」
「ええ、私とテッドがですか⁉ でも、それもやぶさかではないと言いますか、ばっちこいと言いますか……」
そこに雑巾を持った牧師が現れる。
「お前らー。掃除中だからいったんでてけー」
「え⁉ は、はい! 優しくお願いします!」
突然聖女が立ち上がり、顔を真っ赤にして牧師を見る。
「え? うん、まあもちろん大切なもの(備品)だから、その予定だけど……」
「わ、わかりました! ……う、嬉しい……えっと、どこでしましょう?」
「どこって、(椅子はここにしかないから)ここでしかできないだろう?」
「ええ⁉ 子供も見ているのですよ⁉」
余りに必死な態度に牧師はいぶかしみつつも、話を続ける。
「いや、だから一旦外に出ろって言ったんだ。……何か変だな」
「エディ、何のんびりしてるのよ、さっさと終わらせちゃいなさい」
「クリスも一緒にですかぁ⁉」
「何が⁉」
「えっと、だから、その……」
そう言って牧師の方を見ると握られているのはバケツと雑巾。前から綺麗になった椅子が並んでいるのを見て、初めて聖女は自分の勘違いに気づいた。
「え……ええ⁉」
子供たちは四人並んでにやにやと聖女を見つめる。
「あれー? 聖女様、掃除のことらしいけど、いったい何を考えてたのかなぁ?」
「懺悔室で告解した方がいいんじゃない?」
「でも暗い部屋で牧師様と二人きりになっちゃうよ?」
「じゃあアンゼが代わりに!」
「……ごめんなさーい!」
教会を走り去っていった聖女を牧師たちはぽかんと眺める。
「シルヴィ、大丈夫か?」
「そうね……心配だわ」
その夜、様子の可笑しかった聖女を二人が執拗に心配して、余計に辱める羽目になったとか。
なお、翌日しばらくの間、聖女は子供たちと目を合わせてくれなかった。