*「知らない話ほど決定事項になっている」
「初めまして、ご存知と思いますが、教会本部から派遣された聖女シルヴィア・セール・フィリップスです」
その自然なお辞儀に彼女は目を奪われるも我にかえり、
「こちらこそ。私はここのシスター、クリスティーナ。クリスティーナ・ホドソンです」
「よろしくお願いします」
シルヴィア、と名乗った聖女が手を差し出してくる。
「えっと、教会本部から派遣されたとか……。特にそういった話は聞いていないのですが?」
そう口にすると聖女は驚く。
「ええっ!? でも、返事の手紙はもらいましたよ」
そういって彼女が取り出したのは小さい便箋。白い地に細かい装飾が描かれた教会公式の便箋だ。
そして、その差出人の名前には。
「……エドワード・マリア・カールマン」
彼女の目は据わっていた。突然雰囲気が変わり、聖女は一歩退く。
「……カールマン牧師様を呼んできますね」
彼女は静かに教会に入っていく。その有無を言わせぬ雰囲気に聖女は自然と「……はい」という。
扉が閉まる瞬間、シスターが顔を出した。
「少し時間がかかるかもしれません。カールマン牧師様は今お休み中なので」
その目は笑っていなかった。
*「特例という言葉は便利」
「いやー久しぶりだねぇ、シルヴィ。元気してた?」
「ええ、テッドさんも元気……そうで何よりです」
「テッドでいいよ。向こうでもそうだったでしょ」
「は、はい」
聖女が許可をもらい教会に入ると、荒縄で縛られた牧師が迎えた。
「首都アバンでの出張で知り合っているとは……それはともかく、どうして来ることを教えてくれなかったんですか」
シスターは床で倒れている牧師を踏みつける。
「いやいや、ただ忘れてただけ。客間も綺麗にしてあるからもう知ってたのかなーとかそんな感じ」
「はぁ……もういいです。それにしてもこんな小さい村に聖女様がくるなんて……聖女ってそんな沢山居ましたっけ?」
「いや? まあこれもボクの人徳かなーなんて……ウソウソ、結構特例なんだ」
曰く、シルヴィアは聖女としての力が平均値を大きく下回っているらしい。
そも聖女とは普通の人間とは違い、神に祈ることによって実際に奇跡を起こすことができる特殊な人であり、より強い力を持っていれば天変地異さえ起こせると言われている。しかし、その代償として生まれつき人一倍体が弱いのだ。
「でも、シルヴィは聖女としての力が弱いからかわかんないけど、代償も小さいわけ。しかしそうすると、逆に祈りの力が弱くなってしまうみたい。となればアバンとか大きい街では彼女を持て余すから、関係もあるボクに白羽の矢が立ったって成り行きさ」
「はあ」
シスターはそう言うしかなかった。