*「顔が赤くなる程度には」
「と言うか、私聖女って初めて見たわ」
「まあこんな田舎町だったらな……」
牧師は立ち上がり、服を軽く払う。
「貴方も気の毒ね。実質左遷みたいなもんじゃない」
シスターも乗っかって揶揄する。
「そんな事ないです。ここはすごく空気が良くて過ごしやすいですよ」
一般人ならただのお世辞かもしれないが、聖女が言うとそれだけでお墨付きになる。この街を宣伝する相手なんていないが。
「長い付き合いになるかもだし、過ごしやすいってのは大事だね」
「環境はね……。でもエディが……」
シスターはジットリと牧師を見つめる。
「そりゃないよ。ボクだっていつもサボっているわけじゃないだろ? シルヴィも言ってやれ」
「ええ、正直なところ、アバンの時と比べて、雰囲気が全然違って驚いています」
「そこまで言われるとどんな感じだったのか気になって来るわね」
聖女がこめかみに指を当て考える。そして徐に顔を赤くして俯いた。
「……えっと、その、色々、です」
あんまりな言い方だった。
「衛兵さ〜ん、一人お願いしまーす。」
「おいバカ。ふざけるな」
流石に止めた。
*「私という存在がありながら」
「とりあえず今日は来たばっかりなので、見学という事で」
「わかりました。よろしくおねがいします」
すると、教会のドアが開いて四人の子供が入って来る。
「カールマン牧師様、こんにちはー」
「お、ルート、アンゼ、チェリー。無沙汰だったじゃん」
牧師はそういって前にいる三人を順番に撫でる。
「違うよー。そっちが居なかったんだよ」
子供達は膨れっ面になる。
「あれ、牧師様、その人は?」
「キレーなひとー。先生のお嫁さん? 私という存在がありながら?」
「牧師様、クリスちゃんがいるのに。しゅらば?」
子供達は口々にいう。
「違うわよ! なんでさりげなく私も入ってるわけ?」
慌ててシスターは反論する。
「どこでそんな言葉覚えたんだ……こんなちっさい社会で修羅場なんて起こったら、一躍有名人だ」
もちろん私刑という意味で。
「とりあえず、ボク達はそういう関係じゃない。商業柄そういうのはあまりよろしくないんだよ」
牧師は腰に手を当て、語って聞かせる。
「えー、つまんない」
「元よりお前らを楽しませようとしてるわけじゃねえよ」
「じゃあその人は誰なの?」
少女は瞳を輝かせ問いかける。
「アバンから来ました、この村で聖女をさせていただくことになったシルヴィアです」
「えっ聖女」
「すごい、聖女ってホントにいるんだ」
「でも大人たちは何にも言ってなかったよ?」
牧師は決まりの悪い顔をして、シスターに小突かれる。そして若干引き攣った笑みを浮かべた。
「あー……あれだ。エドワードさんからのサプライズだぞー」
二つのため息が聞こえた。