牧師エドワードのありふれた日常   作:晴口 丸

6 / 16


*「何でもいいと言った人から文句を言う」

 

 

「そういえば、午後から行商人さんが来るそうよ。蝋とワインが少なくなってたから、エディ、シルヴィと言ってきてくれないかしら?」

 

 どたばたとした雰囲気から一転、正午の温かい日差しが入った静かな教会で、牧師とシスターは黙々と掃除をしていた。

 

「ロテク商会の? 久しぶりだなぁ」

「そりゃあずっとアバンだったものね? シルヴィみたいなかわいい女の子ひっかけてたんだもんね?」

 

 ジトっとシスターがにらむと、牧師は心外だとばかりに両手を挙げる。

 

「そんなことないさ、アバンにはとても大きな図書館があってね、あそこはよかった」

「ばーか」

 

 牧師の顔に絞られた雑巾がべちゃっと張り付いた。

 

「冗談。まあその、無難に学んできたよ。村のためだもの」

 

 それを何事もなかったかのように手に取り、協会の椅子を一つ一つ丁寧に拭いていく。シスターは特段気にした様子もなく、牧師が先ほど使っていた箒を手に取り、互いの仕事を交代する。

 

「そう……。まあいいわ。ここが終わったら一度休憩にしましょうか。私は夕食の仕込みをしておくから、シルヴィのことはよろしくね」

「はいはい。今日の晩御飯何?」

「まだ決めてないわ。今ならリクエスト聞くわよ」

「うーん、何でもいいよ」

「はいはい、エディは毒がいい、っと。私たちはエディの肉でステーキかしら?」

「おいおい、それじゃ仕込みが間に合わないだろ? しっかり下味をつけておいしく食べておくれ」

「あの、テッド? それはおかしいのではないですか?」

 

 おずおずと話しかける聖女。自分の担当のところを掃除し終えたところである。

 

 

*「おにいさんにおまかせ」

 

 

「シルヴィは晩御飯、何がいいかしら?」

「え? えっと……お魚さん、でしょうか」

「魚ね。サイドのおじさんのお店に売ってるかしら」

「あそこは何でもあるからな……さて、一通り終わったし、お茶にしようか。チーナよろしく」

「なんでその流れで私が準備するのよ。貴方も手伝いなさい」

 

 牧師は少し面倒くさげに、でも笑みを湛えながら、調理場へ向かうシスターの後を歩く。

 

「あ、あの!」

 

 その後ろから聖女が声をかけた。二人はうん? と顔を向ける。

 

「私にも手伝うことってありませんか?」

 

 すると牧師はすこしばかり口角をあげた。

 

「そうだな、シルヴィももう客じゃなくて同じ屋根で暮らす家族だもんな。おにーさんがいろいろ教えてあげよう」

「! はい、テッド。よろしくお願いします!」

「生活力ゼロのあなたが? 教えられるというならぜひご教授願いたいものね、牧師様?」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。