*「何でもいいと言った人から文句を言う」
「そういえば、午後から行商人さんが来るそうよ。蝋とワインが少なくなってたから、エディ、シルヴィと言ってきてくれないかしら?」
どたばたとした雰囲気から一転、正午の温かい日差しが入った静かな教会で、牧師とシスターは黙々と掃除をしていた。
「ロテク商会の? 久しぶりだなぁ」
「そりゃあずっとアバンだったものね? シルヴィみたいなかわいい女の子ひっかけてたんだもんね?」
ジトっとシスターがにらむと、牧師は心外だとばかりに両手を挙げる。
「そんなことないさ、アバンにはとても大きな図書館があってね、あそこはよかった」
「ばーか」
牧師の顔に絞られた雑巾がべちゃっと張り付いた。
「冗談。まあその、無難に学んできたよ。村のためだもの」
それを何事もなかったかのように手に取り、協会の椅子を一つ一つ丁寧に拭いていく。シスターは特段気にした様子もなく、牧師が先ほど使っていた箒を手に取り、互いの仕事を交代する。
「そう……。まあいいわ。ここが終わったら一度休憩にしましょうか。私は夕食の仕込みをしておくから、シルヴィのことはよろしくね」
「はいはい。今日の晩御飯何?」
「まだ決めてないわ。今ならリクエスト聞くわよ」
「うーん、何でもいいよ」
「はいはい、エディは毒がいい、っと。私たちはエディの肉でステーキかしら?」
「おいおい、それじゃ仕込みが間に合わないだろ? しっかり下味をつけておいしく食べておくれ」
「あの、テッド? それはおかしいのではないですか?」
おずおずと話しかける聖女。自分の担当のところを掃除し終えたところである。
*「おにいさんにおまかせ」
「シルヴィは晩御飯、何がいいかしら?」
「え? えっと……お魚さん、でしょうか」
「魚ね。サイドのおじさんのお店に売ってるかしら」
「あそこは何でもあるからな……さて、一通り終わったし、お茶にしようか。チーナよろしく」
「なんでその流れで私が準備するのよ。貴方も手伝いなさい」
牧師は少し面倒くさげに、でも笑みを湛えながら、調理場へ向かうシスターの後を歩く。
「あ、あの!」
その後ろから聖女が声をかけた。二人はうん? と顔を向ける。
「私にも手伝うことってありませんか?」
すると牧師はすこしばかり口角をあげた。
「そうだな、シルヴィももう客じゃなくて同じ屋根で暮らす家族だもんな。おにーさんがいろいろ教えてあげよう」
「! はい、テッド。よろしくお願いします!」
「生活力ゼロのあなたが? 教えられるというならぜひご教授願いたいものね、牧師様?」